※この作品はR-18です。

アルフガン   作:もっち~!

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2-2 エルフの国
エルとの再会


 

 

 

---ヒロ---

 

エフはマザーに記憶を消してと頼んだのだが、アウトしてから冷静に考えると、プレイヤーの記憶操作なんか出来るはずもなく…あの時の情報を掲示板に書き込まれてしまった。幸い、エフの名前は出ていなかったらしいけど。気づいた運営が問題のある書き込みを削除したが、新しいクィーンの彼氏の話題と、化け物クラスの武器の話題で掲示板は賑わっているそうだ。

 

運営チームによると、書き込みをした人物はカザミネらしく、昨晩のクィーンのようなNPCの暴走は感情を持ち始めたことによる弊害らしい。

 

あと、前から気になっていた称号について尋ねてみたのだが、開発部で設定した名称以外に、マザーが付けている物もあるそうだ。僕の場合はマザーによる物が多いらしい。

 

開発部の基本方針では、AIが致命的な事をしない限り、AIに行動をまかせている。たまに起きる突発イベントなどがそうで、これは運営も開発部も関与していないらしい。

 

僕に課せられた今後の方針は、カザミネとは行動をなるべく共にしないようにとなった。

 

そして、今日もインするべくヘルメットを装着した。

 

 

 

---エフ---

 

僕はツヴァイだけを、僕の部屋に通した。ここは結界が張ってあり、情報漏洩はしない場所だ。掲示板に昨晩の情報が書かれたことを告げ、カザミネとロナとは行動を一緒に出来ないことを告げた。カザミネだけだと、特定した方法を尋ねられそうなので、二人の名前を挙げた。

 

「確かに、どちらかが書いたのは明らかだな。すまないなぁ、エフの極秘にしたい情報を晒してしまって」

 

「ツヴァイは悪くないよ。むしろ悪いのは、暴走したクィーンだ。ただねぇ、こういう事が続くと、僕はますます街に寄りつけなくなってしまうんだよ」

 

「それはつらいよな。でも…一つだけ教えてくれないか?ミリーとはどういう関係なんだ?」

 

「それは…リアルでの知り合いだ。それ以上の関係は言えない」

 

「つきあっているのか?」

 

「つきあっていないよ」

 

僕は笑って答えた。相手はスポンサー様だし。

 

「そうか。わかった。ミリーの気の済むまで、一緒に行動をしてくれエフ。あの二人には俺からペナをかける。今後もエフとは行動を共にしたいからな」

 

ツヴァイと今後の予定を決めた。最初の街まで一緒に戻り、ツヴァイとミリーさんと三人で龍の国を目指すことにした。

 

僕はクィーンの元に向かった。彼女は執務室でぼぉっとしていた。

 

「おい、仕事をしろよ!」

 

「えっ…だって、昨晩…していないから…嫌われたらどうしようって…」

 

「あんなことで嫌いにならない。ただなぁ、感情にまかせて情報を漏洩するなよ。僕の行動範囲が狭まるじゃん」

 

「ごめんなさい…」

 

NPCの感情は豊かになっても、感情を抑えきるという経験が、まだまだ少ないのだろう。

 

「これから出掛ける。帰りはいつになるかは、わからない。逢いたい時は連絡をしてから来てくれ。ダンジョン攻略中に来られても困るから。あと、毎日は来るな。仕事が出来なくなるから。そうだな、3日に1度くらいにしてくれ」

 

「うん♪わかった。仕事をがんばるから、避けないでねぇ~」

 

仄かにクィーンの頬が紅くなった。

 

「避けるくらいなら、一緒に暮らさないよ」

 

「あのねぇ…冒険に旅立つあなたに、役立つプレゼントをしたいのだけど、プレゼント出来る物がないの…既に、アースに差し上げてしまったから…ごめんなさい」

 

「いいよ。僕はクィーンからの愛情だけで充分だ。想っていてくれる人がいると思うと、がんばれるから」

 

クィーンの頭を撫でながらそう言い、彼女の額に軽く口づけをした。

 

「じゃ、仕事をちゃんとしろよ。いってきます」

 

僕はクィーンの執務室を後にした。お城の門の前に行くと、ミリーさんとツヴァイ達が待っていた。

 

「エフ、ごめんなさい」

 

カザミネが土下座をした。

 

「そこまでするなら、もうするなよ」

 

ツヴァイがカザミネの肩に手を置き、彼を立ち上がらせた。

 

