---鬼門大樹---
うごぉ…更に鍛錬場所を増やした祖父。僕にどうせぇ~と言うのだ?
「睡眠学習だよ。寝ている時間も有効的に使おうな、大樹」
笑顔の祖父…鬼の中の鬼では無いのか?詰め込み過ぎは良く無いと思う。
「そうか?まだ、生温いと思っているんだけど…」
生温い?現代魔法師だけでアップアップである。なのに…
「深雪が嫌いか…う~ん、お前には女性は不要なのか?」
不要では無い。いないと困る。男だけの世界はイヤ…祖父だとやりかねない。
「そうか…まだ女性は早いのか?まぁ、いいや。睡眠時間中はアルフガンへ飛ばす。これは決定事項だ」
アルフガンだって?デスゲームよりも、過酷って言われている場所じゃ無いですか…アスナさんが卒業生だったような。
「この世界のアスナ達を、アルフガンへと誘う。まぁ、楽しめよ」
楽しむ?嫌な予感しかしないんだが…
◇
一瞬、意識が飛ぶと、始まりの街にいた。腕にはナイトクロウガントレットが、既に装備されている。
ステイタスをチェックする。ランク0レベル1である。スキル、能力はリアルで覚えた物が使え、この世界で得た物はリアルでも使えるそうだ。
「君が大樹君かな?」
エルフの女性が2名近づいて来た。見た目は中学生くらいであるが、年齢は100を超えているはずだ。地雷を踏むと危険が一杯な種族である。祖父が苦手と言っていたっけ。
「はい」
「私はエルで、彼女はルイ。君と同じパーティーになるように言われているの」
祖父の敷いたレールか?脱線が一番危ない。更なる試練を持って来そうだ。
「お願いします」
二人に頭を下げた。
「まかせてよ。そんなビクビクしないでも大丈夫よ。私には伴侶がいるから、摘まみ食いはしないよ」
って、エルさん。ルイさんは?
「私か?伴侶はいる。エルと同じ相手だよ。安心しろ」
とりあえず、パーティー仲間で、回される危険は無いようだ。
「で、僕はどうすれば良いのですか?」
「酒池肉林を目指しての冒険をするのよ。ルールはゲームのアルフガンに準拠だって、聞いているわ」
だから、ランク0レベル1なのか。
「後、大樹君のいる世界と、ここでは時間の進み方が違うの。大樹君の世界の1時間が1日に相当するのよ」
って…1日に7時間睡眠で1週間過ごせ、1年では7年分の鍛錬が出来るのか…美味しいのか?苦痛なのか?
「後、ここはオリジナルアルフガンのコピーした世界なの。だから、本隊の鍛錬のジャマにはならないそうよ」
いや、祖父のことだ。何かやらかすのだろう。最近、祖父のことが分かって来た。非常時において、頼れるリーダーであるが、平和な時はトラブルメーカーらしい。色々な世界でやらかしているそうだ。ヤマト叔父さんの話では、地獄と天国の入国禁止になったのは祖父だけらしい。国王が入国禁止って、何をやっているんだ?
