妖精の国に着いて、まずツヴァイにウィスパーを飛ばした。
【ミリーさんと当分、パーティーを組むけど、了承してください】
と。ツヴァイから間髪を入れずに返信がきた。
【ミリーに伝えてくれ。ギルド脱退は認めないと。あと、ミリーと行動を共にするなら、エフも俺達のギルドに入ってくれ】
まぁ、入るだけならいいかな。
【わかった。ツヴァイの親切心には、いつも感謝している。ミリーさんと行動をする間は、ブルーカラーにお世話になります】
ツヴァイとの会話は切れた。
ミリーさんに、ツヴァイとの会話の内容を知らせた。
「いいの?それで?」
ミリーさんの表情は、きょとんとしていた。
「いいさぁ。ツヴァイには感謝しっぱなしだし」
で、家なのだが…
「なんで、エフとは違う家なのさぁ」
と、ミリーさんはクィーンに噛みついた。僕とミリーさんの家、僕達は一軒の家を想像していたのだけど、クィーンは僕に一軒、ミリーさんに一軒くれた。そして、なぜか僕の家の方が大きくて豪華だった。
「なんで?この差は?」
「私とエフが暮らす家よ。それなりの家で無いとねぇ」
え?クィーンと僕が暮らす家?貰ってくれの意味って…ちょっと待て~!
「僕の立場って…」
「私の旦那様♪」
「「え~!」」
驚きの声がハモった僕とミリーさん。
「貰うって、そういう意味?」
下僕契約で無く、婚姻契約だと…賞品にしては、重すぎないか?
「うん?」
はにかみ気味のクィーン。うぅ~、でもいいかぁ。
【クィーンでテストを重ねてみるよ】
と、ミリーさんにウィスパーした。
【ラスボス相手で萎えない?】
って、返されて
【ミリーさんが、安全に体験出来るように、がんばります】
と、返信をした。とは言え、やっている途中で人化が解けたら、萎えるかもなぁ…
そして、家の中に入り、家の中をチェックした。家の構造は問題無いが、立地はいかがなものかな?
「ねぇ、なんで、お城の庭に建てたのさぁ」
クィーンに質問をした。
「安全だから。仕事の合間に逢いに行けるから♪」
仕事の合間?あっけに取られていた僕達に、クィーンの側近の人が、腕輪を持って来て、僕とミリーさんの腕に嵌めた。
「その腕輪は、妖精国の城の者である証よ。どこの国でもそれなりの扱いは受けられるわ。冒険の役に立ててね」
これはありがたいが…そうだ、デメリットの件を訊かないと
「国政の手伝いって、何をすれば良いの?」
「私のストレスの解消よ」
おい…
「国政においては、国王代理って立場をお願いします」
はぁ?何か、重いハンディを背負い込んだ気分…
「国政で無い時は、一冒険者でいいよな?」
「うん♪あなたがストレスを溜めたら、困るからね。あと、ミリーさんには爵位を与えます。妖精国内において『レディー』の称号を用いることを認めます」
戸惑っているミリーさん。いや、戸惑うよな。僕に付いてきただけで爵位なんて。
「そうだ。僕の仲間を紹介しておかないと」
「「仲間?」」
ミリーさんとクィーンがハモった。
「僕の冒険の仲間だよ。ラピス、オニキスよ、人化してその姿を現せ!」
ラピスとオニキスが人化して現れた。銀髪で白いドレスの女性がラピス、黒髪で黒いドレスの女性がオニキスだ。二人ともクィーンよりも優雅そうなドレス姿で現れた。
「そこの狐の妖精よ、我らの主に無理難題を言うなよ」
「そうだ。身分をわきまえろ」
うん?あぁ、妖精より精霊の方が格上って言っていたっけ。クィーンとミリーさんが、目を点にして固まっていた。
「紹介するよ、銀髪が光を司る精霊のラピス、黒髪で暴言吐きが闇を司る精霊のオニキスだ」
笑顔のラピスとドヤ顔のオニキスが、クィーンに睨みを入れていた。
「えぇ~、エフって精霊使いだったの~」
「そこの狐の妖精よ。ここにいる鬼畜は、精霊使いなんて上等な者ではなくて、我らを下僕にした鬼畜だぞ」
オニキス…そこまで惨く言わなくてもいいじゃん。
「「鬼畜?」」
ミリーさんとクィーンの僕を見る目が変わったような…
「私達の主は、鬼畜ですよ。宝箱を前にして、中身よりも箱に興味を示すし、私達に土下座をさせたりもしたり」
ラピス…フォローしてくれ~それじゃ、僕は鬼畜に思われるじゃないかぁ~
「「だって鬼畜でしょ?」」
って、二人の精霊が声を揃えて、僕に宣告してきた。
「エフ、あなた…」
ミリーさんが後ずさりしていた。
「違うって。ほら普通に生活していなかったから…宝箱の素材で錬金して、しのいでいたんだよ」
必死にミリーさんに言い訳をした。
「錬金術師なんですか?」
クィーンに尋ねられた。言い訳をする程にドロ沼に…女難の相の影響かな。
「まぁ、そんな感じだ。宝箱に使われている素材って、結構希少な物が多いんだよ」
「で、鬼畜って?」
更にクィーンの追求が続く。精霊二人はしてやったり顔だ。