「カザミネ、当分の間、エフとの一緒の行動を禁止する。いいな」

 

今朝の掲示板の盛り上がりを見て、事の重大さに気が付いたらしい。すでに、武器狩りらしい事件が起き始めたそうだ。見慣れない武器を持っている者が襲われているらしい。

 

「僕とロナさんで、武器狩りの連中を取り締まってきます」

 

取り締まる権限ないだろう、とも言えず、ツヴァイ達にこの件はまかせておこう。

 

「じゃぁ、僕達はここで別行動します。また、いつか会いましょう」

 

そう言うカザミネに、僕が手を差し出すと、両手で握ってきた。

 

「国家情報を漏らしたのに、お咎め無しの判断に感謝いたします。また、一緒に冒険ができる日が来ることをお待ちしています。国王代理様」

 

おい、最後の言葉は余分だぞ、カザミネ。

 

僕達は、カザミネとロナさんを見送った。

 

「さて、俺達も旅立つか、エフ」

 

「あぁ」

 

◇

 

最初の街に戻ってきた。ここにしばらく滞在して、龍の国を目指すことにした。宿はツヴァイの定宿に決定。部屋に入ると、緊急アナウンスがあった。

 

【この街に向かって、アンデッドの集団が向かってきます。冒険者は、それらを撃退して、原因を究明して、事態を収束してください】

 

これが、突発イベントってやつかな?部屋をノックされた。応対するとツヴァイだった。

 

「着いて早々に、突発イベだ。エフ、参加してくれ」

 

「了解」

 

二人で宿の外に出ると、ミリーさん他、ブルーカラーのメンバーらしき者達が集まっていた。

 

「ギルド・ブルーカラーは、これよりアンデッド撃退に向かう。準備が出来た者から、街の外で迎え撃ってくれ」

 

と、ツヴァイの指令が飛んだ。続々と街の外に向かう者達。

 

「なぁ、エフ。この辺のダンジョンに詳しいんだろ?原因に心当たりはあるか?」

 

ツヴァイに尋ねられた。原因?う~、アンデッド?そう言えば、封印があったよな。

 

「時間制のダンジョンの地下10階に、魔法陣の中心に剣を刺した封印があったんだけど、誰かが欲に目がくらんで抜いたのかもな…」

 

「化け物クラスの武器と勘違いして、抜いた可能性はあるな。とりあえず、そこへ行こう。ミリーも一緒に来てくれ」

 

僕達3名で、あの封印のダンジョンに向かった。ダンジョンの入り口から、アンデッド系のモンスターが次々と出て来た。原因はここで正解みたいだ。

 

「おい、ツヴァイじゃないか」

 

後ろから、知らない老人風のプレイヤーの声だった。

 

「シルバーのおやっさん、ここが原因みたいですよ」

 

ツヴァイが応対している。

 

「そのようじゃな」

 

そう言い残して、パーティーを引き連れ、シルバーさんはダンジョンに入っていった。

 

「俺達も行くぞ、エフ、ミリー」

 

頷く僕達。

 

ダンジョンの中はアンデッドが満ちあふれていた。先行したシルバーさん達のパーティーは、まだ僕達の視界の範囲にいた。アレで行くか…

 

「ツヴァイ、ミリーさん、援護して。床をぶち抜いて10階を目指すよ」

 

目が点になる二人。僕は妖刀2振りを手に持ち、飛ぶ斬撃に衝撃波を乗せて、爆裂させて床を破壊して、下に降りていった。

 

「これは楽な攻略だな」

 

ツヴァイが援護しながら、僕に言った。

 

「非常手段だよ。時間制だと<盗賊>スキルの無い僕には、ソロでの正攻法は無理だから」

 

そして、10階に着いた。タイマーは止まっている。

 

「ツヴァイとミリーさんは、僕の後ろから援護して。もし、プレイヤーが剣を抜いたとすると、二人には攻撃が出来ないからね」

 

「どういう意味だ?エフ」

 

僕は位置情報から、相手の正体を知ってしまった。

 

「対人戦はPVPで無いと屠れない。もし、封印されていた者がプレイヤーに乗り移った場合、相手はプレイヤーを屠れるが、こちらからはプレイヤーの属性もある者は屠れないルールだったでしょ?」

 

「あぁ、確かに…それはエフも同じじゃないか?」

 

「ツヴァイ、僕は鬼畜プレイヤーだよ。人斬りも出来る」

 

「まさか…」

 

「まぁ、裏技みたいな物だ。ペナを受けるだろけどね」

 

