今回はダメだろうな…相手が悪過ぎる。どうするかな…
◇
刑事局長に呼ばれた。
「拓也…国外に逃げろ」
そんな戯けた事を、真顔で言う刑事局長。
「俺に逃げろと?」
「あぁ…CAIでもMI6でも歓迎してくれるそうだ」
「逃げられないよ…患者がいるんだ」
「俺が責任を持って、彼女達は護る。だから、脱出してくれ。頼む、拓也…」
刑事局長が俺に頭を下げた。これしか、俺を護る方法が無いのだろう。国外追放でも矯正できないバカに待つのは、死刑だけだろうな。
「これが最後かもしれない。だから…最後のわがままを聞いてくれ…なぁ、アニキ…」
「拓也…」
「バカな弟の最後の頼みだ。蘭とカトリーを英国大使館へ持ち込んでくれ。バンコランには話を通してある。ガードには、MI6とFBIが付いてくれる」
「そうか…腹をくくっているんだな。わかった」
「後、首相官邸の地下の図面って、手に入るか?」
「お前も、あそこに暗部の指令部があると、睨んでいるのか?」
アニキがUSBメモリを手渡して来た。
「あそこしか無いだろう。なぁ、うまく行ったら、アカシヤでシチユウ定食を奢るよ」
「ふっ…楽しみに待っているからな。その際には、彼女連れて来い。祝ってやる」
「あぁ、待っていろよ」
---工藤新一---
父さんから、状況を訊いた。拓也は俺を江戸川コナンに戻し、連れ出してくれたそうだ。
「狩場が失脚したら、この薬で、元に戻れるそうだ」
父さんに後の事を託しているのか。アイツ…差し違えるつもりか…
「蘭はどうなっている?」
「英国王室に送るそうだ。護って貰う為にだ」
護る?アイツ、王室関係者なのか?そんな依頼が出来るって…
「問題は、狩場は治外法権ってことだ。アイツのすることは罪に問えない。閣議決定だから法律に制定はされないが、法務大臣が認めている権利ってことだ」
「野党の反対とかは無いのか?」
「議場に暗部のヤツらが乗り込んで、黙らせたらしい」
「総理によるクーデターか?」
「そんな感じだよ」
腐っている。どうすれば、戦えるんだ?
---江川拓也---
美和子とまったり…交尾は出来ないけど、スキンシップは出来る。
「その寸止め行為はどうにかならない?股間にあてがうだけって…生殺しだよ」
「大丈夫だ。俺もそうだからな」
まだ、ダメなようだ。ピストン運動に膣壁が保たないというか…
「裂けたら、死んじゃうぞ」
「それはイヤだな」
「腹上死はカンベンしてくれよ~」
俺の胸板に乳房を押し当て、頬を重ねる美和子。この時間が永遠に…って、二人共ミイラになりそうだな。
◇
サイコロは振られたようだ。俺を尾行していた暗部の奴らを消して行く。こんなことをする為に、コイツらは警察官になった訳で無いだろうに…
近距離なら対処出来るが…遠距離狙撃には、俺は対処出来ない。ライとバーボンに背中を預けている。あの二人なら、暗部の狙撃手をきっと…
首相官邸…物々しい警戒である。バレたかな…って、戦車とか軍用ヘリがいる。軍隊に護らしているのか?暫く様子を見ていると、軍用ヘリが官邸の敷地へと堕ちていく。クッキーかな、リョウかな、ファルコンかな、良い仕事をしてくれている。ドサクサに紛れて、官邸内に侵入した。
監視カメラの死角を辿りつつ、地下へと向かう。そして、狩場の前に出ることが出来た。
「あっ?モグラか…」
「狩場…久しぶりだな」
「お前は懲りていないのか?」
「腐った者を排除するのが仕事なんでね」
「あははは…お前の行動はお見通しだよ」
奥の部屋から寝台に載った蘭とカトリーが、運ばれて来た。
「警察は私の味方なんだよ。そうだろ、江川刑事局長」
「えぇ、そうです」
こうなることは、わかっていたさ。
「さて、モグラよ。国外追放程度では、駆除出来ないようだな」
