---アスナ---
冒険から帰って来てヘトヘトになって、ベッドへ迷わずイン♪どのくらい経ったのか、わからないけど、ドアがノックされて、開けるとキリト君がいた。
「これ、何に使うの?」
片手に紙袋を持ち、もう片手には小さなカップ状の物を摘まんでいた。あれって…え~有り得ない…
「キリト君…君ねぇ~それは生理用品だよ!」
えっって表情で驚くキリト君。まったく、デリカシーが無いと言うか…ブツブツ…
「これは月経カップって言う物よ。これ、どうしたの?!」
「アリスさんから女性陣への差し入れって…で、何かなって…」
興味本位で見たのか?!おい!まぁ、紙袋と月経カップを受け取り、袋の中身を見た。うん?メモが入っている。
『この世界では、来る物は来ます。ですが、使い捨ての物は好ましく無い為、うちの女性陣に頼んで、使い捨てないで良い物を集めてもらいました。中身は知りませんが、何種類かあると思います。気に入った物をお使いください。尚、消耗品だと思うので、その時は中の黒い袋に入れて、うちの女性陣に替えを頼んでください。 アリス』
と、書いてある。紳士的で良いなぁ。さすが、あの方の息子さんだわ。躾が行き届いている。うん?キリト君はバツが悪そうに立っている。
「他の女性陣には私が渡すから、出しなさい」
と、伝えると、床に置いてあった大きな紙袋を渡してきた。
「ご、ごめん…アスナ…」
「今度から、気を付けてね!キリト君を嫌いになりたくないから」
って伝え、ドアを閉めた。そして、手渡された、自分の分の袋の中身を見つめた。リアルすぎるというか、リアルだからだよな。ゲームではこんな物は支給されないし…ベッドに横になり、天井を見つめてぼぉ~っとする。この前は替えの下着を支給されたし。それも、あっちの世界の私の部屋のタンスの中から持ってきたと…私の存在が消える瞬間の一瞬のタイムラグで、部屋ごと押収したらしい。なるべく不便を掛けずに、この世界に順応して欲しいそうだ。
小まめだよな…シュウさんは…って、目の前にシュウさんの顔が現れた。
「ごめん、驚かせてしまったね。声を掛けたんだけど、気づかないようだったから」
申し訳なさそうな彼の顔。
「あっ、ごめんなさい。気づかなかったです。ほんとに、ごめんなさい」
彼に見つめられるだけで、反応してしまう私の身体…少し湿り気が…
「あ、今日はソッチは…別件で来たんだよ。ごめんな」
そうだよね。毎回、アレでは…ははは
「別件って言いますと?」
「エギルとクラインを離脱させる。その代わりに、別のメンバーを補充する」
離脱?どこに?
「向こうの世界にだ。彼らからの了承は得た。彼らには、こちらに人材を送り出して貰う役目をして貰おうかと」
送り出す?人選ってこと?
「いや、人選は僕達でする。身体の用意が出来ないと、戻って来てもロストしちゃうからね」
「ロストって…」
「う~ん…見てもらった方が、早いかな。言葉だと…う~ん、でも見た目がグロだけど、大丈夫か?」
グロ…苦手だけど…でも、理解する為には…
「じゃ、アスナ君だけ連れて行く。後の者達は、繊細というか、心が折れやすそうだからね」
って、私とシュウさんは、別の場所に転移をした。転移した場所は、モニタ装置やら、色々な機材がある管制ルームのようだった。数名の方が装置の値をチェックしたり、ダイヤルを調整していた。
「ここが『酒池肉林』だよ」
ここが…ハーレム感がまるでない…
「あぁ、言葉の響きが良いから、命名しただけだよ。ハーレムでは無いよ」
「おぉ、アスナ!」
エギルに声を掛けられた。クラインもいる。
「じゃ、エギル君、クライン君、頼むよ」
「あぁ、任してくれ。カミさんと暮らせるなら、多少の苦労は何でも無い♪」
「俺もだよ♪」
二人はカプセル状の装置に横になり、頭にはヘッドセットを装着した。
「アスナ!キリトによろしくな!向こうの世界で、ゲームにインすれば、助けに行けそうだし♪」
エギルはサムアップしてから、カプセルに収納されていった。
「この装置で、向こうの世界へとVR接続できるんだ。で、あっちのモニタを見てごらん。あれが、エギルの奥様だ…」
モニタに映し出されているのは、カプセルに収納された脳みそだった…私達もあんな感じだったのか…
「身体は既に朽ち果てている。脳だけを培養液で維持させている。脳に電極が刺さっているのは、向こうの世界でVR生活をしてもらう為の処置だ。で、身体なんだけど、君達のような『アルフガン』プレイヤー達は、アバターを実体化して、脳を移植している。アバターの無い者、要するにゲームをしていない者は、プレイヤーの記憶を精査して、作り出して、脳を移植する。これは第二段階になるけど。今はエギルの奥様とクラインの彼女の身体を創っている処だよ」
創る?
