妖精の国の入り口には関所があった。そこで入国申請をして、初入国の者は、入国の為のパスを貰う様である。新規に始める人は少ないので、待ち行列は短かった。ここに、新機能投入の理由がある。あの機能で、新たな参加者を集めることが、目的らしい。なので、上層部は早く完成をさせたいようだ。しかし、なかなかフィーリングの調整が出来ない。まぁ、その辺りは上層部も理解しており、出資者達に説明をしているそうだ。
僕の番になり、申請書を門番に手渡した。申請書に目を通すと、
「おい、貴様がアース殿が探しておられるエフか?神妙にお縄につけ。おい、こいつを捕らえろ」
と、捕縛対象者になっていた。僕は、その場から逃げた。森に逃げ込み、転移魔法で、寝床にしていた穴に逃げ込んだ。転移魔法は、チート機能な為、人目のつく場所ではしないようにしていた。
【どうするんだよ。妖精の国に入れないぞ】
開発部にウィスパーで文句を伝えた。
【第2の街に向かってみて】
と、返信が来た。開発部はNPCの動きの制御ができないので、後手後手な対応になると言う。
【なんで、捕縛対象なんだよ】
【NPCの考えは分からない】
おい…
一旦、最初の街に戻り、次の街に向かうことにしたのだが、この街の近辺に、時間制のダンジョンがあることが判明した。そこを攻略しに向かうことに変更。拠点は、この穴だな。
また、当分ダンジョン住まいになりそうだった。
---ツヴァイ---
エフは妖精の国の関所で、捕縛されそうになり逃走したとの連絡があった。なんで、捕縛対象になったんだ?クィーンを倒したせいなのか?アースに真相を確かめるべく、ウィスパーを送った。
【なんで、エフが捕縛対象なんだ?】
【分からない。どうしてそうなったのか…ただ、客人として迎え入れるはずだったんだ】
困惑したようなアースの声が聞こえた。
【じゃぁ、どうして?】
【伝言ゲームの弊害で、どこかで言葉が、変化したのかもしれない】
クィーンの命令を伝言していくうちに、門番の元に届く頃には、「客人」が「捕縛」に変わったらしい。アースとのウィスパーを切り、ギルドメンバーに命令した。
【エフを見つけたら、何もしないで、俺に報告してくれ。これ以上、彼を追い込むなよ】
と。
---エフ---
リアルに晩飯を食べるために、ログアウトした。
「よぉ、お尋ね者!」
って、洋子に言われた。僕の行動を補佐する為に、僕のゲーム内での行動をモニタリングしていた。
「なんで、こうなるかな?はぁ…」
「つらいよね。街に入れないって」
今度は心配そうに言ってきた。
「つらくはないけど、つまらないというか。NPCと会話が出来ないぞ」
部屋を出て、社内食堂に二人で向かった。おぉ、今日のオススメは生姜焼き定食かぁ。定食をのせたお盆を持って、席に座り食べ始めた。うまい…ゲーム内では、干し肉をダシにしたスープと、野草サラダしか、最近食べていない。街に行けないので、パンを購入できないのだ。
「ヒロさん、ちょっといいですか?」
視線だけを声の主に移動して、定食を食べ進めている。コイツは運営チームのリーダーだっけかな?
