---リアス・グレモリー---
久しぶりに帰宅出来た気がする。たった8時間寝ただけなのに…この浦島太郎気分は何?
早速、睡眠学習で得た能力を復習する。滅の力を装備として具現化して纏う。そのままの状態で準備運動する。師匠に言わせると問題は持続時間だと言う。魔力の上限を上げなければ、今後の戦いにおいて、つらくなると言われた。
まずは1時間…クリアだ。なんか、久しぶりの我が家での朝飯だわ。
食卓へ向かうとお母様、お父様が既に着席していた。私も席に急いで着いた。お兄様の家族は別の食卓である。
「どうしたんだ、リアス。一夜で立派になった感じだな」
お父様よりお褒めの言葉を頂いた。
「えぇ、良き師匠に巡り会えましたから」
「うん?師匠とな。どんなヤツだ」
お母様が視線を逸らしている。言ってはいけないことだった。しまった…
「どうしたんだ、リアス。私には言えない人物なのか?」
「申し訳ありません。言わぬ約束でした」
あぁぁぁ~、お母様と親子で躾なのかな。マズい…あれはマジ、ヤバい。
「言えぬ師匠かぁ」
おや?お父様がどこかにこやかである。う~ん、あの師匠は人脈が分からないからな。地雷が埋まっていそうで、踏み込めない。
「そうだ。リアスに縁談が来ているのだが」
縁談?今はそれどころでは無い。
「まだ、高校1年です。大学に入ってから、お願いします」
「好きな男でもいるのか?」
「いません!」
即答した私。修行中に縁談なんてしたら、師匠に見放されてしまう。私はまだまだ上を目指したい。出来れば、師匠、大樹と共に…
---鬼門大樹---
あぁ、まるで寝た気がしない…睡眠学習恐るべし。今日1日保つかな?8時間は寝ているはずなのだが。まぁ。リアスに比べれば楽かもしれない。アイツは僕より1つ多いから。
リアスに抜かれないように鍛錬をしないと。もっとナイフ術を極めないと。道場でフレイさんに鍛えて貰う。
「大樹、今日は司波家に行く日だろ?」
祖父ちゃんが声を掛けてきた。そういや、あの後、どうなったんだ?昨日は沖縄のイベントだったはずだし。司波兄妹にとっての1日は、僕にとって2ヶ月であるから。
そして、司波家を訪れた。達也さんの視線は相変わらず、射るよう視線であるが、深雪さんの視線は何とも言えない視線であった。
「ありがとう、大樹君」
僕に抱きついて来た深雪さん。
「お母様も穂波さんも無事だった。本当にありがとうね」
深雪さんの纏うオーラが心地良い。
「なんで、あの場所に転移してきたんだ?」
達也さんの疑問は最もである。予め知らないと、あんなタイミングで転移なんか出来ないと思う。
「お兄様、これ以上大樹君を責めるような言い方は、許しませんよ」
深雪さんに護られる僕。う~ん、立場を逆にしたいが、現状で達也さんに勝てる気がしない。
「達也!何度言えば分かるのですか?代羽の者の能力が、私達を救ってくれたのですよ」
深雪さん達のお母様、深夜さんが助け舟を出してくれた。
「しかし…」
「代羽の血族には、予知能力があるの。その為、粛清対象にされたと聞いたことがあるのよ」
渋々、納得するしか道が無い達也さん。
◇
深雪さんとの楽しい時間が終わり、家に帰っていた。あぁ、寝るのが恐い…目覚めたのはアルフガンの家のベッドでだ。また、この世界に来たのか。そして、ここで寝ると、盾の勇者の世界へ飛ばされて…あぁ、寝た気がしない。
「おはよう、大樹」
リーファが先にインしていた。
「おはよう…どうだ、千葉道場は」
「うん、頑張っているよ。いつかはエリカさんのように、リアル世界でも剣技を出せるといいなぁ」
今日辺りにフカが洞窟に入れる筈だから、先に進めそうだ。窓から外を眺めると、頭を抱えるクラインが見えた。
---キリト---
頭を抱えるクライン。このエリアボスは、強敵だった。ランクアップ条件は、土地の取得って…
「なぁ、貯蓄って合ったっけ?」
「あまり無いなぁ」
「私も…」
三人合わせても全然足り無い。あの鬼のような平原の後に、これかぁ…
「地道に稼ぐしか無いなぁ」
「売れる物は無いしなぁ」
店で買い取り価格を調べる。一番高く売れる物は…ミノタウロスの霜降り肉って…有ったけど喰っちゃったしなぁ。
「あの肉はうまい…売るのか?」
洞窟に戻って、ミノタウロス探しか。平原でも出るには出るが、あの賢者様がいないと、とっても辛い。
「あの賢者様は呼べないのか?」
「連絡先を聞いていないよ」
あぁ、そう言えば、誰かの眷属にされたんだ。俺が、眷属になる代わりに、平原戦をアシストしてくれたんだ。
「そうよ、キリトの主って人を呼べば?」
それは手である。連絡をして見た。
『どこにいますか?』
『5番目の街よ』
ここにいるようだ。既に土地を買っていて、家を作っているそうだ。建築現場へと向かった。
大量な木材を加工して家を組み上げている。えぇっと、紅髪の少女だって言っていたっけ。
「君がキリトかな?私がリアス・グレモリーよ」
リーファよりも胸が大きい少女。
「あぁ、俺はクラインで、そっちはシノンだ」
「知っています。私の相棒は…エリカ!」
「呼んだか」
女剣士のようだ。刀を持っているし。
「あれ、キリト君…」
えっ!アスナ…振り返るとアスナがいた。リーファもいるし。ラッキーだ。パーティーが組めるな。
「あぁ、リアスさんの眷属になったのね」
「アスナ、一緒にパーティーを組もう」
「はぁ?だって、リアスさんの眷属でしょ?」
困った顔のアスナ。
「アスナも入れば良いじゃ無いか」
「私は大樹のパーティーにいるのよ」
「そこを抜ければいいじゃないか」
「キリト!他人のパーティーのメンバーを奪うな」
リアスが命令してきた。スルーする。
「アスナがいれば、100人力ですよ」
アスナの実力を知らないのだろうな。
「僕のパーティーメンバーを、奪わないでくださいよ」
フカと共に現れた男性。コイツがリーダーか?
