---亜衣---
そして、第5の街、ファーブに着いた。お兄ちゃんは、ヴィヴィから土地をプレゼントされた。そして、お姉ちゃんとお兄ちゃんは結婚を…そして、私も…いいの?お兄ちゃん…
結婚初夜…お兄ちゃんはお姉ちゃんでなくて、私を相手に選んでくれた。あぁ、VR内でって、言われていたものなぁ…
「アイズ、おいで」
お兄ちゃんに手を引かれ、別室に二人で入る。私は目を瞑り、お兄ちゃんを待った。お兄ちゃんは私を優しく抱きしめて、抱き抱え、ベッドへと運ぶ。VRなのに、お兄ちゃんの温もりが私の肌に伝わってきた。
私の服を脱がし、お兄ちゃんも脱いでいく。全裸になり肌を合わせる私達…とても気持ちが良い…Aアダプタのデモモードとは違い、吸い付くような感覚…肌は融合して1枚の肌を挟んで、私とお兄ちゃんがいる、そんな感覚になっていく。
お兄ちゃんの口が私の全身を吸い、舐めて行く。そして…
「あっ…いい…もっと…あぅ…いいよ…あぁ…いい…奥も…はぁ~いいよ…」
アイズから喘ぎ声が漏れる。リアルの私の口からも漏れているのだろうか。あそこの湿り具合が自分で分かる程になってきている。洪水ってこういう感覚なのかな?
「いいかな?」
お兄ちゃんが私に確認をしてきた。いよいよなんだね。私は無言で軽く頷いた。
「あっ…痛っ…いいよ、もっと奥まで…そう…突いて…もっと…」
一瞬の激痛の後、お兄ちゃんの肉棒が、私の身体を突いている感覚が、伝わってくる。肉と肉とがぶつかり合う音、リズミカルに聞こえる。
そして、意識が真っ白になっていった。
---フーマ---
広間に戻ると、みんな集まっていた。いよいよだ。
「もう、お別れはいいのか?」
ファントムさんが訊いて来た。
「絶頂に誘えましたから…」
亜衣と、VRとはいえ、初めて交わった。別れを惜しむように、全身を堪能してきた。
「では、始めようか」
ファントムさんが、偽装解除の儀式を始めた。アイツを神の杖に閉じ込める為、僕達が記憶を取り戻したことをバレ無い為、そして、ビッグゲストのサプライズの為、偽装していたのだ。
ヴィヴィさんは、湖の精霊ヴィヴィアンに…アプロさんは、女神アプロに…レヴィアタンさんは魔王レヴィアタンに…ガブリエルさんは大天使ガブリエルに…マヤさんは魔法使いのマヤに…ドライグさんは僕の蒼い鎧に…ライカさんは僕の刀に…お姉ちゃんはブルームに…バサ姉さんはグリームに…そして、僕はブラームことブラウンに…それぞれ、元の姿に戻っていく。
グリームが正体を晒したことで、僕達の上に呪いの術式が現れた。
「あぁ、簡単な術式だ。今、解除をする」
僕達の前に、団長が現れて、僕、グリーム、ブルームにかかっていた呪いを解除してくれた。
「これで、もう時空を彷徨うことはない。ヤマト、転送を準備してくれ」
この世界の外に待機している仲間に命令を下す、僕達の団長である鬼。
「ファントム、ヤマトとリンクしてくれ。ファルコン、転移後すぐに僕と二人で盾になるんだぞ」
「「了解!」」
「ヴィヴィアン、真実の鏡を転移後、発現をしてくれ」
「わかりました」
「マヤ、三人に防御結界を」
「はぁ~い♪」
「ブラーム、グリーム、ブルームよ。神を名乗るアホを叩き潰してやる♪ふふふ」
団長が楽しそうだ。これで漸く、僕達3人の悪夢は消え、一緒に同じ時を刻める。
---ブラウン---
神の杖の100フロアに戻って来た。室内に肉と肉とか、ぶつかりあう音がしている。室内の至る所に、全裸の女性達が倒れていた。ある者は股間から真っ二つにされ、ある者は子宮が引き摺り出され、ある者は下顎が無かったり…凄惨な状況である。
ヴィヴィアンの発現した真実の鏡により、神と名乗る者の真実の姿が現れた。
「何だよ、神って肥満体の悪魔かよ~」
団長の声で、神と名乗る者が、僕達に気づいた。
「はぁ?孤独の世界に飛ばしたのに…何で勢揃いしてやがるんだ?」
ヤツの股間にはリースが刺さっていた。前の穴と後ろの穴が繋がり、一つの穴になっていて、そこにヤツのイチモツが刺さっていた。ヤツは、リースを引き抜き、後方へ投げ捨てた。頭から落ちて頭部がつぶれていくリース…あぁ、なんてことを…
「もう一度、孤独な世界へ行って来い!」
