---ジム---
ランスロットとモルドレッドは、愛を身体で分かち合っているようだ。モルドレッドの艶めかしい声と、肉と肉とがぶつかり合う音がしている。
「あいつら、ヒマさえあれば、アレだもんな」
クリムトが少し呆れて、笑いながら言う。まぁ、主君を裏切っての駆け落ちだものな。今夜、討たれたら、明日は出来ない。出来る時にするのが良いと思う。
風向きが変わり、追っ手の気配を感じた。
「クリムト、二人を連れて逃げろ。僕が時間稼ぎをする」
「一人で、大丈夫か?」
「ヤバくなったら、逃げるよ」
僕は笑いながら、扉に向かった。そして…
◇
瞼を開くと馬車の中だった。寝入ってしまい、夢を見ていたようだ。ここは、サーゼクスの旅団の馬車の中だ。蒼き平原への遠征へと向かっていた。
僕が『知恵の泉』を開くと、目次に『ランスロット』『モルドレッド』『クリムト』の項目が出来ていた。さっそく彼らについて、調べる事にした。
『ランスロット…アーサー王の円卓の騎士の一人だったが、アーサー王の娘と駆け落ちして、娘との婚姻を見届けた司祭と共に処分された』
『モルドレッド…アーサー王と愛人との間に生まれた娘。アーサー王の片腕であるランスロットと駆け落ちして、処分された』
『クリムト…大魔導師にして司祭でもあったが、相棒と共に傭兵をしていた際に、アーサー王の刺客に処分された』
と、記されていた。
僕は傭兵でクリムトの相棒だったのだろうか?相棒についての記述はまったくない。まだ、知るべき時では無いってことなのかな?
「おい、ジム。着いたぞ」
サーゼクスの声が聞こえたので、馬車の外に出た。そこは平原ではなかった。そこら中がえぐれた荒れ地だった。
「平原?」
率直な疑問を口にした。
「昔は平原だったみたいだが、ここで戦闘があって、このような地形になったらしい」
サーゼクス達と一緒に、めぼしい箇所がないか、地表の探索をし始めた。
「無いなぁ。ジム、廃墟迷宮の入り口らしき物はあるかい?」
サーゼクスに訊かれた。
「今の所はないです」
目を凝らして地面を見ていく。無いなぁ…あっ?!なんだろう。地面の色が違う箇所がある。直ぐに、サーゼクスを呼んだ。
「何かがあったみたいだなぁ。地下への入り口は無いかな?」
地面の色が違う部分を、皆で掘り始めた。
「おかしいなぁ?埋め戻したみたいだ」
サーゼクスが、他のメンバーに指示を出して付近を捜索していた。しかし、10mほど掘り下げてみたものの、何も出てこなかった。
僕とサーゼクスで穴の底に降りた。
「なんだろう?これ」
僕は気になった箇所を指差した。サーゼクスは羽箒のような物で、僕の気になった箇所の土を退けていく。
「うん?何かの紋章が描かれているな。なんの紋章だ?獅子かな?」
ごく自然に、僕は口らしき物に手を入れて、手前に引いてから、上に上げた。すると、穴が出現したのであった。
「おぉ、ジム。すごいぞ。良く見つけてくれたな」
サーゼクスは歓喜の声を上げ、満面の笑みを浮かべた。探検用の装備を穴の底に降ろし、穴の中に入る準備をしていく。僕も、蒼き鎧を着用して、ドラゴンスレイヤーを手にした。
「ジム、その鎧は?」
「先日の旧校舎の迷宮で見つけました」
「蒼き鎧かぁ…まるで、伝承の竜騎士ジークみたいだなぁ」
ジーク?それがクリムトの相棒なのか?では、僕は?
穴の探索メンバーが決まった。サーゼクスと僕、リアス、後、学者の人達だ。
「さぁ、中に入るぞ」
サーゼクスを先頭に僕が続き、一番後ろをリアスが務める。道は一本道のようだった。少し進むと、丁字路に出た、これって、あそこと同じ構造なのだろうか?