「で、どう出る?」
「もう、この国は狩場帝国だ。私の思い通りになるんだよ。野党議員の家族達は、暗部に攫わせてある。言っている意味は分かるよな?」
「野党議員も味方かぁ…次の本会議で、重要法案を通すってことか?」
「そうだよ。閣議決定だけでなく、法制化をするんだよ。私は死ぬまで永世首相をし、治外法権を武器に、この国を強くする。あぁ、この国にはお前のような、甘い正義感の持ち主は要らないんだ。ここで、彼女達と暮らせ。モグラにお似合いだろ?日の当たらない場所ってなぁ。はははは…」
ふふふ…ばか野郎が…
官房長官が首相へと駆け寄り、耳元でゴニョゴニョしている。勝負はここからだよ。
---工藤新一---
緊急生放送…首相の真実だと…カメラマンが襲われる。女子アナの実況が聞こえる。この声って、キールじゃ無いか。まさか、あのカメラマンって…木の上から人が落ちてくる。手には高性能ライフルが握られている。
首相官邸前は、自衛隊が守備をしているようだ。
『現場は物ものしい雰囲気です。戦車が数台、空には軍用ヘリでしょうか。ミサイルを積んでいるようです。首相は、官邸で何をする為に、こんな警備をさせているのでしょうか?』
爆発音が多数。ヘリが墜落し、積んでいたミサイルが爆発しているようだ。
『えっ!ガイガーカウンターが反応をしています。まさか、劣化ウラン弾?生きて帰れるかな…カメラマンが間隙を縫って突入したようです。ここからは…局から危険だと声が届き、カメラマンに映像を任せ、私は映像を見ながら実況を続けます』
カンペを持っているスタッフ…ベルモットか…
「拓也君…なんて、無茶を…」
父さんの顔から血の気が引いている。
「どういうことだ、父さん」
「あんな場所にカメラなんて、持ち込めないだろ?相手に気づかれてしまう。きっと体内に埋め込んだんだ」
埋め込んだ?まさか目玉をくり抜いて…
そして、狩場首相と対峙している拓也。確かにカメラに気づいていないのか、自慢気に話しているようだ。
ネットではこの放送を見ている試聴者からの投稿が相次いでいた。実際に首相官邸に向かった者からは、事実だったと報告が多数上がっている。警察に電話しても、回線がパンクしたのか、繋がらないらしい。
「全世界に向けて生放送しているようだぞ」
って、父さん。拓也…お前…最後の賭けに出たのか?
---江川拓也---
見る見る顔色が悪くなっていく狩場。
「貴様!どこにカメラを仕込んで有るんだ?」
「はぁ?言える訳ないだろ?」
「おい!テレビ放送を全局遮断しろ!」
「おぃおぃ…乱暴だな。そうなると、将来的には国営放送だけにするのかな?」
「死刑にするお前は知らないで良いことだ!江川拓也…お前はここで死刑にする」
「ここで?みんなの見ている前で公開死刑か?それは、名誉なことだな、狩場!」
狩場が銃を手にした。銃口から火柱が見え、額に衝撃を受け、後に仰け反る様にして倒れた。これじゃ…天井しか映らないなぁ。画像モードを音声モードに切り替え、ラジオ局にもデータを提供し始めた。
「モグラ、さすがに額を撃ち抜かれて、生きては要られないようだな」
はぁ…はぁ…サプライズでもするかな。上体をゆっくりと起こした俺。
「何だと…お前、死なないのか?」
「これくらいなら、大丈夫だよ」
前頭葉がちょっと潰れたのか、気持ちが悪い。でも、バレ無いように演じる。潜入捜査官は役者だから、演じるのが仕事である。
パン!パン!パン!
乾いた音が複数する。頭部に一発、胸部に二発、着弾したようだ。まだ、行ける。気力が続く限り、アイツを追い詰める。
えっ!なんか、筒みたいな物をかまえている狩場…バズーカかな。それは無理かも…
パン!
