---ヒロ---
連日、ジョブ関連を考えている。在り来たりのジョブと転職条件では、つまらないなぁっと、僕らしいと言われる案をひねり出す。結構、苦痛であり楽しいのだが、インする時間がなかなか見付からない。
あのゲームをすることには興味がないのだが、エルやルイさん、ドライグともっと触れ合いたいという思いが強いというか。まぁ、あのゲームでの僕の役目は、アダルト機能のベータテストに引き渡す前のテスト、修正だからな。
アルフガンの方は、素人男性目線のチェックも必要と言うことになり、知り合いの竜崎隼人に頼んだ。キャラ名はファルコンだ。
僕達の楽しそうなヤリトリに惹かれ、洋子もマヤというキャラ名で参加し始めた。
「パーティーの最大人数って、どの位ですか?」
つばさにきかれた。
「無制限だよ。だから、アルファーテスター全員でパーティーを組んでも大丈夫」
「ギルドとか、無いんですか?」
「有った方がいいかな?」
「有った方がいいかな。で、ギルド専用の掲示板で、ギルド内での情報交換もあるといいなぁ」
そうだな…サーバーを1台増設でまかなえるかな?
「わかった。その方向で作ってみよう」
「あとですね、パーティーとギルドでの戦いにメリットに差があると嬉しいです」
つばさの希望は受け入れるかな。そういうアクセントは必要だよな。
「そうだな…攻撃力限定で、ギルドボーナスは1.5倍で、部隊ボーナスは1.2倍にするか」
浮かんだアイデアを口にした僕。
「ギルドと部隊の違いはなんですか?」
「どちらもギルドでのパーティーだけど、ギルドマスターがいる場合はギルドパーティーで、ギルドマスター不在の場合は部隊パーティーだ。ギルドマスターの有る無しも考慮した方が良いだろ?マスター特権というか」
洋子がメモをしてくれている。採用だな。
「それも人数は限定しないんですか?」
「しない。多ければ倒しやすいが、獲得経験値は減るから、それも作戦として考えてもらえば良いと思う」
モンスターごとに経験値が設定されているので、得られる経験値は人数割になる。ヴィヴィのようなキャラの場合、相棒の負担は大きい。ヴィヴィを鍛えながら、冒険するんだから。
そういう意味では、将来的には無敵キャラになるかもしれない踊り子ではあるが、成長するには一人ではまず無理で、信頼できる辛抱強い仲間が不可欠になる。そこに気づいたプレイヤーだけが、最強の魔法使いになれるのだ。
「そうだ、生産スキルはどうした?」
「これって、道具屋で道具を買って、初めてスキルが0で発現するんですね?」
「そうだけど…」
「杏ちゃんが悪戦苦闘しています。レベル0じゃ、まともな物が作れないって」
「あいつ、何を買ったんだ?」
「ノミです」
「木工か?まぁ、最初は木の棒だろうな。レベルが上がっても木の杖だし」
「ランク3で、それって、使い物にならないって…」
「乳鉢を買うのが正解なんだよ…」
「それって、なんのスキルですか?」
うん?乳鉢を知らないのか?