「何?チートしすぎたかな?」
「ゲームの仕方に問題は無いです。あの状況では、良くこなされていると思います。そうでなくて、出資者の一人が、アレの機能を試したそうなんです。で、ヒロさんのというかエフさんのフレンドに強制登録をしました。その方と連絡を取って、ゲーム内でアレをしてください」
そういうと立ち去っていった。
「その出資者って女性よね?」
洋子が言った。いや男性とはしたくないぞ…そんなことしたら、このゲームを二度とプレイ出来ない気がするし。
食後、今日3回目のログインをした。
◇
インして、真っ先にフレンドリストをチェックした。新たに増えたのは、ミリーさんという方だ。相手がインしているのか判らないので、メッセージを飛ばした。
【インしたら連絡をください】
すると、すぐにウィスパーが飛んで来た。
【まさか、アルファーテスターがエフだったとは…】
驚かれている。まぁ、そうだろうな。お尋ね者だもの。
【どこにいますか?僕の居場所は言えません。お尋ね者なんでね】
【ファストの街にいるわ。この街の近辺のダンジョンにいるんでしょ?】
なんでそれを?それを知っているのは…
【まさか…ブルーカラーのメンバー?】
【ビンゴ。あぁ、お尋ね者の件だけど、あれは門番の誤解よ。クィーンはあなたを客人と迎えようとしていたそうよ】
誤解?クィーン?どこかで聞いた響き…あっ、あのラスボスって妖精の国の女王様なのか?殺しちゃったよ~
【女王様殺しの件で、お尋ね者になっているんじゃなくて?】
【クィーンは生きているわよ。だから、その件は心配しないで。で、どこに行けば会えるの?】
そうなのか、少し安心した。
【廃鉱のダンジョンの入り口に一人で来て下さい。他にいたら、この話はなかったことにしてください】
【わかったわ。一人で行くから】
ミリーさんとのウィスパーが切れた。
---ツヴァイ---
ギルドメンバーのミリーから連絡があった。エフと接が出来そうなので、単独行動するとの事だった。クィーン殺しで、お尋ね者になったと、思っていたようだった。ここはミリーにまかせて、保護してもらうことにしよう。
---エフ---
ミリーさんから、廃鉱の入り口に着いたと連絡があり、僕は迎えに行った。入り口には蒼のロングヘアーの魔法使いらしき人がいた。
「あなたがミリーさん?」
頷く彼女。彼女の手を引いて、隠れ家まで連れて行った。入り口の真下あたりに着いて、転移魔法で穴の中に移動した。
「え?転移魔法?チートでしょ?」
「チートな能力が無いと、この世界では生きられないんだよ。街に入れないんだから」
「そうだったわね…この後、私と街に行きましょう。貴方の身の安全は、ギルド・ブルーカラーが保障するから」
「ツヴァイ達もファストに集結しているのか?」
頷く彼女。そうか…ツヴァイに、また心配をかけさせちゃったなぁ。
「で、あの機能だけど」
ミリーさんが話を切り出した。
「ここでするよ。ベッドもあるし、結界も張ってあるし」
ベッドに近寄り、ベッドを確認し始めた彼女。その彼女を抱きかかえて、ベッドの上に横たえた。
「どうされたい?」
一応、ご希望は聞いておく。
「優しくしてねぇ」
僕は彼女に覆い被さり、口で口を責めつつ、片手で片耳を弄ぶ。
「あん…いい…フィードバックしているわ」
空いている片手で、服を脱がしていく。魔法使いなのでローブを上にまくり上げただけだけど。そして、撓わに実った乳房を、優しく弄り倒す。
「あぅ…いい感じだわ…そろそろ来て…」
これが問題だ。NPC相手では調整出来つつあったが、対プレイヤーではどうなるんだ?まぁ、取り敢えず差し込んでみる。
「あぅあぅ…」
瞬殺だった。もう果てていて、意識は無いみたいだ。
【運営、リアル体を確認して、失神しているかもしれない】
咄嗟にウィスパーを送った。そして、彼女の服を元に戻して、ベッドに寝かしつけて、コーヒーでの一服を始めた。
しばらくして、運営からウィスパーがあった。
【リアル体は保護した。失神していた。女性バージョンは危険だな】
【NPCの初めの時と同じか?】
【同じとも言えない。ヘルメットからのフィードバック信号の有無が違うからな】
これで当分、生身の女性でのテストは無理だろうな。何が起きるかわからないし。
【で、僕はどうすればいい?ミリーさんは寝たままってことだよね?】
【すまない。今日はアウトしてくれ。対策会議を開くので、参加を頼む】
と、開発部からウィスパーが届き、僕はミリーさんの隣に添い寝するように、眠りについた。
---ツヴァイ---
その後、ミリーから連絡は無かった。何か不測な事態が起きたのだろうか?ミリーとエフの二人にウィスパーを送るが、反応は無かった。どうしたんだ?