アニキが狩場のこめかみを撃ち抜いたようだ。くずれ落ちる狩場…
「おい!拓也…大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫だよ。俺の額ってチタンだし、胸板の筋肉の下には特殊繊維があるし…多分、障害は残るけど…大丈夫…」
これで終わったかな…
---佐藤美和子---
拓也は海外へ赴任したそうだ。あの狩場の生放送を見ること無く。まったく…警視庁の捜一に復帰した私だが、事務職に徹している。激しい動作は、ダメって、診断書を拓也が残した為で。佐藤班の班長をしている。
刑事局長は、狩場に取り入ったように見せかけて、潜入捜査をしていたそうだ。で、狩場は、一命を取り留め、財産没収の上、英国政府へと引き渡されたそうだ。王室を強請った件だとか。
その英国だが、放浪クセのある王子が帰国したとかで、盛り上がっているそうだ。エドモンド王子って言うらしい。第6王女のフィアンセで、女王に気に入られ、王子として扱われているんだとか。いいなぁ。拓也はどこにいるんだ?私をもらってくれないかな。
蘭ちゃんは新一君とゴールインしたらしい。いいなぁ…
「美和子さん!事件ですよ。妄想に浸っていないでください」
部下の高木君が五月蠅い…妄想くらい良いじゃないか。
◇
家に帰り…冷蔵庫から缶ビールを取りだし…グビッ!っと一口…あれ?黒ビールだ。買った覚えが無いんだけど…こめかみに金属の筒の感触。これって…殺される…顎を掴まれ、相手の顔の方へ顔を向けられた。唇に唇を重ねて来た賊…あれ?この感触って…
「ただいま、美和子」
拓也だ…目の前には変わり果てた拓也がいた。片目に眼帯をしている。怪我をしたのか…
「どうしたの…これ…」
「あ…ちょっとね。ドジを踏んで…」
「そう…モグラをしているの?」
「いや、もう出来ない。片目が無いから…距離感が無いんだよ」
怪我では無く、片目が無いって…
「じゃ、何をしているの?」
「のんびりしているだけだよ」
「ヒモ?」
「美和子の?」
「稼ぎがそんなに無いよ」
「金はあるよ。退職金が出たし」
「そう…じゃ、何しているの?」
「英国の第6王女のフィアンセだけど…」
「はぁ?王女のヒモ?」
「ビンゴだな。なぁ、愛人にならないか?」
「はぁ?なんで愛人?」
「王女のフィアンセだからだよ」
「王女と一緒になればいいでしょ?」
「なれないよ。もういないから…」
「いない?」
「そう、もう旅立っているんだ。でも、女王がフィアンセのままでいて、王子になってくれって言うんだよ。一生楽させるからって」
はぁ?英国の女王のヒモなのか…この禄で無しは…
「愛人を作っても良いって言うんだよ。だから…」
だから…
「王女はどうして亡くなったの?」
「病気だよ。俺は怪我なら治せるが、病気は治せない。でも2年位は一緒に暮らしたよ。フィアンセとしてね」
脳裏に放浪クセのある王子のことが浮かんだ。確かエドモンド…江戸主水…
「エドモンドって…」
「俺のことだよ。あのババァ、俺の了承無しに、王子だって発表しちゃうんだもの…フィアンセであって、入り婿では無いって言ったんだけど、養子縁組をしやがって…喰えないババァ…王室関係者達なんか誰も反対しないし。あの国は腐っていないけど、おかしいだろう。片目の殿下って、国民に指差されているし…」
女王陛下にも、国民にも気に入られているようだ。
「どうする、美和子…」
「う~ん…」
「黒ビール旨かっただろ?」
「あっ!拓也のおみやげだったのか…」
「そうそう」
「考えさせて…」
何も言わずに、寂しそうに部屋を出て行く拓也…お忍びで来たのかな?ここで逃すと、あれかな?
---エドモンド---
「もぉ~!拓也は動くな!」
距離感が無いって、エロ行為に於いても自由度が少ない。俺から口付けが出来ない。下手にしようとするとヘッドバット状態になるのだった。
「お前のおでこは痛すぎるよ!」
「チタン合金だからなぁ…」
広いお城に3人で住んでいる。俺とカトリーと美和子だ。カトリーはリハビリ中。寝たきり状態が長く続いた為、筋力が落ちてしまったようだ。まぁ、車椅子の名探偵として活躍しているけど。
美和子は第2夫人って立場らしい。あのババァの見解だけど。美和子は大見得を切って、寿退社をしたらしいので、ババァが夫人の座を与えたそうだ。
「まったく、女王陛下のジゴロって、拓也は碌でなし過ぎるだろ」
働いては要るけど…王室の行事である。ババァは娘ばかりで息子がいないから、養子とは言え、俺が唯一の息子らしい。なので、強制参加だとババァこと女王陛下が言う。お付きの者、ガードの者達が笑っているんですが…
バンコランがたまに遊びに来る。捜査資料を沢山抱えて。ICPOは退職出来なかったようだ。相談役って立場らしい俺。もう現場復帰は無理だけど…相談には乗れるから良しとしている。