波乱万丈な人生だ…高校を卒業して、警察官になり、政治家の罪を暴き、海外研修と言う名の、体の良い国外追放処分…戻れたのは10年後であり、俺を飛ばした政治家は、既に引退していた。
研修先で医師免許を取り、潜れない場所は殆ど無くなった為、海外の機関でもモグラをしたり、SPをしたり…
俺の人生は何だったのだろうか…
◇
蘭とカトリーの症状は徐々にであるが、快方へと向かっている。が、まだ意識は戻さない。あんな身体を見たら…精神ダメージがデカいだろうな。
ずっと傍にいて上げたいが、仕事がある為、そうもいかない。さてと、仕事場へ行くかな。
今回の仕事場は米国である。空港でクリスと合流して、現地へと飛びだった。行き先は目の保養での出来る西海岸である。
まず、ホテルにチェックインして、クリスと海岸へ…ハイレグ水着のクリス。アリです。他の女性が目に入らないくらい…
「私で無くて、周囲を見て下さいよ。お仕事でしょ?」
って、クリス。そうなんだが…あっ!あれかな?
「ホットドッグを食べに行こう」
「見つけたのね」
二人で屋台に向かって歩きだし、ターゲットの車に発信機をプレゼントした。
その夜、ターゲットの泊まるホテルを特定し、FBIにまかせた。俺とクリスは、夜の海に向かい、クルーザーで、沖へ向かった。沖に停泊している船に近づき、爆弾をセットしていく。この船の中で、他人に言えないパーティーをしているのだ。被害女性達は、ここで人生を終えた方が楽だと思うが、スクリューしか破壊しない。薬漬けの上回され…脳裏にカトリーの姿が浮かぶ。俺とクリスは停泊している船から離れた。爆破と同時に、FBIの強襲チームが乗り込む手筈になっている。
◇
主犯格の男2名を拘束出来たらしいが、政治的圧力が掛かり、釈放されたそうだ。なんの為の大掛かりの作戦だったんだ?
「消す?」
クリスに訊かれた。
「証拠だよ。消す訳にいかないそうだ」
「何者なの?」
「腐った国の首相の次男坊と、大統領の次男坊だ。二人とも表では若手の政治家で親子二代でトップを取れるだろうって言われている。本当に政治家は腐っているよ」
犯罪を犯しても、父親が最高権力者であれば、罪を問えないらしい。首相の次男坊の方は、蘭を毒味すると言い出した男である。
「じゃ、どうするの?」
「どうするかな…」
消すのが一番手っ取り早いが、芸が無いよなぁ…
「囮になろうか?」
「ダメだ。クリスまでいなくなると、俺は壊れるからな」
既に蘭とカトリーの件で一杯一杯だし。由美もまだかかるしなぁ。
「じゃ、どうするの?」
「殺し屋組織と捜査機関では、使える手が違うんだよなぁ。どうするかな」
◇
地道に身辺調査をしていく。あの船の大捜索作戦以降も、女性達を誘拐したり、騙したりして、遊ぶ道具にしているようだ。素人の女性だけでなく、被害女性はコールガール、捜査関係者にも及んでいるようだ。身辺警護は女性だけらしい。それも美人のだ。FBIの局長権限ではなく、大統領権限で辞令が下りているそうだ。親子二代で、喰っている可能性は大だが、証拠が無い。
どうするかな。滞在予定期間が満了しそうなんだが…
「拓也?」
偶然、知り合いに声を掛けられた。CIAで知り合ったダナだ。ブロンドのショートカットが似合う女性である。美人とは言えないが、スーツ姿の時はクールビューティーに見えなくもない。
「何の捜査?遊びってことは無いよね?」
「同業者だろ。察しろよ」
ダナは休日のようだ。一人でいるし。どの国の捜査機関でも、二人一組は原則である。モグラは論外であるが、大体二人で捜査に出る。
「って、言うか。ダナは東海岸じゃ無いのか?」
「西にだって来るわよ」
「そうか…」
「うん?誰を追っているの?あぁ、ケビンかぁ」
大統領の次男を知っているようだ。
「知り合いか?」
「彼、有名よ。お気に入りの女性達に、ガードして貰っているからね」
そうなのか。って、ガードにはCIAも混ざっているのか。
「あぁ、もう行かないと。またね、拓也」
「あぁ」
何が無い会話だったが、彼女の笑顔が脳裏に刻まれた。翌日、ダナの変わり果てた姿と対面する事になった。
「どういうことだ?昨日、再会したが、笑顔だったぞ」
苦しそうな死に顔…全裸で、股間は斬り裂かれていた。今朝、海に浮かんでいたそうだ。
「昨日、会ったのか?」
FBIの奴らの表情が暗い。どうしてだ?
