---ヒロ---
エフとにゃんとのペアで、ハイエルフの里の周辺の調査をした。やはり、こちらの世界に手引きをした者がいそうだ。里の入り口周辺には、開発チームでプログラムしていないトラップが仕掛けてあり、相手は何かを警戒しているみたいだ。
なので、入り口の正面に、カウンタータイプ(駆除しようとすると発動する)のトラップを仕掛けてみた。まぁ、相手の技能テストだ。
プログラムの改竄なので、社内に内通者がいるのは確かだろう。社内のサイバー犯罪捜査チームに声を掛けて、取り締まる方向にした。大体の犯人の当たりは着けてある。
「捕まえる前に、証拠を削除されませんか?」
捜査リーダーが尋ねてきた。
「いや、インしていれば、VRヘルメットをかぶっているので、容易に削除は出来ないはずだ。それに削除をすれば、削除者の特定につながるし」
決行予定日を決めて、散会した。それまで、行動監視ということにした。
◇
休日出勤をした。休日なので、相棒の洋子は休みであった。さて、どうするかな。とりあえず、プログラムの見直しでもするか。一人でいる時に、インするのはちょっと危険な気がしたから。
コーヒーを飲みながら、打ち出したリストの束に目を通す。集中したい時にジャマが入るのはマーフィーの法則だろうか?内線の呼び出し音が鳴り、受話器を取った。
「はい、アルファーチームです」
アルファーチームは部屋の通称だ。アルファーテストをしている部署の部屋なので、そう呼ばれていた。
「運営ですが…すみません。お休みで仕事中に…あのぅ…美里さんがお見えで、ヒロさんの仕事部屋を見たいって…」
美里さんとは、資金提供者の一人だそうだ。スポンサーは大事にっていうのが、社の方針だ。まぁ、金のかかるプロジェクトなので、スポンサーになられている方々には、進捗情報とかも頻繁に流すし、時には職場見学のようなこともするそうだ。
って、僕の部署を見学?
「極秘ですが…せめて、洋子のいる日にしてほしい」
「忙しい方ですので、そこをなんとか…」
で、押し問答の末に、代取から携帯電話に連絡があり、仕事を見せるように命令された。査定にマイナスが付きそうだ。はぁ…
しばらくすると、部屋の呼び鈴が鳴らされた。この部屋に入るには、僕か洋子か上司のカードキーで解錠するか、中から解錠しないとドアが開かない。
解除して、美里さんを中に入れた。
「ふ~ん、入り口付近は応接セットなのね」
美里さんの服装は刺激的であった。タンクトップにカーディガンを羽織り、腿上カットのジーンズを履いて来た。
「合コンですか?刺激的な恰好で来ないでください。目の毒です」
目のやり場に困る。視線がどうしても、形の良い胸元に行ってしまう。哀しいことにねぇ。男のサガだろうか。
「今日は、ヒロ君の仕事視察だけよ、予定は。この後、試食してみる?」
あやうく、『うん』と言いそうになってしまった。危ない危ない。
「仕事って言っても、今日はインしないですよ。一人でインすると、緊急事態に対処できませんから」
「で、アレの方は順調?」
「専用のヘルメット無しで、ソフト的に信号を制御する方向でなら、もう少しでテストに入れると思います。NPCとのプレイで、感覚のデータを取り込んで、試しているところです」
専用のヘルメットを購入しないで、現状のVRヘルメットでも対応できるように開発しているドライバーがあり、それを購入してインストールすれば、弱い信号ながら、悶々とする程度にはなれる。
「臨床実験の方は?」
提携している医療機関で、食事制限にストレスを抱えている患者さんに、あちらの世界で食事を満喫してもらい、食事制限ストレスを低減できるかの臨床テストを、してもらっている。
「まだ始めたばかりですよ。すぐには結果は出ません」
「そう。で、ヒロ君の作業環境を見せて♪」
今日視察のメインなんでしょ?部屋の奥に置いてある僕のプレイングプログラミングの環境を見せた。