「まずLV50でダンジョンボスを倒すことが、ランク1になる条件よ」
って、エルさん。
「まず一人で行ける処まで行ってみてね」
ソロで送り出される僕…パーティーって、まさか宴会系のか?う~ん、祖父だしなぁ、やりかねない。
---桐ヶ谷和人---
御徒町にある『ダイシーカフェ』へ恋人の明日奈と共にいる。ここはVRMMOのメッカであり、安全なネット環境を持つカフェで、情報交換の場でもある。ここのマスターは僕達のゲーム仲間で、よくここで集まって情報を交換していた。
「このゲームなんだが…」
マスターのエギルが、パンフを手渡して来た。シード規格のコンパチの新しいゲーム『アルフガン』である。製作会社はディープ・スノウ社で、運営会社はイーグル・テール社である。
「安全性は確保されているようだ。医療技術を用いていて、ゲーム中に睡眠が取れる仕組みだそうだ」
ディープ・スノウ社は、確かに医療系の企業である。僕も見学へ行ったことがある。最先端技術の開発をしているそうだ。バックには四葉財閥がいるので、研究資金も豊富であり、同じ財閥の傘下であるFLTとはライバル関係にあり、互いに切磋琢磨をして技術を磨いているそうだ。一方、イーグル・テール社は、鷲尾財団の傘下で、コチラも資金力もある。
「新興企業同士のタッグだが、どちらも資金は豊富で、外野の圧力に屈しない運営だと思うんだよ」
今までやって来たVRMMOでは、外部の勢力が悪用しようとして、その悪事に巻き込まれてきたからなぁ。
「ゲームの目的は特に無いが、冒険系は結構ハードだよ。クラインと二人で冒険しているんだが、なかなか手強いんだ」
クライン、エギル、俺、明日奈は、デスゲームと呼ばれたSAOの帰還者である。
「キリト、アスナ、来てくれないか?」
戦力不足で、一緒にプレイしないかと言う勧誘のようだ。
「今までの培ってきてスキルや技、アイテム類は使えるのかい?」
「使えるのが、一番のメリットであるが…まぁ、ハンデは付く。基本パラメーター5
つ、HP、MP、STR、DEF、AGIだが、コンバートデータの1/10が持ち込める。アイテムも持ち込めるんだが…装備重量制限があってなぁ。経験値が低いと、重い装備は装備出来ない。
魔法は大系が違うから使えない」
まぁ、世界感的にはそうなるよな。いきなり聖剣などのレア装備が使えたら、バランスブレイカーになってしまうし。
「銃も剣も使える。STR値が条件を満たせばな」
「MPは1/10持ち込めるの?」
明日奈が質問をした。興味が有るのか?
「あぁ、魔法大系が違うだけで、魔力は共通ってことだ」
「そうなのか…ねぇ、キリト君、やってみようよ」
キリトとは、僕のアバター名である。
「まぁ、体験してみるか」
「そういうと思った。ほら、プレゼントだ、キリト、アスナ」
クラインが僕達の分を購入しておいたようだ。
家に帰り、他のゲーム仲間も誘ってみた。クライン達が言うには、多人数パーティーで無いと、後半がきついらしいから。その結果、シオン、リズは既に始めていた。
「拳銃なら初期値でも使えるんだけど、弾がまだそんなに持ち込めないから…」
って、シオン。
「課金アイテムの錬金釜を購入して、アイテム屋を営んでいるよ」
って、リズ。
---小比類巻 香蓮---
知人であり、有名アーティストの神崎 エルザから、ゲームのコンバートの誘いが来た。
「なぁ、レンちゃん…おいでよ~」
う~ん…今嵌まっているGGOに不満は無い。コンバートなぁ。
「エムさんだけでは火力が足り無いんですか?」
「足り無い…いや、アイツに不向きなダンジョンが有るんだよ。なぁ、助けると思って…限定版のアルバムで手を打ってちょ」
うっ!神崎エルザの限定版のアルバムかぁ…高くて買えなかったんだよなぁ。
「良し!フカの分と2枚、今からエムに届けさせる」
え?!今から…それはコンバートしろってことかぁ~。
---鬼門大樹---
納得出来ない事態である。ダンジョンボスを倒したのに、レベルが足りないからって、足止めを喰らった。どうして、倒せたんだから、いいじゃん。
「お前は蒼い。いいか?案件には条件が憑き物だ。その条件を守りながら、案件を熟すのがプロなんだぞ」
って、祖父。いや、僕はプロでは無い。
「そうか。お前は別の道を歩むのか…じゃ、お前に星を1つやる。そこで一人で生きろ」
って…また、無茶な2択を出す祖父。孤独な世界じゃないか。天国も地獄も無く、不老不死で一人って…無制限な孤独…食べ物も無いし、娯楽も無くただ生きるだけの人生…絶対に拒否である。
「じゃ、案件の条件を守りつつ、進めよ」
鬼のような祖父…仲間が欲しい。エルさん達は危惧した通り、宴会仲間であった。非戦闘員扱いだと言う。孤独はダメだ…心が折れる。
「遅くなりました」
顔を上げると笑顔の白音さんと黒歌さんがいた。
「大樹と一緒にいるにゃん」
僕に抱きつく黒歌さん。あぁ、胸の感触が…元気が出そうだ。
「二人共戦闘要員かな?」
頷く二人。しかし、これは罠に近かった。二人がレベル50に成らないと、次の街には行けないってことに気づいたのは、リアルタイムで3日目の、僕がレベル50に達した時であった。
二人を護りながら僕が戦うと、二人には経験値が入らない。戦闘中に、何かしらの戦闘に参加する行動を取らないと、いけないのだった。これは難しいような…黒歌さんは仙術、妖術で攻撃できるが、白音さんは立ち尽くしているし。どうするよ、これ…
---キリト---
まずIDの発給である。クレジットカードの番号を登録する。これは身分を証明する為であり、課金行為をしやすくする為であるそうだ。クレジットカードが偽造かを検査する為に、指紋の登録をするそうだ。身分が妖しい者にはプレイさせない方針が見える。番号登録をしてからの発給時間は1時間くらい掛かるそうだ。その間にカードが本物かと、指紋の人物の犯罪履歴などが調べられるそうだ。警察と繋がっているのか?