怪しげな術が放たれてきたが、前衛の団長とファルコンさんが斬り捨てた。
「なんだって!効かないのか?貴様ら、何者だ?」
「ファントムドラグーン団長、『神殺し』シュウ・ヨハネ・鬼門」
「同じくファントムドラグーン親衛隊隊長『神殺し』ファルコン」
「ファントムドラグーン電脳部隊『精霊王』ファントム」
「はぁ?」
神と名乗っていた悪魔の表情が歪んでいく。
「なぁ、神がこんなマネして、ただで済むと思っていたのか?」
団長であるシュウさんが、悪魔に詰め寄る。
「女性達に、天へと昇る愉しみを与えていたのだよ」
「クソやろ~!」
シュウさんのパンチが悪魔の腹部に刺さり、拳は背中を突き破って現れた。
「痛ぇ~、何しやがる…」
「はぁ?悪魔でも痛みが有るのか?」
「俺は悪魔では無い、神だぞ!」
あくまで神と言い張る悪魔。
「おい、神族が悪さをして、地に落とされると悪魔になるんだよ♪」
「はぁ?神でもないヤツに言われたかねぇ~よ!」
「なぁ、僕の配下の者達を、よくも遊び倒してくれたな」
ファントムさんの背後に七つの玉が現れて、そこから7色の光線が悪魔に放たれていく。
「痛っ…えっ?」
顔面の半分が消し飛んだ悪魔。自分で痛い箇所を触り、あるはずの物が無いことに気がついたようだ。
「おい、待て!話をしようぜ」
形勢が悪いと見るや、愛想笑いを浮かべて、媚びを売るような言い方になってきた悪魔。
「はぁ?僕達は神族が嫌いなんだよ。だから『神殺し』なんだよ。ふふふ」
「ちょっと…待ってくれ~!女の半分はやる。それで手を打たないか?」
シュウさんとファルコンさんが、それぞれ剣を一振りすると、悪魔の両腕が切断された。
「なんだ…お前ら…なんの権限で…」
「神は闇の魔法は使えない。ブラウン達に掛けた『孤独への旅立ち』って闇属性だよな」
「俺は掛けていない…」
この期に及んで否定する悪魔。
「あぁ、正確な情報をくれてやる。悪魔も闇属性は使えないんだよ。使えるのは魔物、化け物の類いだよ♪」
「なんで、そんなことを言えるんだ?」
後ずさりし始めた悪魔。いや、悪魔でもないのか?
「ブラウン、そうだよ。こいつは悪魔ですら無い。たんなる魔物だ。そうだ、魔物君に答えないとダメだな。僕が化け物だからだよ♪」
シュウさんが本来の姿に変貌した。その姿に驚愕して、腰を抜かした魔物。金色の鬼…背中には純白の翼を展開し、頭上に光輪が3つ浮かんでいる。
「魔物風情が化け物に勝てると思うなよ。闇の世界で一人で生きてみろよ」
シュウさんが指を鳴らすと、ヤツは闇の沼に沈んでいった。
「なぁ、助けてくれよ~」
闇属性では無い者が、闇の沼に嵌まると、無に還る。闇属性の魔術を使える者であっても、闇属性持ちは少ない。悪魔と誤認したコイツは、魔属性なのだろう。
「助ける価値は無い。女性を大切に扱わないヤツは、クソくらいだ!」
闇の沼から、闇の腕が生えてきて、ヤツを掴み、沼へと引き摺り込んでいく。そして、ヤツを完全に飲み込むと、闇の沼は消えた。
「終わったかな?ファントム、どうだ?」
「安定しています。で、この部屋はどう模様替えしますか?」
「酒池肉林とか…って、僕、お酒飲めないけどね、ははは。まぁ、ここに管制ルームを置いて、蘇生センターの制御を出来るようにしてくれ。あとは、僕専用のプレイルームも欲しいかな」
「団長らしい発想だ。では、殺された者達は甦らせて、この世界で暮らしてもらいますか」
ファントムさんが、窓をいくつか開いて、何かを編集していく。
「じゃ、僕は蘇生担当だな。まず、この部屋を浄化しよう。ブラウン達も手伝ってくれよ」
こうして僕達の長い時空の旅は終わり、もう出逢う度に別れを経験しなくても、良くなった。直属の上司であるファントムさんの元に戻れたし。チームファントムは今後、このアルフガンという世界に常駐して、維持管理をしていくそうだ。
A面と呼ばれる仮想世界で、VRMMO『アルフガン』というゲームがあり、こことほぼ同じマップにしてあるらしい。
「浄化が終わったら、A面のアルフガンと同じマップにする。その方は移住者が戸惑うことが少ないだろう。ファントム、通常は神の杖の入口からここまで来られるようにする。ただ、鍛錬場所として、地下も作る。マップを出しておけよ」
