※この作品はR-18です。

アルフガン   作:もっち~!

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蛇の道

 

 

---ジム---

 

風化の境目で引き返してきた。あれ以上先に行くと、戻れない予感がしたから。進むかどうかを考える。

 

一人で考えてみても、結論は出なかった。そこで、『迷宮亭』に行き、ロックに相談をしてみた。

 

「それは、難しい問題だな。たぶん、ジムの話を聞く限り、お前の予想通り、神の杖の先端に着きそうだな」

 

そうなるかぁ…

 

「俺は90フロアまでしか、経験が無いが、神の杖の中心部分には、不可解な柱があるんだ。もしかしたら、100フロアへ行く正解ルートかもしれないぞ」

 

あの先端にエレベータのような物があり、100フロアまで運んでくれるって感じの推理を披露してくれた。

 

「そうだとすると、神の杖というダンジョンの役割は?」

 

「地上に住む者に対する試練か?」

 

「それにしては、あの螺旋廊下は無防備すぎる。僕以外に探検した者がいないっていうのも」

 

あの螺旋廊下に関する情報は皆無だった。そもそも、どうやってつくったのだろうか?わざわざ床材を持ち込んで、敷き詰めた理由がわからない。

 

「そうなると、100フロアからの脱出ルートかもな。降りてきた者を見たことがないのは、出口が別にあり、街から出て行った可能性はある。入り口は街の外れにあるんだろ?」

 

「あぁ、それは有るかもな。100フロアに到達したら、街の者に情報を漏らさないように街から出ろとか…あぁ、そういうことは有りますね」

 

「逆ルートからは攻略できないはずだ。試練を受けない者が良い思いは出来ないと思う。ジム、確かめて来いよ」

 

って、あの先を探検することを、勧められた。

 

「わかった。行ってみるよ。もしかしら、100フロア到達者に逢えるかもしれないし」

 

僕は『迷宮亭』を後にした。家に戻り、自分の得物を研ぎ直す。万全の体制で行こうと思う。回転半径は短くなっているので、先端まではもう少しだと思うので、3日分の食料を持っていくことにした。

 

蒼い鎧を取り出して、磨いていく。劣化部分がないかをチェックしながら。

 

そして、充分な睡眠を取るために、少し早いが寝る。

 

◇

 

夢を見た。

 

神様が桃源郷で愉しんでいる。喘ぎ声が響く桃源郷。女性は皆、全裸で神様と交わり、神様の体液を舐めている。

 

不思議なことに、男性の姿は、神様以外見当たらない。

 

鎧や剣などが置かれていて、神様が手に取り、箱に詰めて階下に投げ捨てている。何でそんなことをしているのか?この者は本当に神様なのだろうか?

 

桃源郷には湖があった。その湖からヴィヴィアンの声が聞こえてくる。

 

『早く来て…ジム…』

 

そこで、目が覚めた。

 

◇

 

ヴィヴィアンって誰だ?なんで、あの声を、ヴィヴィアンっていう者の声って、何で分かったんだ、僕は…

 

目が覚めて、呆然としている僕。過去の記憶が思い出せないのは、何か理由があるのだろうか?思い出せない記憶の中で、ヴィヴィアンという者と出逢っているのか?

 

ねぇ、どう思う、ブルーム?

 

え…ブルームって誰だ?なんで、僕は知らない者に意見を訊いたんだ?記憶が混濁としている。僕は一体…何者なんだ?

 

◇

 

鎧を装備して、刀2振りを腰に差し、剣を1本、背中に背負った。そして、食料などがはいったバックパックも背負う。この街に来た時の恰好になった。僕はどうして、こんな恰好でこの街に来たんだ?街に入る前のモンスターとの戦闘以前の記憶が、まるで無いない。

 

自分自身に疑心暗鬼を生じさせながら、あの洞窟に向かった。洞窟の前にはフル装備のロックが待っていた。

 

「俺も行く。ジムを一人で、行かせられないからな」

 

っと、笑顔で僕を見つめている。

 

「店はいいのか?」

 

「たまには休業もいいんじゃないかな。あの後、色々訊き込んだのだが、この街には、蛇の道という迷宮があったらしい。もしかすると、それなんじゃないかな?」

 

蛇の道?確かに蛇がとぐろを巻いているような構造ではある。僕達は洞窟に入り、廃墟迷宮、蛇の道へ侵入した。

 

「確かに、この時点では廃墟だな。壁も床も風化しているし、モンスターの気配がない」

 

ロックが第一印象を語った。

 

「この先、ずっと通路だけだ、分かれ道も、隠し部屋も無く、淡々と神の杖の先端を目指しているようだ」

 

僕は、これまでの情報を伝えた。

 

「奇妙な迷宮だな。いや、迷宮と言って良いのかな?」

 

そう、迷宮というより、通路だ。でも、こんな場所に通路って…誰の為?何の為?

