---ヒロ---
ヴィヴィ、バサ姉、マヤのパーティーは7番目の敵に苦戦していた。僕は、モニタリングモニターで戦いをモニタリングしていた。
「あっ…ダメっ…」
意識を飛ばされたバサ姉が水に浮かんだ。
「ヒロ君…ドエスすぎるでしょ?この攻撃って…」
マヤが怒りを載せた言葉を吐いている。まぁ、電気ウナギ相手だしな…腰まで水に浸かった状態での戦闘。電気ウナギたちは股間を目がけて、カミカゼアタックをしてくる。当たり所が悪いと、性的な刺激となり、バサ姉のように達して意識を飛ばされてしまう。
「ボスだけ倒せば良いんだけど、雑魚が多すぎたかな?」
ボスは川底でまったりとしているが、手下の電気ウナギたちは、冒険者達に遅い掛かっていく。
「剣使いが迷い無く、ボスを斬れば終わりなんだけど…」
「バサ姉が使い物にならないって…あぁ…いいっ…」
マヤも水に浮いている。川なので、二人は川下へと流されていく。残るのはヴィヴィだけだ。日頃僕に鍛えられているので、コイツは性的刺激に強い。なので愉しみながら、ボスを倒してしまった。
「ねぇ、この敵の正解はなんだったの?」
びしょ濡れのマヤに訊かれた。
「氷の魔法で川の水をシャーベット状態にして、雑魚ウナギの動きを弱めて、ボスを一突きだよ♪」
普段聞けないつばさと洋子の喘ぎ声を、録音しておいたので、ログアウトして来た二人に聞かせた。
「ひどい…」
凹むつばさ。
「このド変態やろ~!」
悪態をつく洋子。
「次は雪山攻略だ。防寒対策をしないと死ぬぞ」
「びしょ濡れだよ~連続攻略は無理ってことだよね?ドエスやろ~!」
洋子は珍しく激高している。ウナギ相手に達したのが許せないのかな?
「次が当面の最深部だ。開発が滝を作り上げてくれないから」
「霧の湖戦ですよね?それも地獄を見そう…」
頭を抱えるつばさ。
◇
第二次ベータテスター歓迎のパーティーの日になった。僕が目覚めたのは仮眠室。参加者のデータを見ていて、閃いた事があり、プログラムを改修していたのだ。
「帰らなかったんですか?」
青葉に起こされた。青葉は普段のブラウスにスーツ姿だったが。コウとりんはドレス姿で、はじめは戦隊物のコスプレ、うみこはアーミースタイルだ。
「イーグルジャンプ社って、コスプレ好きが多いの?」
眠い目を擦りながら、目の前のヤツラに言う。
「ベストドレッサーは誰だ?」
コウが訊いてきた。
「うん?青葉だ。コウはブラウスに、ノーパンなスラックスの方が良いな。りんはチャイナドレスだったら良かったのに…」
「ちょっと、着替えてきます」
コウが部屋を出て行った。
「チャイナドレス…持っていない…」
凹みながら部屋を出て行くりん。
「師匠、私達は?」
はじめにきかれた。
「はぁ?お前らはアウトだ。ドレスコードを読まなかったのか?」
「「あっ…」」
二人共、部屋から走り去った。イーグルジャンプ出向組専用の衣装部屋を、作っておいたので、着替えは自由に出来る。社内にはコインランドリーがあり、宅配のクリーニング屋も出入りしているので、徹夜でも着たきりすすめにはならないのだ。これは、徹夜組対策である。主たる原因は僕にあるらしいけど。まぁ、6徹7徹当たり前の社員がたくさんいたら、そうなるよな。
僕もシャワーを浴びて、着替える。しかし、眠気が覚めない…カフェスペースでエスプレッソをトリプルサイズで頼んだ。
「隣、良いですか?」
声の主に顔を向けると青葉だった。
「いいよ」
僕の隣に、青葉が座った。しばらくすると、背中に柔らかい物が当たる。これはコウだな。
「コウか?」
「正解です♪」
コウが僕の目の前に座った。
「しかし、眠いなぁ~壇上で寝ちゃいそうだよ」
「寝たら起こしますよ」
美里さんが来た。
「受付を開始したみたいです。ですからパーティーの前の講演会は、90分後です」
スーツ姿の美里さんが教えてくれた。
「美里さんをベッドで寝たい…」
僕の一言で美里さんの顔が朱く染まる。
「会が終わったら…今はダメよ」
今眠いんだけど…
エスプレッソを飲んでも眠い、僕は椅子でうたた寝…
◇
背中に何か柔らかい物が当たり、揺り起こされた僕。うん?誰だ?