「いや、精霊と契約を交わらせないで…自分の物にした…というか…」
「有り得ない…契約しないで精霊を自分の物に?」
「そうカリカリするなよ、狐の妖精よ。我が主の鬼畜は、手順無視で我らを下僕にはしたが、恨んではいない。むしろ感謝しているんだ。封印を解いてくれて、我ら2名を、こうして色々な場所に連れて行ったり、鬼畜の鬼畜ライフを見ることが出来るからな」
オニキス、感謝している割には、トゲあるぞ、お前。
「そうなんですか…」
不安そうな顔付きになるクィーン。
「契約だと、私達の加護を与えるだけだが、下僕化だったので、私達も人格を得られたのよ。感謝しているわ、エフ」
ラピスからは、素直な感謝の言葉を貰えた。それに引き換え、オニキスは…
「オニキス、お前なぁ…存在を消してやろうか?」
オニキスを脅す鬼畜な僕。僕の言葉の意味を理解して、すぐさま土下座をして、謝るオニキス。
「あぁ、言い過ぎました…それだけはカンベンしてください。鬼畜様」
謝りながら鬼畜呼ばわりするなよ~
「エフ…精霊様に土下座させるって、どういう事?」
と、クィーンに問い詰められる。ドロ沼にズブズブ沈んでいく気がする。誰かぁ、助けてよ~と、口走ってみたら、天から声がした。
『フェアリークィーン、ラピス、オニキスよ。それくらいにしたあげてください。彼は私の古くからの友人で、恩人なんですから』
この声って、誰?名指しされた三名が声を揃えて、この者の名前を叫んだ。
「「「女神様!」」」
『彼は悪い者ではありません。まぁ、鬼畜なマネをするのは、全力を尽くした結果だと思います。心暖かく見守って、時には力を貸してあげてくださいね♪』
女神様…あぁ、マザーかぁ。僕の作った人工知能マザー。このシステムではNPC一人一人の人格を作り、この世界を作り上げた創世神だ。FDベースで作った時には、ここまで大きなシステムになるとは思わなかったけどね。
「マザー、フォローありがとう!」
『どういたしまして。私は遠くからですが、これからも見守っていますよ。またね♪』
マザーの声かぁ、初めて聞いた。なんか心が穏やかになれるなぁ。
「まさか、女神様との古くからの知り合いだったとは…それに、あんなに弾んだ声の女神様は初めて…いつもはもっと怖いのに…」
クィーンと精霊の二人が蒼い顔をして、僕を見ていた。
「今までのご無礼、失礼しました」
と、オニキスが、深々と土下座をしていた。
「エフ…いやエフ様、まさか、女神様の彼氏なんですか?」
クィーンは震えていた。畏怖なる存在を前にしているようだ。
「様呼ばわりはやめてくれ、クィーン。今まで通りで良いから」
彼女に近寄り、優しくハグをした。
「そこの二人も今まで通りで良い。あと、このことは口外は認めない。いいな!」
頷くNPC達。
「エフ…あなた…」
信じられない者を見たような表情のミリーさん。
「この世界の基幹システムを作ったプログラマーです。ミリーさん」
「そう…あなたが…この世界における神の手を持つ者ってことね」
◇
マザーの声を聞いた日以来、精霊に鬼畜呼ばわりは、されなくなった。クィーンが添い寝するとき、三つ指ををついて、『エフ様、今夜もよろしくお願いします』と、挨拶をしてから、横になっていた。
冒険の方は、ミリーとはお城の北にあるミミックダンジョンに遊びに行く毎日である。このダンジョンは人化したミミックが経営?しているアトラクションタイプのダンジョンで、罠やモンスターに倒されても、治癒をして入り口まで戻してくれる親切な鍛錬場所であった。入場料として、何かしらの食べ物を持ち込まないといけないのも、特別ルールかもしれない。
10階ごとに宝箱のある部屋があるのだが、僕はいつものように箱を解体して、中身を放置して箱だけ持ち去ろうとしたのだが、涙目の10歳くらいのミミックの女の子に
「箱は備品だから、持ち去らないで~」
って、注意されたり…その後、ここを運営するミミック三姉妹の長女の人と、話し合いになり、僕は出入り禁止となった。原因は、このダンジョンの目玉モンスターのマスターリッチを屠ってドロップアイテムをゲットしてしまったから。まさか、妖刀村雨の浄化能力で死んじゃうなんて…予想外であった。
ラピス曰く、『私達もレベルアップして強くなってきています』だと。普通は契約により加護を与えるだけのようだが、僕の場合、一緒に戦うことになり、経験値を稼いでレベルアップしているとのことだ。
近いうちに、妖精の国以外に冒険に出ることになるだろうな。クィーン、ごめんよ。
---ツヴァイ---
ミリーからの連絡によると、エフはミミックダンジョンの出入りを禁止された模様だ。あいつ、今度は何をやらかしたんだ?一度、顔でも見に行くかな。
---エフ---
