※この作品はR-18です。

アルフガン   作:もっち~!

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新たなる移住者

 

 

 

---アスナ---

 

「人間って、大変なんですね」

 

ユイちゃんは凹んでいた。妖精だった時も、AIだった時も、シモの心配ってしたことが無かったもんな。きっと…

 

食べれば、出る物は出る。月に1度来る物は来る。それは、彼女にとって、ショックな事態なのかもしれない。

 

「もよおすって感覚がわからないと、悲惨な目に合うわよ」

 

ユイちゃんの目からは大粒の涙が零れ落ちていた。

 

「ママもパパも…すごいんですね…私に出来るか不安です~」

 

まぁ、人間の場合、赤ん坊状態でおむつという物で、不快感を経験して、そこから自力で脱出する為に、おむつでの鍛錬がある。しかし、ユイちゃんは、初めから大人の女性の身体を得てしまった。どうするかな…

 

『おむつはいるかな?』

 

彼から念話が届いた。

 

「お願いします…燃えるゴミになるかもしれませんが、紙おむつを支給してください」

 

と、願いを伝えた。程無くして、きりんちゃんが大きな包みを持って来てくれた。

 

「これだけあれば、当分大丈夫でしょう。無くなってきたら、言ってくださいね。補充しますから。で、ゴミは、宿屋の廊下のゴミ箱に捨てて下さい。焼却処分をしますから」

 

と、紙おむつが支給された。早速、ユイちゃんに、おむつを装着した。

 

「ごわごわします…これはこれで違和感が…」

 

目を潤ましているユイちゃん。

 

「まぁ、慣れるまではこれで乗り切りましょう。あと、キリト君達男性に泣き事を言っちゃダメよ。興味本位で見られるからね」

 

釘を刺しておく。

 

 

 

---遠山りん---

 

久しぶりに、あの部屋に向かった。ヒロさんが働いていた職場に。部屋に行くと、あずささんが応対をしてくれた。

 

「お久しぶりです。すごいですね。パッケージゲーム部門で、年間1位獲得おめでとうございます」

 

イーグルジャンプ社の手がけたゲームが、売上1位を獲得したのだ。

 

「ヒロさんのおかげよ。だいぶ、鍛えられたからね」

 

「仕事に厳しい人でしたよね。って、死んだように言うと怒られるな」

 

苦笑いするあずささん。

 

「うん?ヒロさん、たまにいらっしゃるの?」

 

「えぇ。今、別のプロジェクトで、別の組織にいるんです。で、たまに、メンテ状況を確認しにみえますよ」

 

逢いたい…ヒロさんが消えた前日に、私の手料理を食べたいと言って、私の職場に来た彼。でも、仕事が追い込みで、応対が出来なかった。それが心残りになっていた。

 

「ねぇ、どこに行けば会えるの?」

 

「う~ん…いる確立は低いですけど、御徒町にある喫茶店「ダイシー・カフェ」かな?」

 

「あのVRMMOのメッカとなっている喫茶店?」

 

VRMMOの情報交換の場として、有名な喫茶店だ。特に『アルフガン』の情報が豊富らしい。

 

「そうです。でも…ヒロさんに会うのであれば、覚悟を持っていかないとダメですよ」

 

覚悟?何の?

 

「何の覚悟?」

 

「ごめんなさい。詳しくは言えません。ルールに反しますので」

 

ルール?何の?その辺りの話はのらりくらりとかわされた。そして、ヒロさんに会えることを期待して、喫茶店「ダイシー・カフェ」へと向かうことにした。

 

 

 

---あずさ---

 

りんさんが帰って行くと、奥の部屋からヒロさんが現れた。

 

「会わなくて、良かったんですか?」

 

ヒロさんに尋ねた。

 

「あぁ、ここでは会わない方がいいかなって」

 

「彼女も連れて行くのですか?」

 