「創造の力を使う。エネルギーがある限りは創れるけど、大量生産向きじゃない。だから、人体のデータを得やすい者から、休み休み創っていき、こちらの世界へ意識を移動してもらうんだよ」
だから、この人数しかいないのか…
「まぁ、エギル、クラインは帰還したら、それぞれ夫婦として、神の杖の周囲の街で暮らしてもらう。エギルは喫茶店を希望で、クラインはアイテムショップのようだ」
二人とも将来を考えていたんだ…私は…
「戦士を止めるなら、キリト君とリーファちゃんと三人で街で暮らせば良い。ただし、不死属性は無くなる。良く考えて結論を出しなさい」
いつもの笑顔ではなく真剣な顔で、私を見つめるシュウさん。一緒にいたい…
「それなら、戦士として、ここに辿り着いて♪そうすれば、僕の部隊メンバーとして、永遠に一緒にいられる」
いつもの笑顔になるシュウさん。でも、戦い続けるのは…
「僕と一緒に居るって、そういうことだよ。嫌ならば、キリト君達と街で暮らせば良い。選択は無理強いしないから、良く考えて結論は出してくれれば良い」
次の瞬間、ベッドの上へと戻されていた。
---美里---
やっと、ヒロ君に出された質問の答えが分かった。もう、彼が消えて10年も経つけど…彼は元気だろうか?私は御徒町にある喫茶店「ダイシー・カフェ」を訪れた。ここのマスターが真実の鏡の意味を教えてくれるらしい。都市伝説ではあるけど、藁にも縋りたい私は、『アルフガン』の仲間と共に、お店を訪れた。
カウンター席に座ると、海坊主のようなマスターが近づいて来た。
「ミリーさんか?で、合い言葉は?」
「トイレが無い…」
「ようこそ、真実の鏡の間に…」
目の前が眩しい…意識が飛んでいく…う~ん…意識が戻ると、祠のような場所の内部にいた。ここって…祠を出ると、始まりの街が広がっていた。えっ?なんで?ヘッドギアなんか着けていなかったのに。
「え~!どういうことだ!なんで…」
ツヴァイが声をあげた。その後、祠から出てくる仲間達。
「姿はアバターのままだな」
と、アースが冷静に言った。
「ヘッドギアなんか装着してなかったぞ。ヘッドギアは家に置いて有るし…有り得ない…ここはどこだ?」
レイジがパニっくっている。
「え~、どうして…ゲームの中に…喫茶店にいたのに…」
カザミネも混乱している。ここが真実なのか?うん?遠くから人影が近づいて来た。あれは…アスナさん達か。
「ツヴァイ、アスナさん達だよ~」
彼女達の方を指差した私。
「あぁ、本当だ。お~い!ここでは、どこだ~?!」
ツヴァイが大声で質問をした。
「ここはリアル世界…信じられないでしょうけど…」
アスナさんが答えを知らせてくれた。ここが真実なのか…
「リアル世界?今までいた世界は?」
「虚構な世界…ここは、デスゲームよりも過酷。ゲームとは違う。スキルも、ジョブも、ステイタスも、ログアウトも無い、ガチの世界なのよ」
えっ?私だけでなく、みんなも絶句して声が出ないようだ。
「デスゲームより過酷って?」
「ここでは死ぬと、近くの街の霊安室で甦る。何度死のうが、生き返り、そして戦地へと送り出されるの…戦地で戦わないと、食事も睡眠も出来ない。それが毎日続くのよ」
「え…おい、ジョークだろ?ここはゲームの…」
「ジョークなんか言っていない。ここはリアルの世界。あなた達もリアルで無い証拠を見つけたから、ここに来たのでしょ?」
ツヴァイ達が私を見る。
「なぁ、ミリー…リアルで無い証拠って何だ?」
はぁ?聞いていなかったのか?
