「ご愁傷さまでした。和泉君、可哀そうなくらい酷い負け方でしたね」
マンションに帰り着くとまず、知尋は華の毒舌に出迎えられた。
眼鏡をかけた文学少女の細い唇から飛び出す辛辣な文句にはどうも慣れず、つい一瞬、胸を痛めしまってから苦笑する。
……玄関で音がした途端、嬉しそうに居間からやってきた姿は可愛かったのに。
「メモ、くれたから帰ったのかと思ったよ」
つん、と大人しい顔に似合わぬ態度で顔が背けられた。
「面と向かって言うより、あの方が素直に聞いてくれそうでしたから」
「うん。確かに受け取ったよ。ありがとう。このお礼は何かの形で必ずするから」
「……へえ、案外素直ですね」
一瞬、間を置いて呟くと、華はそのまま居間に戻っていく。愛華達と一緒に後を追うと、通りかかった台所に真里亜の姿があった。
どうやら夕食の支度が仕上げの段階だった模様。
聞けば、学園を出るタイミングで李狐がメールを送っていたらしい。
「お帰りなさい、和泉君。今回も残念だったわね」
華と違い、こちらは素直に知尋を労う意味合いだ。
「ごめん、真里亜にも迷惑かけたよね」
「……迷惑、ね」
「?」
「いいえ、何でもないわ。食事をよそってしまうから、着替えてくるといいわ」
知尋達が着替えなどを終えるとすぐ、出された夕食もリゾット主体の食べやすいもの。さりげない気遣いがありがたい。
味付けは意外に濃厚で、一口食べると自然に顔が綻んだ。
それをじーっと見つめてきたのは華。
良く分からなかったが、真里亜がくすくす笑いながら説明してくれた。
「今日は華さんも手伝ってくれたから」
「そうなんだ。華も案外料理がうま……」
「名前で呼ばないでください。貸しを二つに増やしましょうか?」
……じろりと睨まれてしまった。
「そういえば、思わぬ収穫があったわね」
「うん。『苦痛軽減』か、でも本当にあるのかな」
これは調べて貰うのが早い、という結論になった。
『落とし物』の能力は千差万別で、中には獲得したかしていないかわかりにくいケースもある。常時発動系の能力は特にそうだ。
そうした場合、はっきりさせるには専門家に調べて貰うしかない。
能力を調べる能力――希少な能力者による調査を依頼し、突き止めるのだ。基本的にこれは能力判定の際……正確には当日の数日前までに申請することになる。
「あー。あたしは小さい頃に受けたっきりだな」
「あ、私も」
「能力は幼少期に発現するケースが多いですから。何も発見がないとお金の無駄だし、あんまり頻繁に依頼すると怒られることもあるそうですよ」
人手不足なのだろう、というのが窺えるエピソードだった。
「じゃあ、せっかくだから詳しく調べてもらうよ」
「そうね。もしかしたらもっと隠れた能力があるかもしれないし」
「はは。さすがにそんなにうまくいかないと思うけど」
四人もの少女がしきりに口を開き、明るい声を上げてくれるせいだろうか。
あれだけの戦いの後だというのに、その日の夕食は案外和やかなままに過ぎていった。
☆ ☆ ☆
「……で、その」
「なあに、知尋君?」
「この状態でただ寝ていろっていうのも辛いんだけど」
夕食後は交代で入浴などを済ませた。
まだ手が痛むだろうから、と何人か――約三名から介助の申し出があったりしたものの、逆に入浴だけで終わらなくなりそうなので却下、一人で身体を洗い湯船に浸かったのだが。
その後の就寝時間にて、知尋は何故か少女達によって半拘束を受けていた。
ボタンを留めていないパジャマの上を羽織っただけ、というほぼ全裸の状態で寝室のベッドに寝かされ――。
「だって、和泉君は手が使いづらいんでしょう?」
上半身の右側面には黒いランジェリー、そして黒の首輪を身に着けた真里亜が、行為への期待で瞳を潤ませながら座っている。
「だから、私達でご奉仕――ということらしいですよ」
左側面は華。白いシンプルな下着姿で、やや不服そうな表情。やや無造作に巻かれたピンクの首輪が彼女のやる気具合を窺わせる。
「いや、それはいいんだけど……」
「大丈夫だよ、知尋君」
「あたし達がせいいっぱい、ご奉仕してあげるから」
下半身、腰の横あたりには右に李狐、左に愛華が座る。二人の下着はそれぞれライムイエローと薄いピンクだ。
また、李狐の首にはいつも通りブラウンのチョーカー。
それぞれタイプの異なる少女達が勢ぞろいして知尋を囲んでいるこの状況自体はとても嬉しい。ありふれた表現だが天国かと見間違いそうだ。
……しかし、何もただの奉仕にこれだけ集まらなくても。