「手料理が食べたい…っていうのもある。そろそろ、戦闘員以外も受け入れて、問題点をあぶり出さないと」

 

「順調では無いんですか?」

 

「う~ん、人口が少ないからね。見えない、いや見えて来ない問題があると思う。あずさには悪いけど、もう少し待ってくれないか?こちら側にメンテナンス要員がいて欲しいんだ」

 

「それは良いんですけど。アクセスすれば、ゲームの中で皆さんと会えますし」

 

この世界のVRMMO『アルフガン』は、B面と呼ばれる向こうの世界の『アルフガン』と、特異点でリンクしていた。B面のマップデータ、景色などは、ゲームと共通の作りだそうだ。B面へ移住した時に、違和感なく生きられるように、配慮した結果だと言う。

 

ゲーム内のある場所から転移すると、向こうの世界へのアクセスが可能であった。なので、寂しさは余り無い。「ダイシー・カフェ」のマスターは、B面から送り込まれたコマンダーで、ゲーム内から転移をして向こうでの交流をしている一人である。

 

「順調と感じ無いのは、一度に大量の移住者を持ち込めないことかな。それをするとパニックに陥ると思われるし」

 

私も事実を知らされて、パニックに陥った。信じて疑わなかったことが、根底からくつがえされた感覚だったし。今は落ち着いているけど。そして、B面のコマンダー扱いとなった私を、ヒロさんが訪ねてくるようになった。私の様子を見にである。B面に移住した後、私のことを心配していたそうだ。ヒロさんだけで無く、洋子さんも、つばささんも、杏さんも…

 

「何が事実で、何が真実かは、人それぞれの判断だと思う。難しいよな。そういうことって。コントロールしてどうにかなる物では無いし。洗脳と捉えられてもおかしくない」

 

洗脳…まぁ、そうかもしれない。事実は違うって言われても、根拠を出されても、それが真実であるかは証明が難しい。記憶に無いことであれば、尚更である。

 

「まぁ、話をしやすい、理解してもらえそうな者から、移住してもらう。あずさ、もう少し待っていてくれ」

 

ヒロさんに頷いた私。たぶん、私は最後の組なんだろうな。

 

 

 

---りん---

 

同僚でヒロさんにお世話になった者達と、「ダイシー・カフェ」を訪れた。店内は街の喧騒を感じさせない、緩やかな時間で動いているよう、そんな感じがする雰囲気だ。ガラケやスマホ、PCやタブレットでゲームをプレイしている者が多い。死語かもしれないが、ネットゲーム喫茶という感じであった。

 

「りんさんかい?」

 

スキンヘッドのマスターらしき人から、声を掛けられた。

 

「えっ?そうですけど…どこかでお会いしましたか?」

 

「お連れの青葉さんとコウさんは有名人じゃないか」

 

青葉はヒロさん指導の元、キャラメーカーとして大成した。コウもゲームプロデューサーとして、中々の地位を築いていたけど、それと私は関係ない。なんで、私を知っているのだろうか?

 

「今日辺りにお見えになるって、天の声があってな。覚悟は出来たかな?」

 

覚悟…あずささんも言っていたけど、何の覚悟?

 

「ヒロさんに逢いたいって言う覚悟だよ」

 

それは、逢いたい、逢いたいに決まっているじゃない。そう思った瞬間、目の前に光の渦が見えて、そこに飲み込まれていく。感覚が…身体の感覚がいつもと違う。言葉では言い表せない感覚だ。

 

光の渦が消えると、どこかの部屋に、コウちゃん、青葉ちゃん、うみこさん、はじめちゃんが一緒にいた。ここは?部屋から出ると、どこかの街の外れにいた。ここって…

 

「え?なんで、アルフガンの始まりの街にいるんだ?」

 

うみこさんが言葉を漏らした。そうだ、始まりの街が、眼前に広がっている。何で?ヘッドセット付けていなかったのに。

 

「うぉ~!何で~」

 

コウちゃんが驚きの声を上げた。青葉ちゃん、はじめちゃんは驚きのあまり声が出ないで、口をパクパクさせている。

 

「何で?ゲーム内に?いつの間に?」

 

「ようこそ♪アルフガンの世界に♪」

 

目の前にヒロさんがいた。あの時の笑顔が、そこにあった。

 

「ヒロさん…どういうことですか?」

 

逢えた喜びよりも、現状の不安の方が勝っている。

 

「どういうこと?って?覚悟して来たんじゃないのか?」

 

覚悟?だから…何の覚悟?

