翌朝。知尋は誰かが咳き込む音で目を覚ました。
瞼を開けて視線をやると、ベッドに半分寝転んだ状態の愛華が涙目で呼吸を整えている。
彼女の顔の近くにはパジャマから露出し、立派に朝勃ちしたペニスが。
「愛華。もしかして、起こしてくれたの?」
「う、うん。李狐ちゃんに頼まれて」
朝食の支度は引き受けるから、知尋を起こしてきてと言われたらしい。
真里亜がいないため手が空かないのもあるだろうが、どちらかというとこの機会を使って愛華に良い目を見せてくれたのかもしれない。
「……李狐ちゃん達みたいに上手くできなかったけど」
起きている時に比べて感度が鈍く、長く刺激を続けるうちに息が続かなくなったようだ。
「ありがとう。それでも嬉しいよ」
「……ん。良かった」
身を起こして抱き寄せるとにっこり微笑んでくれる。
知尋はそのまま愛華の唇にキスをし、彼女の舌と唾液を存分に味わった。
数分後、唇を離した愛華はそっと知尋に囁く。
「知尋君。きっと、出さないと気持ち悪いよね」
「え。ええと……うん、まあ」
このところは真里亜か李狐のフェラチオで射精するのが習慣だったので、このまま寸止めというのは確かに居心地が悪い。もちろんどうしてもというわけではないが……。
献身的で頑張り屋な恋人は、気遣いから珍しい申し出をしてくれた。
「なら、その。こっちでする?」
と、指でそっとなぞったのはスカートの下、純白のショーツに覆われた秘部。
「いい、の?」
「うん。お尻はまだ……無理だから、あれはつけて欲しいけど」
そう言われた知尋は少し迷った。
奴隷ではない愛華にそこまでしてもらうのは悪い気もするが、昨夜はやはりどうしても軽めになってしまったので、ここで性処理しておけるのはありがたい。
ゆっくりしすぎなければ時間的にも問題ないはず。
「じゃあ、お願いしようかな」
「……うん」
目つきを淫らな、行為の時のそれに切り替えながら愛華が頷いた。
愛華はベッドサイドのチェストからコンドームの買い置きを取り出し、包装されたコンドームを一つ手に取ると中身を取り出す。
「ええと、濡れてるからこれで大丈夫だよね……?」
裏表を間違えないようにひっくり返しながら、恐る恐る知尋のペニスに被せた。どうやら正解だったようでほっと一息。
……実はゴムの裏表は知尋も未だに時々間違えたりするのだが。
勃起したペニスに丁寧にゴムを被せた愛華は「じゃあ、行くね?」と、ショーツを自身の足から抜き取った。
そうしてスカート越しに無毛の股間へ手をやり――。
くちゅ、くちゅ。
「ん、んん……」
淫らな水音が聞こえるまで準備を整えると、足を開いてペニスの上に跨った。
「大丈夫、愛華?」
「大丈夫。やってみる、やらせて」
殆ど経験のない騎乗位で、愛華はずぶずぶと竿を飲みこんでいく。
「これ、いつもより……っ」
しっかり根元まで受け入れた彼女は、はあ、と艶めいた息を吐く。
愛華ももう挿入には十分慣れているので、心理的抵抗感さえ乗り越えれば騎乗位はむしろペニスの形や大きさを感じやすいはず。
女性主導の行為については得意不得意があるだろうが――。
つぷつぷと、愛華は緩やかに腰を動かす。
最初は慣らすようにぎこちなく動き、だんだんとスムーズな動きを掴んでいく。
「愛華。気にせず手とか足とか、好きなところに置いていいよ」
「え、でも」
「大丈夫。やりやすいようにやってくれるのが一番だから」
安心させるために微笑む。
こくん、と頷いた愛華は知尋のお腹あたりに軽く手を添えて再度、腰を上下させ始めた。
ちゅぷ、ちゅぷ。
さっきよりも幾分か動きが安定した。
手の位置や身体の向きも個人差があるだろうが、愛華は身体を支えていた方が楽なタイプらしい。
「どう?」
「う、ん……気持ちいいよ。知尋君は?」
