あの流れでこのエピソードを続けると収まりが悪いので独立した形にしました。
番外編よりも本編との関連度が高めのこぼれエピソードというイメージです。
「……まあ、そんな感じかな」
「そう、ですか」
学園敷地内の奥にあるログハウスの、更に奥にある寝室にて。
全裸に剥かれた挙げ句、一時間も視姦された成果――判定の二次調査の所見を聞き終えた知尋は軽く息を吐いた。
判定の結果は予想外、というか予想以上だった。
まさか一気に二つも能力が増えているとは。しかも、片方は何とも表現しがたい奇妙な能力。これは使いどころなど中々ないだろう。
「ありがとうございます。……でも、ちょっと整理しないと受け止めきれなさそうです」
無理に使う必要もないのだろうが、これはこれで知尋の欲望から生まれた力。
どうせならきちんと受け止めて活用してやりたい。
そう思って微笑むと、二次調査の担当者――鈴は呆けたような表情を浮かべて呟いた。
「そういうこと言っちゃうから」
「……え、と。どういう意味ですか?」
「んーん、何でもないよ」
軽く首を振った鈴は、ベッドに寝転がったまま手を伸ばして知尋の腕を軽く掴んだ。ぐいっと引かれてベッドに倒れ込む。
背が高く、胸の豊かな鈴と身体が重なり合い、更に揉みくちゃになった。
……なお、飲み終えたビールの缶はベッド脇へ適当に放り捨てられている。
「えへへー。お仕事終わったからのんびりしよー」
「え。それはいいですけど、僕は授業に戻らないと」
出席扱いのお墨付きは貰っているものの、用事が完全に終わったのならさすがに戻るべきだ……と、思うのだが。
「だーめ」
大人の女性とは思えない奔放っぷりで抱き着き、胸をむぎゅっと押し付け足まで絡めてこられると、年頃の青少年としては弱い。
鈴の体臭と、ほのかな酒の匂いが混ぜ合わさって知尋の鼻腔をくすぐる。
退廃の匂い。
彼女は悪戯っ子のようで、同時に人を堕落に誘う悪魔のようだった。
「ねえ、知尋くん。これから放課後まで、お姉さんとここで、汗だくいちゃらぶセックスしようよ」
一度でもその誘いに乗ってしまえばもう、絶対に戻れないところまで堕ちてしまうのではないか。
しかし。
「ゆーちゃん、って人に怒られるんじゃないですか?」
既に別の悪魔に魅入られている知尋に、今更堕落を恐れる意味があるのだろうか。
「む。……いーの、わたしのことはわたしで決めるんだから。ゆーちゃんの言うことなんて聞きません」
加えて言うなら。
この間言っていたことが真実だとすれば、そして彼女の言動から推測するに、鈴はほぼ間違いなく処女。
彼女は悪魔というより堕天使で。
これまで慈しんできた人間を、初めて堕落の道に誘おうとしている――同時に自身の魂をも取り返しのつかない境地へ堕とそうとしているように思えた。
だから。
知尋は鈴の瞳を見つめながら尋ねた。
「……鈴さん。じゃあ僕からも聞きます。本当に僕とここで、お互い疲れ切るまでセックスしてくれますか?」
「……っ」
鈴の心の中でいくつもの感情が揺らめく。
表層へと浮かぶ色合いが次々に変化していく。
孤独。期待。不安。諦観。歓喜――そして堕落へ。
「もちろん。知尋くんとなら大歓迎だよ」
鈴は知尋の瞳を真正面から見つめ返しながら微笑んだ。
そして、何かを思い出したような表情を浮かべる。
「……そうだ。新しい読心の力、わたしで試してみない? どういう風になるのか興味あるでしょ?」
「それは、まあ」
もちろん興味はある。
女の子の性的欲望を深いところまで暴き出すなんて、普通にできる経験ではないのだから。
しかし。
「本当に、いいんですか?」
「いいよ。わたしも、自分の気持ちに興味があるから」
……それなら。
知尋は鈴の瞳を見つめたまま頭の中にスイッチを意識する。
