---ツヴァイ---
漸く、洞窟戦を制した。これで次の街に行ける。まさか、上のフロアにいたとは…
「ヒロさんらしい…久しぶりに充実感が…」
アースは天井を見て笑っている。ここ何日かの激戦が終わり、気が抜けたみたいだ。
◇
ここを見つけたのは…掘り進んだ先で、またモンスターハウスを見つけたのだが、モンスターを倒した後のレイジの調べにより、怪しい箇所を1つ見つけ、そこを掘ってみると、階段が上に伸びていた。
まさかの立体構造…で、そこは真っ暗であった。街に戻り、皆でランプとか懐中電灯になるような物を考えて、出した結論はたいまつだった。たいまつは木工スキルでつくれたので、少し多めに作り、ポーターのアースに持ってもらう。
次に考えないといけないのは、戦闘中に誰が、戦場を照らすかだ。ヒロさんのことだ、きっと最後のモンスターハウスは真っ暗なのだろうと、想像した。しかし、安易な方法があることにミリーが気づいた。暗い部屋を明るく灯す魔法を覚えていたのだ。
準備を整え、あの階段の先に向かう。そこは予想外にも明るかった。更なる試練が有るだろうと疑心暗鬼にし、用意を万端調えさせ…ヒロさんに、裏をかかれた…まぁ、モンスターハウスではあったけど。剣が使えるので、戦闘は長くはかからなかった。
◇
一息吐き、部屋の中を見回すと、手の平認証のような装置があった。近寄って見ると、
『ランクアップ認証システム』と書かれている。手の平を当ててみると、
『ランクアップします。レベルは1に戻ります』
と、アナウンスが流れた。
「そうか…手の平からユーザーIDを読み込んで、ランクアップが出来るレベルかを調べているのかもな」
と、アース。前のランクアップは街を出る時に為されたよな。システムを改修したのか。
「ヒロさんが日々、システムをアップデートしているのだろ」
「アップデートのお知らせはなかったが」
「ツヴァイ、相手はドエスだよ♪きっと、アップデートされたかどうかを知るのも、クエストのうちなんだよ♪」
アースが楽しげに言う。こいつ、ヒロさんの大ファンなんじゃないか?
「ヒロ君はドエスだよ。アース、それは間違え無いよ~」
っと、ミリー。その顔は楽しげだ。まぁ、今までにないゲーム進行は、謎解き要素満載で、楽しいことは楽しい。やばい、俺もファンになり始めているのか…このゲームに嵌まると、他のゲームでは物足りなさを感じそうではある。
---和人---
みんな一斉に、急いで各々の部屋へ戻っていった。何が有るのだろうか?一人残った僕は、ヘルプに目を通していく。ふと、ギルドメンバーのリストを見ると、ログイン状態を確認出来るみたいだ。で、僕以外はログアウトしている。あれ?何でだろう?スグに訊こうかなと、僕もログアウトした。妹の部屋に向かい、彼女の部屋のドアをノックして、声を掛けた。
「スグ、今いいかな?」
スグからの返答は無い。耳を澄ますと、スグの苦しげな声が聞こえてきた。
「あっ…あぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
心配になった僕はドアを開けて、スグの部屋に飛び込んだのだが、ベッドに横たわるスグ…彼女の姿を見て固まる僕。
なっ…何だぁ?
スグは全裸でベッドに横たわっていた。胸と股間には何かのデバイスを装着している。そのデバイスから伸びるラインはヘッドセットに接続されていた。スグは腰を捻ったり、上下に動かしている。これって…
ベッドの傍の床に説明書らしき物が落ちている。拾って目を通すと
『女性専用Aアダプターの使い方』
と書かれている。これって…あっ…アダルトモード用の…まさか、僕以外の皆は、これを試したくて一斉にアウトしたのか?