「出したい感じが、段々強くなってる」
騎乗位でのセックスは知尋の動きがあまり関与しないため、刺激の予想がつきにくく性感に繋がりやすい。薄皮一枚を隔てて愛華の体温が感じられることもあって確実に気分は高まっている。
反面、快感をコントロールが必要な愛華はやや重労働だが、彼女はにっこり微笑んで膣奉仕を継続してくれる。
「良かった。じゃあ、もっと動くね」
ぐちゅ、ぐちゅ、ぬぷぬぷ……。
「う、く……」
「んんっ!」
ぞくっとして腰が跳ねた。
拍子に愛華を突きあげる形となり、少女の口からも喘ぎ声が漏れる。
「愛華。出していい?」
「いいよ。知尋君、好きなだけ出して……っ」
知尋は更に何度から愛華の膣を突きあげ、腰を小刻みに震わせ絶頂した。
「あ、ああ……」
膣から射精の脈動を感じるのか、愛華が息を漏らしながら脱力する。
……ふう。
知尋もまた、精液がコンドーム内に発射されるのを感じつつ力を抜いた。すると意識のスイッチが活動モードに切り替わる感覚。なんというか、習慣というのも怖いものだと思う。
「ありがとう、愛華」
「ううん、知尋君が気持ちよくなってくれたのなら……きゃっ」
愛華にやさしく声をかけた後、両腕で彼女の身体を支えながら身を起こす。
ちゅ……。
「んん……」
驚きから軽く開いた唇をキスで塞ぎ、対面座位の状態で抱いた。今度は騎乗位の時と違い、腕で愛華をホールドしつつ積極的に突きあげる。
「知尋、くんっ……私、イっちゃ……」
「いいよ、愛華。イって」
なるべく甘く蕩けるように、素早く愛華を絶頂させるとそこでようやく朝の行為は終わりとなった。
ペニスを引き抜かれてベッドに横になった愛華がやや不満げに呟く。
「知尋君。それじゃまた、苦しくなっちゃわない?」
「ん……まあ、大丈夫だよ。真里亜になんとかしてもらうから」
答えると、愛華は意図を察して頷いた。
「そうだね。それがいいかも」
二人で行為の後始末をした後、着衣を整えてから寝室を出た。
台所では李狐がメイン、華がサポートする形で食事の支度が進んでいた。
「あ、おはよー知尋」
「おはよう。李狐、華」
声を上げた李狐に答える形で挨拶。
華が横目で知尋を見て告げてくる。
「頼まれてた物は買ってありますよ。冷蔵庫です」
「ありがとう」
彼女には前もって買い物を頼んでいた。
ゼリー状の栄養食とペットボトルのミネラルウォーターをそれぞれいくつか。それらを冷蔵庫から一つずつ取り出す。
そこで華が支度の手を止めて言った。
「私も行きます」
真里亜の世話はできるだけ引き受けたいのだろう。特に拒否する理由もないので、知尋は軽く頷いて華の同行を認めた。
お盆に水やゼリーと共にタオル等を乗せ、ドアが開いたままの入り口から真里亜の部屋に入る。
するとかすかに汗の匂いがした。
「真里亜、起きてる?」
「ん……ぅ」
ベッドサイドから声をかけると虚ろな瞳が向けられる。あまり眠れなかったのか少女の目にはうっすら隈ができていた。
瞳から伝わってくる感情は孤独感。
それはこうして知尋と華が傍に来ても安堵に変わらず、真里亜の心に揺蕩い続けていた。
「華」
「はい」
華がしゃがみ込んで真里亜のボールギャグを外す。
少女の口に嵌まっていた球状の部分はべっとりと濡れ、口元から首筋、胸元まで涎の跡が続いていた。
華は外した口枷をベッドの上に放り出すと頬に軽くキスをする。更に、ぺろぺろと舌を使って真里亜の涎を舐めとった。
「……華さん、汚いわ」
ようやく真里亜が言葉を発した。
ずっと言葉を封じられていたせいか声が枯れてしまっている。やはり水分と栄養を補給してやる必要がありそうだ。
「真里亜ちゃんの唾が汚いわけないじゃないですか」
答えて、華はペットボトルの蓋を取り真里亜の口にそっと近づける。
