---ヒロ---
「なんか知らない間に仕様書が厚くなってません?」
あずさに言われた。
「あぁ…アルファーテスト中に要望が…はぁ…」
溜息を吐いて凹む僕。
「だってねぇ。やるからには、徹底的にエス仕様にしないと♪」
洋子の声が弾んでいる。
「プログラムは出来たんですか?」
工程管理をしてくれているあずさ。
「あぁ、出来ている。あとは、データ待ちだ。あと、結婚システムで長考中だよ」
「何か問題でもありましたか?」
つばさが訊いて来た。
「離婚する場合、財産分与とかさぁ。某ゲームでは、結婚詐欺で、相手を殺して共有財産を奪うってことが出来たみたいだし」
「死に戻り先を家にして、離婚無しにすれば問題ないかと」
おっ…それはいいかもって、洋子が既にメモ書きをしているし。
「そうだな。離婚無しなら、迂闊に結婚しようなんてヤツは、現れないだろうな。それはそれで解決で…次に問題なのは、子作りだ。VRアダルトモード無しで、『結合中』とか文字で出せば良いかな?」
「それでは、興ざめです」
なぜか居るりん。
「りんはアダルトモード好きってこと?」
「ヒロさんが相手限定ですよ♪」
「コウでなくて良いの?」
一気に顔を紅くしたりん。
「それは内緒でお願いします」
「そうか…同性結婚も考えた方が良いのかな?」
僕の言葉を予想していたのか、りんを見ると、既に顔を伏せていた。
「でも、VRMMOなんですよね?」
と、つばさ。
「そうだけど…アダルトモードとなると、システムはデカくなる。あっちとサーバーは分けておきたいからな。あずさ、サーバーの予想台数は、予算内になるかな?」
書類を見ながら、計算をしてくれているあずさ。
「あぁ、ギリギリかな…そうですね、アダルトモードを入れると街4つかな。これって、最後の街抜きで9つの予定ですよね?」
「そうなんだけど…街5つ分不足かぁ…どうするかな?」
「土地代の課金でどうにかならない?」
「一人でも多数でも、アダルトモードの管理サーバーは1台必要だ。他にも課金要素が必要だ。かといって、結婚に課金にするのは、ぼったくりだろな」
結婚の条件の土地で課金だと、二重取りだもんな。
「課金ってどういう物にすると良いのですか?」
立ち直ったりんから質問された。
「みんなが使わない物がベストだな。みんなが使う物だと、無課金ユーザーを閉め出してしまうし」
「そうなると、アダルトモードは課金かな?」
と、洋子。
「そうなると、結婚以外でも『結合』出来るようにしないと…向こうと違って、NPCとは出来ない方向にするか。PVPのみで、双方の同意有りでね」
「そうだね、同意無しでも、する輩は出そうだよね」
と、洋子がメモ書きをしている。決定かな。
「じゃ、テストはまかせる。僕はプログラムを手直ししてみる」
---美里---
アダルトモードが、他国配信でも解禁された。反響はすさまじく、性犯罪が減ったとか…まぁ、人間とやるよりも快楽は得られるしな。薬物犯罪も減ったとか…薬物に高いお金を出すなら、こっちの方が手軽でお縄にならないし、快楽性も高いと思う。
私達の投資した額が回収出来そうであった。で、回収できた一部を第二に投資する案が出されていた。ヒロ君への投資って意味らしい。次回作はまだベールに隠されているが、資金難って話を第一から聞かされていた。予定に無かったアダルトモードを搭載することで、予算が狂ったらしいのだ。
今回も私が代表して、交渉役になっていた。第二営業の人と、スポンサー契約を結ぶ。もう一人のスポンサー名を聞き出すと、意外な人物であった。なんと、ヒロ君自身だという。
「誰もスポンサーとして名乗りが出なかったので、ヒロさんが身銭を切るって。あの方、ほとんど会社にいるから、お金を使う機会が無い為、給料の殆どを貯金に回しているんです」
そうまでして作りたいのか?とりあえず、スポンサーになったことを知らせに行くかな。ヒロ君の居場所を第二営業で確認してもらった。
「今日は、もう帰ったそうです。プログラムの手直しがあったそうで、気分を変えたいそうです」
会社内にいないのか…どこに行ったのだ?彼の家に行くも留守であった。彼女の家なのか?彼の行く宛てが思い当たらずに、帰宅した。
◇
家の施錠は為されていなかった。私の家にいるのか?自分の家なのに、恐る恐る入っていく。リビングに入ると、彼の気配を感じた。どこにいるの?部屋を見回すが、姿は見えない。しかし、誰かに見られているという視線だけは感じる。どこだ?
突然TVの電源が入り、あの映像が流れ始めた。ソファの方を振り返ると、ヒロ君がいた。
「何度見てもいいなぁ、これ♪」
彼の視線は、私をロックオンした。狼狽える私。
「そんなに怖がらなくても…今日はどうしようか♪」
どうって…私が責めたい…
「この前…美里さんの身体を…」
私の身体をどうしたの?この前っていつの話?
「まぁ、いいや。美里さんがしたくなるまで、見ている♪」
私がしたくなる?何をしたの?あっ…乳房が張って痛い…はち切れそうだ。
「胸が張ってきたのか?この前、乳腺に細工したから…」
はぁ?