「お兄ちゃん…いいっ…いいよ~…もっと…もっと突いて…」
スグの艶めかしい声…あの苦しそうな声は喘ぎ声だったのか…妹の見てはいけない姿を見た僕は、男性としての本能で、下腹部がムクムクと…
まずい、スグに欲情するなんて…
僕は、いたたまれなくなり、その場を後にした。自分の部屋に戻り、悶々としていた。明日奈もアレを使っているのだろうか?スマホで彼女へと連絡をしてみたのだが、
『ただいま、電話に出ることが出来ません。お名前と御用件を入れ、最後に#を押して下さい』
と、留守番モードになっていた。こんなことは初めてだ。僕からの呼び出し音だけは、必ず出てくれていたのに…僕は、気を紛らわせる為に、アルフガンへログインをした。
◇
ログインをして、最初の迷宮を一人で挑んだ。しかし、現状のステイタスでは、2,3匹程度なら倒せたのだが、4匹以上の集団に襲われて、回復薬を使う際の隙を突かれて死んでしまった。まぁ、SAOのようなデスゲームでは無いので、死んでも安心であるけど。痛みの程度が体験が出来た。斬られた時は抓られた程度の痛みで、死ぬときの痛みは歯を削るような痛みであった。
で、死に戻り先は…アスナの部屋だった。えっ?動揺する僕。ヘルプを読むと、
『ギルド入団者の死に戻り先は、1.団長のいる場所、2.最後にしたセーブポイントになり、団長が選択できる。デフォルトは1である』
と、書かれていた。アスナは、こういう事態を想定していなかったのか?いや、そうじょない。一刻も早くアウトしたかったのだろう。あの機能を試す為に…そういえば、エギルの発言に、真っ赤な顔で頷いていたよな。理由に納得した僕。
アスナの部屋を出る。この宿はオートロックなので、ドアを閉めれば部屋の外から開けられない。部屋のドアに宿泊者が手の平を当てることで、鍵が解除されるのだ。手の平はカードキーの役目をはたしているようだ。
再挑戦をしようと、宿の入り口に向かうと、フロント前の広間で声を掛けられた。
「パパ、ちょっと待って!彼の話を聞いてからにして!」
と、ユイに呼び止められた。彼?誰?ユイと一緒にいる見た事の無い男性と、ピクシー。
「君がSAOの英雄のキリト君だね。僕はファントムだ。お供の者はユイちゃんと仲良くなった精霊のアプロだ」
「ファントムさん…あのジョブは何ですか?」
精霊といるのだから、訊く必要は無い気もしたけど、
「君と同じ精霊使いだよ。ランクは9だ」
ランク9…最後の街に到達しているのか…
「そんなに驚かないでよ。僕はアルファーテスターだから、一番先頭でプレイしないとダメなんだよ」
アルファーテスター…製作スタッフなのか。
「ファントムさんの正体はドエスだよ♪」
って、ユイ。ドエス?えっ…まさか…
「ヒロさんですか?」
「キリト君、本名呼びはゲーム内では御法度だよ」
笑いながら、口に指を一本立てているファントムさん。
「で、ユイちゃんに、精霊使いになって凹んでいるキリト君へ、アドバイスを頼まれてねぇ」
ユイ…一番エライ人に頼まないでくれ~
「精霊使いは今現在、僕と君を含めて3名しかいない、レアジョブだ」
3名?残り1名はシリカか。
「で、このゲームではジョブよりも、スキルの方が大事なんだよ」
「スキルの方が?」
「そう。例えば剣を取ってみよう。他のゲームと違い、剣士でなくても扱える。剣士と他のジョブとの違いは、取得出来る経験値だけだ。このゲームでは、装備品にも経験値が存在する。経験値によりレベルアップしていく。その際に必殺技とかを覚える他、熟練度もあがっていくんだ。で、剣士の場合は他のジョブよりも倍の経験値を得られる。但し、使った場合だよ。装備しているだけでは、経験値は発生しない。盾の場合を例に取ると、相手の攻撃を防ぐ事で経験値を得られる。でだ、盾の経験を積むと、盾で攻撃が出来たりすんだよ」
盾で攻撃…
「装備品には重量があり、プレイヤーには装備できる重量が決まっている。ランクとレベルが上がるごとに、重い装備品が装備出来るようになってくる。なので、序盤は丈夫な盾が装備が出来ないから、攻撃はどの道できないが、盾を極めるのも手だよ」
「ファントムさんは何を極めたのですか?」
「僕はナイフ、短剣類の二刀流だ。精霊使いは特殊なジョブでね、仲間の精霊の力を借りられる。精霊の属性を装備に纏ったり、魔法を使ったりできる。なので、君が思っているほど、悲観的なジョブではないんだよ」