「ダナは行方不明だったんだよ」
はぁ?
「どうして?昨日、会った時普段通りだったぞ」
ダナとの会話で、引っ掛かったことがあった。
「なぁ、CIAってケビンってやつのガードしていたのか?」
「いや、していない。まさか、ダナが言っていたのか?ケビンって大統領の次男だ」
「ダナが言うには、お気に入りの女性達にガードさせているって」
「警察のエスピーだけのはずだ」
「そうなると大統領令での引き抜きだな」
「あの野郎…」
そうなる首相の次男坊も…
「ケビンってヤツにやられたのかもな」
「う~ん、これは酷い…膣内部を焼かれていますよ」
って、監察医。
「精液のDNAの採取を防ぐ為だな。海に捨てたのは、体表の体液の採取を防ぐ為だ。血液サンプルは取れるか?」
「血液が残っていません」
「内臓はどうだろうか?残留血液は無いか?」
ダナの遺体は解剖に回された。はずだったのだが、解剖医の手には渡らず、遺体は強奪され、ゴミ処理場で処分されたそうだ。
「この国は腐っている…拓也…頼む…ダナの仇を…」
CIAの局長に頼まれた。
◇
渡米から2ヶ月後、やっと帰国出来た。病院へ急ぐ。蘭とカトリーの症状はどうなったんだ?テレビのニュースでは、どの局も、米国の大統領の消息が不明になったと報じていた。
病室に入ると、出国する朝と変わらぬ二人の姿があった。計測装置の値を見ていく。問題は無さそうだ。しばらくは休暇が貰えそうなので、再建術の続きをするかな。
ケビンとその悪友である首相の次男坊は、あの薬で齢70位にして、無一文でスラム街に放置した。大統領は、生きたままCIAへ送り届けた。四肢を麻痺させた状態でだ。
あとは、この国の首相だな。どうするかな。エスピーにラムが入っているから、どうにでもなると思うが…コイツはスキャンダルでの失脚にしたいし。
次男坊はダナの殺害犯として、既に全米で指名手配されている。これだけでは弱いだろうな。
「どうしたの?難しい顔をして」
美和子が抱きついて来た。
「あぁ、次の事案のことを考えていたんだよ」
「ふ~ん、で、渡米中は、どこで抜いていたの?」
「抜く時間なんかなかったよ。溜まりまくりだ。由美も美和子も出来ないし…冴子で抜くかな」
美和子は治っているが、由美がまだである。二人一緒の報が問題が少ない気がする。問題が有るとすれば、工藤新一が脱走したことか。お金もパスポートも無いので、帰国は出来ないと思うし、次期女王の父親なんだから、居座って貰わないと困る。
王女を始末する直前、漸くシスティーナの卵子に工藤新一の精子が受精し、今、借り腹で成長中である。胎児の性別は女性らしく、システィーナの生涯の幕は、その子の誕生と共に閉じるそうだ。
---工藤新一---
金も無い。パスポートも無い。身分を証明する物が何も無い。あるのは指紋程度であるが、入国の記録が無いんだから、犯罪者決定な気がする。空き巣をして、その日暮らしをする毎日だ。警察にも駆け込めないし…大使館に駆け込むか。
大使館に駆け込んで見ると、疑いの目で見られているのがわかる。
「もう一度訊きますが、どうやって入国しましたか?」
「知らないって、連れ込まれたんだよ」
「誰に?」
「英国王室に…」
英国王室は否定しているそうだ。それはそうだ。犯罪者に犯罪をしましたかって訊いても、簡単に自白しないって。
「指紋認証で、あなたが工藤新一氏って言うことは判明しています。が…」
密入国ルートを知りたいのだろう。だけど、俺は知らないし。並行線である。
「スコットランドヤードで君の指紋を調べてもらったら、数々の空き巣現場にあったそうだ。これはどういうことかな?」
「金が無いんだ。申し訳無いことをしたと思うが。ここに来る為にお金が必要だったんだよ」
「で、どこに幽閉されていたんだ?」
「システィーナの別荘だよ」
「システィーナ王女のか?!」
大使館員の顔色が変わった。どこかへ連絡をしている。
「君の身元引き受け人が決まった。帰国をさせてあげる。但し、君の名前は狩場新一になるいいね」
「どういうことだ?」
「狩場首相の次男になって貰う。次期王女の父親は君だろうからね」
大使館員の顔が悪そうになっていく。政治利用されるのか?