僕は妖刀を鞘に収めた。そして、封印の間に進んでいく。あの部屋の前にソレはいた。

 

「ほぉ、ここまで来られるプレイヤーがいたとはなぁ」

 

欲深きプレイヤーに乗り移った者が、僕達に向けて言葉を発した。

 

「グラッド…」

 

後ろからツヴァイの声がした。

 

「エフ、気を付けろよ。グラッドはトッププレイヤークラスだ」

 

あぁ、誰が相手だろうが、一撃で決めるよ。少しずつ間合いを詰めて行き、僕の間合いに入った瞬間、妖刀村雨で居合い斬りをして、相手の首をはねた。しかし、相手は生きていた。僕は迷わずに飛びかかり、首の断面から骨盤に向けて、村雨を突き刺し、

 

「ラピス、浄化してくれ~」

 

光の精霊ラピスの浄化能力を発動してもらった。すると、相手の身体はドット抜けする感じで徐々に霧散していき消えた。床には1本の剣が、禍々しいオーラを放って落ちていた。

 

「終わったのか?エフ」

 

ツヴァイの声が聞こえた。この剣を、あの封印の箇所に戻せば終わるのかな?

 

「ツヴァイ、たぶん、まだだ。新たなモンスターの出現に備えていてくれ」

 

僕は、ツヴァイの方を振り向かずに言った。そして、村雨をしまい、禍々しいオーラを纏った剣を握り…その瞬間、リアル世界の僕の目の前にある、データ画面が乱れた。リアル世界の僕は、洋子に向かって叫んだ。

 

「僕のPCの社内LANを切断しろ!」

 

「切断したわ。どうしたの?」

 

「ウィルスだ…このPCのウィルスチェッカーを作動してくれ。注入されたみたいだ」

 

リアル世界の僕は、ヘルメットに装着してある非常用のマイクに向かって叫んだ。

 

「ウィルスを混入された。緊急メンテの準備をしてくれ」

 

このマイクは、開発部、運営チーム、システム部、サーバー管理部などに設置してあるスピーカーに声が届くようになっていた。

 

「起動したわ」

 

洋子の声が聞こえた。

 

「このまま、この剣を封印する穴に入れる。そうしたら、あの部屋をクローズして、クローズエリア内のデータは抹消してくれ」

 

エフの動きがぎこちなくなっていた。うまくコントロールが出来ない。

 

「エフ、どうしたんだ?」

 

「ツヴァイ、ミリーさん、色々ありがとう。僕はもうダメかもしれない…絶対に近寄るなよ。この剣には罠が仕掛けられていた」

 

「ど、どうしたんだ、エフ」

 

「この剣を封印の穴に入れて、完全に封印する。ツヴァイはミリーさんを連れて、地上に戻ってくれ。後から追いかけるか…ら…」

 

動作が重くなってきた。回線速度は落ちていないようなので、PCが冒され始めたようだ。コントロールのしづらいキャラクターを、ようやく封印の間の封印の穴の近くに移動できた。剣をゆっくりと穴に近づけて、穴に入れて行く。

 

「エフ…一緒に帰ろうぜ…」

 

悲痛なツヴァイの声が聞こえる中、剣が穴に無事に収まった。その瞬間、非常用マイクに向けて叫んだ。

 

「この部屋をクローズして、削除してくれ」

 

目の前のゲーム画面は、砂嵐になった…

 

 

 

---ヒロ---

 

ゲームはそのあと1時間くらいしてから、緊急メンテでクローズした。直ぐにクローズしなかったのは、イベント参加者が宿に帰りつく時間を考えてのことだ。宿のベッドでログアウトしないとデッド扱いになるので。

 

そして、緊急会議。

 

ウィルスはどこから混入したのか?アレコレ議論をした結果、NPCがゲーム内で作った可能性が高かった。

 

被害は僕の使っているPCは汚染しかかった。グラッドを操作している者のPCは汚染しているのかもしれない。グラッドを操作する者がインしようとした場合、クリーンナップサイトに誘導して、チェックしてからインさせることになった。

 

そうなると、誰が作ったのか?これが問題であった。NPCの個々の考えは把握できないし、検索もできない。独立タイプのAIの弊害だな。マザーを使って探索をしているが、いまだに見付からない。これは、僕がインをして捜査することになった。

 

最後に、エフとしてインできるのかが問題だ。クローズエリア内でデータ削除をしたから。前日のバックアップを使い、復旧をしている。僕からマザーに協力を要請した。

 