「トイレが無い…」
記憶を遡っているのか、皆無言であった。
「「あ!」」
結論が出たようだ。
「無かった…気にも留めなかったけど…無かった…」
「じゃ…ここがリアルなの?なんで、こんな世界になったの?私の記憶にあるリアルの世界って…」
コンポタが泣きながら叫んでいた。アスナさんから、何故こうなってしまったかを聞いた。
「滅んだのか…神の杖のクレーターって…そんな…」
アースが力無く膝から落ちた。
「エギルの店で、真実では無い証拠を伝えると、ここへ飛ばされるのよ。ここじゃなんだから、宿屋に行きましょう。あなた達の宿代と食事代くらいはあるから。あなた達がまずすることは、武器を手に入れることだからね」
って…そうだ。お金が無いのか…カザミネはウィンドウを開く動作をしている。だけど、開くことは無かった。
宿屋で食事をして、大きめの部屋に、皆で集まった。そこで、先遣隊の隊長のアスナさんより、この世界での暮らし方をレクチャーされた。次に来る者達は、今度は私達がレクチャーするらしい。
「じゃ、食事、睡眠、トイレは必須なのか」
レイジが質問をした。
「うん…必要ね。ゲームと違い、空腹だと力が入らないし、トイレが近いと集中力が欠けるし」
と、アスナさんが返答をした。
「あと、アレの遣り過ぎは体力低下の元だから…」
って、真っ赤な顔でアイズさんが言った。アレかぁ…
「しばらくすると、Aアダプタの支給があるけど、使い過ぎは危険…」
体験談のようだ…どんだけ、したんだ?
「それじゃ、サポートチームっていうのがいるんだね」
順応力の高いアースが、落ち着きを取り戻し、質問をしている。
「えぇ。チームアリスという部隊がサポートをしてくれています。ただ、今はスクランブル出動をして、この世界にいません。なので、無理は禁物です」
「そのチーム以外は?」
「有るにはあるけど…女性は喰われますよ…」
はぁ?野獣チームがあるのか。
「いや、男も喰われる…」
って、キリト君。凹んでいる。喰われたようだ。
「両刀なのか?」
レイジの声は震えている。
「確認しただけで、最低3名はいます…喰われていないのはアスナさんだけ…」
って、リーファさん。
「え?アスナさんは好みで無いってこと?」
「アスナさんは…ラスボスのお気に入りだから…」
「ちょっと、彼はラスボスじゃないわよ!失礼だよ、リーファちゃん!」
声を荒げて怒るアスナさん。え?彼氏ってキリト君じゃないの?
「なんか、人間関係が崩壊していくんですね…」
私と同じ疑問を持ったカザミネが呟いた。
「じゃ、当面は、第一の迷宮で武器代稼ぎだな」
「洗濯は毎日した方が良いわ。下着類の支給まで時間がかかるから」
あっ、そうだ。着替えが無い…いや、ミリー姿だと、下着すら身につけていないし…ローブを洗濯なんかしたら、全裸だよ~
---亜衣---
お兄ちゃんに逢いたい…毎晩寝入る前に思うんだ。いつになったら逢えるんだろうか。毎晩、寝ていると、あの両刀遣い達が乱入してきて、私を玩具にしていく。今日はスクランブルがかかったようなので、乱入は無いだろう。
寝ていると、ドアが開いた気がした。また、アイツらか?今夜はいないんじゃないのか?
