主僕契約の儀式を終わった後、更に先に進んでいったジム。
「ねぇ、あの人は何に殺されたの?」
ジムは、下僕の二人に聞く。
「あぁ、あれは、儀式の失敗だ。私達を別々の場所から奪って、人気の無いここで、契約しようとして、あまりにも下衆だったので、私が雷で戒めたんだ」
レヴィアタンが答えた。
「そうだったのか。自業自得だったんだね」
「そういうことだ」
なんの変哲のない場所で、歩みを止めるジム。
「ここがいつも気になっているんだ。何かを感じるだけど、何かが解らないんだ」
廃墟迷宮にしては、綺麗すぎる壁。ジムの興味はソレだった。
「他の壁は、風化したり、刀傷があったり、血糊の跡があったりするんだけど、ここだけ無いんだよ」
下僕の二人が実体化した。
「たしかに変ね。この壁を、壊してみましょうよ」
二人は刀化した。ジムは二振りの刀で壁を撃破した。壁の中には小部屋が有り、中には1本の剣が地面に刺さっていた。ジムは小部屋に入り、剣の柄を握り、地面から引き抜く。それを同時に部屋中から声が響いてきた。
「我を引き抜きし汝に 我らは仕える 我はドラゴンマスター 龍神王 我納まる器 ドラゴンスレイヤー也」
「へ?」
驚いているジム。レヴィアタンに助けを求めた。
「ほぉ、龍神王とは。オーフィスも封印されていたのか」
「うん?リヴァか。久しいな」
「リヴァって、昔の名前で呼ぶな。今は魔王レヴィアタンだ。あぁ、彼は私達の主のジムだ」
「ジムというのか。これからは我も仲間になる。我の能力はドラゴンを使役させることだ。そのドラゴンスレイヤーで斬りつけたドラゴンは、全て仲間になる。ジムが危険だと判断した場合、的確と思えるドラゴンが召喚される。もちろん、ジムの意思でも召喚はできる」
まだ戸惑っているジム。
「ジム、私達は貴方の心の中にいるから、気にしないで良いわよ」
優しい声で、ジムの心を落ち着けさせようとしているガブリエル。
「しかし、ジム。お前は凄いなぁ。封印された三種族の長を、下僕にするなんて」
呆れた声のレヴィアタン。
「そもそも、なんで封印されたのですか?」
恐る恐る訊くジム。
「ケンカの理由は忘れたけど、随分前に大ゲンカしていてね、それを一番偉い神に怒られて封印されたんだ」
頷くケンカ相手だったと思われる二人。
「あの神は短気すぎるだろ?」
「同感だな」
ジムの心の中では同窓会が始まった。ジムのわかる話ではないので、心を無にして迷宮探検を続けた。
◇
下僕が出来てからは、迷宮探検に行かない時は、それぞれから、新たな能力や魔法や技などを、会得していった。
ある日、ジムが懇意にしている旅団が、集落に立ち寄った。この旅団は各地の迷宮を巡り、解明状況を検査したり、盗掘されていないかを調査していた。団長のサーゼクスが、ヒーラーを探していた。団員の一人が怪我をしていたのだ。集落の人々の情報から、懇意にしているジムがヒーラーということを知り、ジムは怪我人にヒールを施していく。
怪我人もジムが懇意にしているリアスだったので、話ながら治療を施していった。
「ジムのオーラって、こんなに暖かかったのね」
「よく言われるんですけど、自分ではわからないです」
苦笑するジム。確かに自分自身を治療すると、患部が暖かくなっていくのは感じていた。それは単に手の温もりのせいと思っていたから。
「どうだ、リーア?調子は」
団長のサーゼクスが、様子を見に来た。
「ジムは凄いのよ。心まで癒やされていくの。こんなヒーラーは出会ったことがないわ」
何かを考え込むサーゼクス。しばらく考えた末にジムに話しかけた。
「なぁ、ジム。推薦枠で迷宮学園で学ばないか?学費とか生活費などの経費は僕達が工面するからさぁ」
サーゼクスの申し出に驚くジム。
「いいんですか?僕はお金も地位もコネも無いですが…」
「だから、推薦枠なんだ。僕達が推薦するから大丈夫だ。君のヒール能力は貴重だし、将来的には僕らの手助けをしてもらいたい。どうかな?」
「お願いします。基本を学びたいです。もっと多くの廃墟迷宮も、探検してみたいし」
「廃墟迷宮だけでなくて、未解明迷宮も頼むよ」
サーゼクスは笑顔で、ジムを見据えていた。
移動中もヒールが出来るので、ジムが旅団に帯同することになり、ジムは集落を離れることとなった。集落の人、一人一人に挨拶をしていくジム。ジムとの別れがつらい者は挨拶を拒否してしまった。
そして、旅団は迷宮学園都市へと旅立った。