『モードの切り替えだから、カードの裏表とかスイッチのオンオフとか、ボタンをポチっと押すとか、そういうイメージでやるといいと思う』
講評を聞いている際に教わった方法を思い返しつつ、読心の新機能――『願望暴露』を起動する。
すると、見えた。
☆ ☆ ☆
白い部屋。学園の医務室……いや、知らない学校の保健室か。
夕陽に染まる室内はがらんとしており、ベッドの上で交わる二人以外には誰もいない。
カーテンによる目隠しすらもなし。
外から窓越しに誰かが覗けば、あるいは入り口から誰かが入ってくれば即座にバレるような状況の中、二人は一心不乱に相手を求め続ける。
スーツ姿の鈴と、学園の夏服を着た知尋。
はっ……はぁ……はぁっ……。
鈴のスーツは殆どはだけ、ブラウスのボタンも外れて中のブラが露わになっている。知尋の方もワイシャツのボタンは全て外れている。
二人の肌は汗でびっしょりで、口元や首筋は互いの唾液でべっとりと濡れている。
しかし暑さなど気にしないように、むしろ興奮を高めるスパイスにするかのように肌を惜しげもなく重ね、全身で愛撫し、口からは絶え間なく吐息を漏らす。
やがて両者の手が相手の股間に伸び、衣服を本格的に脱がせながら性器を露出させる。そしてどちらからともなく、躊躇いもなく一つに重なりあった。
☆ ☆ ☆
「……これ、凄いですね」
脳内のスイッチを切り視線を逸らして知尋は呟く。
さすがに、自身の痴態を映像として見せられると少々気恥ずかしい。
同時に見ている最中は猛烈な艶めかしさを感じ、ともすれば射精してしまいそうな気さえした。
と、鈴は何やら複雑な顔をしていた。
「……もう。わたしって、諦めがいいのか悪いのか」
「鈴さん?」
「え? ああうん。確かに凄いね、これ」
呼びかけると彼女は表情を戻し、ぼうっと回想するように目を細めた。
「体験してみると、外からではわからない発見もあったよ」
「と、いうと?」
「知尋くんの能力はね。さっき、わたしの願望を汲み上げたうえで、知尋君の知識を元にイメージを作っていたの。これ、どういうことかわかる?」
ベースは対象となる女の子のもの。
先程の鈴で言えば……知尋が能力により汲み上げた願望は「保健室でいちゃらぶ汗だく露出セックス」。
これを元に必要なパーツ、例えば「保健室の景色」「登場人物」等を、知尋の知っている物、見たことのある物からピックアップし補完してイメージを構築する。
鈴の願望に相手の男が誰かや、具体的にどこの保健室かといった部分は含まれていなかったので、鈴の相手は知尋になった。
あの保健室の情景は、後から思えば知尋が通っていた中学のそれをアレンジしたものだ。
知尋の服装が柴鳳の夏服だったのも、鈴がスーツ姿だったのも知尋のイメージ。
「でも、見せられた方にとっては違う。だってベースは自分の望みなんだから。細かいところもきっと、自分の望みが反映されたと錯覚しちゃう」
そう、例えば相手が知尋だったことさえも。
「信じ込むところまでいかなくても、望み通りに気持ちよくなってる自分を見せられたら、その相手が気になるのは当たり前だよね?」
対象の秘めた願望が強ければ強いほど傾向は顕著になる。
『彼女』はその後、何度も情景を思い返して自慰に耽るかもしれない。極度の興奮から絶頂にさえ至るかもしれない。そうすればするほど見せられたイメージが忘れられなくなる。
同時に、知尋のことも。
――つまりこの『願望暴露』の力は。
相手の根幹を否定せずむしろ肯定しながら、自分好みの淫らな女に染め上げる。
「あんまりほいほい使わない方がいいかも。……うん、ていうかこの力は『上』には内緒にしておこうかな。あんまり知尋くんに目を付けられても困るし」