「亜衣…遅くなって、ごめん」
…お姉ちゃんの声だ。
「お姉ちゃん…」
飛び起きて、声の主を見る。顔はお姉ちゃんだけど…背中には羽があった。
「ブラウンはまだ動けないの…おいで、逢わせてあげる」
私はお姉ちゃんに導かれるように付いて行き、外に出るとお姉ちゃんに抱き抱えられて、空へと舞った。
「もっと高く飛べれば、景色が良いんだけど、精霊だとこの高さが限界なんだ」
って、懐かしい声で話しかけてくれた。
お姉ちゃんの手に自分の手を被せる。お姉ちゃんの温もりを感じ取る。
「ごめんね。亜衣は人間だから連れて行けなかったの」
人間だから…その響きはショックだった。それは、お姉ちゃんとお兄ちゃんは人間では無いってことだから。
そして、第5の街にある、お兄ちゃんとお姉ちゃんの家だっていう場所に、降り立った。
「亜衣…久しぶり…大きくなったんだよな。アバター姿だとわからないけど」
笑顔のお兄ちゃんがいた。
「なんで…なんで、お兄ちゃん達は精霊で、私は人間なの?」
一番のネックになっている問題を質問した。
「う~ん、それは…そういう呪いを受けたからだ。呪いを受けたのが、いつかだったかは覚えていない。たぶん、亜衣が産まれる前だとは思う。僕達は色々な世界へと飛ばされて、真実の世界を探し彷徨っていたんだ。そして、偶然、亜衣の姉、兄という立場で、あの世界に飛ばされたんだ」
「じゃ、本当の兄妹では無いの?」
泣きそうになる気持ちを抑えて、冷静に質問をする。
「申し訳ない…精霊と人間は兄妹にはなれない」
そんなことは分かっている。でも…
「どうすれば、精霊になれますか?」
「だから、無理だって!」
背後から、あの忌々しい声が聞こえた。ファントムだ。
「ねぇ、お兄ちゃんを、私のお兄ちゃんを返して!」
振り返り、アイツに叫んだ。
「う~ん。ブラーム、コイツは頭が弱いのか?返す返さないの話では、無いだろうに」
呆れたように言い放つアイツ。
「すみません…別れ方がうまくなかったようです」
アイツに謝るお兄ちゃん。
「別れない!離れない!ここで、お兄ちゃんと暮らす!」
アイツに言い放ち返す私。
「それが何を意味するのか、分かって言っているのか?」
意味深に言うアイツ。何を意味するのか?
「テストを途中放棄すれば、そこから老化が始まる。この先、60年位で死ぬぞ。見た目も徐々に劣化するだろうし。お前、耐えられるのか?ブラーム達は姿に変化が無いのに、お前だけ老化することにさぁ」
あ…そうだ…戦い続けないと…ゴールしないと…選択の自由が無いんだ…
「今日の処は、聞かなかったことにしてやる。次は無いからな」
あぁ、借りを作ってしまった…アイツに…凹む私。
「うんじゃ、今日の処は、返却しておくぞ、ブラーム」
頷くお兄ちゃん。次の瞬間、自分のいたベッドの上にいた。
---ミリー---
ドアがノックされて、彼が入って来た。待ちわびていた瞬間だ。
「ヒロ君…」
「その呼び名はここではNGだよ。僕はファントムだ♪」
あの時の笑顔はここにあった。私は彼に抱きついた。う~ん、アバター姿なので、感触が思っていたのと違う。でも、彼が指を鳴らすと、あの時の姿になった私。
「二人っきりのときは、その姿にしてあげるよ。美里さん♪」
彼と久しぶりに身体を合わせた。
「ねぇ、あの廃墟の街は?」
時空を飛んだ時に見たことを訊いてみた。
「神の杖のクレーター部分…まだ、建物が疎らに残っていた時の物だよ」
ミサイルが撃ち込まれて直ぐくらいか。
「君の記憶の断片…君はあの街にいたんだ」
え…いた?記憶にまるで無い。
「記憶か?あの時代の記憶はクリーニングしている。でも断片が残っちゃうんだよね」
記憶のクリーニング?
「あ、僕が出来る能力では無いよ。僕の上司の能力だ。僕の能力は精霊達を束ね、指示を出すことくらいだ」
精霊を束ね?
「それが、僕のポジション。所謂、精霊王だよ。敵の攻撃に遭い、僕のチームメンバーと共に、色々なシチュエーションに飛ばされたんだ。上司が助けに来て、敵を倒すまで、何度も何度も、時空を飛ばされたよ」
彼のモノが私に入って来た。あの時と同じように、ゆっくりと動き感触を確かめていた。
「これからは、逢いに来るよ。約束だから。頻繁には無理かもしれないけど」
彼の口が私の口を塞いだ。もう会話は終わりだね。うん♪お互いの身体を愉しもう。