しかし、実際にインしてみないと、どこまで復旧したかがわからない。VRヘルメットは新調した。ウィルスが侵入したかも知れないので、システム部で解析することになっている。

 

そして僕は、メンテナンス終了後に、ヴァーチャル世界へと戻った。

 

 

 

---ツヴァイ---

 

エフが封印の間に入り、剣を穴に収めている。エフの動きがぎこちない。エフの姿は、グラッドが消える前のようなドット抜けをし始めていた。

 

「エフ…一緒に帰ろうぜ…」

 

アイツに向かって叫んだ。一瞬、アイツが笑顔でこちらを振り向いたと思った瞬間、部屋の入り口が壁になった。ミリーと二人で駆け寄るが、そこは岩肌むき出しの壁だった。

 

「エフ~」

 

叫んでも、返事はなかった。アイツは消えた。呆然とした俺達だったが、緊急アナウンスが響き渡り、正気に戻った。

 

【緊急メンテナンスを1時間後に行います。それまでにログアウトしてください。ログアウトできない場合は、デッド扱いになる場合があります】

 

「こんな時に?エフの消失と関係があるのか?」

 

「ツヴァイ、急いでログアウトしましょう」

 

ミリーは出口に向かって走り出した。俺はその後を追う。リアルエフが心配なのだろうか?

 

地上に戻ると、シルバーのおやっさん達が待っていてくれた。

 

「どうじゃった?」

 

「ラスボスは倒して、封印しました。でも…大事な友人を失いました」

 

「死に戻ってくるじゃろう。その時は、その者をフォローしてあげろ、ツヴァイ」

 

シルバーのおやっさんの言葉に頷いた。

 

 

 

---エフ---

 

インをした。イン出来たみたいだ。ステータスモニターは正常。位置情報モニターもどこにいるかわからないが、正常なようだ。ステータスは前日のバックアップをリストア出来たようだ。

 

ここはどこだ?どこかの家のベッドの上で目が覚めた。見た事のない風景。窓からは柔らかな日差しが差し込んでいた。心地良い風を身体に感じた。ここはどこなんだ?身体がうまく動かない。力も入らず、起き上がることすら出来なかった。

 

「エフ…目が覚めたのね。良かったぁ…」

 

僕の身体に抱きつく女性。いや、エルフの女性…誰だっけ?

 

「ルイ、エフが目覚めてくれたよ~」

 

エルフ…エル…幸せだろうか…目の前に15歳くらいのエルフがいた。エルよりも若い。誰だろうか?

 

「ねぇ、エフ、私よ。忘れたの?」

 

次に目に入って来たエルフは…エルだった。

 

「エル…どうして…」

 

「嫌な予感がして、村の護り神の聖樹様に、『エフを護ってください』ってお願いをしたの。そうしたら、全身ぼろぼろになったエフが現れたのよ。いくら声をかけても、目覚めてくれないし、心配したよ~良かった~目覚めて」

 

エルは僕を抱きしめてくれた。でも…

 

「アースと幸せに暮らしていたんじゃないの?」

 

「いや…アース君は…忙しい身だから…」

 

エルの言葉の歯切れが良くない。目も寂しげだ。

 

「まさか、エルの事を…」

 

「そうじゃない。アース君とはそういう関係じゃないんだ。むしろ、私はエフと一緒にいたい。それよりも、エフ、どこか悪い所はある?」

 

「身体に力が入らない…起き上がれない…」

 

「何があったの?エフがあんな状態になるなんて…」

 

「罠を喰らったんだ。僕には危険を察知する能力が無いから…それはそうと、ここはどこ?」

 

「ここ?エルフの村にある、私の家よ」

 

エルフの村?どこだ?

 

「その小さい娘さんは、エルの子供?」

 

「違うわよ。私に子供はいません。彼女は友達のルイ。あぁ、見えても、年齢は…エルフだから、想像してね♪」

 

あぁ、見た目は幼くても100歳以上の可能性有りなんだな。エルフに限らず、女性の歳を訊くことは地雷を踏みかねないよな。

 

「ルイさん、よろしくお願いします。エルの知り合いのエフです」

 

「知り合い?」

 

エルの顔が寂しそうに見えた。そんなエルの背中をぶったたいたルイさん。

 

「痛っ」

 

「ただの知り合いじゃないだろ?聞いたよ、エルからな。耳を触る許可を、貰ったそうじゃないか」

 

それはそうだけど…

 

「エルフの女性にとってソレは…」

 

急に真っ赤な顔をしてエルは、ルイさんの口を塞いだ。

 

「ルイ、いつから、そんなにおしゃべりになったのよ!」

 

「ほっほぉ~」

 

「おい、エフ。エルはアースには、耳を触って良い許可は出していないぞ」

 

えっ?そうなの?なんで?

