---ヒロ---
企画会議…眠い…くぅ…
「あぁ、ヒロさん!寝ないでください」
あっ、寝ていた。どうして会議って寝やすいのだろうか?議論している声が子守り歌に聞こえる…くぅ…
「もう、先輩…起きて下さい」
あぁ、またかぁ…くぅ…
会議が終わると眠気が覚める。どうしてだろうか?喫茶スペースで、会議の決定事項を聞く。
「種族選択システム?う~、現状ではダメだと思う」
「どうしてですか?」
「マシンパワーが足りない。そうだな…もう1棟ホスト部屋が無いとダメかな」
僕の体質を知った会社側の配慮。企画会議は予備審査みたいなものになり、ここ喫茶スペースでの雑談が、本会議になったらしい。
「そうか…予算が現状では難しいなぁ」
渋い顔のお偉いさん。
「では、テストは出来るか?」
構想資料と、大まかなアルゴリズム表を見て、判断を下す。
「難しいですね。VRフィードバックを無くせば、システムの負担は減るので可能です」
次の議題の資料が手渡された。VRシステム無しでのプレイ…単純にRPGゲームだけを楽しみ、仲間との会話を楽しむ、本来のゲームのあり方だ。
「このゲームの特徴を切り取るんですか?」
「まぁ、医療現場へのフィードバックが、我が社の担う役割だと思っている。しかし、このゲームは我が社だけでなく数社で運営をしているのだが、他社ではゲーム人口の裾野を広げたいようだ」
数社で運営をしているが、プログラム、ハードウェアは我が社がリードしているようだった。他社もVRヘルメットを出してはいる。ただ、AIシステムの保守・管理・改修は我が社で行っており、ゲームシステムの大半も我が社で手がけていた。
「う~、プレイヤー人口が一気に増えると、それに対応するNPCの数も増加させないといけないから、どうだろう?」
「差別化があってもよい。例えば、フリーなNPCではなくて、固定なNPCとか」
固定のNPCとは、ある地点から動かないけど、重要なヒントをくれるキャラクターのことだ。
「まぁ、端末側にゲームの大まかな部分をダウンロードしてもらい、端末側のマシンパワーでこなしてもらえば、サーバーの負担は減るかな」
「じゃ、これは他社さんにまかせてよさそうだな。あっ、ヒロ君、アルファーテストは頼むよ、メーカーを選ばず、同じサービスを提供するんだから、同じように出来るかのテストね」
はぁ…仕事が増える…
「そういえば、ヒロさん、それって作ってありましたよね?」
開発部の後輩から言われた。うん?それって何だ?はて?
「ヒロさんが、まだ開発部にいた時、RPG要素だけ遊びたいって…一人で5体操っているのを見た記憶があります」
あぁ、そんなこともしたなぁ…泊まりの連続で、他社のRPGにアクセスできない状況に陥り、自社のゲームを自分なりに楽しむ…
「ヒロ君、それって、今のシステムでも動くのかね?」
上司が食いついた。
「動くと思います。ただ、マップデータとかアイテムデータを端末側にダウンロードする必要があります。サーバーに負荷を掛けずに、バレずに遊ぼうと思っていたから…」
「あぁ、サボっていたんだな?」
しまった。上司にサボタージュ告白をしてしまった…
「サボった件はチャラにする代わりに、そのシステムを完成しろ。パッケージ販売方式として他社に提言するから」
あれは確か…
「無課金でプレーだったかな。決済システムを絡めると、端末に付加が掛かるから…あっそうか、USBメモリで売り出せば、メモリ内にIDを埋め込み、IDに対してクレジットカード登録をしてもらえば、課金での負荷は無くなるかな?」
「わかった、その方向で、相手方には準備をしてもらう。君は、そのシステムを完成させてくれ。勿論、今の仕事と並行でな。頼むよ」
って、お偉いさんは退場した。はぁ…休みが…
「ヒロさん、必要な物は洋子さんに伝えてくださいね」
「とりあえず、水冷のデスクトップ1台と、ターボファン付きのデスクトップ1台、ノートを4台、用意してくれ。耐久テストもしないとダメだろ?」
「あぁ、端末側の負荷測定ですね。わかりました。各機には温度チェッカーを装着するようにします」
開発部の者が喜んで退場した。デスクトップの作成…楽しいもんなぁ…特にパーツの買い出しなんか…あぁ、買い出しに行きたい…ジャンク屋行きたい~
「で、企画部は何の用かな?」
「種族変更の件です」
「却下だ」
即答した僕。いや、なんで僕が決裁をしているだ?僕の役職の範囲を逸脱していると思うんだが…僕以外、誰もおかしいと言わない。退場していったあの上司にしても…
「テストとかでもダメですか?」
「見た目だけでなくて、動きも種族特有にしないといけないだろ?例えば、食事をする場合、狼男が箸でちまちま食わないだろう?絶対とは言わないけど。ドラゴン族同士の交尾なんかはどうするんだって話だ。人化した状況で再現するんなら負荷は問題ないけど、妥協点をどうするかで、負荷率も違うから、一概ではないよ」
「人化じゃ…ねぇ…リアル感が…」
企画部の着地地点はその先なんだな。でも、龍姫も龍王もクィーンも人化しているんだが…プレイヤーの欲望は違うのかな?獣姦希望者が多いのかな?
「スキルを種族特有にするとかで、差別化するしかないだろう。問題は…グラフィックがネックだよ。あぁ、あと、装甲の厚さによるダメージの変化も数値化して、VRシステムに送らないとダメかもな。リアルを追求していくならば」
意気消沈状態で企画部は退場していった。あとは、運営か…
「で、運営が何かな?」
「洋子さんからお聞きになっていると思いますが、船の移動のクレームが…」
あぁ…それかぁ…
「じゃ、船の中の施設を良くして、時間を潰せるようにするのは?乗合船のイメージでなくて、豪華客船のイメージにするんだよ。レストランとかホテルとかカジノとか…どうかな?」
「あぁ、いいですね…矢切の渡しのイメージだったから…そういう発想はなかったです。そうか船自体が1つの街にすれば良いのか…」
「低運賃でも乗れるが、高額を払えば、豪華な船旅ができるとなれば、楽しめるだろ?船の先の街で楽しむんだ。金持ちしか乗らないよ。当面はね」
「当面?」
「そうだよ。だって、巨大な迷宮があるんだよ。あそこには。一攫千金な者がいてもおかしくないと思う」
「あぁ、そうでしたね…まぁ、リアルと違って、建造費は同じだから…開発に相談してみます」
明るい表情になった運営の者達が退場していった。さて、僕の仕事場に行くかな。
仕事場に着くと、仮眠室にゴー。会議の後の僕のルーティンだ。洋子も後輩達も何も言わない。気持ち良い睡眠…だけど、突然揺り起こされた。
「問題発生か?」
「うん、寝てばかりでなくて、私をかまってよ~」
美里さんだ…彼女と見つめ合う僕。しかし、眠気に勝てず、彼女の胸に顔を埋めて…くぅ…
「え?え?ちょっと、そこにヨダレたらさないで~」
遠くで美里さんの困ったような声が聞こえている…すぅ…