---ヒロ----
ただいま、安眠タイム中…
「ヒロさん、寝ちゃダメですって~」
揺り起こされて起こされた。僕の安眠タイムが…って現在、会議中である。本日の議題は、また違うゲームとのリンクだそうだ。資料に目を通す。「SAO及びALO」とある。
「これなら、シード規格だから可能です。ただ、ヘッドギアは交換しないとダメです」
シード規格とは、コンパクトにまとめられたVRMMORPG作成・制御用のフリーなソフトでの規格であり、シードで作られたゲーム同士は無条件でコンバートが出来、他のシステム利用の場合は、コンバータの作成が容易になるという便利な規格である。ワンモアは乗り入れ、乗り換えを想定していなかったので、考慮されていないが、アルフガンはフリーソフト作者上がりの僕の設計で有るため、考慮してあった。
ただ、ヘッドギアは、神経への伝達方法への違いがあり、あちらのゲームの物は使えない。想定していない神経への信号が出る可能性があるから、危険だと判断した。なので、こちらのヘッドギアとA(アダルトモード)アダプターのセットで渡してベータテストをしてもらわないとなぁ。
「ベータテスターは今回も100名でお願いします。ヘッドギアセットを特典として差し上げる感じで良いかと思います」
と、僕の構想を役員や各チームのリーダーに伝えた。
「予算的には、もう少しいけますが」
営業のリーダーが言った。
「テストなんだよ。テスターのデータのモニタリングをしながら、調整をするんだから、多いと無理。宣伝にもなるから営業的には多い方が良いだろうけど、それなら、営業の方でモニタリングしてくれる?」
営業リーダーは、顔を伏せてしまった。
「水谷君の要望通りで良いだろう。彼には想定外の負担を多く掛けてしまったので、なるべく彼の要望を通して負担を減らしてやってくれ」
と、僕びいきな重役から、ありがたいお言葉を頂いた。
「そうなると、またパーティーを開催ですね。ヒロさん、出てくださいよ」
運営リーダーから釘を刺される。前回は逃げようとして捕まった気もするなぁ
「わかった。ベータテスターへの案内の資料を作る。運営と営業で、人選をして送付してくれ」
頷く両リーダー。
「で、進捗具合はどうかね?」
重役から訊かれた。
「作っていないのはラストの舞台だけで、10番目の街まで作ってあります。アルファーテスター部隊は7番目の街のテストを始めています。ですので、ベータテストの最深部は6番目の街ですが、第一次ベータテスターは3番目を抜けられないでいます」
僕は進捗状況を述べた。
「まだ、3番目?難しすぎるのでは?」
「難しいという声は無く、鬼とかドエスとかの声が聞こえます」
苦笑い気味で、運営のリーダーが答えた。
「ドエスは誉め言葉だな、水谷君の作品の場合は」
ご満悦そうな重役。
「収益性はどうかね?」
財務系の重役が質問をしてきた。
「アダルトモード使用者からの課金を考えています。今回の報酬代わりに渡すヘッドギアセットはアダルト版で、あれを購入する者は、事前に身分証明と口座引き落としの設定などをしないと、アダルトモードができない仕組みにします。で、基本、アダルトモードは5番目の街と、10番目の街でのみ使用可能にします」
運営のリーダーが説明を淡々とこなす。
「あっ、補足ですが、新機能の072モードは、宿屋にチェックインして、自分の部屋に入り、部屋に誰もいない場合のみ使用可能になります」
と、新機能の説明をする僕。072とは自慰のことである。自分一人で快楽を得たい人向けというか。相手のいない人も楽しめるような配慮である。
「これは、2番目の街から使用可能にしますが、課金対象になります」
ざわめく会議室。はじめとうみこにテストをしてもらったので、女性版もたぶん良い仕上がりだと思う。女性でない僕には、わからないけど。
「まぁ、変なモノを摂取するより、安上がりで安全だと思うので、需要はあると思いますよ」
と、付け加えておく。
「で、購入時に口座の登録をするようにすると、2番目の街に入った辺りで、アダルトモードが使えるようになる予定です。それまでの間は、アダルトモード無しですが、1番目の街では使えないので、問題は少ないと思います」
と、更に補足をする。
「ヒロさん、あとワンモアの方なんですが、新エリアを考えておいてください」
って、運営から仕事の依頼が…え?また、僕が作るの?