「剣での二刀流では無いんですか?」
「剣でも二刀流は出来るよ。二刀流ってスキルは剣の長さに拘らないからね。ただ、短剣を極めた者は剣も使いこなせるが、剣を極めた者は短剣を使いこなすことは出来な。短剣の使い方は、剣とは違うから」
ファントムさんが、短剣での攻撃時と防御時の持ち方と振り方を教えてくれた。
「剣ではこんな風に持ち方を変えないだろ?あと、短剣だと長さが足り無い分、AGIの値が重要になる。相手の懐に入り込み、攻撃を受ける前に屠る為にね」
ファントムさんが僕に短剣を2振り、プレゼントしてくれた。
「お友達のユイちゃんの願いだ。そのナイフはプレゼントだ。使いこなせるようになれよ。僕に会いたい時は、ユイちゃんに頼んでくれれば、連絡が取れる。でも、君だけに肩入れしすぎる訳にはいかないから、アドバイス程度のことしか話せないけどね」
そうだ。
「1つ相談してもいいですか?」
「いいよ」
僕に起きた悲劇的なことを話して、
「なんで、あんな物を付属させたのですか?」
ファントムさんは、気を悪くする素振りをみせずに、笑顔で答えてくれた。
「あれは、性教育用の教材として開発した物だよ。異性との行為を期待しすぎて、相手もいない場合、犯罪に発展する場合があるだろ?それの抑制もある。はっきり言って、アレは異性と交わるよりも、快楽が得られる。それも手軽にだ。君の妹さんのストレスはアレで解消するはずだよ。でなきゃ、将来的にリアルで君と交わることをすると思う」
そうかもしれない…スグの艶めかし声が脳裏に甦る。僕をオカズにして、自分を慰めていた。
「快楽的にはそうなんだけど、相互の愛情というスパイスがあると、もっと気持ち良くなれるんだ。君の場合はアスナ君との行為に当たるかな」
え?アスナとの事を…ユイが言ったのか…
「まぁ、5番目の街に来て、スグ君とプレイすると良い。それで、君の妹さんの気が晴れるだろう」
「5番目の街?」
「そうだよ。異性との交わりは5番目と10番目の街以外できない。性犯罪を防ぐ為に、双方の合意も必要だよ」
そういえば、そんなことが書いてあったっけ…
「あと、最後にもう1つ。死に戻る度にHPの最大値は増えるんだ。HPを使った為に経験値を稼いだ結果だ。HPが10%削られるごとに、経験値を10稼げる。経験値が100になるとHPのレベルが1つ上がり10増加する。削られた量の算出は回復から次の回復の間だ」
死ぬことでも経験値が稼げるのかぁ…
「そういうことだ。では、またね、ユイちゃん♪」
ファントムさん達は宿から出て行った。僕は早速ダンジョンに向かい、ナイフの鍛錬を積むことにした。
◇
何回目だろうか、アスナの部屋に死ぬ戻ると、アスナが起きていた。
「ねぇ、キリト君、説明してくれるかな?なんで、ここにいるのかな?」
少しお怒り気味のアスナに、アスナの設定のせいと説明した。
「なんだ、夜這いじゃないんだ…って、何で、死に戻っているの?」
僕はファントムさんとのことを説明した。
「なるほど、理由は分かった。そうじゃなくて、なんで、こんな時間にインをしているのよ~!」
えっ、怒りの原因はそこ?
「スマホに着信履歴があって、キリト君に連絡したら出ないし…もしやと思ってインしたら、ギルマスの機能で、ギルメンの死に戻りのお知らせが一杯出て…何をしているのよ~!」
この時間に、ここにいる理由なのか?スグの件を隠さずに話した。
「ははは、キリト君らしいなぁ。快楽より戦闘って」
機嫌が戻ったようなアスナ。
「じゃ、試していないんだ?アレを」
「うん、まだ箱に入っているよ」
「そっかぁ~、5番目の街まで、お預けなのね♪」
それは…あぁいうことだよね…アスナに直接訊けないけど。
「そうだよね、相手がいないで、一人って…気持ちが乗らないし…ごめんなさい、5番目の街まで我慢が出来なくて…」
顔が朱く染まっていくアスナ。気持ち良かった?って、訊きたいけど、訊けないなぁ~僕に抱きついて来たアスナ。
「今は抱き合う感触だけでいい。リアルでもね。でも、いずれは…」
高熱でも有るのかと心配しちゃうくらい、真っ赤な顔になったアスナ。僕達は見つめ合い、唇を重ねた。
◇
ログアウトをして、ヘッドセットを外して、起きると、椅子にスグが座っていた。うん?なんだ?