 

「アースとはそういう関係じゃないの?」

 

「違うわよ!アース君は…一緒に戦った仲間よ」

 

「まぁ、その身体では、当分エルの世話になるしかないぞ。動けないんだものな。良かったなぁ、エル♪」

 

「いや…そのぅ~良かった…かな。ははは。そうだ、食事の支度をするね♪」

 

食事の支度をしに台所に向かったエル。部屋には、僕とルイさんが残った。

 

「で、エフはどうなんだ?エルを幸せに出来るのか?」

 

「僕は…この村にいる間は出来るかもしれない。でも、他の街では無理だと思う。エルにはここにいて欲しい。ここで待っていて欲しい。自分すら護れなくて、こんな身体になっちゃうんだもの。エルを護りきる自信が無い」

 

「お前は正直だな。気に入ったよ。よしっ、リハビリの手伝いをしてやる。スパルタだぞ」

 

ルイさんの声はどこか楽しそうだ。

 

「お願いします。早く見つけないといけない相手がいるので」

 

「そいつが、お前をこんな目に遭わせたのか?」

 

「正確には違うけど、大筋はそうです」

 

 

で、食事なんだけど、口以外の身体の動かない僕は、エルに口移しでエサを貰った。ルイさんの見ている前で、とっても恥ずかしいぞ。

 

 

 

---ツヴァイ---

 

死に戻りの者が現れるエリアで、ミリーとエフが出てくるのを待ったが、いくら待ってもエフは出てこなかった。フレンドリストを見ると、エフの名前はリストから消えていた。アイツはデッドではなくてロストしたのか?

 

ミリーに、エフとミリーがリアルでの知り合いであると知っていると言い、リアルのエフに状況を確認してもらった。リアルのエフの話では、全身麻痺の状態で、今は療養中だそうだ。今いるエリアは来た事のない場所で、よく分からないとのことだった。

 

とりあえず、ロストではなくて良かった。いや、ロストの方が良かったのか?全身麻痺状態では冒険が出来ない。再インストールの方が良い気がするが。

 

療養しているってことなので、色々な街にある療養施設を廻って、エフを探すかな。

 

 

 

---エフ---

 

エルの家に来てから随分と経った。今では、少しずつではあるが、立ち上がり歩けるようになっていた。手が動くようになったので、毎日ヒールをかけて治すこともできるようになり、徐々にではあるが、普通に動けるレベルに近づいていた。

 

デバッガーで原因を探るが、まるで分からない。僕のリアル体になんらかの影響があったのかも知れない。考えられるのは、通電による神経麻痺か?日常生活は問題無いが、コントローラ操作に問題があるのかもしれない。

 

「なぁ、エフ。その腕輪…それって妖精国の腕輪か?」

 

ルイさんに腕輪のことを尋ねられた。

 

「そうです。入国手続きを簡略化出来る腕輪です」

 

「そうじゃねぇだろ?その腕輪は、妖精国の城の者である証だろ?なぁ、エフ。お前は何者なんだ?」

 

正体は隠しておきたい。エルにバレたくない。ルイさんに対して言葉を濁す。

 

「言えない身分なんだな、お前は。なぁ、身分を偽るような奴に、エルは似合わない。そうは思わないか?」

 

ルイさんの言いたいことは分かる。それで意を決した。ちょうど、エルは買い物に行っていていない。

 

「お世話になりました。一人でどうにかします」

 

身の回りの片付けをして、ルイさんに挨拶をして、僕はエルフの村を出た。出たはいいが、そこは森だった。村の出口には門番がいたので、出口ではないところから出たのが、裏目になった。方向が判らない。迷いの森か?位置情報を確認しながら、近くの村を探して彷徨う嵌めに…。

 

 

 

---エル---

 

エフの食事の材料を買い出して、帰宅すると、エフはいなかった。ルイに訊くと、出て行ったそうだ。まだ身体が不自由なのになぜ?ルイを問い詰めると、ルイが追い出したようだった。

 

「あいつは、お前に隠しごとをしている。そんな男は、お前を幸せに出来ない」

 