「手続きが出来次第、君を丁重に日本へお届けする。あぁ、工藤新一って者は戸籍から削除される。君の退路は断つ」
「ちょっと待てよ!」
目の前が真っ暗になっていく。
---江川拓也---
目から鱗な記事が新聞に出ていた。「狩場首相の次男、留学先の英国から帰国。システィーナ王女との間に子供。その親権を巡り、婚約は破談に」って…誰のシナリオだ?
バンコランに連絡をすると、日本のニュースはノーチェックだったのか、物凄く驚いていた。
『マジか?』
「あぁ、マジだ。どういうことだ?」
『わからないが、確認したら、狩場が強請ってきたそうだ。英国王室と正式に家族と認めろって』
「なんで、工藤新一が狩場新一なんだ?」
『わからない。外交官特権で出国し、日本へ入国したのは確認した』
上司である刑事局長に連絡をした。
『寝耳に水だよ。工藤新一の戸籍は、昨日抹消されたそうだ』
削除?
「官邸主導か?」
『そうなるな。犯罪者であっても、戸籍は抹消されない』
深い闇だな。
『俺は動けない。下手に動けば、人事異動になるからだ』
それはそうだが…
「治外法権?」
『今日の閣議で首相は任期満了まで、治外法権にするらしい』
「手が出せないじゃないか」
『出せない。とんだ、独裁者だよ。次男坊は蜥蜴の尻尾と同じなんだろう』
付け替え自由かよ…いや、待てよ…
「コナンに戻すて言うのは?」
『どうやって、接触するんだ?』
「コネを使って…」
俺は、行動を開始した。
◇
日本に帰国していた工藤優作、有希子夫妻に、今回の件を話し、二人にスーツケースに入れてある江戸川コナンを託した。
「拓也君、すまない」
「いえ、狩場首相はターゲットですので、余分な役者は排除の方向です」
有希子がスーツケースから、眠らせてあるコナンを取りだし、ベッドへと運んでいく。
「狩場事案が終わるまで、彼はあの姿のままにします」
「わかった。その後はどうするんだ?」
「工藤新一の戸籍が問題ですよね。抹消されたから…」
抹消は出来るが、再生は出来ない。
「英国籍を取らせて、日本に帰化させるか」
ソレくらいなら、バンコランがどうにかしてくれるだろう。
---狩場洋一---
工藤新一が消えたそうだ。寝室から…どこへ逃げたんだ?工藤邸を暗部に見張らせているが、工藤新一が出入りしたのは確認出来ていないそうだ。どこへ消えたんだ?
手引きしたヤツは誰だ?警察か?公安か?それともMI6か?
この俺に楯突くヤツがいるのか…
「おい、敵対するやつは消せ!」
「はっ!」
暗部に指示を出した。
---江川拓也---
なんで…平井の頭と胴体が離れている。どうして…呆然と立ち尽くす俺…警察病院に入院中だった平井が、院内のベッドの上で首を切断されて、死んでいた。
「誰が…」
個室に入院させた事が裏目に出たのか…精神的なダメージだけだったので、計測装置類は付いておらず、朝食を運んで来たナースにより発見され、通報されたのだった。
「死亡推定時間は午前3時から4時と推測されます」
ナースの巡回が無い時間帯である。内部犯行か?
「拓也!傍にいてやれ」
刑事局長の感情を感じない声。キレているようだ。俺以上に…
「監視カメラの映像はどうなっている?」
「総て消されています」
内部犯である。ビデオの保管場所、方式、パスワードが分からないと、削除はデキないから。
「なんで、平井が?なぁ、なんでだよ!」
何かを見たのか?聞いたのか?平井の顔は安眠しているようだ。
「おい!拓也を休ませろ!」
俺は捜査員に病室に案内され…返り討ちにしてやった。
「どうしたんだ、拓也?」
刑事局長達が駆けつけた。
「いきなり銃を向けてきたんで、首を折ってやりました。コイツはどこ所属ですか?」
警察庁、公安、警視庁でも無かった。そうなると内閣捜査室の暗部か…
「サイレンサーか…」
「敵の正体は狩場ですね。国外追放の次は射殺ですか…」
狩場のオヤジを追い込んだ俺。その結果、国外追放された。この国は何一つ変わっていないようだ。
「拓也…」
「身の振り方を考えます。あぁ、公安に蘭とカトリーのガードをお願いします。由美と美和子は警視庁でお願いします」
俺は一人で現場を後にした。
◇
狩場首相が記者のぶら下がりで、「閣議で、首相任期中は治外法権になった」と、国民に向けて宣言をしたらしい…