巨大ベッドのお蔭で狭苦しさはないが、いささか人数と意気込みが過剰ではないか。
「真里亜」
「フェラチオだけ何度もされても飽きるでしょう? でも、四人で代わる代わるすれば気分も変わると思うの」
発案者の少女は澄ました顔。
彼女の場合はやってみたかったというのが大半な気がするが、しかし他の三人も賛成一、消極的賛成一、反対一と比較的賛成有利であった。
「そういうわけだから、和泉君」
「ま、好きなだけ射精しちゃってくださいね」
左右の耳からトーンの違う囁き声を流し込まれ、ぞくりと身体が震えた。
「あは、大きくなってきた」
「興奮、してくれてるんだ」
まず動いたのは下半身側の二人。
「私一人だと知尋君も満足できないかもだけど」
「二人一緒なら別でしょ?」
李狐と愛華が寝そべるようにしながらペニスに顔を近づける。
二人は互いの顔が接近するのを恥ずかしそうにしながら舌を伸ばし、両側から竿をぺろりと舐めた。
「っ!」
ビジュアル的なインパクトもさることながら、左右から異なる感触が同時に生まれるのは想像以上に来るものがあった。
刺激は二倍ではなく二乗され、次に来る刺激を予測するのもそれだけ困難になる。
愛華が左側から遠慮がちに舌を這わせれば、李狐は右側の根元から先端までを大胆に舐め上げる。
愛華が根元に何度もキスしている間に、李狐は先端を口に含んで尿道を舌で刺激。痺れるような快感を与えてくる。
「高槻さん、そこちょっと邪魔なんだけど」
「李狐ちゃんこそ。もう少し遠慮してよ」
時折ぶつかって軽く言いあうのも『読めなさ』具合を引き上げてくれる。
はぁ、はぁ。
なんだかんだ言いつつも二人はだんだん興奮してきたらしく、奉仕にもより熱がこもっていく。
まるで子猫が一つの餌を取り合うように。
奉仕を受ける知尋は急速な昂ぶりを覚え、それでもギリギリまで我慢してから白濁液を発射した。
「きゃっ」
「あう」
二人だからか、どちらも受け止めきれずに顔を汚した。李狐は指を使ってそれを拭い口に含むも、愛華は戸惑った様子で硬直したまま。
「高槻さん、それも舐めてあげようか?」
「い、いらないっ」
我に返った愛華は李狐を真似するように付着した体液を処理していった。
「どうだった、知尋?」
「……うん。なんか、凄かった」
まだ一回目だというのにかなりの満足感がある。
抽象的な返事しかできなかったが、気持ちは伝わったらしく李狐は嬉しそうにくすりと笑った。その横で愛華も頬を染めている。
「それじゃあ、次は私達の番ね」
「……仕方ないですね」
真里亜と華が李狐達と位置を交換する。
そう、今回のプレイは今ので終わりではない。むしろ『奉仕だけで満足させる』という以上はこれからが本番だと言っていい。
ふぅっ、とペニスに真里亜の吐息がかかる。
「ふふ……いただきます」
ぱくり。
真里亜が竿を咥えこんだ。僅かに残った白濁と、べったりついた二人分の唾液とを舐めとりながらじゅるじゅると口を動かす。
これも意外な動き。
二人で奉仕するのだからまた左右からだと思ったが。
「まあ、毛を処理してくれてるのは助かりますよね」
華が顔を寄せたのは根元。
彼女は睾丸を口に含むと舌で転がしていく。無造作に見えて力加減は弁えており、痛くないラインを見極めながら緩く刺激。
正直、睾丸自体は快感としてはそれほどでもなかったが、華の口に刺激されているという意識、それから舌の感触とが真里亜の奉仕と混ぜ合わさり性感を高めていく。
考えてみれば華はレズ。
女性らしい細やかな責め方や、デリケートな部分の扱い方については拘りがあるのだろう。相手が男なのに目を瞑ってまともに技術を奮えばこの通り。
真里亜が竿を縦横無尽に舐めまわしたり、指で竿を撫でながら亀頭を焦らしたりする中、華はもう一方の睾丸も同じように刺激し――。
「んくっ」
「あ、ごめんなさい。強かったですか?」
白々しく指で陰嚢を突かれて意識が醒める。そこに、ちゅうう、と真里亜が強くペニスを吸引。
とくん。
一気に興奮が高まった。不意打ち、緩急という意味ではこれ以上ない。更には華まで口淫を再開し、知尋はあえなく射精に導かれた。
「ふぅ……ん」
真里亜が先端を占有していたため精液が飛び散ることはなかった。黒髪の少女はそれを口に含んだまま華へ顔を近づける。
華も相手が真里亜でなければ即座に拒否していたのだろうが。
「え、ちょっと真里亜ちゃ……んぅ!?」
精液混じりのレズキス。
こういう時なのに、こういう時だからこそ真里亜は本気で華の口内を嬲りにかかる。遠慮なく音を立て、華の顎に手を添えて唾液と精液を流し込む。