「左から行きましょう、サーゼクスさん」
僕は意見を出した。
「わかった。廃墟迷宮の一人者であるジムの言う通りにしよう」
サーゼクスは左に向かい歩いて行くと、しばらくすると行き止まりになった。僕は右側の壁を調べる。穴はないみたいだ。叩いてみると、空洞があるような音がした。
「ここに、空洞があります」
サーゼクスは、持っている槍の持ち手の部分で突くと、壁が割れ落ちて、穴が出現した。
「中は真っ暗だな…灯りをもっとくれ」
と、地上部隊に無線で要請をした。しばらく待つと、ガード部隊に守られたサポーター(荷物運びの人)がランプを大量に持って来た。サーゼクスは、1つ手に取り、足元に置いていく。2歩ほど歩くと、また置いて行き、新たに出現した空間に灯りを、もたらしていった。
充分な明るさを得ると、部屋の構造が見えて来た。そこは四角い部屋のようだった。それも、人工的に作られたようだ。
「武器庫だったのかな?朽ちているが、剣とか槍、弓のような物が、有るなぁ」
部屋の左側には朽ちた遺物が多数散見出来た。部屋の右側には樽のような物が壊れている。
「これは、火薬か?しかし、火薬を使うような武器は無いなぁ、ここには」
僕とサーゼクスを含む先遣隊は、この場を後にした。次の探索場所に向かう為にだ。ここは第2陣のチームが引き次いで調べるようだ。
次は先程の丁字路まで戻り、行き止まり部分を調べる。叩いてみるが、先程のような空洞が有る音では無かった。確か、ここは木製だったよな…地面を調べると、木くずらしきものがいっぱい落ちている。朽ちているけど、これは木くずだ。僕は、目の前の壁を、手にしている剣で、斬ってみた。すると、木っ端微塵に砕けて、石が段組みされている壁が出現した。2重壁だったのかぁ。
すると、今度はサーゼクスが段組みされた石を調べ始めた。小さな石を1つ取り除くと、石は崩れていき、穴が出現した。新たに出現した穴を、僕達は先に進む。先に進んだのだが、行き止まりだった。階段らしき物は無かった。ふと、天を仰ぐと…青空が見えた。
「サーゼクスさん、上だ!」
「上かぁ、はしごを持ってこい!」
サポーターの人達に命じた。が、洞窟の奥であるここには、長いはしごは持ち込めなかった。気が付くと、僕は壁をよじ登り始めた。身体が勝手に、こうするべきだと言わんばかりに、身体が動いている。
「ジム、気を付けろよ!」
下の方からサーゼクスの声がした。がむしゃらに昇っていき、木造の部屋に出た。僕は背負っていた縄ばしごを、下へと降ろし、部屋を見回す渡した。そこは、あの時の風景と同じだった。ただ違うのは、ミイラが無かったことかな。
部屋を歩き回っていると、後ろから誰かに抱きつかれた。サーゼクス?いや、もっと柔らかい胸の人?女の人?リアス?僕は後ろを振り向くと、知らない場所にいた。
森の中…湖があり、その畔に僕は立っていた。目の前には、どこか懐かしい顔の女性が立っていた。
「お帰りなさい。今日は遅かったわね、マックス」
彼女は僕に抱きついた。いつの間に、二人は全裸になっていて、愛を肉体で確かめ合っていた。彼女の口が僕の口を塞ぎ、甘い香りが鼻をくすぐる。彼女の胸が愛おしそうに、僕の胸板を抱き締めている。
「もっと、あなたの愛をください」
僕は激しく腰を動かしている。その動きと合わせて、彼女の艶めかしい声が聞こえてくる。
「一緒に果てましょうよ、ねぇ、マックス」
僕の耳元で囁いている彼女。そそり立ち始めた彼女の乳首が、僕の胸にリズミカルに触れていく。
僕は…彼女を護れたのだろうか…
◇
「ジム…ジム、大丈夫?」
僕は、リアスの膝の上に頭をのせて、横になっていた。
「無理して昇って、疲れたみたいね」
そこにはあの女性はいない。僕は全裸でも無い。あれは…夢なのか?
「僕は…どうして、横になっているの?」
「縄ばしごを固定した、石の辺りに倒れていたのよ。心配したわ。でも、良かったわ、意識が戻ってね」
「ジム!よくやってくれた。ここが、伝承にあった祠のようだ。書物も朽ちきっていない物があるので、研究に使えそうだよ」
サーゼクスの喜ぶ声が聞こえた。あの夢で見た女性は誰なんだろう?僕は何から彼女を護っていたのだろうか?
「サーゼクス、丁字路の右は調査したの?」
「まだだ。明日、調査しよう」
外に出ると平原とは言いがたい、草っ原に出た。侵入をし始めた穴を、見下ろせる高台、崖の上に祠はあったようだ。湖がないか見渡してみるが、見当たらない。ここではないのか。
『知識の泉』を開いて、目次を見るが、今のところ新しい項目は、無いようであった。