「うん?時間?」
「10分前ですよ」
りんの声がした。あれはりんのかぁ。コウと美里さんのは分かるんだけどなぁ。
会場となる場所に移動して、壇上に座る、僕と青葉とコウ。コウは有名人だからわかるが、なんで青葉がいるんだ?
そして、開演。お偉いさんのスピーチ。コウのスピーチ。で、青葉の番。青葉は、僕の教えたキャラデザインの手法を、ビデオにして教育用としてイーグルジャンプ社で使っているそうで、そのビデオを流した。そういうことを、ラフデザインの合間にしていたのか。少し感心した僕。
で、僕の番…いつも通りノープランで、何を話そうかな?
「ベータテストに参加していただいて、ありがとうございます。ゲームデザイン、メインプログラマーの水谷です。今回テストをしていただくゲームには、街が10個有り、それぞれの街には、次の街に行く為の試練が用意されています。で、10個目の街まではプロローグで、その先にゲームの本編が有ります。先の長いゲームになると思いますが、心を折らずに最後までテストをしていただけると助かります。
尚、当ゲームは、粒子物理学の応用で開発されたナーヴギアとは違い、脳神経学の応用で開発したヘッドセットを使います。多重電界を用いない為、適合不適格者は少ない上、身体には優しいと思います。ただ、脳へ信号を送るツボの位置に個人差があるので、今回の様に、採寸をしてヘッドギアを作らないと、VRにおける感覚の連動が難しくなります。これはナーヴギアと比べてデメリットなことです。
今回はベータテストということで、社で採寸をしましたが、実際に購入してプレイする場合、指定の医療機関で採寸を行い、ヘッドギアを作らないといけないです。ただ、ヘッドギア無しでも、ゲーム自体は出来ます。
ヘッドギアの有無の差は、VRモード時の感覚連動であり、VRモード無しで、スマホ、ガラケでも出来ます。機能の制限はありますが。アダルトモードに関しては、15歳未満の場合は、親の承諾が必要になります。現在、文科省に保健体育教科への転用を打診しており、認められれば、12歳未満の場合に親の承諾が必要になります。で、当該モードは有料サービスと成りますので、テスト終了後に当該モードを使いたい場合は、有料サービス使用の手続きを行って下さい。
一部、ゲーム雑誌にゲーム内容の記事が出ていますが、公式に認めた記事では無いので、鵜呑みにはしないで、自分で確かめてください。このゲームは、操作方法のマニュアル、ルールなどのヘルプはありますが、ゲームの目的、終了条件は公開しておりません。それらを探し出すのも、クエストの1つとしていおります。
長々と話しましたが、こんな感じです。ご静聴ありがとうございました」
一礼をして、席に戻り、うたた寝開始…
「起きて下さいよ~」
青葉に起こされた。乾杯をするようで、僕の分のグラスを青葉が持っていてくれた。彼女からグラスを受け取り、乾杯に参加した。
で、立食パーティーが始まった。立食形式と言っても、壁に沿って椅子があり、簡易なテーブルが所々に置いてある。
僕は椅子に座り、青葉とかコウに料理を持って来てもらった。う~ん、りんの手料理の方が旨いなぁ…まぁ、こういう形式のパーティーだと冷めている料理が多いものな。
りんが近寄って来たので、
「りんの手料理食べたい♪」
と告げた。
「はい♪今夜、作りにいきます♪」
と、笑顔を向けてきた。
---キリト---
パーティーから帰って来て、早速PCにインストールをして、ヘッドギアをセットアップした。そして、ALOを開始した。アルフガンへ続く転移の祠を目指す。そして、祠に入り転移をした。