「ねぇ、お兄ちゃん!私の部屋に入った?寝た時と物の配置が違うし、ドアを完全に閉めたはずが、半ドア状態だったし…」
あっ…顔が朱く染まっていくのがわかる。耳が熱いし…
「入ったのね…見たのね…何もしなかったのね…」
泣いているのか、俯いたスグ。
「スグ…ごめん…妹の姿を見て欲情してしまって、本当にごめん」
僕はスグに頭を下げて、素直に謝った。
「えっ…お兄ちゃん、頭を上げて。そんなつもりで、言ったんじゃないんだよ」
僕に抱きつく妹、スグ。
「でも、僕は…サイテーの兄だよな」
「だから、違うって、お兄ちゃんは、ぜんぜん悪くないんだよ。ごめんね、変な姿を見せてしまって…」
僕に謝る妹。
「お兄ちゃんのことを、諦めたはずなんだけど…本当にごめんなさい。5番目の街まで我慢が出来なくて…お兄ちゃんは我慢してくれているのに」
うん?我慢?僕はしていないけど…興味が無かっただけというか…5番目?アスナもそんなことを言っていたなぁ。まさか、アスナも僕をオカズにして…
「ねぇ、また目撃したら、こそこそ逃げないで、堂々と見ていいからね」
って…えぇっと、どう声をかけて良いのやら…女心読心術初級の僕には難しいことだ。
---ヒロ---
日曜日の早朝…僕は会社にいる。昨日のパーティー後に運営から、ベーターの初日なので、パトロールを頼まれた。おかげで、りんの手料理を食い損ねた上、パーティーで残った食べ物を再び食べることになった。暖かい物が食べたい。
ベーター初日にしては、人口が少なかった。殆どの者は、Aアダプターに走ったようだ。強者は5ラウンドしているし…まぁ、10パターン入っているから、半分をテストしてくれたようだ。テストしてくれた人達からフィードバックされて来る、快楽指数というパラメータの値を集計している。10点満点中9点以上である。満点でない原因をフィードバックされて来た信号から、解析をしないと…アダルトモードの責任者であるので、僕がやらないといけない仕事である。
部屋の呼び鈴が鳴り、応対をすると、りんとコウだった。部屋の中に入れる。
「大変でしたね、パーティーの後に残業って」
って、りんとコウの両手にはスーパーのレジ袋が…
「仮眠室借りますね。IHクッキングヒーターを持って来たので、今から豚汁を作ります♪」
って、りん。ありがたい…
「ありがとう、りん。暖かい物が食べたかったんだ」
りんの唇に軽く僕の唇を重ねた。
「うっ、ずるい…」
コウが呟いた。
「うん?コウは荷物持ちか?」
「違います…助手です♪」
「誰の?」
「りんの…」
「ヒロさん、出来上がるまで、コウちゃんを摘まんでいても良いですよ♪」
と言い残し、仮眠室に入っていくりん。
「えっ…」
りんの発言に驚くコウ。
「コウ…摘まんでいいって…」
狼狽えているコウ。
「早朝から?疲れているでしょうから、寝た方が…」
もしかして、一晩中りんと…だから、コウにしては元気が無いのか?逆にりんはハイテンションだったし。
「なぁ、ノーパン、ノーブラかな?」
驚きつつ、後ずさりするコウ。
「なんで、ソレを…」
図星だな。取り敢えず舐め回すようにコウを眺める。コウは、ビクビクしている。コウらしくない態度だ。
「どこを食べるとおいしい?」
「いや…今日はダメです…」
顔を真っ赤にして俯くコウ。らしくないなぁ…
「どうしたんだ?らしくないぞ、コウ」
「あの日です…」
「あの日?で、ノーパンって…勇気あるなぁ」
「りんの予備のパンティを貸してくれたんですが、入らなくて…」
コウの方がヒップ有るもんな…って…あっ、りんは知っていて、食べて良いって…食べられないだろ?今日は…僕とコウはりんの料理が出来るまで、二人で大人しく待った。