---エフ---
翌朝インした。彼女ももう少し経てば、インする予定なので、彼女をベッドから降ろして、ベッドの解体作業を始めた。
昨晩の対策会議は、当面NPCに対してだけのテストにするとなった。いや、最初からそうだっただろうと、僕は異議を申し立てた。出資者だからって、テストスケジュールを無視するのはどうかと思うと、文句を言った。一歩間違えれば、僕は加害者になっていたかもしれない。僕の行為で、彼女は失神したのは事実だから。
そんな怒りに狂い始めた僕に抱きつき、謝る女性がいた。ミリーさんのリアル体だった。
「ごめんなさい。私のわがままで、あなたに精神的な苦痛を与えてしまって…」
「もう少しデータが、取れてからにしてください。このゲームで死人を出したくないから」
彼女は、手当が早かったので、ダメージが少なかったようだ。彼女の救助に向かった女子社員の話では、白目を剥いて、泡を吹いていたそうだ。
ヴァーチャル体の受けた刺激が、リアル体にフィードバックする。この試みには賛成ではある。重度の食事制限のかかった病人などのストレス解消になると思うから。だから、安全と判断が出来るまで、生身でテストしちゃいけないんだ。僕は立案責任があるから、しょうがないけど…まぁ、シミュレーションの結果では、男性の場合、最悪なケースではインポになるくらいだ。女性のように失神することは無い。
◇
約束の時間を1時間オーバーして、ミリーさんが目覚めた。
「コーヒー、飲みますか?」
頷く彼女。コーヒーの入ったマグカップを手渡した。
「おいしい…ゲーム内で、コーヒーが飲めるとは思わなかった」
解体したベッドの部品をアイテムボックスにしまう僕。
「そのベッドって、組み立て式だったの?」
「だって、フィールドとギルドで寝たら、デッドするって言われて、ダンジョンに住むことにしてから、安眠する為に作りました」
しばらく間を置いてから、
「ねぇ、私をあなたのパーティーに入れてください。昨晩、私の救出指示を、失神直後にしてくれたんですよね。あなたは私の命の恩人。あなたの為に、役立ちたい」
と、ミリーさん。
「恩を感じなくて良いですよ。僕は、このプロジェクトが凍結されたら困るから、アルファーテストとは言え、死者は出したくないですからね」
ミリーさんとしばし見つめ合った。ウィスパーの着信音がするまで。ツヴァイからだった。
【エフ、大丈夫か?】
【ツヴァイ、心配をしてくれて、ありがとうな。これから、ミリーさんと街に戻ります。撤収作業に手間取っちゃって、遅くなってごめん】
【あぁ、そういうことか。わかった。待っているよ。ミリーから聞いたと思うけど、君の安全は俺達が保障する】
【ありがとう、ツヴァイ。これから、街に向かうよ】
ウィスパーは切れた。ミリーさんと床まで転移して、出口から出て、久しぶりの街に行った。
街は、エルと住んでいた時と変わらなかった。つい、二人で暮らしていた宿屋の部屋を見上げてしまった。
「あの部屋に住んでいたの?」
ミリーさんからの問いかけに頷く。そして、ツヴァイ達が泊まっている宿に着いた。ミリーさんの案内で、ツヴァイ達の部屋に入った。
そこには、アイツがいた。僕は咄嗟に妖刀二降りを抜き構えてアイツを睨んだ。
「おい、エフ。室内でそんなことをするな。アースは何もしないから、落ち着け!」
ミリーさんが背中越しに抱きついて、「お願い。落ち着いて」って僕に言い聞かせるように言った。僕は刀を鞘に戻した。
「相当こじれているな、お前ら」
ツヴァイが僕とアイツを交互に見ながら言った。
「なぁ、エフよ。アースはお前に何もしないぞ」
僕はアイツに視線を向けたまま、ツヴァイに答えた。
「知っている。でも、アイツの知り合いが、僕を何度も捕縛しようとした。なんで放っておいてくれないんだ?エルを手に入れるだけでは不満なのか?」
「なぁ…エルと会ってもらえないか?」
苦しそうな声でアイツが言った。
「はぁ?僕の部屋で、僕の目の前で抱き合い、キスをしていたのに?今更なんだよ!」
ツヴァイは目を丸くして、アイツの方を見た。
