---ヒロ---
ジョブを考える…あぁ、転職条件やマスター時のプレゼントなどなど、1つのジョブを考えるのに時間がかかる。
杏とつばさのコンビは、順調にドタバタしながらツヴァイの塔に突入した。バサ姉はヴィヴィ(杏のキャラ名)を囮に順調に敵を屠っていく。あぁ、バサ姉はレベル50になると直ぐに、剣士に転職した。相棒が遊び人では攻撃力がなさ過ぎるから。
そして、ヴィヴィは遊び人をマスターして、踊り子に転職した。
「なんですか?あの初期装備は…」
バサ姉が固まった。あぁ、踊り子の初期装備は魔法のビキニである。アレを装備していないと、MP消費無しでの魔法攻撃ができないのだ。
「ハイレグ…さすがエロいですね、ヒロ先輩は…」
僕のエロさは否定しない。見た目は大事だよ。うんうん♪
「でも、見た目はアレだけど、強さは半端ないよ。遊び人の攻撃回避はそのままだし、MP考えないで魔法を撃てるし…難点は、魔法を余り知らないことだ」
「え?どうするんです?」
「ボーナスジョブだもの。踊り子をマスターした後に、賢者をマスターすれば、最強の魔法の使い手にはなる…はずだ」
「ははは…いったい何年かかるんでしょうね」
つばさは苦笑いしていた。攻撃不向きな相棒で、この先も苦労しそうだから…
「ねぇ、ヒロ君…賢者なのにハイレグでビキニってこと?」
洋子が唖然としている。
「そうそう、威厳が無さそうだけど、威厳あるジョブって、良いでしょ?」
「あ…ははは、ヒロ君らしいな。で、その元になる遊び人はどうすれば、なれるの?」
「そこが問題だよ。簡単になれたら、無敵な者が多くなってしまうし。何かのキャンペーンか、隠しアイテムを見つけた者とかかな」
「まぁ、賢者をマスターした者がなるのが、最適だよね」
「だから、逆の発想にしたい。もっとも、賢者らしくない者に、なって欲しいだ。あと、踊り子は女性限定だし」
「ドエスだね~男性キャラが狙っても、残念でしたにするのかぁ~」
「参考になります。このドエス加減が、このゲームの魅力ですよね~」
って、僕と洋子の会話を聞いていたはじめが頷きながら言った。
「イーグルジャンプだったら、没だろうな」
「たぶん…」
「そうだ、バサ姉。生産スキルもテストしてくれ」
「え?相棒がどんどん先に…杏ちゃんに言ってくださ~い」
悲鳴のようなつばさの返答。そうなのか、杏にメッセージを送ると、
【了解です♪街に戻ったら、試します】
っと、返信が来た。
---美里---
喫茶コーナーで彼が出てくるのを待っている。1日に数回、タバコとコーヒーを求めて、出てくるのが日課である。
しかし、今日に限って、なかなか出て来ない。どうしたんだ?数時間、ぼぉ~っとして待っていると、書類の束を抱えた者達が集まってきた。彼が出てくるのか?
待ち人が席に着くと、灰皿とマグカップに入ったコーヒーが運ばれていき、彼の前には書類の山がいくつも出来始めた。
「あぁ…今日もこんなに有るのか?」
「最終確認をお願いします」
「お前ら、仕事が早すぎだろ?」
「それは、トップが早いから」
彼を囲んでいる者達から笑みが零れている。第二チームは少数精鋭だと聞いたけど、事実のようだ。その煽りで、第一チームは並クラスの者が多人数で、彼の指示にてんてこ舞いらしい。
「リンクの件は?」
「まだ、調整中です。リンクする際にVRヘルメットを再起動するので、接続速度の短縮は無理かもしれません」
「安全第一で良いと思う」
「了解です♪」
「最終エリアの方は?」
「手直しされたマップを3D表示化しています」
「円周内部のクレーターと街と隣接する丘の可視深度は、きっちり表現してくれ。降りられる高さでは無いっていうのが、肝だ」
「でも降りたり、昇ったりする者は出るでしょうね」
「昇ることは出来ない方向で頼む。結界か何かで弾くでも良いから」
「了解です」
「あと、なんだっけ…」
書類の山の書類に目を通していく彼。で、気になる書類にだけ、コメントを言っているようだ。
「りん、課金で選べるアバターパーツも用意してくれ」
「はい、青葉ちゃんに頼んでいます。コウちゃんは、相変わらずNPCのラフで、手一杯のようです」
「で、なんで、第一運営が来ているんだ?」
彼の睨みに怯む第一運営のリーダー。
「いや…こちらの新しいエリアのラフをお持ちしました」
「こちらのチームでは、これ以上の仕事は無理ですよ」
「そうですけど…」
彼が合図をすると、第二チームの者達は解散して、それぞれの部署に戻っていく。
「ラフねぇ…」
手渡されたラフに目を通していく彼。
「うん?このエリアもコラボ狙いなのか?純粋な素手では無くなるが…」
「営業が…そういう方向に上も…」
「ならば、そうすれば良い。僕は案を出しただけだ。それをどう活用するかは、そちらのチームの話だし」
「ですから…」
「だって、無理だろ?あぁ、そういうことか…」
1枚の書類に目を落として、
「7つの玉の争奪戦か。PVPイベントのエリアにするのか。それはそれで良いけど、プレイヤー同士の殺し合いって、どうなんだ?」
「良くないです…だから、上に…」