好きな人からのキスと不要な精液。
華はどちらを優先するか悩んだ様子だったが、結局とろんと表情を蕩けさせた。むしろ積極的に舌を寄せ精液を絡め、次々嚥下して真里亜の口内を清めていく。
と。
これから本番――というようなタイミングで。
「はい、おしまい」
真里亜があっさりと唇を離して微笑んだ。
「え、真里亜ちゃん……私まだ」
「何言ってるの、華さん? これはご主人様へのご奉仕よ? 精液は飲みこんだのだからご奉仕を続けなくちゃ」
「……あ」
愕然とする華。
彼女に愛華がすり寄って優しく肩を抱いた。
「ごめんね華ちゃん。次は私達の番だから」
「……本当に。あなたが和泉君を独占してくれれば楽なんですけど」
「あはは。ごめん、無理かな」
華ちゃん達といるのも少し楽しいし。
言いながら、愛華は李狐と共に奉仕を開始する。
ちゅ。
まずは左右からのキス。
李狐とのペアのまま、ということは一回目と同じか――と思った途端。
ぺろ。
乳首に舌での刺激があった。
「なっ」
「ふふ。生憎だけど、和泉君」
「慣れさせて休ませたりなんかしませんよ」
まさかの四人同時。
「いや、でも乳首なんて」
「あら。男の子にとっても乳首は立派な性感帯よ。じっくり開発していけば、最終的に女の子と同じくらい感じられるようになるわ」
「え」
「……ふむ。和泉君が女の子みたいに喘ぐのは楽しそうですね」
「それはちょっと怖……んぅっ!?」
問答無用で少女達の奉仕が始まった。
担当箇所自体は単純で、李狐と愛華はペニスを左右で半分ずつ。真里亜は右の乳首で華は左の乳首だ。
しかし、やや稚拙な愛華の動きをカバーするように他の三人が積極的に動き、逆に愛華がアクセントとして良い役割を果たす。
李狐の献身的な動きと華の的確なテクも対照的だし、真里亜はこの状況を目いっぱい満喫しているのか動きが不規則だ。
「こんなの、我慢できるわけ……っ」
即座に発射するわけではないし、ある程度時間を稼ぐことはできる。でもそれだけ。知尋はみるみるうちに上りつめて射精してしまった。
「あ、また……」
一回目で慣れたのか、今度は愛華もすぐに指で精を拭い取った。
ぺろぺろと舐める姿に、彼女を染めている実感が生まれて息が漏れた。
「じゃあ、次は私がやりますね」
「え、華? しかも一人?」
「ご心配なく。和泉君のコレを責めるのが一人というだけです」
言って華はペニスを口に含み唇で扱き始める。
四回目ともなるとだんだん感覚も鈍ってくるが、しかし他の少女達の行動によってそうも言っていられなくなった。
愛華が唾液でべとべとになった知尋の乳首に両手を触れさせ、優しい手つきで刺激し始める。オナニーで慣れているせいかフェラとはうってかわって危なげのない仕草だ。
そして真里亜と李狐は。
「あたしは左から」
「私は右から……ふうっ」
耳元で息を吹きかけてくる。
ぞくぞくして身体が跳ねる。そこへ乳首とペニスまで責めたてられれば、先程までの慣れはやはり通用しなかった。
どくどく……ごくん。
「はい。じゃあ、とりあえずあと二回ですね」
二人がかりで二回、後は各自一回ずつ……という計算か。愛華の二回目に李狐がついていたのはあくまで補助だったのだろう。
真里亜と李狐がじゃんけんし、負けた李狐が知尋に跨る。いつの間にかぐっしょりと濡れたショーツを脱いでその辺りに放り投げる。
「……え、まさか、ここまで来て」
「あは。うん、騎乗位」
確かに手は使わなくて済むが……。
まさか、快楽に絶望させられるとは思わなかった。
ぐちゅ……。
「はぁ……ん」
それでも勃起してしまう素直なペニスが李狐の膣に飲み込まれ、愛華は知尋にキスをしてくる。呼吸すらも制御された挙げ句、
「どう、気持ちいいでしょう?」
「ほらほら、とっとと五回目出しちゃいましょう? 楽になっちゃいましょう?」
耳に吐息を当てながら両側から囁かれる。しかも真里亜と華はそれぞれ片手を伸ばして乳首まで弄ってきた。
六回目は更に酷かった。
やはり真里亜が騎乗位で腰を振り、愛華はキスを継続しながら同時に乳首責め。李狐と華は吐息責めどころか耳舐めに移行し、何もわからなくなるほどの快感を味合わされた。
その先はもう覚えていない。六回目で気絶したのか、あるいはその先があったのか――。
起きると腕の違和感は和らいでいたものの、身体はぐったりと重かった。
……図らずも、快楽責めによる調教の気持ちよさ、恐ろしさを思い知らされることになってしまった知尋だった。