「凄い。モニタがいっぱいあるのね」
「正面のモニタがゲーム用で、あとは、プログラミング用、デバッグ用、トレース用、位置情報取得用、固体情報取得用などのモニタです」
「これを総合的に見て、判断を下して動作しているの?」
「そうです。あと、ヘルメットも特殊で、各部署に連絡が出来るマイク付きです」
ヘルメットを美里さんにお見せした。
「市販のより重いのね」
「まぁ、色々な計測装置がついていますから」
「大変な仕事だね」
「でも、やりがいはありますよ」
美里さんと見つめ合ってしまった。引き込まれるような瞳。近づき合う顔…もう一歩の所で、立ち止まり、
「コーヒー飲みませんか?」
「ふ~ん、中々手強いわね~。大抵、コロリと落ちるんだけど」
ミルで豆を挽き、ペーパードリップでコーヒーを淹れた。
「どうぞ」
美里さんにマグカップを手渡した。
「私って、ヒロ君的には魅力が無いかな?」
「いや、必死に踏みとどまっています。ここで、落ちると、今日の仕事が出来なくなりますから」
「そうか…もう一押しかな?」
「いや、止めた方がいいですよ。押し倒しちゃいそうだから…」
いきなり、背中から抱きつかれた。胸の柔らかさが、背中に…えっ?こんなに柔らかい物だったっけ?まさか、ノーブラか?うっ、まずい。股間が痛い。パンパンに膨れている。気づかれないように、机に向かって座った。
「これでもダメかぁ。ちぇっ」
美里さんの舌打ちが聞こえた。
「美里さんは、インしなくてもいいんですか?」
「今日はヒロ君と戦うの~」
戦う?どうやって?どうにかしないと、仕事が出来ない…そうだ。
「美里さん。疑似体験をしませんか?」
「疑似体験って?」
「まぁ、体験してみてください」
疑似体験用のVRヘルメットを美里さんに装着した。そして、プログラムを起動した。
---美里---
ヘルメットを装着すると、エアコンの音とか、今までしていた音が聞こえなくなった。遮蔽タイプのヘッドフォン内臓のようだ。
目の前に風景が広がった。どこかの室内にいるようだ。後ろから手が伸びてきて、胸を…あっいい…乳首が固くなるのが分かる。ここまで完成しているの?えっ?お尻にコンニャクのような物が触れる感触がある。椅子に座っているはずなのに、不思議だ。
お尻の谷間にはグミのような物が触れて、撫でているみたいだ。えっ、そこはダメ…いやん…腰が勝手に動いている。ダメだって…あっ…
---ヒロ---
洋子でテストしてあるので、危険性は無いけど…艶めかしい声に、リストを目で追う気力が削がれてしまった。この部屋で試して貰ったのは失敗だった。
声が途絶えたので、視線を向けると、美里さんは達しているようだった。顔は紅潮して、ノーブラなタンクトップに目を向けると、乳首が立っているのが肉眼で確認が出来た。そして、下腹部は…
彼女の身体にバスタオルを数枚、被せた。そして、気を取り直して、リストを目で追う作業を続けた。
しばらく経つと、美里さんの声が聞こえた。
「完成しているの?いい感じの刺激だったわ」
「いえ、完成してません。それは、エフとエルとのプレイの再現ですから」
「はぁ?」
「まだ、自由度が無いんです。再現は出来るんですけど。違うパターンをしますか?」
「激しいのって、ある?」
「激しいのかぁ…う~む、ルイさんとのプレイなら、激しいかな?ルイさんはエムっ気があるんで、ついつい暴走気味で責めてしまうので…」
「お願いします♪」
美里さんに掛けてある、バスタオルを回収した。テストの結果、なるべく薄着の方が良いみたいだから。そして、ルイさんとのプレイを再現し始めた。
先程、艶めかしい声でやられたので、ヘッドフォンで音楽を聴きながら、リストのチェック作業を始めた。
プログラミング系の仕事を始めると、時間の経つのを忘れてしまう。あっ。お昼の時間だ。食事をしないと。そういえば、美里さんは?