そう言う鈴に、知尋はやや震える声で答えた。
「……そんなにうまくはいかないと思います。突然無理矢理、自分の隠している望みなんて見せられたら普通怒りますよ」
「あはは、それはそうかも」
鈴は知尋の反論にあっさりと頷いてみせた。
「でもね」
大人の、けれど細くてたおやかな手が知尋の頭をホールドする。
鈴は甘く、くすぐるような声音で。
「わたしはさっきので、もっと知尋くんが欲しくなったよ」
「……そんなこと言われたら、止まらなくなっちゃいますよ」
くすりと鈴が笑う。
「いいよ。むしろ、中途半端で止められたらわたしが困っちゃう」
二人は雰囲気に導かれるまま唇を近づけ、キスをした。
……なんだろう、この感じ。
どうにも鈴には逆らえない。いや、従うとか従わないというのも少し違うか。
本能が抑えきれなくなる。抑える必要がないと、そう感じてしまう。自堕落に奔放に、ただ彼女を犯したくなる。
不思議な女性だ。
思いつつ舌を入れる。鈴は逆らわなかった。
いや、この人が本気で抵抗するところが想像できない。
彼女は自分のものだと、少なくとも今は考えようと決めた。
じゅる、じゅる……。
気づけば鈴は妙に積極的だった。逆らわないというより、自分から快楽を求めてきている。
けれど、真里亜のように性欲自体が強いのかといえば少し違う。
愛華が頻繁に愛情表現を求めてくるのとも違う。
鈴はきっと、性の快感でなくてもいいのだ。ただ終わらない、長く続く気持ちのいい時間を求めている。
だから――汗だくいちゃらぶセックス。
頭の悪そうなネーミングにも一応意味があったらしい。
そういうことなら、思う存分付き合おう。
抱擁したままキスを続ける。
お互いの身体を押し付けあい、時折上になったり下になったり、横向きに寝転がったまましたり。
衣服が邪魔になって相手のを剝ぎ取ったりしつつなおもキスをした。
「女の人って、キス好きですよね」
「あー、他の女の話だ」
「そういうの、嫌いですか?」
「ううん。そんなに嫌いでもない。もし好きじゃない男にされたら死ねって思うだろうけど」
微妙に笑えなかった。
苦笑しようとしたら唇を塞がれた。にゅるにゅると、それこそ蛇のように蠢く舌を受け入れ、自分も舌で押し返す。
裸で密着するとお互いの体温がよりダイレクトに感じられる。
「鈴さんって、凄く抱き心地いいです」
「本当? 重くない?」
「女の子を重いなんて思いません」
「……ばーか」
罵倒されながらキスされた。
服を脱いで涼しいはずなのに、むしろ体温は上がって熱くなってくる。しかし鈴は汗を気にする様子もない。
「鈴さん」
「なあに?」
「挿れたいです」
くすっと笑われた後「いいよ」と言われた。
自分の腕を相手の腕に絡めあったまま、鈴が下、知尋が上で、ほんの少しだけ身体を離す。
固く屹立した肉棒を鈴の秘所に宛がう。
中も入り口もしっかり濡れているので挿入に問題はない。
「来て。お姉さんの処女……知尋くんにあげる」
知尋はペニスを鈴の膣内に深々と突き立てた。
「っ、はぁ……んっ」
破瓜の瞬間、鈴は僅かに顔をしかめて身体を硬直させた。
しかしそれも長くは続かなかった。瞬間的な痛みが引くと徐々に身体の力を抜き、表情にも笑みが戻ってくる。
「意外と痛くなかったかも。皆こんなものなのかな?」
「鈴さんがエッチだから、かもしれませんよ」
「むう、何それ否定できない」
軽口が出るあたり本当に余裕がありそうだ。
ちらっと接続部を確認すると、確かに破瓜の血らしきものは確認できるのだが。自慰の経験回数なんかも影響するのかもしれない。
「それじゃあ、動きますね」
「うん、して。知尋くんのおちんちんの形、わたしのおまんこに覚えさせて」
控えめな淫語が耳に心地いい。
……ならば遠慮なく。