まず、初期ジョブ選択画面。剣士を選択。しばらくして、
『広場の掲示板をお読み下さい。--- Hit Any Key ---』
と表示され、キーを叩いて、ゲームの世界へと入っていく。
『アルフガン 始まりの街へ ようこそ♪』
と、表示されて、街並みが見えてきた。広場を目指して歩く。オートマッピング機能があるようで、迷子にはならないだろう。広場に着き、みんなを待つ間に、ステイタスを確認した。新規スタートだとアバターを設定する必要があるようだが、SAO参加者は、SAOで使っていたアバターになるようだ。リーファのようなALOから始めた者は、ALOのアバターが利用されるようだ。
うん?ジョブが…剣士じゃない…なんで?広場にある掲示板の注意事項を読む。
『希に、「ナビゲーション・ピクシー」、「使い魔」、「精霊」などを連れている方がおりますが、その場合は初期ジョブで何を選択されても精霊使いになります』
って…えっ?アイテムリストを見てみると、ユイがいた。彼女は元々SAOのAIの1つであったのだが、訳あって僕の仲間になってくれた。そして、以後ゲーム内では行動を共にしている。そのユイが「ナビゲーション・ピクシー」扱いになったようだ。ユイをアルフガンの世界へと解放をした。
「パパ、お久しぶりです♪」
ピクシー姿のユイが現れた。ユイは僕をパパと呼び、アスナ(明日奈)をママと呼び、僕達は彼女を娘として接している。
「精霊使いって何だ?」
分からないジョブを訊いてみた。彼女はAIなので、ゲーム本体のプログラム自体を調べられたりできるチートキャラである。
「転職不可能なレアジョブです。能力は精霊などを仲間に出来るとあります。このゲームは、ジョブよりもスキルが重要なようです」
「スキル?」
スキルリストを見ると、『二刀流』だけあった。装備品リストにはSAOで装備していた武器、防具類が表示された。装備しようとすると、
『重量オーバー』
と表示された。剣が重すぎて、今の僕には装備出来ないようだ。う~ん、買わないとダメだな。
「お兄ちゃ~ん!」
リーファに呼ばれた。
「どうしたの?何凹んでいるの?」
凹んだ理由を訊かせた。
「えっ?初期ジョブが精霊使い?転職不可能…終わっている…で、剣が装備出来ない?ダメじゃん…」
そういうリーファは剣士を選択したようだけど、やはり剣が装備できないようだ。
「あぁ~私も軽い剣を買わないとダメだぁ~」
兄妹共に凹む。噂では聞いていたが、開始早々ドエス度が炸裂していた。徐々に集まる仲間達。クライン、エギル、リズベッド、アスナは剣士で、シリカは僕と同じ精霊使いになった。使い魔の小竜・ピナが検知されてしまったようだ。
で、僕とリーファ以外の集まった仲間が剣を装備してみたら、全滅だった。
「まぁ、確かに、初めて直ぐに高性能で重い武器や防具は、チートだよな」
クラインが自分に言い聞かせるように呟いた。
「そうなると、武器と装備の足りない物を買わないとダメね」
と、アスナ。
「いや、スキルを発動させるアイテムが先だな」
と、ヘルプを読んでいたエギルが言った。
「アスナ、ジョブに偏りがありすぎる。キリトとシリカは、当面戦力外と見た方が良い。一番の問題は僧侶がいないことだ」
「う~ん。そうよね。ユイは回復魔法はできるの?」
「ママ、できないよ~。索敵とか情報を仕入れることは出来るけど…」
「ユイちゃん、スキルは何を選べば良いかな?」
エギルがユイに尋ねた。