ツヴァイから久しぶりに連絡をもらい、僕の家に遊びに来るという。ツヴァイ達と次のエリアに向かおうかな?クィーンに相談したら、龍の国で鍛錬してくれば良いと言われたので、そこに向かうことにした。
ツヴァイに妖精国の城下町に来てと、ウィスパーを飛ばした。数日経つと、ツヴァイから着いたと、ウィスパーが飛んで来たので、迎えに行く。
「ツヴァイ、久しぶり~」
「おぉ、エフ。久しぶりだな。カザミネとロナも一緒に来たぞ。入れるか?」
僕はカザミネとロナさんに挨拶をしつつ、ツヴァイに返事をした。
「大丈夫だよ。大きな応接間があるからね」
「ミリーはどうしたんだ?」
「家に残って、準備をしているよ」
「同棲しているのかい?」
とは、カザミネ。
「いや、ミリーさんの家は隣だからね」
と、返した。それから、一行をお城の正門に連れて行った。
「おい、エフ…お前、お城に住んでいるのか?」
ツヴァイ達が驚いたような顔をしていた。
「正確には違うけど」
僕は門番に挨拶して顔パスで、ツヴァイ達は僕の知り合いということで、簡易な入城手続きで、お城の中に入った。大広間を通過して、玉座へ向かう階段を通過して、中庭に出た。
「ここが僕の家だよ」
中庭に建つ家を紹介した。
「エフ…お城の中の中庭に家を建てたのか?」
ツヴァイ達は目が点状態のようだ。まぁ、そうなるよね。
「隣の小さい家がミリーさんの家。あっ、ここに建てたのは僕達の希望じゃないからね、先に言っておくけど。クィーンがここに建てたんだよ。もぅ…」
家の中に案内すると、ドアの傍にミリーさんがおり、ツヴァイ達を出迎えた。
「お久しぶりです~」
「ミリー、元気だったか?」
「ツヴァイ、泊まって行くだろう?」
「いいのか?」
頷いた僕。そして、召使いに、客人が泊まることを伝えた。テーブルの上には、おいしそうな食べ物が、既にセットされていた。お城の料理長に頼んでおいて正解だった。僕の<料理>スキルではここまでの物は調理が出来ないからね。
食事をしながら、近況報告会みたいになった。
「で、どうして出入り禁止になったの?」
ミリーさん、教えたんですね。あの件を。ミリーさんの方を見ると、笑顔を返された。はぁ、説明しないとなぁ。
「ミミック三姉妹の一番下の子を泣かせたからねぇ」
「なんで?」
「備品の宝箱だけを持ち去ろうとしたから」
「はぁい?」
「けっこう良い素材だったんで、宝箱の部屋にある宝箱を全部解体して、持っていこうとしたら、涙目で注意されて…お姉さんのお部屋に、連れて行かれて…」
「それは…普通しない行為ですよね」
カザミネが呆れている。いや、普通のプレイヤーから見たらそうなるかもな。
「エフ、もっと大事なやらかした理由は話さないの~」
ミリーさん、いつも通りの話し方にして欲しいです。ギルド・ブルーカラー内ではそういう話し方だったのは、知っているけど。
「それ以上に酷いことをしたのか?エフよ」
ツヴァイ、笑顔で睨まないで…ロナさんは身を乗り出して聞き耳を立てているし。告白するしか無いか…はぁ。
「マスターリッチからドロップ品を取り出したんだ。そうしたら、目玉モンスターを倒すことないでしょう、営業妨害だって…エライ剣幕で怒られました」
「はぁい?あの部屋のルールは、マスターリッチの動きを止めるだけで良かったのに、お前は屠ったのか?」
「だって、一太刀で屠れると思わないでしょ?普通は…」
「「一太刀で屠った?」」
ツヴァイとカザミネがハモっていた。そうだよな。驚くよね。僕は平謝りで、生き返らせたよ。あの時は、本当にあせったよ。
「たしか、アースでも屠れなかったんだよな」
「クィーンを召還して倒したとか、そうでしたよね、目撃者のミリーさん」
ミリーさんはカザミネの言葉に頷いていた。
「おい、エフ…お前の戦闘力ってどの位あるんだ?」
どの位?ステータスをチェックした。
「う~んっと、総合スキルの<格闘>LV35です」
「総合スキル持ちなのか?武器特化スキルではないのか」
「特化スキルだと<二刀流>LV11だけです」
「そんな低いレベルでマスターリッチって、屠れるのか?武器の攻撃力は?」
「妖刀村雨…闇なる者相手だとATK+300…」
「+300?おい、それって化け物だぞ」
「そうなの?ドラゴン相手だと+750っていう刀もあるけど」
「おい、エフ。お前は他者との交流とかがあまりないから、知らないんだろうけど、それは化け物クラスの武器だぞ」
「そうだったのかぁ…」
実際にはラピスとオニキスがレベルアップをしているので、それ以上の攻撃力と効果があるようだけど、僕の<鑑定>能力では分からなかった。
「そんな武器を振り回していたのか…」
「エフとダンジョン巡りすると楽なんです~」
ミリーさんが笑顔で、報告をしている。
「それは楽だろうな。そんな攻撃力持ちと一緒だと。確か、距離も関係ないんだよな、エフ」
距離?あぁ、飛ぶ斬撃のことかな?