IDが発給されると、コンバート作業になる。コンバートしたゲームアバターで、それぞれのゲームの選択画面に行き、コンバートを実行をしていき、コンバート成功と表示された後に、デバイスを身体に取り付けるそうだ。
目の前に街が見えて来た。ゲーム中は脳波をスキャンし、異常を感知すると、ゲームから強制ログアウトされるそうだ。安全に安全を重ねているようで、信頼感が少し増す。
ただ、このデバイスの理論がよく分からない。マインドスキャン方式という技術で、意識だけをゲーム世界へと飛ばし、身体や脳は休ませる効果があると言うのだが…
「おぉ!キリト、アスナ、待っていたぞ」
クラインとエギル、リズ、シノンがやって来た。
「なるほど、違和感は少ないかな」
って、アスナ。
「お兄ちゃん、ズルい。アスナさんが教えてくれなかったら、私は除け者だったよ」
って、義妹の直葉ことリーファがプンプンしている。あぁ、伝えるのを忘れていた。そうだ、ウィンドウを開いて、ステイタスとアイテムのチェックをしていく。持ち込んだパラメータが付加されているのか、最初から、ノーマルな剣が持てそうだ。
「そうだ、エギル。死んだらどうなるんだ?」
「蘇生場所を選べる。街にある霊安室か、借りた宿屋の部屋かだな。一般的には。1つ前のセーブポイントって言うのがあるが、罠だから、設定するなよ」
罠?
「ダンジョン内でセーブすると、そこで蘇生してしまうからだ」
って、バツの悪そうなエギル。経験者のようだ。
「後、ヒーラーが居ない時は、HPが50%未満になると、自ら安楽死を選べるから」
足で纏いになるからかな?
「まぁ、メインプログラムとシナリオは、あの水谷浩介だし」
「何?あのドエスメーカーか?」
水谷浩介…通称はヒロさん。有名なゲーム作家である。彼の作品は好きであるが、プレイヤーに試練と言う名のエム調教をしている感があり、もっと虐め抜いて欲しいという中毒性の高いゲームが多い作家である。
「この前、中毒から抜けたばかりなのに…」
凹んだ僕を、アスナとリーファが抱き支えてくれた。
「だから、キリの字を誘ったんだよ。お前、水谷浩介の中毒者だろ?」
正解なだけに、反論出来ない。アスナもそうだし、リーファもかな?
「はぁ~、で、最初のエム調教は何だ、クライン」
「レベル50以上で、ダンジョンボスの討伐。ここでの敵はレベル上げだ」
ボスはレベル50で無くても倒せるのか…
「序盤なんで、雑魚の経験値が低いんだよ。」
あぁ、それは根気試しか…
「後、注意事項だが、戦闘に参加しないと、経験値は貰えない」
それは最初の試練か?ソロで行かないと、経験値が得られないのか?
「ボス以外は二人で倒さないと、経験値が…」
エギルが言いにくそうに言う。人数割りだからな。
「経験値は戦闘参加者の人数割りで、小数点以下は切り捨て御免だ!」
って、クライン。
それは経験値2の敵を3人で倒すと、貰える経験値は0ってことか…ヒロさんらしい…
「キリの字、凹んでいるとこ、悪いが…雑魚の経験値は固定じゃないんだよ」
まぁ、個体差ってことだよな…
「舐めてかかる雑魚でも、全滅の危険はある。イレギュラーなヤツが混ざっているんだが、見分けが付かん…」
バックアップ要員がいるってことか…まぁ、ヒロさん的には有る話である。このゲーム、危険だ。