「了解です。団長」
当分の間、ファントムさんは団長に、こき使われるらしい。作戦ミスというか、団長に報告せずに、チームファントムだけで、案件をこなそうとして、失敗した責任に対する罰らしい…
---亜衣---
目が覚めると、ログアウトしていた。窓を見ると、朝日が差し込んできている。お兄ちゃんに逢いたい…そう思い、お兄ちゃんの部屋に向かった。
しかし、そこには階段が無かった。部屋の入り口も、窓も無かった。なんで?お姉ちゃんに訊こう…お姉ちゃんの部屋に向かった。
でも、そこは物置であった。なんで?どういうこと?ゲームにインをすれば…インをすると、お兄ちゃんの家で目覚めた…はずだったのだが、所有者は私、アイズになっていた。どういうこと?家の中を探す。しかし、誰もいない。いた形跡も無い。
呆然とする私。
そうだ、隣にファントムの家が…外に出て隣を見るが、そこには家が無かった。なんで?どうして?ギルドリストを見ると、『トリックスター』に在籍している私。ギルド検索で『エフ騎士団』を探すが、見付からなかった。なんで?どうして?混乱という底なし沼に嵌まった気分だ。
ログアウトをして、リビングに向かう。そこには、お父さんと、お母さんがいた。
「ねぇ、お兄ちゃんとお姉ちゃんは?」
怪訝な顔をする両親。
「出て行ったの?」
「亜衣、大丈夫か?お前は一人っ子だぞ。夢でも見たのか?」
え?なんで?どうして?昨日までいたでしょ?自分の部屋に戻り、もう一度、ログインをした。そして、昨晩、お兄ちゃんと過ごした部屋へと向かう。
二人で過ごしたベッドに腰掛ける。ベッドはまだ湿り気を帯びていた。ここで、したのは確かだ。なのに、お兄ちゃんはどこに?考え込んでいた私の脳へ直接、
『僕達は、いつまでも、亜衣の心にいるよ♪』
って、お兄ちゃんの声がした気がした。
◇
10年後、私は大学を卒業して、就職をした。『アルフガン』を運営している会社であるイーグルテールにだ。10年経っても、まだクリアした者がいない、難攻不落なRPGとして、海外でも人気が根強い。様々な仕掛けがあり、プレイヤーに苦行を強いる、エス度の高いゲームだが、はまると抜けられない。
入社して仕事にも慣れてきたある日、資料を探しに来た会社の資料室で、とある写真を見つけた。そこにはヴィヴィ、ファルコン、ファントム、バサ姉、マヤ、ライカ、ドライグ、レヴィアタン、ガブリエルが写っていた。写真の余白には『チームアルファー』と記されていた。
何かに導かれるように、私はゲーム関連のアルバムを見ていく。アルバムには、スクリーンショットで、資料として色々なシーンがプリントアウトされていた。私の目は1枚のスクリーンショットに釘付けとなった…『良き仲間と』という表題で、フーマとリアスが…
笑顔の二人の間には、笑顔のアイズが写っていた…こんなシーンはなかったはずだけど。私の記憶には無い。笑顔で、三人で並んだ記憶は無い。これは何?
「亜衣ちゃん、どうしたの?」
私の帰りが遅いので、上司のあずささんが様子を見に来てくれたそうだ。
「このスクショ…私のゲームキャラが写っているんですけど、記憶に無いんです」
あずささんに、あのスクショを見せた。
「あぁ、これはB面のスクショだわ」
「B面?」
聞いた事のない単語。
「都市伝説なんだけど、B面に誘われた者は、B面の住人になってしまい、この世から消えるって」
突然あずささんが、寂しそうな表情になった。
「私が以前いた部署で、私以外のスタッフが全員、ある日突然消えてしまったの。そう…まるで神隠しにあったかのように。で、その部署でただ一人残った私が、責任者になって、今に至っているんだけど、そのスクショは、偶然撮影されたの。誰もいない場所だったんだけど…場所は神の杖の地下にある、真実の鏡の間でね。B面の真実を見せてくれる瞬間があるらしいんだけど、これも都市伝説とされているわ」
真実の鏡があると言われている真実の鏡の間。そこに行けば、逢えるのかな…私にとっての真実はそこにある気がする。そこへ行こうと思った私の脳裏に、
『待っているよ、亜衣♪』
って、お兄ちゃんの声が聞こえた気がした。