「エフは弓使いを、飛ぶ斬撃で屠っています~」
「はぁい?弓使いを近接武器で屠っているのか?」
頭を抱えているツヴァイ。
「エフは常識が通用しませんね」
「通用しないよ~罠なんか、飛ぶ斬撃で作動させまくってから、堂々と歩いていくんです~」
そういう鬼畜行為は報告しないで良いですよ、ミリーさん。
「罠を外すんでなくて、事前に作動させているのか?お前は本当にバランスブレイカーだな」
否定したいけど、事実なだけに無言で時が過ぎるのを待つ。
「ちょっと待ってください。ドラゴン相手だと強化される刀で龍の国に行かれるんですよね?」
そうなるよね。
「入国禁止になったりしませんか?ドラゴンにとって危険だもの」
カザミネ…そんな理由で入国禁止になるのか?そこに、これまでこの場にいなかった者の声がした。
「入国禁止?そんなマネをしたら、龍の国との友好条約を破棄しますわ」
って、クィーン。お前、まだ執務の時間でないのか?
「「フェアリークィーン!」」
ツヴァイ達が、声の主に驚いていた。
「その程度の理由で入国禁止にしたら、外交問題にします」
いや、外交問題にはしなくて良いぞ、クィーン。
「我が国の国王代理の者を入国禁止にしたら、外交問題ですよ」
「「国王代理?」」
ツヴァイ達が驚きの声をあげた。おぃ、クィーン、情報を漏らしすぎだぞ!今度は僕が頭を抱えた。
「そうですよ。エフ様は、私の彼氏でもありますから、国王代理の資格があります」
諸事情に詳しいミリーさんは、笑顔でこの場の雰囲気を満喫していた。
「エフ…お前…クィーンの彼氏になったのか…あぁ、だから…ここに家が…」
口から心臓が飛び出しそうなツヴァイ。そんなに驚くこともないのになぁ。
「おい、ハーレムギルドのギルマスよ、エフ様に失礼だろう?私だけの彼氏ではない…もっと上の方の彼氏でもあるんだぞ」
おい、クィーン…もう、止めてくれ~僕はクィーンに抱きついて、宥めた。
「落ち着け、クィーン。情報がダダ漏れになっているぞ…」
僕が抱きつくことで、徐々に平常心を取り戻したクィーンは、はっとした。手遅れだけどな。
「クィーンよりも上の者の彼氏?相手は誰かな?」
ロナさんが推理をし始めていた。そんな僕の客人の様子を見て、クィーンが僕に対して土下座をすることで、事態はドロ沼にはまっていく。
「エフ様、ご迷惑をおかけしました」
いや、謝罪されても手遅れだぞ、クィーン。どうするかな…ツヴァイ達の記憶を消すか?できるか?マザー…マザーからは了解と返事が戻って来て、ツヴァイ達は意識を失った。
「エフ、何をしたの?」
ミリーさんがいつもの口調に戻った。
「マザーに頼んで、クィーンの漏洩した情報の記憶を消すことにした。記憶操作中だから、意識が飛んだのだろう。リアルではPCがフリーズしていると思う。さて、クィーン。お前への罰はどうするかな?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
土下座の状態で謝罪の言葉を繰り返すクィーン。
「今回は許してやる。情報を怒りまけせて漏らすなよ。次回はお仕置きするからな」
「寛大なるお許しをありがとうございます」
なんか、疲れたなぁ。
「僕は疲れたから、寝るよ。今夜は添い寝をしないで良い。龍の国には、すんなり入国できるように手配を頼む」
「わかりました」
そういうと、クィーンは家を出て行った。