「おい、アース。今の話は聞いていないぞ。何もエフの部屋で、することはないだろうに」
「あぁ、その事は言い訳をしない。事実だから。でも、エルの顔を見たら…そうしたくなったのも事実だ」
「だったら、お前がエルと添い遂げろ。僕は僕の道を行く。もう、僕にかまうな!」
僕は、部屋から飛び出し、扉を閉めると直ぐに転移した。あの穴へ…
---ツヴァイ---
エフの怒りは、よくわかった。それは怒るよな。添い遂げようと思った女が、自分の部屋で元カレとそういうことをしていたら。
「アース。この件は、お前が悪い。俺はエフの肩を持つぞ。なんでエフの部屋で…お前ほどの男が…」
目の前のテーブルを両手で叩いてしまった。テーブルの上に置いてあったカップやコップが飛び跳ねて、飲み物がこぼれた。が、誰もそれを拭こうとしなかった。俺以外のメンバーもアースの事を睨んでいて、テーブルの上の惨劇に気づかなかったのだ。
「自分にとってのエルは、命の恩人であり、大事な友人であり、大切な人だ。だから、溜め込んでいた感情が、あの時、爆発したんだ。抑えきれない程にね」
アースは俯き気味に、ポツリポツリと話し初めた。
「エルは、アイツから別れを切り出された直後は、アイツの事を探したいと言っていたんだけど、時間が経つにつれて、たぶん気づいたんだと思う。アイツといると生き返った事実と共に、死んだ時のことが忘れられないって。それで、アイツのことを忘れるようにしたようなんだ」
おい、それでアースに乗り換えたのか?あのエルフは…
「エルの事は責めないで欲しい。僕が弱かったから、僕が護れなかったから、彼女が死んでしまったんだから…だから、責めるなら僕を責めてくれ」
俺は、アースを殴った。
「おい、エフは誰も責めたくないから、誰もいない場所で活動しているんじゃないのか?なぁ、アースよ。エフが言うように、そのエルフと添い遂げろよ。エフはそれを望んでいるんだと思う」
---エフ---
ダメだ。感情が表に出てしまう。もっと、感情を殺して活動しないとな。運営に近くで他のダンジョンが無いかを尋ねた。返事が来て、入るごとにマップが変化する、時間制限付きのダンジョンがあることが分かった。運営から座標点を訊きだし、そのダンジョンに向かった。
入り口から入りすぐに、床へ真空斬りを爆裂させて、床に穴を開ける。
「鬼畜、どうするんだ?」
オニキスが尋ねてきた。
「時間制限付きの不思議なダンジョン方式だから、穴をあけて最下層を目指す」
「さすがに、鬼畜プレイヤーね」
って、ラピスからお褒めの言葉をもらった。いや、ただ単に、思いっきり叩き込みたいだけとは言えない。そして、床にどこにもぶつけられない怒りをぶつけていく。
10階層目で、タイマーが止まった。ここが最下層かな?付近の情報を探るが、モンスターもプレイヤーもいない。そこは部屋みたいなエリアだった。奥に通じる通路が1つある。そこを奥へと向かっていった。
しばらくすると、部屋の真ん中に剣が刺さった部屋に出た。これの剣を抜くと貰えるのか?それとも、抜くと封印が解けて、魔物が出てくるのか?僕は答えを見つける為に部屋を調べ始めた。
---ツヴァイ---
エフとアースの仲を取り持つはずが…事実を知るとアースを殴っていた。エフが街を去った理由。よくわかるぞ。添い遂げようと思った相手が、自分の部屋で元カレを招き入れて、そんなことをしていた時のショック。エフ、良く耐えたと思う。
アースは非を認めている。それでも、エフは許さないだろうな。どうすれば、仲違いを解消できるのか。
そもそも、エフはこの世界で生きていて楽しいのだろうか?イベントにも参加せず、誰とも交流を持たずに。なんの為に、この世界にいるんだろうか?
「ねぇ、しばらく、単独行動をしてもよいかな?」
ミリーがそう言い出した。
「どうするんだ?」
「エフを探しに行こうと思う」
「魔法使いのミリー一人での捜索は認めない。カザミネとロナも連れて行け」
「連れて行けない…私だけでないとダメなの」
いつものミリーと表情が違う。どうしたんだ?