---迷宮学園都市 レインボーヒル----
巨大と思われる未解明迷宮の上に広がる都市だ。都市の中央に学園があり、それを取り囲むように街が広がっていた。学園内には武器屋、防具屋、アイテム屋などのお店があり、迷宮内で見つけたアイテムの売買が、学園外より取引レートは少し悪いが、学園を出ずにできた。生徒、教師の住居は基本学園内にあるが、一部の特権階級の者は学園外から通っていた。
ジムは、サーゼクスとリアスが、この学園の教授で、上級ジョブに就いている事を、初めて知った。
「ジム、君は僕らの恩人で有り、友人で有り、家族だからね。困ったことが有れば、気安く言ってくれ」
「そうよ、ジム。何時でも私達の部屋に、来ても良いから。また、心を癒やしてね!」
二人は、ジムの入学する高等部の次の課程、大学と呼ばれる教育施設で、教鞭を取っていた。二人の研究室の人達も快くジムを迎えてくれた。彼と一緒にいるだけで、心が癒やされていくという経験をしてしまったからだ。
ジムが大学の施設にアクセスする権利を得る為に、アルバイト先は二人の研究室のサポーターになった。これにより、学園内の教育施設の殆どに、アクセスできることになった。
「勉強をいっぱい出来る環境を貰ったので、頑張ります。早く、サーゼクスとリアスの旅団に入れるようになりたいです」
と、抱負を語るジム。そんなジムを暖かい目で見守る、大学のスタッフ達。
---ジム---
実際に授業を受けると解る教科もあれば、まったくわからない教科もあった。実戦系は良いのだけど、学術系はまるでダメだ。
一番、戸惑ったのは学生寮だ。二人で一部屋は良いのだけど、僕のルームメイトは女の子だった…初日に共用部分で着替えたらしく、上半身裸の姿を見てしまい、殴られた挙句に『変態』と言われた。とっても凹む。それ以来、自分の部屋に戻るのが怖くなり、今は教員寮のサーゼクスさんと同居している。
「どう?授業の方は?」
「研究室の人に習いながら、初等部、中等部程度なら、理解が出来るようになりました」
「そうか、まだまだだね。まぁ、焦らずにね」
「はい」
「そうだ、そろそろペアを組む時期だ。ジムは誰かペアを組めそうな人は出来たかな?」
「ペア?何のためのですか?」
「初級迷宮を潜るための仲間だよ」
「ソロじゃダメなんですか?」
「ダメってことはないけど、仲間は大切だよ」
「僕はソロでも仲間がいますけど…」
僕の言葉に怪訝な顔つきになるサーゼクスさん。
「まさか…まさかと思うけど、もう主僕契約をしているのかな?」
「しています」
ジムの言葉に驚くサーゼクス。
「誰と主僕契約を結んだんだ?」
「大天使ガブリエル、魔王レヴィアタン、龍神王オーフィスの三名です」
僕は正直に答えた。その結果、蒼白な顔になるサーゼクスさん。
「そ、それって…おいおい。伝説級の契約相手だよ。その三体とも…」
声が震えてきているサーゼクスさん。どうしたんだ?
「伝説級って?」
意味が分からない僕は、平然と質問をした。
「伝説級って言うのは…書物には書かれていたけど、その存在が明らかになっていない者達のことだ」
「ふ~ん、そうなんだ」
「無学は、時に脅威になるんだなぁ」
「僕って脅威なの?」
「そうなるなぁ…明日、僕の研究室で、君のステータスを測ろう。いや、測らせてください」
なんか、大発見をしたような表情のサーゼクスさん。価値が解らない僕は唖然としながら、頷いた。
◇
翌日、授業は休んで、サーゼクスの研究室で、検査をする装置であれこれ、検査されることになった。
「あっ、本当だ。3体も契約結んでいる…ステータスは測定不能…レベルは測定不能…ジョブはヒーラー…」
「ソーナ学長、彼の扱いはどうしますか?」
ソーナ学長というのは、この学園のトップだそうだ。
「どうするって…伝説級3体と契約かぁ。さすが、サーゼクスさんが見込んで、推薦した人物ですね。とりあえず、ヒーラーとしてサポーター扱いにして、ジム君が学びたいジョブを学んでいって欲しいかな。本来はジョブは、大学に入ってから学ぶんだけどね。君は特別だよ」
「がんばります」
みんなの期待に応えたい、特にサーゼクスさんの期待に…
「まず、剣や刀を極めたいです」
「それだと、まず侍か、剣士だな」
「刀を二振り持っていますので、侍を極めたいです」
翌日から、授業の終わった後の放課後に、侍のギルドで学ぶことになった。ジョブギルドで終了証書を貰えると、そのジョブを履歴に書き込めるようになるそうだ。