「魔法しか効かない敵は、まずいよね?」
「それはダメですよ。素手ならまだしも…」
だよな…アルフガンで手一杯でアイデアが枯渇しているよ。どうするかな…あっ…
「堕天使の街ってどうかな?様々な誘惑に負けないことが、攻略の正解になるとか」
「誘惑に負けると堕天するんですか?」
「そう。その場合、街の外に放り出されるとか。ペナは有り金全部かな?でも、追いはぎの街と同じになるか、それだと…」
「お金以外のペナを考えます。その方向でシナリオを書いて下さいね♪」
え?ゲームだけでなくて、シナリオも?おいおい…
「ヒロさん、いいですか?アルフガンの祠の湖の滝ですが、必要ですか?」
開発リーダーが訊いてきた。
「あった方が雰囲気が良いだろ?無くても支障は無いけどな」
「迫力のある滝が再現出来ないで、困っています。ヒロさん、作って貰えませんか?」
はぁ?
「う~ん…そうか…必要性が有れば、作ってくれるんだな?なら、滝ツボで霧が発生するようにしてくれる?9番目のクエストは霧の湖にするから」
「どっ、ドエス…ハードルを上げて来た~」
頭を抱える開発リーダー。
「まぁ、頼むよ♪」
---ツヴァイ---
まだ、3つ目の街から出られない。どこにクエストボスがいるんだ?あの洞窟って、クエストの現場で無いのか?今日は、鉱夫のレイジとアース以外の者で街の周囲を見て回った。
やはり、あの洞窟以外、モンスターがいそうな地形は無いなぁ。洞窟に戻ると、アースとレイジが戦っていた。掘った先に広場のような場所があり、モンスターが湧き出て来たそうだ。
「モンスターが埋められているようだ。それも、モンスターハウスみたいだ」
あのアースが悲鳴のような声を上げている。狭くて高さの低い手堀の坑道での戦いは、アースですらきついみたいだ。
ミリーの魔法攻撃で、敵を押し込んでいく。そして、広場のような場所に出ると、剣が振り上げられる高さが有り、アース、レイジ、俺の3名は剣に持ち替えて、モンスターを倒していった。やっぱり、剣は威力あるよな。あんなに苦戦した坑道での戦いが嘘のように感じるくらい、楽に倒すことができた。
「ここじゃないみたいだな。ボスっぽいのが、いなかったしなぁ」
「そうだな、ツヴァイ…あぁ、ヒロさんらしいや。敵を掘り当てるのが、ここのクエストのようだな」
苦笑いしているアース。確かに。敵を掘り当てるゲームって、聞いたことが無い。広場のような場所の周囲の岩壁をレイジが調べている。掘りやすそうな場所、鉄鉱石の有りそうな場所の目星を付けてくれている。
「ツヴァイ、3箇所くらいある。1つずつつぶすか?」
「あぁ、頼むレイジ」
まだ、必要なSTRの値に達していないので、レイジ以外は鉱夫になれないでいた。今のところ、アースがポーターに転職してSTRの伸びが良いように思える。後少しで、鉱夫になれるようだ。今は皆で、レイジの作業を見守るしかない。いつ、敵を掘り当てるか、わからないので、先程のように分かれて行動は、危険だと思った。
静かな坑内に着信音がした。うん?エフからメッセージが届いた。届くと着信音が鳴るようになったのか。
『第二次ベータテスターの募集を開始します。彼らに追い抜かれないようにね(はぁ~と♪)。今回の募集対象者はワンモアからでなくて、SAO&ALOの参加者です。この第二次ベーターテストから、新機能のテストが行われます。必要な機材は発送しますので、お試しください』
と、書いてあった。メッセージをみんなに転送して見せた。
「剣だけの世界から呼び込むのか…ここのエリアで地獄を見そうだな」
と、アース。俺もそう思う。短剣使いって、いるのかな?