 

淡々と風化の境目まで歩く僕達、そして、風化の境目に到達した。その風景にロックは目を奪われていた。

 

「おい、ジム…この床材って、高級な石じゃないか…」

 

そう、持ち帰れれば、高値で売れるが…重くて持ち上がらない。どうやって、敷き詰めたんだ?ロックも持ち上げようとするが、持ち上がらない。

 

「確かに妙だな。どうやって敷き詰めたんだ?あっ…」

 

何かに気づいたロック。

 

「この床材…神の杖のセーフティーフロアに、敷かれているのと同じだ。そのなると、ここも神が創ったのか?」

 

そうなのか…そうなると、ロックの推理通り、100フロアからの脱出ルートの可能性はあるな。セーフティーフロアと同じ…魔物除けの効果が有るのだろうか?そんなことを考えながら、壁に刻まれた絵や文字を見ながら進む。

 

「どこかで見た気がする文字なんだけど…」

 

僕の独り言を聞いたロックが、

 

「90フロアに刻まれていた文字に似ている。ジムはどこで見たんだ?神の杖に入ったことは無いんだろう?」

 

無い…僕はロックに僕の秘密を告白した。

 

「この街に来るまでの記憶が無いのか?なんで?う~…」

 

僕の鎧を見て、固まるロック。

 

「なぁ、ジム。蒼い龍と湖の精霊っていう昔話を知っているか?」

 

「知らないよ。僕は本を読まないから」

 

「本ではなくて、親から子へ口伝で伝わっている童話みたいな物だ。だから、正しくは伝わっていない可能性もあるんだけど」

 

「どういう話?」

 

「昔、蒼い龍がいて、英雄の手で倒されたんだ。でも、湖の精霊が龍のことを憐れに思い、鎧にしてあげたって感じの話だ。いや、お前の鎧を見て、ふと、この話を思い出したんだよ」

 

「この鎧をどこで、手に入れたかを思い出せないんだよ」

 

「そうか…なんか、寒くないか?」

 

ロックが寒さを感じ始めた。確かに多少の風が生じていた。なんで通路の奥で風なんかが生じているんだ?

 

半径が10mくらいになってきた時、目の前に門が現れた。門から冷気が漂っている。

 

「これが寒さの原因みたいだ」

 

「あぁ」

 

ロックは頷いた。何かしらの恐怖を抱いているようだ。

 

「開けてもいいかな?」

 

「…」

 

ロックは無言だ。彼の方を見ると、彼は分解されていた。彼の身体は光の粒子で構成されているようで、その粒子の1粒1粒が徐々に上に昇り、地上を目指して通路を戻っていく。

 

「ロック…どうしたんだ?」

 

僕は叫んだ。

 

「思い出したしたよ。俺はとうに死んでいたんだ。そう、100フロアに着いて…アイツに殺されたんだ。ジム…頼む…狂気…倒して…く…」

 

ロックは完全にこの場から消えた。100フロアで何があったんだ?100フロアに何がいたんだ?リース達が向かっているんだぞ…おい!