 

「なんだ、エギルのヤツ、覚悟を確認しなかったのか…う~む…」

 

「ヒロさんに逢う覚悟は、確認されましたけど…」

 

エギルって、たぶん、あのマスターのことだろう。

 

「僕に逢う覚悟だけだと、この後、苦労するけど…いい?」

 

苦労?

 

「りんだけ、送って欲しかったんだけど…ちょっと、予想外の人数だな。身体は用意してあったから、ロストは無いけどね」

 

送る?ロスト?

 

「え?ちょっと意味が分からないんですけど…」

 

「まぁ、歩きながら話そう。宿賃は僕が出すから、宿にインをしよう」

 

始まりの街の宿屋に向けて歩き出した。

 

「ど、どうして、ゲーム内に、私達はいるんですか?」

 

「うん?ここはゲームじゃないよ。現実世界だ」

 

現実世界?え?ゲーム内でしょ?ヒロさんの顔は真面目であった。どういうこと?

 

「ここでは死んだら死ぬ。そういう世界だ。まぁ、神の加護で、最寄りの街の霊安室で甦るけどね」

 

死ぬ?

 

「ゲームだと思うのであれば、システムウィンドウを開いてみな。ゲームでない証拠に開けないから」

 

ウィンドウを開く動作をみんなでしだした。でも、誰も開けなかった。

 

「ログアウトなんか無い。ここで死ぬまで生きることになる。今は人口が少ないけど、まぁ、いずれ増えてきたら、子孫を残すことが出来、不老不死属性は無くなる」

 

え…あ、あの…えぇ~?

 

「どういうことですか?」

 

青葉ちゃんがヒロさんに尋ねた。

 

「そういうことだよ」

 

宿屋の前には、ゲームのスポンサーだった美里さん、ヒロさんの同僚の洋子さん、つばささん、ヒロさんの彼女の杏さんがいた。

 

「わからないことは、彼女達に聞いてくれ。女性同士の方が、いいと思うんだ。色々とね…」

 

ヒロさんが苦笑いをした。宿屋にインをして、ヒロさん以外全員が、広めな部屋に集まった。

 

「どういう意味ですか?」

 

洋子さんに尋ねる私。

 

「う~ん。この飲み物を飲めば、分かるけど…」

 

私達の前に飲み物が置かれた。

 

「これは?」

 

「毒では無いよ。ただ、現状を認識するのに適した飲み物だ」

 

と、洋子さんが説明をしていた。取り敢えず、飲んでみる。すると…強烈に尿意が発生してきた。なんか、久しぶりだ…えっ?久しぶり?

 

「そういうことだよ。トイレは、部屋を出て右にある」

 

トイレに駆け込む私達。

 

◇

 

トイレから部屋に戻ると、

 

「わかったかな?」

 

洋子さんが苦笑いしながら、確認をしてきた。

 

「どういうこと?とても、混乱をしています。トイレ…毎日使うはずなのに、とても懐かしい感じで…」

 

「そういうことだよ。向こうが仮想空間で、こっちが現実ってことだ」

 

向こう?今までいた世界のこと?なんで…そうなったんだ?困惑する私達。今までいた世界について思い返していく。そうだ…月の物もなかった。コウちゃんに起きた時、生理用品がどこにも売っていなかった。

 

激しく動揺する。じゃ、あの世界は?なんで、あの世界にいたの?