「う~んっとねぇ…乳鉢、炉とハンマーのセット、包丁とまな板のセット、ノミ、オノ…かな?」
エギルがメモを取って、アイテム屋に行き、価格をチェックしてきた。
「乳鉢と炉が高いなぁ…あっ、乳鉢かぁ。これは必要だな。問題は誰が買うかだ」
初めて使う者にスキルが発現するそうだ。購入者は誰でも良いみたいだが、贈り物として渡さないと、強奪と見なされて、受け取った側にペナがあるようだ。注意しないと。
「たぶん、乳鉢は薬草を材料にして、回復薬を作るんだろう。僧侶無しの今、高価だけど必需品だ。キリト、頼む。炉とハンマーはリズベッド、包丁とまな板はアスナ、オノは俺、ノミはリーファにしよう」
みんなの所持金を集めて、エギルが買いに行った。しばらくして戻って来たのだが…
「変動相場制のようだ。さっきチェックした時より、価格が上がっていた。うかつだったなぁ…」
凹むエギル。
「で、オノなんだが、STRが足らなくて、俺では扱えない。もう少しレベルを上げないとダメだ」
と、更に凹んでいる。
「剣は一番軽くて安いのにした。炉が有るから、リズベッド次第で剣は作れるだろうからな」
「う~ん、変動相場制が最初の敵ね。このゲームのモンスターは、倒してもお金を落とさない。ドロップする品物をゲットして、お店で売ることで換金ができるようなんだけど、みんなが同じ物を売っていくと、買い取り値が安くなっていくのよ」
アスナが唸るようにして言う。
「底値があるみたいだから、買い取り拒否は無いみたいだけど、底値だと、通常の買い取り価格の1/10になるようよ。はぁ~」
「ドエスなゲームだな…」
クラインが凹んでいる。
「そうなると、宿とかは高止まりとかあるんですか?天井知らずに上がっていったりして…」
シリカが心配そうに言う。エギルとアスナがヘルプを読んでいく。
「あった。NPCが経営する宿屋は固定みたい。将来的にはプレイヤーが経営する宿屋もできるかもしれないってあるけど」
アスナが該当箇所を見つけて、説明してくれた。
「ギルドっていうチームを組むと、攻撃力にボーナスがつくようだ。このメンバーで作ろう」
エギルが提案してきた。頷く一同。
「で、ギルドマスターは誰にする?」
一斉にアスナを指差す僕達。
「えっ?私?なんで?キリト君が良いと思うけど」
「キリトはダメだ。コイツはソロ向きだから、チームを導くことは得意じゃない。その点アスナは、「血盟騎士団」の副団長だったし、チームを率いていた経験があるだろ」
と、エギルが皆を代表して、アスナを説得した。渋々、ギルドを設立したアスナ。ギルドに入団する僕達。
「ギルドネームはどうする?」
「アインクラッドはどうかな?」
って、クライン。その言葉を受けて、設定したアスナ。
「団長、どうします?」
「そうね。今日は宿に入って、今後の方針でも決めましょう。闇雲に進むには、危険な気がする」
そして、宿に入った。一人一部屋が基本で、大部屋って言う物もあるそうだ。ただ、NPCに信頼されないと大部屋は借りられないらしい。僕の部屋に集まる面々。女性の部屋は気がひけるようだ。
「で、会計責任者はエギルに頼むわ。お店経営の経験者として、資金の管理をお願いね」
エギルは頷いた。
「この街のクエストは、LV50以上のパーティーで、ダンジョンのボスを攻略のようだ。」
広場の掲示板を調べてきてくれたクラインから、報告があった・
「レベル上げが課題ね、じゃ、また明日、同じ時間に集合にしましょう」
みんなが一斉に自分の部屋へと帰っていった。どうしたんだ?