---ヒロ---
「うん?あれ?仕様を変えたんですか?」
つばさから声が掛かった。
「あぁ、そうだ。街を作ってみた。神の杖を囲むクレーター部分にね。で、地上から神の杖にも入れるようにした。だけど、100階までは行けずに、99階までだけど♪」
「「ドエス~!」」
予想通り、あずさや洋子から怒号が飛んで来た。
「正解は周囲の森を抜けた道ってことで♪何人の冒険者が気づくかだな」
「鬼!」
うんうん♪声援と言うことにしておくと、気分が良い。
「で、地下迷宮のオアシスは?」
洋子が確認してきた。
「作ったよ。店での品数は少ないけど、必要最低物品は置くようにしている。試しみて」
「で、今は何を作っていますか?」
「神の杖の地下に置く、地獄への入り口となる真実の鏡の間だよ。ここで運命の選択を行う。このまま、冒険を進めるか、真実を見極めるかをね」
僕を見つめる洋子とつばさ。
「そんな大事な事は、仕様書に無いですよ」
あずさが声を掛けてきた。
「うん、書いてないよ。運営も知らない選択だからね」
「真実を見極めるを選ぶとどうなるんですか?」
あずさが質問をしてきた。
「オフレコにしてくれる?」
頷くあずさ。突然立ち上がり、両手を上に掲げた。何も記録を残さないという、意思表示の表れか?
「真実を見ることが出来る」
「真実って?」
目が点になるあずさ。
「本当の真実だよ。なぁ、あずさはこの世界は、リアルだと思う?ヴァーチャルだと思う?」
僕の質問の意図が読めずに、戸惑うあずさ。
「り、リアルでしょ?何でそんなことを…」
つばさと洋子は、そんなあずさを哀れむ様に見ている。
「つばささん…洋子さん…どうして、そういう目で…」
二人の視線に気が付き、狼狽えているあずさ。
「それなら、それで良い。時期がくれば、分かるかもしれない。そういう事だ。だから、仕様書には明記をしていないんだよ♪」
「わ…わかるように、説明していただけませんか?」
僕に説明を求めるあずさ。まぁ、当然だよな。この状況だと、知らないのはあずさだけって、感じだし。僕は1冊の書籍、『特異点に関する考察』を、あずさに手渡した。
「その理論を応用した特異点を、真実の鏡に埋め込んである。真実を知りたい者は、特異点にアクセスをして、この世界の裏にある次元、バックディメンジョンへと誘われるんだよ」
「バックディメンジョン?」
「簡単に言えば、B面だ。この世界は表の次元でA面。だから、裏の次元はB面って解釈でも良い。名称とか理論はわからなくても、問題は無いからね。要は、どっちが表かってことだけだ」
「表?」
「サービスだ。この世界において、生物学的に考えて、問題が1つあるんだけど、分かるかな?それだけがヒントだよ。まぁ、まだ当分、ここにいるから考えてみて」
リアルで無い証拠を、あずさは気づくだろうか?まぁ、これもアルファーテストの内だ。
---ツヴァイ----
ようやく、5番目の街に入れた。で、早速広場に行くと…
『ランクアップ条件は、一人につき最低一区画の土地の所有をすること』
と、表示されていた。
「やっぱり…そう来たのか」
アースの予想通りの展開だ。このゲームにおいての最難関に思える、高額商品の買い込み。いくらするんだ?土地の登記所に向かう俺達。で、価格…あぁ?1万…思ったよりも高くは無いけど、手持ちには無い価格であった。
「どうする?ツヴァイ…」
ミリーが聞いてきた。
「稼ぐしか無いだろう」
「あ!」
アースが何かに気がついた。
「そうか…変動相場制が敵なんだ。たぶん、土地の価格に上限設定は無いんだ。1万は最低価格ってことじゃないか?」
おぉ…それは、有り得る。登記所に人に聞くと、現在の価格は30万にあがっていた。
「急いで買わないと、エライことになりそうだな」
俺達は、鉱山へと向かって走り始めていた。
---キリト---
3番目の街に入った。ここのランクアップ条件は、洞窟戦のようだ。まず、アイテム屋に向かう。今までの街に無いアイテムが、ここでのキーになりそうだったから。見つけたのは、洞窟を掘る為の道具。STRの最低数値が記されている。条件をクリア出来るエギル、クラインが購入した。
「まさか、洞窟を掘りながら進むのか?」
クラインが悲鳴に近い声で言った。
「あぁ、その可能性は大だ。なんたってドエスゲームだし」
エギルは苦笑い気味に言う。
「とりあえす、どんな感じかを確かめましょう。じゃないと、対策が練れないわ」
と、アスナ。そんなアスナを先頭に洞窟に向かった。着いた洞窟は、天井高が低い…剣を振り上げることが難しい。
「こ、これは…剣使いが使えないのか…キリト、短剣使いの出番だな」
って、クライン…え?僕だけ?
