---美里---
財団に調査結果の資料を持っていった。人違いだったと結論づけた。そして、財団の医療機関で精密検査を受けた。その結果は異常なし…
財団の情報管理システムで、調べて見る。生まれ年を無視して、公務員リストで『水谷浩介』という氏名を全検索してみた。しかし、ヒットせず。なんでだ?嘘を吐いているのか?
『電脳空間では時空をとべるんだよ』って言葉も引っ掛かってはいる。もし、時空ではなく次元だとしたら…別世界、並行世界から来た…まるで『時をかける少女』のような話になる。
彼らの存在自体を疑い始めた私。
『何が真実で、何がリアルかはそれぞれの者が決めることです』って言ったヒロ君。この世界がリアルと私が決めれば、ここがリアル世界なんだろう。ヒロ君にとってのリアル世界は、あの廃墟な街の世界みたいだ。この世界は彼にとって夢の世界になるのか?
あれこれ、考えて、財団の研究員の意見も聞いたけど、結論は出ず。いや、研究員は全員口を揃えて、『何が真実で、何がリアルかはそれぞれの者が決めることです』と言う。ヒロ君と同じ考えなのか?
疲れたから、帰宅をした。家の帰り着くと、鍵は開いていた。恐る恐る室内に入ると、ヒロ君がいた。
「どうやって入ったの?」
「えっ?美里さんが合い鍵をくれたじゃないですか?立ちくらみが激しいみたいだから、心配で来てみたんです」
と、言いながら、エスプレイ用の小物入れを物色している彼。
「それに興味あるの?」
「まぁ、有ります。ゲーム内で使えそうなアイテムが無いか模索していました」
ゲーム内で、エスプレイ用の道具を?まさか、課金アイテムにするのか?
「で、今日はどういうシチュエーションが良いんですか?」
物色しながら、私に訊いてきた彼。えっ?!そのセリフは…
「あなたは何者?」
「それは美里さんが決めることです。僕は僕の役割をこなすだけですから」
「役割って?」
「アルフガンを完成させることです。どんなゲームになり、どんな人気になるのか楽しみです。逆に訊きます。美里さんは僕にとって何者ですか?」
どう答えれば良いのだろうか?脳裏に表裏分離された自分が甦ってきた。
「私は…」
言葉が続かない…恐怖によってでは無く、考えがまとまらないのだ。
「私は?」
答えを求められている。どう言えば良いのだろうか?
「私です」
そんな事を言ってしまった。問いに対する答えになっていない。
「わかりました。僕にとって私なんですね。では、僕の好きにしても、私なんだから問題は無いですね♪」
え?おかしいだろう?その理論は…そんなことを考えている私を余所に、彼はソファに座り、テレビを見始めた。テレビ画面には…あの時見た映像が流れていた。
「美里さんって、こういうプレイが好きなんですね。驚きましたよ、久しぶりにアダルトビデオを買いに行ったら、『美里』っていうタイトルがあるんですもの。パッケージを見たら、美里さんだし」
ソファの前にあるテーブルにパッケージが置かれていた。そのパッケージを手に取り、確かめると、私が調教されている写真が、何ショットも印刷されていた…
「思わず2本購入したので、1本はプレゼントします♪」
売っている…なんで?