「なぁ、ミリー。新機能について、何か知っているか?」
エフのリア友のミリーに聞いた。
「う~んっとねぇ~」
何か言いづらい機能みたいだな。
「たぶんねぇ~、自慰モードかと…」
「「自慰?」」
俺とレイジが大声を上げて驚いてしまった。
「私もテストに参加させられて…」
恥ずかしそうに俯くミリー。
「女性の感度テストは男では無理って…エフが…」
確かに…性器の形状は勿論、たぶん感じ方も男女では違うだろうし。
「カザミネ君がはまりそうな…」
と、コンポタが呟いた。アイツははまるだろうな。追いはぎの街で、派手に遊んでいて身ぐるみ剥がされた口だしなぁ。
「必要な機材って?」
アースは真顔で質問をしてきた。
「あ…それは…」
顔を真っ赤に染めたミリーは俯いている。言いにくい機材なのか?
「男性用はコンドームみたいなのとパッド、女性用はタンポンみたいなのとパッド…」
俺も含めた全員が想像してしまったのか、無口で顔を真っ赤に染め上げた。あの人の本物志向は留まるところ知らないのか…
「エフ曰く性教育教材だって…」
そうだった。そういう真面目な物へ、技術のフィードバックをする目的で、ゲームというテーブルで研究していたんだったなぁ…
レイジから生唾を飲み込む音がした。
「戦いをしないで、それ主体になりそうな者が多くなったり…」
コンポタが呟いた。
「実際、そうなると思うよ~。アレは最終兵器って呼ばれていたし~」
って、ミリー。最終兵器…危険な香りがプンプンだ。俺は戦いの場に戻って来られるのか?
「でもねぇ…更なる兵器も開発しているって噂だよ~」
ミリーから更なる情報。何が目的の兵器だ?
「戦闘を取るか、快楽を取るか、究極の2択だな。ドエス過ぎるな、ヒロさんは…」
笑っているアース。彼はたぶん快楽に負けずに、戦闘を取るんだろうな。俺は自信が無いぞ。
---桐ヶ谷 和人---
自分宛に届いた郵送物を開封して、中身に目を通した。スマホで彼女である、結城 明日奈に連絡をして、郵送物が届いたかを確認をして、どうするかを相談している。
コンコン
ドアがノックされ、
「お兄ちゃん、ちょっといい?」
妹の直葉の声がした。明日奈との通話を切り、妹を部屋へと導いた。
「お兄ちゃんにも郵送物は届いた?」
僕は自分に届いた郵送物を見せた。
「どうするの?」
「スグはどうする?」
スグとは妹の愛称である。
「お兄ちゃんが参加するなら、私も参加したい♪」
「明日奈も一緒だけど…良い?」
「もちろんだよ。将来の義理のお姉ちゃんだもの。でね、お兄ちゃんに、お願いがあるの…訊いてくれる?」
妹の表情が、一瞬陰ったように見えた気がした。
「何かな?」
「リアルでは無理なことだけど、ゲーム内で私と結婚してください」
妹に告白された僕…妹のスグとは血の繋がらない兄妹であり、血縁上は従妹であるのだ。でも、僕には明日奈という彼女がいるので、スグの告白を受け入れてあげられなかった。
「明日奈次第かな…」
「うん?結婚システムを読んでいないの?一夫多妻もOKだよ、お兄ちゃん♪明日奈さんには私から頼んでみるよ、両手に花嫁って、いいなぁ、お兄ちゃん♪」
え?そういう展開なのか…
夕食後、ALOにログインをして、他の知り合いとも話をした。その結果、僕の他、アスナ、リーファ(スグ)、クライン、エギル、シリカ、リズベッドが、ベータテストに参加することにした。
「ヘッドギアは採寸して作るって…ベータ参加条件のパーティーに参加するときに、作るってあるなぁ」
頭にバンダナを巻き、一見チャラそうに見えるクラインが少し不安げである。彼はリアルではまじめな商社マンである。
「不安なら止めておけ、クライン」
小麦色の肌でスキンヘッドの大男のエギルが声をかけた。彼はリアルでは喫茶店のマスターである。
「ナーヴギアとは違う方式でVRを実現していて、アルフガンの方式は医療現場にフィードバックしているんだ。たとえば、食事制限のある患者さんに、好きな食事を食べさせて、満足感を与えるとか」
僕は知っている情報をクラインに向けて話した。
「そうか…医療現場で使っているのか。なら、安心だな」
「俺は072モードが気になるなぁ」
と、エギル。女性陣の顔は真っ赤に染まった。
「どんな感じなんだろうな。リアル性を試したいな」
エギルの言葉に、真っ赤な顔の女性陣が頷いたように見えた…