「ふぅ…とは言うものの、キリト君だけでは戦力不足よね。弓使いと魔法使いも必要だよ」
が、僕達のパーティーは7名と割が人数多めではあったが、精霊使いが2名っていうことで、どうするのって感じではあった。
「リーファちゃん、魔法使いを頼めるかな?私は弓使いにジョブチェンジするか」
アスナがリーファにジョブチェンジを促した。剣使いが使えない以上、剣使い4名では、どうにもならないから。
「エギルとクラインは剣を横振りとか、刺す感じで対応して」
アスナが今取れる作戦を試していく。そして、作戦の目処が立つ前に、弓使いの欠点が露呈した。
「矢が足り無い…そうか、矢をもっと沢山持ち込まないと、MP切れの魔法使いのように成っちゃうのか」
って、アスナが溢すように言う。
「もっとかぁ…そうなるとポーターは必要だな。千本単位で持つ上、薬草も大量にいるだろうし、何よりも、ここの洞窟って鉱石が取れるようだし」
って、クライン。ユイからの情報で、高く売れそうな鉱石を教えて貰い、拾い集めていた。。
「じゃ、私がポーターになる」
っと、リズベッドがジョブチェンジをして、さらに鉱石を拾い、バックパックに詰めていく。もう、持てないくらいになると、街へと帰還をした。
「弓と矢は高いわ。みんな、あの洞窟は弓使いで攻略しているみたいね」
って、アスナ。
「ママ、矢を作ればどうかな」
って、ユイ。そうだね。それなら安く済みそうだ。
「そうなるとオノとノミが必要だな」
と、エギル。オノは木を伐採する為に必要で、ノミは木工製品を作るに必要である。炉はあるので、拾った鉱石をインゴットにして、クラインが売り捌いて来てくれた。
「ダイヤは需要が無いみたいで、安かった。鉄は高く売れるようだ。安いと思える金属は売って来なかったので、武器にすると良いかもな。例えば、矢頭につけるとか、金属製の矢にするとか」
「それ、いいアイデアね。リズベッドのポーターとしてのレベルが上がれば、大量に運べるから、まず、木工、金工のスキル上げをしましょう。矢を大量に持ち込めないと、苦しいから」
っと、アスナは洞窟攻略の作戦を考えて、皆に伝えた。
---美里---
連日のドエムプレイで、もう気分が冴えない。ヒロ君による人類ドエム化計画に、嵌まっている気がする。文句を言いながらも、けっこう楽しんでプレイ出来ているのが、不思議ではある。今までに無かったゲーム感…やり応えが有り過ぎるのが原因って、アースもツヴァイもアルフガン中毒者になりつつあった。
そんな日々の中、あずささんから、質問をされた。
『この世界において、生物学的に考えて問題が1つある。それは何か?』
って。
「何を言っているの?この質問自体がおかしいでしょ?」
って、あずささんを問い詰めたのだが、
「ヒロさん、洋子さん、つばささんは、答えに辿り着いたようです。美里さん、それってなんですか?」
と、泣きながら訊いて来た。って、言われてもなぁ…この世界においてって、どこの世界と比べてなのか?それとも、元々この世界では当然だったけど、最近おかしくなったことかな?