こういう調教においては良し悪しだが、華のブレない態度はある意味で扱いやすい。
「ゆっくり、飲んでくださいね」
ボトルが傾けられ少量ずつ水が流れ込む。真里亜は最初こそむせそうになったものの、以降は問題なく水を飲んだ。最終的に350ミリのペットボトルは殆ど空になる。
水の後はゼリー。
これも流動食なので食べやすく、一パック全てを真里亜は胃に収めた。
食事の後は身嗜みだ。
「いず……ご主人様。これ、脱がせちゃいますよ」
「うん、お願い」
肌を傷つけないよう丁寧にボンテージが外される。各部をベルトで留めるデザインのため、腕と足を拘束したままでも脱がすことができるのだ。
ただし、手袋と靴下はそのまま。
ショーツは鋏で切ってしまい、中のバイブとディルドは粘膜を傷つけないよう慎重に取り出した。
「どろどろだね」
作業の間、無反応を貫いていた真里亜がぴくりと動いた。
華が物言いたげに知尋を睨みながら続きの作業に取り掛かった。
拘束の解かれた身体を濡れタオルで拭き、残った水気を大きめのタオルで吸い取る。
……こうしてあらためて見ても、真里亜の肌はとても綺麗だった。
外的要因による肌荒れは損傷とみなされ『自己治癒』が修復するうえ、彼女はもともと人よりホルモン分泌が良いらしい。
ただ、こういう時は見た目と体調が一致しないので困りものだ。
「……じゃあ、私はこれを片づけます。どうぞごゆっくり」
「ありがとう」
華はボールギャグやボンテージ、バイブ等を纏めて回収すると部屋を出て行った。
依然としてドアは開いたままだが主観的には二人だけ。この場にいない李狐達のことを慮る余裕は今の彼女にないはずだ。
十数秒の沈黙を挟み、真里亜が口を開いた。
「……ご主人様。これは、身の程を弁えろということなのでしょうか。ご主人様も高槻さんが正しいと」
弱々しい声。さすがの彼女も今回の責めは堪えているらしい。
愛華の糾弾から突然のハード調教。知尋の意図すら見えないままこれだけ負荷をかけられているのだ。
まして、自分の気持ちにさえ自信を持てないのでは揺らがざるを得ない。
「違うよ」
真里亜の問いに知尋は首を振って答えた。
ベッドサイドにしゃがみ彼女の傍から語り掛ける。
……この調教を『罪』に対する『罰』だと考えるのは当然だが。
「うまく言えないし、今はまだ言うつもりもないけど。……これはそのためだけの調教じゃない。もしかしたら、目的が決まりきってないって言うのが正確かもしれない」
「……それは、いったい?」
「なんだろうね」
あまり語り過ぎれば調教に支障が出かねない。
知尋は真里亜の頭を軽く撫でると立ち上がった。
「ご主人様」
「また少し後で来るよ。それまでいい子にしててくれるかな?」
「……はい」
返事は少しだけ遅れて返ってきた。
真里亜の部屋を出た後はいつも通りだ。
シャワーを浴び、着替えてから朝食。違うのは食卓に真里亜がいないことと、知尋が着替えたのが私服だということ。
なお、華は泊まりの用意をしていなかったため、先んじて朝食を平らげると慌ただしく自宅に戻っていった。
「知尋君。お弁当はいつも通り作ったけど、いいんだよね?」
「うん。誰かに聞かれたら寝坊だとでも答えておいて」
「わかった。待ってるね」
食事の後、愛華と李狐は残りの家事を終えて登校していった。
知尋は彼女達を見送ってから、再び真里亜の部屋へ。
眠っているかとも思ったが、黒髪の少女は目覚めたままだった。
「ご主人様、学校へは……?」
「僕は後から行くよ。真里亜はしばらくこのままかな」
「……っ」
拘束調教がまだ終わらない。
しばらく。期間指定としては曖昧ながら、真里亜は調教の絶望的な長さを思ったはずだ。
視線を泳がせながら彼女が尋ねてきたのは。
「では、学園祭の実行委員会は」