 

リース達のことが心配になり、僕は目の前の門を開いた。

 

◇

 

そこには何者かがいた。

 

「やっと、解放してもらえそうだな」

 

その者が口を開いた。

 

「誰だ?お前は?」

 

僕は、その者がいるエリアに足を踏み入れて、その者に問うた。その瞬間、脳裏に記憶がフラッシュバックしていく。血塗られた湖の惨劇…蒼い龍…彼に寄り添う女性…

 

「ブラーム…逢えた…やっと、逢えた」

 

目の前の者…ヴィヴィアンが涙を流しながら、僕に抱きついてきた。

 

「ヴィヴィアン…なんでこんな事に?」

 

「あなたの連れの方…私を拘束する冷気で作られた氷…あれが真実を映す鏡になって、真実を告げてしまった。ごめんないさい…」

 

湖の精霊のヴィヴィアンを捕らえた者は、ヴィヴィアンを氷らせて拘束していたようだ。

 

「ロックは?」

 

「死んでいたことを思い出して、天に昇っていったわよ」

 

「死んでいた?」

 

「そう、神の杖の100フロアに達した男達は殺し合いをさせられて、生き残った者だけが、街で同じ人物として転生されるの。90フロア到達者としてね」

 

「なんで?」

 

「より強い女性を100フロアに送り込むための情報屋として」

 

「どうして、ヴィヴィアンはここに?」

 

「真実を映す私の能力は、ここの統括者にはジャマだったっから」

 

「殺さずに幽閉って?」

 

「ここの統括者には、女性が殺せないのよ」

 

それって…

 

「100フロアに到達した女性の冒険者は?」

 

「統括者の性の奴隷…死ぬまで…そして、何度も女性冒険者として転生し、同じ運命を辿るのよ」

 

なんてことだよ…リース達が向かっているんだぞ。

 

「ジム、この世界を変えましょう」

 

「でも、ブルームもグリームも見つけていないし」

 

「100フロアに行けば逢える…そんな予感がする」

 

それって、おい…

 

「ここから100フロアに行けないの?」

 

「行けない。神の杖は、私を封印するための物だから。でも、ここは私の湖があった場所なのよ♪」

 

それって…僕の鎧から力を感じる。蒼い龍が覚醒したようだ。背中に背負っていた剣が、僕の手に握られていた。これを使えってことかな?

 

「封印を解いたようね、ブラーム。ここは土なのよ。あなたには分かるでしょ」

 

記憶が戻った今、僕に何が出来るかが分かる。ヴィヴィアンのいたエリアに、上から突き出た土の針のような物。僕はその先端に指を当て念じる。

 

『崩れろ』

 

頭上から地響きが聞こえた。何かが崩れる音だ。

 

「さぁ、行きましょう」

 

僕とヴィヴィアンは地上に転移した。

 

◇

 

地上では、神の杖が崩れて、たぶん、90フロアが地面に接しているような高さになっていた。

 

塔から投げ出された者達は、塔が崩れた時に出来た土山がクッションとなり、死んだ者はいないようだった。ロックと同じ様な者達は、光の粒子となり昇華しているのか、空を見上げるとキラキラしていた。

 

「神の杖から解放された生者は生き残り、死者は昇華されたわ。89フロアまではね。90フロアから上は、土で出来ていないから、あのように残っているけど」

 

神の杖が崩れたというのに、街の人々は意に返していない。

 

「地上にいる者には、神の杖の存在が記憶に残っていないのだろうね」

 

ヴィヴィアンがよく分からない説明をしてくれた。

 

「どういう意味?」

 

「神の杖…桃源郷を夢見た神のイタズラよ。私が解放されて、真実が見えるようになり、神の杖などという幻は、人々の記憶の中から消えたのよ。実際にあんなに大きい物を作ったら、天界にバレて、処罰対象になるもの」

 

あぁ、真実が見えないように、ヴィヴィアンを監禁というか封印をしていたのか。生き残った人々、女性ばかりだけど、そこにはリース達の姿を見つけられなかった。

 

「最近は入った時点で、男性達に殺し合いをさせていたのかしら?男性の姿が無いわね」

 

まぁ、男が一人だったら、モテるよな…

 

僕とヴィヴィアンは、残った神の杖に潜入した。無傷の90フロアは、街としての機能が生きていた。何事も無かったように、人々が生活をしていた。ここはヴィヴィアンの真実を見せる力が及ばないのか、男性の姿も見える。

 

街で訊き込みをすると、リース達はすでに91フロアに踏み入れたようだった。遅かった…

 

「ブラーム、ブルームとグリームは記憶が戻れば、浄化されるわ。妖精なんだから」

 

身体が清められても、いたぶられた記憶が…いや、そもそもリースはブルーム達なのか?

 

「私達も100フロアを目指すわよ」

 

僕とヴィヴィアンは91フロアを目指して、歩き出した。

 

 

 

 

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