部屋に戻り、一人考える。生物学的に考えての問題…何を言いたいのだ?わからない…なので、ヒロ君に訊いてみることにした。彼の部屋を訪ねた。
「どうしたんですか、美里さん?」
私を見て驚くヒロ君。
「わからないことがあるの。教えてくれる?」
部屋にあげてくれて、私の隣に座った彼。ただ、これだけのことで、私の身体は反応していた。
「何が分からないんですか?」
あずささんに訊かれたことを話した。
「はぁ…あいつも口が軽くなったものだ。オフレコだと言ったのに…」
「で、その答えは何?」
「美里さんなら、わかるはずのことですよ」
って…私なら?どういう意味だ?考え込む私。思考の海から這い上がると、全裸にされ、彼の玩具になっていた。
「あぁ…うん…いい…もっと…」
私の意志とは関係なく、身体が彼を求めていた。
「やっぱし、美里さんのここは気持ちが良い。名残惜しいなぁ…」
名残惜しそうに、彼は激しく動くことなく、私の内部の感触を確かめるように、優しくゆっくりと、動いていた。
「どこかに行っちゃうの?」
「いや、元いた世界に帰るだけですよ。先程の質問の答えは、美里さん自身で見つけてください。でないと、美里さんは、この世界から出られなくなりますからね」
「この世界から?」
彼は、この件に触れることなく、私の身体を堪能していく。
「美里さんの乳房、乳首、クリちゃん、花園…みんな好きでした」
って、私の耳元で囁くようにドロップアウトする彼。
「じゃ、一緒に連れて行って」
一瞬、間をおいて、
「無理です。最初は僕達でアルファテストしてから。そして、向こうでの受け入れの準備をして、その後にベータとしてかな」
って、答えが返ってきた。向こう?
「ここより、不便な世界ですよ。ここでは無かったことが起きるし。でも、不便でも、元いた世界と思えば、問題は少ないでしょう」
ここでは無かったこと?
「今夜からいなくなる日まで、毎晩、美里さんと過ごしていいですか?ゲームプレイのジャマはしませんから」
いなくなる日?あっ…後ろから責めてきた。気持ち良い…毎晩、こんな風にされるのかな…心身共にドエムになってきている私は、それだけでとっても幸せな気分である。
そして、彼の敷き布団となり3日間、彼の下で彼のぬくもりを感じならがら、過ごすだけでも幸せであった。
---ファントム----
最後の迷宮…予想通り、怒号で満ちあふれていた。
「なんで、オアシスが無いのよ~。このドエスヤロ~!」
と、マヤ。順路にはオアシスが無いことにキレていた。
「流石にコレは堪えます」
って、ヴィヴィ。見る景色が変わらないことで、精神的にへたばっていた。まぁ、地下迷宮だから、壁しかないもんなぁ。
そして、怒号のBGMを背にして、真実の間に到着。
「とりあえず、真実の鏡のテストは、明日する。今日は、真実の間のバグ取りだけしよう」
「いよいよだね」
マヤが感慨深く言う。
「でも、キーがまだ手に入っていないから、行っても意味が無いけどな。予定では2年後くらいに起動だ」
「でも、長かったよね」
「まぁなぁ…とりあえず、僕だけ行き、確認でき次第、戻って来るよ♪」
「美里さんはどうするの?」
「どうって…安全が確認出来ないと無理だ」
「そうじゃなくて…今後のことよ」
「僕の正体を知っても、今まで通りなら、そのままだけど…」
僕は鏡を見て、言葉を飲み込んだ。
---美里---
ゲームからアウトして、ボンヤリしていると、ヒロ君がやってきた。
「アルファーテストは成功だ」
上機嫌なヒロ君。
「なんのアルファー?」
「真実の鏡のアルファーだよ」
真実の鏡?
「そう、そこに真実が写されるんだよ」
真実…怖くて訊けない。訊けば、ヒロ君が消えてしまいそうだから。もっと、一緒にいたい!
「で、どこにあるの?」
お互いに全裸となり、肌を合わせている。
「最後の街の先にある、神の杖と言われる塔の中だ」
ゲーム内に?
「そう。デスゲームよりも過酷なゲームだよ。最後の選択で今後が決まるし。大富豪になるか、人間牧場に行くかの選択よりも、過酷な選択になると思う」
人生ゲームよりも究極の二択が、最後に有るのか…
「美里さんがどう選択するか、楽しみでもあり、怖いけどね♪」
おどけて笑う仕草の彼の顔は、強張っていた。本当に怖いんだろうな。
「もし、僕が消えることになったら、真実の鏡を探してくれ。そこに真実を残していくから」
彼の目は哀しみの色に、包まれているように見えた。