責任感からか、あるいは別の理由からか。
真っ先に挙げられた『それ』、家事でも奉仕でも出席日数でもない事情を知尋は軽く切って捨てる。
「どうとでもなるよ。代わりに李狐あたりにお願いしてもいいし、最悪1-Cからは僕も出ているわけだし」
……真里亜一人いなくても何も変わらない。
そんな風に聞こえただろうか。
「そう、ですか。……そう、ですよね」
真里亜の身体からふっと力が抜けていくのがわかった。
それは決していい意味ではないとわかっていたが、敢えて無視して。
ごめん、と心の中で呟きながら。
知尋は真里亜のスマートフォンを手に取り命じた。
「じゃあ、真里亜。しばらく休むって学校に連絡しようか」
「……はい」
学園への連絡は事務的に終了した。
実家の用事で、と真里亜が告げると何の問題もなく受け付けられた。電話を受けたのが担任ではなく事務員だったこと、柴鳳学園は実家が遠方の者が多いことから問題視される要素はほぼ無かったと思われる。
これで、数日は真里亜が休んでも誰も不審に思わない。
「……さて」
息を吐き真里亜の足枷を外す。手枷とベッドを繋いでいたロープも解く。
それでも手枷自体は残したままで。
意図がわからず身じろぐ真里亜へ静かに告げる。
「するよ」
「……この状態で、ですか……?」
一晩の拘束とバイブ責めで体力を消耗し、精神的に擦り減った真里亜には酷な話だ。
加えて言えば腕の自由が利かない状態。
これではまともな奉仕など行えるわけがない。
――しかし、主人が奴隷を犯すと言っているだけの話。
「何か問題がある?」
問えば真里亜は沈黙するしかない。
知尋は真里亜をベッドに転がし、バイブのお蔭で十分に濡れている秘所へ無造作にペニスを挿入した。
ぐちゅぐちゅと音を立てながら、相手ではなく自分が気持ちよくなるために腰を動かす。
「……っ、んっ……」
真里亜は必死に声を抑えていた。
乱暴なレイプでも感じてしまう。そんな自分の身体を、この時の真里亜はどう感じていただろうか。
思いながら何度も真里亜の膣内に白濁液を注ぎ込んだ。
「んーっ!」
行為の間、真里亜は何度も絶頂を迎えた。
事後、真里亜は瞳を虚ろに濁らせたまま横たわった。知尋はそんな彼女の身体をウェットティッシュで拭き、お姫様抱っこの要領で持ち上げ寝室に運んだ。
併せて腕の拘束をいったん解き、身体の前面で留め直す。
足の拘束は解いたまま、ベッドの上へ無造作に転がす。
「これなら頑張れば寝室を出られるよね?」
その気になればトイレくらい行けるはずだ。
ついでに水差しにミネラルウォーターを入れチェストの上に置く。
先程の食事と併せれば半日程度、問題なくもつだろう。
「……よろしいのですか?」
「許可はしないよ。でも、リスクがあるのは理解してる」
真里亜が確認し、知尋が答えたのは当然トイレのことではない。
移動できるということは逃げ出される可能性もあるということ――しかし、それについては真里亜を信じることにする。
心に決めた主人から逃げ出すことが奴隷にとってどういう意味を持つか、この少女が理解していないはずがないのだから。
理解したうえで逃げ出すというのなら、仕方がない。
信頼という鎖が崩れきっていたと諦めるしかない。
暗に示した意図を理解したのだろう。知尋が残りの作業を終える間、真里亜は自分の心と向き合うようにぼんやり虚空を見つめていた。
知尋はもう一度シャワーを浴び、真里亜にゼリーで早めの昼食を取らせてから登校した。
クラス内に知尋の遅刻と真里亜の欠席を関連付ける者はいなかった。
「よー和泉。深海さんが欠席って話はもう聞いたか?」
……少なくとも周囲の者にそれとわかる範囲では、だが。
登校後の休み時間、すかさず話しかけてきた舞阪を見て、知尋はそんなことを思った。