 

「これが現実だ」

 

洋子さんがタブレットに映し出された映像を見せてくれた。脳みそが透明のカプセルに収納され、陳列している。膨大な数だ。次の場面では、身体を作っていた。これは…私だ…出来上がった身体に、脳みそが移植されている。これって…そして、服を着せて、祠へと運びこまれ、最後に、頭についていた電極がはずされていった。この一連の作業をしているのは、ヒロさんだった…

 

声にならない嗚咽が…なんで~

 

「ゲームと現実の区別が付かなくなり、押してはいけないスイッチを押したバカがいたんだ。その結果、ミサイルが飛び交う世界になり…」

 

「まさか…神の杖のクレーターって爆心地の1つですか?」

 

うみこさんが声をあげた。

 

「そうよ。あそこを掘り起こすと、未だに平和な頃の遺物の欠片が出てくるわ」

 

「そんな…」

 

「一応、支給品を渡しておくわね」

 

麻袋を1つずつ手渡された。

 

「街のお店で手に入らない物を、今後も支給します。今回は月の物対策グッズと、Aアダプタ、当面の生活費です」

 

美里さんが説明をしてくれた。

 

「Aアダプタ?」

 

「異性に出逢っても、そういう行為をする余裕が皆無いから、一部例外もいるけどね。ヒロさんとか、ヒロさんの上司とか、肉食系の女子とか…あと、ヒロさん達、管制官への連絡が出来る機能がついているの。消耗品はそれで注文するのも手だわ」

 

ヒロさんの上司?

 

「彼の上司が、この世界の統治者なの。彼はそのアシスタントにすぎない」

 

統治者?

 

「独裁者タイプでは無いけど、当面は独裁してもらわないと、埒が明かないのが現状なの」

 

「ここでは、どういう暮らしをすれば良いんだ?」

 

コウちゃんが質問をした。

 

「戦士として生きるなら、5番目の街まで行って。戦士として生きないのであれば、神の杖周辺の街へ直接向かってね」

 

「戦士と戦士以外のメリット、デメリットは?」

 

うみこさんが質問をした。

 

「戦士は統治者に認めてもらえるレベルになれば、完全なる不老不死になれる。現状は暫定的な不老不死なの。でも戦士になるには、痛い思いをたくさん経験しないとダメ。戦士以外だと、人口増加の役に立たないと、不老不死属性は直ぐに無くなる。但し、痛い思いはしないけど」

 

「美里さん達は?」

 

「私達は全員、戦士。戦士で無いとヒロ君に逢えないから。彼は普段、5番目の街にいるのよ」

 

じゃ、戦士にならないと…ここに来た意味が無い。

 

「選択に無理強いはしない。自分達で選択して。その結果は、恨みっこ無しでお願いね」

 

洋子さんが私達を見回して言った。

 

「注意事項だけど、これはゲームでは無いので、スキルもジョブもステイタスも無いガチバトルだからね。5番目の街まで行ければ、ジョブやスキルを学ぶことは出来る。4番目の街までは、ここでの生活に慣れることが大事なの」

 

「え…スキルもジョブもステイタスも無い…身一つでってこと?」

 

はじめちゃんが蒼い顔で質問した。

 

「お金を貯めれば、街で装備を買えるわ。それで補って。あと、サポートチームも巡回しているから、手助けをしてもらえるわよ」

 

「洋子さん達もサポートチーム?」

 

「美里さん以外は皆そうよ。美里さんは先遣隊だから。今回は特別にここに来てもらったのよ。彼女は未だ戦士見習いで、5番目の街で鍛錬中なの」

 

5番目の街?ヒロさんと一緒にいるの?

 

「ヒロ君とは、あまり逢えないけどね。鍛錬が忙しいから、合間に逢いに来てくれるだけなの」

 

顔を赤らめた美里さんが答えた。

 

 

 

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