「隠し事なんか気にしない。私を見てくれる彼が必要なのよ。なんで、追い出すのよ」

 

「アイツは妖精国の城の者だ。たぶん、フェアリークィーンの側近だと思う。しょせん、アースと同じ穴の狢なんだ。あきらめろ、エル」

 

「彼は、まだ満足に身体が動かないのよ」

 

「歩くことは出来る」

 

「でも、戦えないわ…それに彼は土地勘も無い」

 

「放っておけ。冒険者なんだから、自分でどうにかするだろう。出来なければ、この先、どうせ生き残れない」

 

ルイの言い分は分かるど…私は、エフを探しにいく用意をし始めた。

 

「エル、何しているんだ?お前は戦えないんだぞ」

 

「エフを探しに行く。あの身体では、遠くに行けないはず」

 

ふと、彼の寝ていたベッドを見ると、メモ書きが残されていた。

 

『エル、会えて良かった。約束を果たせず、ごめん。待っていてくれとは言えない。だけど、任務が終わったら、もう一度会い…』

 

後半にも文字があったのだが、彼の涙でにじんでいて読めなかった。うん?ちょっと待ってよ、この文字…

 

「ねぇ、ルイ、この文字って…」

 

「うん?あれ?なんで?アイツがこの文字を書けるんだ?」

 

「これって、精霊文字だよね?読む事は人族以外の種族にも出来るけど、精霊にしか書けないはずだったわよね?」

 

「そのはずだが…なんで?」

 

「エフって、精霊なのかな?」

 

「あっ…隠し事ってこれかな?ちょっと、エフを探してくる。エルはここで待っていろ。いいな、家から出るなよ」

 

ルイがあわてて家から飛び出して行った。

 

 

 

---エフ---

 

一応、ラピスに頼んで、書き置きを書いてもらったけど、エルに心配を掛けたんじゃないかな?正体をバラしても良かったんだけど…で、ここはどこ?見渡す限りの森なんだけど。

 

モンスターすら寄って来てくれなくて、寂しいよ~

 

アイテムボックスからタバコとライターを取り出そうとして、見慣れない武器が入っているのに気が付いた。なんだろう?剣が2本入っているけど。あれ?これって、封印に使った剣みたいだけど。鑑定してみると

 

聖剣エクスカリバー ATK+150(魔なる相手に対してはATKは5倍)聖なる精霊クリスタルが宿る

魔剣ダークエクスカリバー ATK+150(聖なる相手に対してはATKは5倍)魔なる精霊サファイヤが宿る

 

だと…はぁ?いつ、手に入れたんだ?2本の剣を手にすると、見慣れない精霊が現れた。

 

「私は聖なる力を司る精霊クリスタル」

 

「私は魔なる力を司る精霊サファイヤ」

 

「「よろしくお願いします」」

 

「いつから僕の所に?」

 

二人の精霊に尋ねてみた。

 

「封印を戻してくれた時です」

 

とは、クリスタル。

 

「封印の間が消滅した時です」

 

とは、サファイヤ。

 

「二人とも元気だったんだ」

 

とは、ラピス。

 

「おひさ~」

 

とは、オニキス。こいつら知り合いなのか?

 

「4人揃ったので、これからは、使いたい者を念じてくれれば、刀や剣を腰に出現させる事ができます」

 

と、ラピス。

 

「もしかして、モンスターに遭遇しないのって…」

 

「光・闇・聖・魔を司る精霊がいるんですよ、もうザコは出て来ませんよ」

 

したり顔のオニキス。

 

「では、僕の相手はボスクラス?」

 

頷く4人の精霊達。経験値が溜めにくいだろうが…

 

「ザコを倒しても経験値なんか入らないですよ~」

 

はぁ?

 

「精霊の四天王が配下にいるんですから、ボスクラス以外には無敵ですから。ザコを何万匹も倒したとしても、経験値はビタ1文つきません」

 

経験値が貰えないって、カンストしたってこと?なんか、一気につまらないRPGになった気分。とても哀しい気分だ。

 

「道に迷ったみたいだし、家に帰りましょ♪」

 

って、次の瞬間、目の前にエルがいた。

 

「あれ?なんで?」

 

キョトンとしているエル。エルの腿に座っている僕。

 

「道に迷ったから、精霊達に家へ帰されました~」

 

カンスト状態になったことに悲観して、エルの胸に顔を埋めて泣きくずれた僕。帰宅したルイさんに、その姿を見られて、呆れられていることに気づかなかった。不覚であった…

 

 

 

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