「理由を聞かせて貰えないか?」
「理由は言えない…それが理由よ」
こいつ、何かを知っているんだな。
「おい、アイツは何者なんだ?」
「言えない。どうしてもダメだっていうのなら、ギルドを脱退します」
「何を隠しているんだ?」
思い詰めた表情になったミリー。そして、ギルドから脱退をして、
「…お世話になりました」
ミリーは俺達に深々と頭を下げて、部屋を出て行ってしまった。すぐに、カザミネとロナに、ミリーの追跡を命令した。
---エフ--
刺さっている剣を中心に、うっすらと魔法陣が描かれていた。たぶん、この剣で何かを封印したのだろう。そこで、剣に対して、祈りを捧げた。
「封印のお役目、ご苦労様です。この世界は、おかげで平和です」
と。すると、轟音と共に奥の壁が開き、一降りの刀が置いてあった。手にして鑑定をすると、
妖刀草薙 ATK+75(ドラゴン相手の場合、ATKは10倍になる)
所謂、ドラゴンスレイヤー、龍殺しの刀のようであった。刀を腰に…あぁ、もう差せないなぁ。なので、アイテムボックスにしまった。
部屋を出る前に、地面に刺さった剣に
「とても良い武器をありがとうございます。より一層の精進をしていきます」
と、祈りを捧げてから、ダンジョンを後にした。
地上に出ると、ミリーさんが立っていた。
「どうしたんだ?」
「ギルドを脱退してきちゃった…ねぇ、パーティーに入れて」
頭を45度くらい傾けて笑顔で頼まれた。かわいいなぁ…仕草がね。リアルを知っている分ギャップを感じるんだけど。リアルではかわいいというより、クールビューティー系なんだよな。
「街には行かないよ。お風呂に入れないよ。粗食だよ。いいの?」
「うん♪街には私が買い物しに行く」
笑顔で頷かれてしまった。さて、どうしよう…
「ねぇ、エフの傍にいたいの」
服の端を握られた。逃げられない。
「私が、エフを護る」
その時、「えっ」という声が聞こえた気がしたので、位置情報を調べると、カザミネとロナさんがいた。ミリーさんを追跡してきたのかな?そうなると、ここでは転移魔法は使えない。僕はミリーさんを連れて、森に向かい、森の奥に進み、彼らの視線からはずれた場所から、転移した。
◇
いつもの穴に転移すると、予想外のお客様が待っていた。
「探しましたよ、エフ」
イベントのラスボスが目の前に立っていた。なんで、ここにいるんだ?身構える僕とミリーさん。
「ちょっと~戦いに来た訳では無いですよ。この前のイベント賞品を渡しに来ました」
イベントの賞品?なんだっけ?
「私を貰っていただけませんか?」
ラスボスから意外な言葉が飛び出した。
「ラスボスさんを?」
「私はラスボスではないですよ。誰がそんなことを?」
苦笑いしているラスボスに訊かれた。
「ツヴァイ…」
ぼそりと答えた僕。
「あぁ、ハーレムギルドのギルマスですか。後で絞っておきますわ」
ハーレムギルド?ツヴァイってそういう奴だったのか…
「で、先程のお返事はどうなんですか?私を貰っていただけますか?」
少し悩んでから答えた。
「条件を少し出してもいい?」
「飲める条件であれば良いんですが」
「妖精の国に、僕とミリーさんの家、お風呂付きの家をください。それが条件です」
「いいですよ。それくらいなら」
「で、ラスボスさんを貰った時の、メリット、デメリットは?」
ラスボスは咳払いをしてから、
「その前に私の名前は、ラスボスではありません。フェアリークィーンという名前で、妖精国を治めています。メリットは、たまにパーティーに入って戦闘に参加します。デメリットは国政の手伝いをしてもらいます。いかがですか?」
「冒険する時間はくれるんだよね?」
「それは勿論。縛り付けたくは無いですから」
ミリーさんが僕の服の裾を引っ張った。ミリーさんの方を見ると
「お風呂付きって…私の為の条件なんでしょ?なんで?」
神妙な表情なミリーさん。
「この穴で暮らすのは、ミリーさんの負担になるから」
そう伝えると、ミリーさんの表情は明るくなった。
そして、僕達は妖精の国へと旅立った。