「はぁ…僕が掛け合えって?無理だと思うぞ…僕は下っ端だし、違うチームなんだからさぁ。そこにいるスポンサーに頼めば?」
彼は書類から目を離さずに、指で私を指した。
「あぁ、美里様…いらしたんですね。今の話は聞かれていましたよね。お願いです。上と掛け合ってください」
私の前に来て懇願する第一チームのリーダー。あっ、彼がいない。しまった、目を逸らした隙に…はぁ…溜息が出るよ、まったく。
その後、上と掛け合いに行き、プレイヤー同士の殺し合いは回避できた。重役専用の会議室を出ると、彼が待っていてくれた。
「で、僕に用?」
「えぇ…」
「どこで話す?倉庫か?」
あの倉庫は危険だ。
「違う場所が良い」
「では、君の部屋で」
私の部屋に来てくれる気になった彼。彼と共に家に帰宅した。
◇
いつも彼が座るソファに、彼がまったりとして座っている。
「で、何?」
何か、いつもと違う雰囲気の彼…
「あなたのことが知りたい。前職はなんだったの?」
直球で勝負する。
「前職?テストプレイヤーだけど」
それは、今もだろうに…
「そうじゃなくて、今の会社の前は何をしていたの?」
「なんで、そんなことを訊く?ゲーム作りに関係が無いだろ?」
表情を買えずに答える彼。
「私が属している財団で、あなたを迎え入れようかを検討しているの。それで、あなたの職歴が知りたいのよ」
彼の情報を欲しい本当の理由を話した。そして、あの彼のプロフィールの書かれた書類を見せた。
「あっ…あぁ、そういうことか…人違いです。確かに同い年ではあるけど、僕では無い」
と、意外な返事。
「よく間違えられるんですよ。この人とね。でも、この人の名前は『ひろすけ』でしょうけど、僕の本名は『こうすけ』ですよ」
はぁい?ヒロ君って、みんな呼んでいるじゃない…
「確かにニックネームで『ヒロ』と呼ばれていますが、あれって、コウと区別する為です。以前、何かのパーティーの時に『コウさん、ちょっと来て』って言われて、僕とコウが向かったことがあるんです。それ以来、洋子が僕を『ヒロ』って呼ぶようにしたら、皆が右に習えをしてね」
へっ?何ですって…
「僕の前職は公務員です。ストレスに耐えられなくて、天職だと思ったテストプレイヤーになったが、あの会社に入社したきっかけだし」
そう言えば、コウの憧れの人ってヒロ君だったよな。以前から知っていたのか。
「そういうことですか。僕に近づき、僕のプライベートに入り込み…調査員だったとはね。期待して損したな」
期待?公私の私の部分かな。いや、期待しても良いと思う。
「そういうことなら、手加減無しでも良いですね」
手加減無し?どういう意味?
「あっ…」
身体に異変がすぐに現れた。金縛りにあったように大の字のまま床の上にいる。いつ、こんなポーズを取ったんだ?
「今度はこちらから質問します。身体に答えてもらいましょうかね?」
何かをポケットから取り出した彼。極小の注射器のようだ。スパイ映画で、自白剤を打つようなやつ。注射器に何かの薬液を入れて、私の前に来た。いつものエロい視線は感じられない。ここに来た時と同じ無表情なままだ。
「舌を出して♪」
私の意志とは無関係に私の身体は、彼の指示の通り舌を出した。
「ちょっと、痛いけど。痕は残らないからね♪」
チクってして、私の舌に何かを注入した。
「で、君達の財団は、僕をどうしたいんだ?別人と分かった僕をねぇ」
ブラウスのボタンが外されて、ブラのホックも外され、ブラを上に持ち上げた。
「良い形だよね。好きだよ。この胸…」
両方の乳首にも何かを注入された。そのあと、手探りでパンティの上からクリにも…
「どう?拷問されてる気分って…最期におへそに入れるとどうなるかな?」
殺される…助けてぇ~!ペットでも良い、好きにして良いから…ねぇ、ヒロ君…おへそにチクりと痛みが走り、目の前が真っ暗になって…
◇
意識が戻ると、自分の部屋のベッドにいた。衣服をチェックすると、ブラウスもブラもパンティも着用していて、何も不自然な点が無い。
夢?リビングに行くが彼の姿はない。部屋に設置した隠しカメラの映像をチェックするも、彼が来た形跡は記録されていなし、私が拷問を受けた形跡も無かった。夢だったのか?しかし、異変は1つだけ有った。彼のプロフィールの書類が無くなっていた。
---ヒロ---
朝、シュレッダーの前でいらない書類を裁断していると、着信音が。応対すると美里さんだった。
「ねぇ、ヒロ君、夕べうちに来たよね?」
って。
「行かないです。昨日は完徹でふらふらですが…欲求不満じゃないですか?」
「来なかった証拠はある?」
行かなかった証拠?う~ん、一人で…いや、そうだ
「青葉が証人になってくれる。1時間おきくらいに、来ていたから。ここから美里さんの家って往復1時間強だから、証人になるんじゃないかな?」
っと、返答しておく。
「昨日は会ったよね?」
「昨日は…会社の喫茶コーナーで会ったでしょ?その後、美里さんは一人で帰って行きましたよ。証人はいっぱいいるし、監視カメラの記録映像もあるんじゃないかな?」
「そう…」
一方的に通話は切れだ。何を言っているんだ、この人は、朝っぱらから。