「僕しか吸っても出ないようにしたというか…」
お前…あぁ…痛い…
「どうする?痛みに耐える?」
ドエスか、こいつは…ジャケットを脱いで、ブラウスも脱ぎ、ブラを外して、彼の隣に座る。いや、座る以外の選択肢はない気がする。
「どうすれば、良いのかな?」
「早く、吸え!」
彼の頭を掴み、口を乳首に誘導する。
「なんで、命令系?」
えっ…下手に出ないと、吸わないつもりか?はち切れそうに痛い乳房。ダメだ…
「吸ってください…お願いします」
彼は舌で乳首を弄ぶ。吸う気配を見せない。あっ、意識が飛びそう…半分意識が飛んだような状態で、吸い始めてくれた。乳房が通常レベルに戻っていく。
「美味しかった。また、ノド乾いたら来るね♪」
おい、私はミルクサーバーじゃないんだぞ…
「ノドを潤してくれたお礼に、どうされたい?」
「ふふふ、ヒロ君を責め倒したい♪」
願望を彼に伝えた。しかし、
『懲りない女だ。もう一度、地獄を見る?』
って、脳裏に声が響き…私の身体はヒロ君の玩具になった。触覚、視覚、聴覚、思考だけは生きている。呼吸はしないでも良いみたいだ。
『骨から外側が弟の玩具だよ。堪能してくれ♪』
ヒロ君が家から出ると、眠気が生じ、目が覚めると全裸でベッドで寝ていた。
---ヒロ---
プログラムがうまいこと行かない。どうすれば、良いのだろうか?そんな時、美里さんが訪ねて来た。
「どうしたんですか?なんか疲れているみたいですが」
「えぇ、とっても疲れているわよ。君に言いたい事と、確認してことが有るのよ」
玄関口では、話し込んでも僕がつらいので、リビングに通した。
「で、なんですか?」
「今日、私の家に来た?」
「行かないですよ。ここでプログラムと、にらめっこです」
何を言い出すのだ?
「それから、第二の方も私達がスポンサーになることになったわ」
それは嬉しいなぁ♪
「そうなんですか…あぁ、これで悩みから解放されます」
「悩みって?」
「資金難であと街5個分のサーバー代をケチるために、プログラムの圧縮をしていたんです。そうですか。じゃ、今日の作業はここまでだな♪」
「あと、訊きたいんだけど、君のお兄さんって、どういう人?」
「僕に兄はいませんよ。何を言っているんですか?」
「えっ…そんなはずは…」
「最近、美里さん、おかしいですよ。たまり過ぎですか?」
「本当に?双子ってこと無い?」
「うん?なんで双子って知っているんですか?確かに双子ではあったようです」
「あった?」
「生まれて直ぐに、別々の家庭に貰われましたから。う~ん、そう言う意味では兄か弟か姉か妹かがいることになりますね」
驚いた表情をしている美里さん。その時、呼び鈴がなったので、玄関に行くと、りんとコウが来ていた。
「夕食の食材を買って来ました。あれ?お客様ですか?」
りんとコウは、パンパンに詰まったスーパーのレジ袋を持って、玄関に入ってきた。
「美里さんだよ。第二のスポンサーになってくれるそうだ」
「じゃ、問題は解決で、先に進めますね」
三人で美里さんの元に戻った。
「それじゃ…あれは何だったの?」
美里さんが何やら呟いているが、独り言のようなので、スルーした。
「りん、今日は何?」
「今日は、常夜鍋です♪」
「楽しみ♪」
「はい♪」
コウは料理が出来ないので、美里さんのところにいる。
---美里---
「それじゃ…あれは何だったの?」
彼は、私の家に来ていないという。兄もいないと言う…では、あの幻覚は何?乳を吸われて、感じたことのない刺激で、達ししまった私。ベッドの中で目覚めた時、濡れていた。乳首に痕もあった。ソレなのに…
「どうしたんだよ?顔色が良くないぜ」
コウさんに声を掛けられた。顔色は良い訳ない。私に何が起きているのかが、わからないから。
食後、コウさん、りんさんはデータ取りの為、別室にいる。私はヒロ君と同じ部屋にいる。そこで、私の身に起きていることを相談した。
「う~ん。美里さんの意識の一部が、仮想世界にいるんじゃないかな?」
「どういうこと?」
「仮想世界に居続けたいと思う意識が、こっちの世界に帰って来ないんだと思う」
そういう事?
「そんな事ってあるの?」
「う~ん…無いとは言えない。まぁ、希な現象かもしれない」
『電脳世界は時空をとべる』って、ことかな?でも、パッケージは?あれ?カバンに入れて持って来たパッケージが無い。どうして?
「美里さん主演のアダルトビデオかぁ…有るんだったら欲しいなぁ」
エロい視線で舐めるように見ている、目の前のエロ男。
「そうか、あれも幻覚なのね」
少し安心した。彼に連れられてエロビデオ鑑賞部屋に入った。
「美里さんが助演のアダルトビデオなら持っているんだ♪」
耳を疑うようなことを言う彼。
「どういう事?」
何かのDVDを再生し始めると、あの映像が流れ出した。
「これって、流出物らしいんだけど」
流出物…
「パッケージが無いから、見るまでわからなかったよ」
私の見ていた映像とは違う。私を責めているは女性だ。仮面を付けているので、顔はわからない。
「美里さんって、女性相手だとエムなんですね♪」
目の前のエロ男はノー天気なことを言う。私は誰が相手でもエスで有りたいのに。
「そうだ。スポンサーになったようなので、仕様書をお見せします」
分厚い書類を手渡してきた彼。重い…腿の上に重い紙束を置かれて、身動きが取れない…マズイ…しかし、彼は私を置いて、鑑賞部屋を出て行ってしまった。目の前では、あの映像が流れている…