ペニスを先端あたりまで引き抜き、また突き入れる。膣を慣らすように最初はゆっくりと、スムーズになってきたと感じたらだんだんスピードを速める。
やがてぱん、ぱん、と音が鳴り始める。
「あぁん!」
気持ちよくなってきたのか、鈴が突かれる度に大きく喘ぎ始める。
どうやら鈴は喘ぎ声が大きいタイプらしい。
「あはは、これがセックスなんだぁ……っ」
「そうですよ、これがセックスです。まだまだ入門編ですけど」
「そっか。じゃあ、もっともっと気持ちよくなれるんだね」
鈴は喘ぎ声だけでなく、普通の会話も頻繁にねだった。
「鈴さん。時間はもう気にしませんけど、声出し過ぎると疲れちゃいませんか?」
「うん、疲れるね。でも、疲れたら休めばいいでしょ?」
繋がったままごろごろすればいい、と微笑む。
「あはは。……じゃあ、とりあえず一回くらい出していいですよね?」
「ふふっ。いいよ、来て。わたしのおまんこに
さっきまで処女だった女性の膣内に、遠慮なく精液を注いだ。
「あぁ……入ってきてる。結構わかるものなんだぁ」
凌辱にも独特の興奮があるし、愛情を伝え合う交わりも尊いものだが、やはりこういうセックスも心地いい。
余計な事を考えなくていい。
全部許容して、ただただ気持ちよくなり続ける。
合間には、鈴の豊満な胸を前や後ろから揉みしだいた。
適度に弾力と柔軟性を備えた柔らかな膨らみ――マシュマロだとか色々な形容があるけれど、なんとなく近いと思うのは軽く焼いた餅、だろうか。
さすがにあそこまで伸びはしないが。
手に余る大きさのそれを可能な限り包んで力を込めると、胸はそれに従って形を変える。やわやわと、ふにふにと。
触れているだけでなんだか心地よくて夢中になっていると、鈴から「子供みたい」と笑われた。
「ね、ところで、知尋くんって回数できないひと?」
「いえ……六回くらいまでは自信があります」
「何それ、絶倫ってやつ?」
「そんな事もないと思いますけど」
もし愛華に真里亜、李狐、華の全員をフルコースで相手にしようと思ったら七、八回できてもまだ全然足りない。
絶倫を名乗れるのはせめて彼女達全員を満足させられるようになってからだ。
「……えーと。まあ、いいや。知尋君の基準は置いておくとして。じゃあまだまだできるんだね」
「もちろんです」
繋がったままキスをして、ゴロゴロしながらセックスした。
射精したくなったら射精して、キスしたくなったらキスする。合間には無為な雑談。
喉が乾いたら体液で汚れた身体のまま飲み物を取りに行って、帰ってきた途端、鈴に抱き着かれて押し倒された。抱き合いながら飲み物の封を開けて口移しで飲みこんだ。
次第に時間も気にならなくなり、殆ど無心のまま抱き合い続け――気づけばお昼を大きく回っていた。
さすがにそろそろ帰らないとまずいだろうと、シャワーを借りてお暇する。
「またね、知尋くん。気が向いたらまた会いに行くから抱いてくれる?」
「はい。いつでも来てください」
「うん、約束だよ」
別れ際に挨拶を交わすと鈴はにっこり笑った。
「今度は青姦しようねっ」
とんでもないことをさらりと言った後、ログハウスの入り口から姿が見えなくなるまで手を振ってくれた。
そうして一人になってもなお、身体には行為の余韻が色濃く残っていた。
☆ ☆ ☆
なお、この日の鈴との情事については当時の夜――『願望暴露』の検証が終わった後できっちり問い詰められ、白状させられた。
「ふうん。さっきの話と帰ってきた時間に差があると思ったら、そんなことしてたんだ」
「和泉君、その、良かったら私にも同じことを……」
「知尋ぉ。彼女の次はセフレなの? いいけど高槻さんを悲しませるのは駄目だからね」
この後、弁解というか埋め合わせには大変苦労した。