「薬草とか薬効のある実などをすり潰す道具だよ。発現するスキルは製剤だ。薬草をするだけで、簡易の回復薬ができる。価格は高いけど、すぐに元は取れるはずだ」
驚いた表情のつばさ。
「ランク0でも回復薬にはなる」
「うっ…先に言ってください…鬼…」
泣きそうな表情のつばさ。
「そういうことに気づくかも、テストのうちだよ」
僕の情報をバサ姉がヴィヴィにメッセージを送った。
さて、僕もインをする。違うテストをする為だ。宿屋の待合室にはファルコンとマヤがいた。
「ファルコンのアイテムボックスに聖剣と聖盾を入れておいた。それを装備をして、剣士をレベル50にしてくれるかな。転職の勧めの画面が出るはずだ」
ファルコンは頷いて、言われたアイテムを装備した。
「何に転職できるのですか?」
「聖騎士だ」
「なるほど…」
ファルコンはその状態で、ツヴァイの塔に向かった。
「マヤのアイテムボックスには赤鼻を入れておいた。ソレを装備して、魔法使いレベル50を目指して」
「一人だと辛そうだけど」
「あぁ、ファルコンに付いて行くか、ヴィヴィ達に付いて行くかしてみて」
「そうすると、何になるの?」
「道化師。で、魔法使いと道化師をマスターすると魔術師になる」
「魔導使い、魔法使いとどう違うの?」
「魔術師は物理現象無視のイリュージョンができる♪」
「ヒロ君らしいわね。了解♪で、ヒロ君はどうするの?」
「僕は、NPCキャラと契約して精霊使いを目指すんだ」
「NPCキャラって契約できるの?」
「あぁ、あるアイテムを持っているとね。で、このジョブだけは、レベルに関係なく転職もできる。あるアイテムを持っている状態で契約をした瞬間に、精霊使いのジョブなんだ。取り敢えず、剣士だけはマスターしてから、テストしようと思うけど」
「じゃ、私はヒロ君と一緒に冒険だな」
「なぁ、僕はファントムだ。ゲーム内ではキャラ名で呼んでね、マヤ♪」
---美里---
アルファーチームの部屋に行くと、あずささん以外の全員で、アルフガンのアルファーテストをしていた。しかし、プレイヤーの頭部にはヘルメットはない。
「VRヘルメット無しでテストできるの?」
一人でモニタリング作業をしているあずささんに聞いた。
「えぇ、サーバーの負荷を減らす為に、VRモードをオフにしてあるので」
アルファーチームのテストモードだと、そういう選択も出来るのか。
「で、テストは順調なの?」
「グラフィックデータが追い付かないというか…その辺りが充実すれば、ベータに移行できると思います」
「で、何か、用ですか?女王様♪」
って、ヒロ君に声を掛けられた。
「最近、インしていないから、どうしたのかなって」
「二つのゲームは無理ですからね。あっちにインしたくても、なかなか時間が取れないというか」
そうだよな。
「いや、こっちの方がはまるでしょ。ゲーマーだったらね。アダルト機能とかエロ要素狙いだと、あっちだけど」
と、つばささん。
「あぁ、そうだ、課金要素も考えないと。利益を出さないと、予算が…あぁぁぁ…」
ヒロ君の悲鳴のような呟きが聞こえた。
「ちょっと、まだアウトしないでよ!せめて、レベル30位までつきあって」
と、洋子さん。え?洋子さんもプレイしているの?
「わかったよ、洋子。バサ姉でマヤを引き取れない?」
「え?無理です。これ以上経験値を減らさないでください」
つばささんの哀しそうな声が聞こえる。
「そうか…じゃ、ファルコンに頼もうっと…洋子、隼人がツヴァイの塔の25にいるから、そこまで連れて行く」
「了解♪」
物凄く楽しそうにプレイしている面々。私もしたいなぁ…
『したいのか?』
脳裏に誰かの声が響いた。誰?あの無表情なヒロ君か?
『今日は、どういうシチュエーションが良いのかな?』
どういう?どういう意味?
「で、女王様はどうすれば、お帰りしてくれますか?」
ヒロ君の声で現実に引き戻された気がした。
「え?え~っと…」
「まぁ、取り敢えず、ここから出てください。テスト中は部外者立ち入り禁止ですから」
っと、アルファーチームの部屋のドアを二人で出たのだが…廊下のはずの場所は廊下ではなかった。ここは…
私は満員電車の車内にいた。ぎゅうぎゅう詰めで、身動きができない。手はつり革を握って…いない?手首をつり革の輪っかに固定されている。足先は床に着いていない。宙に浮かんでいる状態だ。
多数の獣のような視線を感じる。無数の手の平や、固い物が私の身体を這いずり回る。逃げたくても、手首が動かない。もみくしゃにされていく、私の身体。どうして…いきなり車内灯が消灯して、真っ暗になった。
「大丈夫、美里さん?」
ヒロ君の声で、瞼を開くと、廊下だった。
「立ちくらみ?」
いや…あれ?