「ねぇ…」
ヒロ君に声を掛けたのだが、彼はいなかった。私は財団の個室形式の情報管理端末の前にいた。手にはあのビデオのパッケージを手にして…また、時空を飛んだようだ。
---ヒロ---
洋子達は定時で帰っていった後、やっと他部署の仕事から解放されてインができた。解放されたと言うのは語弊があるな。他部署の者達も定時で帰った為に、僕を必要としていた者がいなくなったのだ。。
そして、剣士のレベルを上げていく。レベル100まで遠いなぁ。強制ジョブチェンジする者って現れるのかな?などと考えながらプレイをこなしていく。強制ジョブチェンジをするには、レベル100までに稼いだ累計経験値と同じ経験値が更に必要になってくる。
今日のパーティーは、僕と杏だけだ。バサ姉が泣きそうになるのがわかる位、こいつと組むとつらい。攻撃と防御の役に、まるで役立たないのに、経験値だけは持っていく。自分で言うのもなんだが、制作者はドエスなんだろな。つらい戦闘の合間に、街に戻り、生産スキルをテストしていく。
「ねぇ、子作りって生産スキルは無いの?」
杏が訊いて来た。
「ねぇよ。こっちは、アダルトモードが無いんだ。交われないのに、どうやって作るんだ?」
「いや、世代交代もいいかなって」
あぁ、そういうシステムのゲームって、あったなぁ。親から子へスキルや能力を継いで、優秀な子孫を作るゲーム。
「そうなると、アダルトモードが要るよな」
「課金で出来ないかな?」
「VRヘルメットは兼用だから、出来るけど…サーバーがなぁ」
どう考えても、サーバーへの負荷が高くなるよな。
「そうだ…結婚をして家を買うと、子作りって生産スキルが発現するのは?」
あぁ、家を簡単には買えないようにして、人数を絞ればいけるかな?って、言うか、
「結婚っていうシステムが無い」
「作ちゃえ~♪」
はぁ?なんか大変そうなんですけど…プログラム自体はそうでもないけど、結婚に関するルールが面倒だよな。現状、ジョブで頭がパンパンなのに。
「手が空いたら考える」
「待っているよん、ダーリン♪」
嬉しそうな杏。いや、面倒なことを言うなコイツは…あぁ、そうなると、建築という生産スキルもいるだろうな。ジョブに大工とか…あぁ、頭痛えなぁ~
◇
翌日、出勤してきた洋子達に、杏の提案をしてみた。
「それ、面白そうだよね~♪」
って、洋子がメモをしている。採用なのか?
「そうなると、家を建てたり出来る住宅地も作らないと。あっ、でも土地を課金って言うのは有りかと思います」
と、つばさ。
「そうですよ。家でなくて倉庫とかも建築できれば、アイテムを保存しておけるとか」
と、はじめ。話が膨らんでいくのだが、洋子のメモ書きが終わらない。をい、全部採用か?
「じゃ全部、採用ってことで。ヒロ君、頼んだよ~」
洋子が一番のドエスじゃないのか?
「それじゃ、結婚のルールはどうする?」
採用じゃ、しょうがない。決めるだけ、決めておくか。
「一夫多妻制とか?多夫一妻制とか?」
と、洋子。
「そうだね。男女同権だよな…いや、そういうのは何かの特別アイテムが無いとダメにするか。例えば、オットセイの肝とか、女王様の鞭とか」
「あぁ、いいかも。通常は1対1で良いだろうな」
と、はじめ。お前、アダルトモードは苦手だろうに。
「で、財産は共有か?」
「家に倉庫があって、そこに入れたアイテムは共有でも良いんじゃないかな?」
なるほど…男性の手に入れた魔法のビキニが活かせるのか。
「でも、建築スキルの経験値はどう稼ぎます?レベル10で家を建てられるにして」
そうだな…それは大きな問題だ。何で稼ぐかな?
「棺桶との小物?でも、木工スキルになるのかな?」
あぁ、合わせ技で習得も手だよな。
「木工マスターと鍛冶マスターでないと建築スキルが発現しないとか」
「ヒロ君、それって、更に鬼畜だよ」
って、洋子が笑いながらメモに書く。その鬼畜案を採用なのか?
「で、妖精使いには成れたの?」
洋子が話題を変えてきた。
「一晩じゃ無理…バサ姉の苦労が良くわかったよ。つらいな~」
「でしょでしょ」
って、つばさが苦笑いしている。
「踊り子には回復魔法を覚えさせた方がいいな。回復役程度しか使い道がないもんな」
「是非、お願いしま~す」
つばさにお願いされた。更に、ベータへの道のりが遠くなった気がする。