あ゛っ…
美里さんは、いい具合に出来上がっていた。顔は紅潮して、上半身裸で、片手で自分の胸を弄び、。もう片手はジーンズの中に手を入れて、下腹部で自慰の真っ最中のようだ。う~、どうしよう。このまま、放置は出来ないし。困った。
疑似体験用のプログラムを停止して、ヘルメットを脱がせた。で、頬を軽く叩いて
「美里さん、大丈夫ですか?ねぇ、こちらの世界に、戻って来てください」
はぁっとした表情を浮かべた彼女。
「どうしたんだろう?身体が快楽を求めて…あぁ、恥ずかしい…」
自分の姿を見て驚いているようだ。
「ねぇ、見たんでしょ?私の醜態を…」
片腕で良形の乳房を隠して、タンクトップを着始めた。
「見ました…見て仕舞いました…」
「うっ…不覚だ…こんな姿を見られるとは…ねぇ、ヒロ君の恥ずかしい姿も見せて!」
いや、仕事部屋で、そういうことはしない。
「それより、お昼の時間なんですが…」
僕の言葉に怒った表情の美里さん。
「お昼?レディが困っているのよ」
そうなるの?僕の恥ずかしい姿を見れずに、困っているだけの気が…
美里さんを宥めて、この部屋での行為は止めることが出来たが…そのまま、お持ち帰りをされて、美里さんの定宿で3ラウンドほど相手をして、今日のところは放免された。そして、帰り際に、
「ヒロ君、また来週ね♪」
って、それはそれで体力が持たない。
---エフ---
翌朝、洋子が出勤したので、疑似体験用プログラムのルイバージョンは危険だと伝えた。どう、危険かと尋ねられたので、昨日のことを話した。お持ち帰りされた事は伏せてだ。
「それは、危険ねぇ…ヒロ君だけならいいけど」
いやいや、僕を巻き込まないでください。
そして、インをすると、意外な人物からメッセージが届いていた。
「突発イベが発生した。最強ペア決定戦だそうだ。優勝ペアの2名にはそれぞれ願い事を1つ叶えてくれるそうだ。自分はエルのロストした<弓>のスキルの復活を願いたい。協力してくれ アース」
エルの為かぁ。協力はするよ、アース。僕はアースの居場所を調べて、アイツのいるファストの街に転移した。そして、アースと合流をした。
「来てくれると思っていたよ」
「エルの為だろ?それなら協力を惜しまない」
二人で、エントリーをしに行った。エントリー受付口は混雑していた。あぁ、知り合いもいるなぁ。
「お~い、ツヴァイ!」
ツヴァイがこちらを振り向き、近寄って来た。
「おい、まさか…お前ら組むのか?アース、エフ」
ほぼ同時に僕達は頷いた。
「反則級が組むのは反則だぞ」
ツヴァイが苦笑いしている。
「ツヴァイは誰と組むの?」
「レイジだ」
「あっ、エフ、アースさん、こんにちわ」
カザミネだ。
「カザミネも出るの?」
「えぇ、ロナさんと出ます。アースさん、エフはどなたとですか?」
「自分とエフで組んだ」
アースが答えた。
「えっ?反則でしょ?ソロのツートップが組むなんて」
「ソロプレイヤーだから、連携が取れないと思うよ」
僕が答えた。
「連携なんか必要ないでしょ?」
【たぶん、決勝の相手は、グリーンドラゴンとハイエルフのペアだ】
アースからウィスパーが届いた。
【あぁ、それで僕と…納得】
返事をアースに返した。アースには独自の情報網がある。義賊コミュニティーという組織のトップをアースがしている関係で、得た情報網だ。僕が知っているって、アースには言わないし、他の誰にも漏らすつもりもないけどね。
で、予選1回戦はツヴァイ・レイジペアが相手となった。
ツヴァイは魔剣使いで、レイジはタンカーだそうだ。僕達の場合は、アースは英雄で、僕は極悪非道な鬼畜になるのかな?まぁ、いいっか。
アースにツヴァイを頼んだ。タンカー相手だと、アースの分が悪いみたいなので。開始早々、飛ぶ斬撃を爆裂で居合い斬りにて放った僕。飛び出した斬撃は、レイジ、ツヴァイの傍を通り抜け、ブーメランのように二人の背後から、斬りつけた。戦闘フィールドから消えるレイジとツヴァイ。
「おい、自分の出番はないのか」
アースは笑顔で小突いてきた。ハイエルフ戦に向けて、ブーメランのような飛ぶ斬撃を練習しておいて良かった。
試合後、ツヴァイ達が近寄って来た。
「エフ、あんな斬撃避けられないぞ。まさか、アースを囮に使うなんて、贅沢な使い方をしたな」
苦笑い気味のツヴァイ。
「それもあんな数多くの斬撃が、飛んでくるなんて予想してなかったよ」
と、レイジ。こちらは、悔しそうだ。アーマーの弱点、関節部分を狙って撃ち抜いたからね。タンカーと言えども、後方からのアレは耐えられなかったようだ。
「だから、連携なんかいらないって言ったでしょ」
って、カザミネ。
「良い相棒に巡り会えたよ」
と、アース。
グリーンドラゴン、ハイエルフペアの戦いをチェック。ドラゴンのブレス攻撃は受けたくないよな。ハイエルフはバリアのような障壁を展開できるみたいで、無傷で勝ち進んでいった。これは強敵だな。手立てを考えないと、エルにプレゼントが出来なくなっちゃう。