「大丈夫だよ」
「それならいいけど」
しかし、
『電脳空間では時空をとべるんだよ』
って、脳裏に声がした。あれって、電脳空間なのか?考えに集中していた私の胸に、触られている感覚があった。ヒロ君が私の脇に腕をいれて、抱き抱えてくれていたが、手の平は私の胸を揉んでいる。
「ヒロ君…何しているの?」
揉んでいる動きが止まり、
「いや、たまたま触ったら、気持ちが良くて…」
廊下で何をしているんだ?このエロ社員は。
「医務室に行きましょう」
と、ヒロ君により医務室に連れて行かれた。医務室のドアを入ると、真っ暗だった。何も見えない。次の瞬間、とても眩しい光が目の前から差し込んでいた。私はどこかに横たわっているようだ。口には酸素マスクのような物があてがわれている。
「なぁ、言っただろ?君は僕達のモルモットなんだよ」
目の前に二人の男性の顔が現れた。ヒロ君とヒロ君と同じ顔の者。
「今、酸素マスクから、惚れ薬を混入した空気を送り込んでいる」
何をするの?ちょっと待って…
「あれほど、弟のジャマをするなって忠告したのに」
「兄さん、美里さんはエムなんだよ。きっと。僕達に遊ばれたいんだと思う」
「なるほどね」
勝手に会話を成立して欲しくないぞ。メスで、服を首元から股に掛けて斬り裂かれた。
「どうする?コウは右半分と左半分のどちらがいい?」
「兄さんは内臓しか興味ないでしょ?僕は表面しか興味無いし」
なにやら、怖い話をしている二人。私を解体するのか?
「わかった。骨から外はコウにやる。僕は骨の内側だけもらうよ」
◇
内臓だけになった私は、ホルマリン液の中で生きている。何も感じない。いや、見ること聞くことはできる。それに、この悶々さは、どうして?私は胸もクリも無いのに、刺激だけは感じる。
「あぁ、神経は弟の方にあるからな。弄られている刺激は脳へ行く様にしてある」
私はこのまま、なのか?
「もう一度、チャンスをやろうか?弟のジャマをせず、弟に奉仕をしろ。契約違反すれば、君はここに来るからな」
って、言われ、眠気に襲われた。
◇
目が覚めると、医務室のベッドにいた。ヒロ君の姿は、ここにはない。
---ヒロ---
グラフィックチームと喫茶ルームで会議中。ようやく、街のNPCのラフが完成。明日からデジタル化をイーグルジャンプ社にしてもらう。
「引き続き、青葉は課金アバターを頼む。コウはアイテム類を頼む。はじめ、うみこはアイテムとモンスターのラフだ」
グラフィックチームの出向メンバーに指示を出した。
「ボス、いいですか?」
いや、僕は、はじめのボスではないが、
「なんだ、はじめ?」
「私も休み時間にアルファーしたいです」
「アダルトモードのか?」
「違います。アルフガンです。一緒に作っていて、これほどやりたいと思ったのは初めてです。お願いします」
純粋なゲーマーほど、興味あるんだろうな。アレって。
「わかった。じゃ、はじめに指令だ。課金要素を見つけてくれ。利益を出せるようにしないと、開発打ち切りになりかねない。ゲーマーとして、何に課金しても良いかを知りたい」
「あっ、じゃ、私も」
っと、うみこ。
「うみこもかぁ。じゃ、りんも頼む。」
「えっ?私もですか?ゲーマーじゃないですよ」
「素人ゲーマーの意見も聞きたいから。毎日テストプレイ時間も用意しよう。1時間くらいだな。それでどうかな?」
「私も良いですか?自分で作ったパーツやキャラも見てみたいし」
と、青葉。
「じゃ、まかせた。あとで、テストIDを発行してもっていく」