「悪いが、アスナとリーファは、僕のパーティーの大切な戦力だよ」
「アスナは俺の大切な人で、リーファは妹だ。渡せないなぁ」
「私は大樹君のチームを抜けないよ」
って、アスナが呆れたように言う。あれ?なんでだ?
「どうしたんだ?」
「私にとって、大樹君は大切な人だからよ」
アスナの大切な人?俺じゃ無いのか?俺は問い詰めようと、アスナに詰め寄った。
---鬼門大樹---
ハラスメントコードが発動され、キリトは死体安置所へ転移した。
「アスナ、大丈夫か」
「うん。このシステムのハラスメントコードは、即死亡なのね」
お互いにスキンシップOKにしていないと、抱きつく、顔を近づけるだけで死刑が執行される。戦闘メインゲームで、色恋沙汰は相互同意が必要なのだ。力有るヤツの異性の独占なんか、祖父が許すはずも無く。
「一発退場か…」
クラインが呆然としている。
「リアス、眷属の教育をお願いしますよ。戦いたくないですよ」
「まったくだよ。ごめん、大樹」
説明責任はリアスに有るって、スカウトだけしている祖父。説明してから眷属化していないから、こうなるのでは無いか?
《告 あの鬼は、面倒事は丸投げするスキル持ちですよ》
なるほど…納得。
《告 覚醒遺伝しているのでは?》
あぁ、そういうことか。明日は我が身、注意しよう。
「そうだ、手伝いに来たんだ、リアス」
「経験値稼ぎかな?」
「そんな感じ」
僕とアスナ、リーファ、フカで木工スキルの経験値集めに来た。釘などを作る金工スキルも稼げそうだ。
---キリト---
たった、あの程度の動作で、死刑になるのか。注意しないとダメだな。アスナ…どうしたんだ?まさか、アイツと付き合っているのか?急いでアスナ達の元へと戻る。
アイツと共に、木材を加工していたアスナとリーファ。あれ?なんで、リーファが?
「アスナ、どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたも無いでしょ?クラインとガンガン先に進んで、私達を置き去りにして…大樹君がいなかったら、途方に暮れていたわよ」
「ここに家を建てる。アスナ、ここでも結婚をしよう」
「お断りします。私は大樹君以外、眼中に入りません」
何?
「お前、アスナに何をしたんだ?」
「僕に出来る事をしただけです。特別なことは何もしてませんよ」
「言っておくけど、お兄ちゃんじゃ、大樹君に勝て無いわよ」
って、リーファもアイツの肩を持っているって。どういうことだ?
「勝負しますか?」
目の前にPVPの画面が出た。了承ボタンを押すと、アイツと俺はバトルフィールドへ転移させられた。
そして試合開始直後、俺は死体安置所にいた。
◇
ログアウトして直葉の部屋へ向かった。
「お兄ちゃん、もう勝て無いと思うから、大樹にケンカ売っちゃダメだよ」
って…
「どうして、言い切れるんだ?」
「大樹はリアルで剣術を学んでいる。あの千葉エリカさんでも勝て無いんだって」
千葉エリカって、千葉道場の娘で、中学生の部では敵無しと言われている剣士である。
「なんで、知っているんだ?」
「私、大樹の紹介で千葉道場に通っているのよ。リアスさんの眷属にいたでしょ?彼女がそうよ」
そう言えば、エリカと呼ばれていた女性がいたな。彼女がそうなのか。
「本当は大樹と同じ道場で、一緒に学びたかったけど、入門出来なかったんだよ」
それは直葉の腕が、その道場の最低ラインに達していないってことか。
「お前の腕で入門出来ないのか?」
「腕前の問題じゃない。その前のテストで、落ちちゃったんだよ。あれは目から鱗な体験だったなぁ」
嬉しそうに語る直葉。
「リアルで、アイツの腕って、どの位なんだ?」
「千葉道場の次期当主が勝て無い位だって。まぁ、大樹に言わせると、剣道と剣術じゃ、戦う土俵が違うって」
千葉道場は剣道である。そうなると、アイツの道場は剣術か…
「何流なんだ?」
「大樹か?アイツはナイフ二刀流だよ」
まんまでは無いか。そうなると、独学か?
「直葉は、アイツのことをどう思っているんだ?」
「もちろん、大好きだよ。明日奈さんがライバルって、相手を変えても同じって、なんだかだけど」
明日奈だけでなく、直葉も大樹に惚れているのか。
「アイツのどこがいいんだ?」
「お兄ちゃんには無い部分かな。面倒見が良いし、優しいよ。お兄ちゃん達が見捨てた私達を、見捨てずに先に進ませてくれているし」
「優しい?」
「うん、分からない事は教えてくれるよ。お兄ちゃんは木刀と竹刀の違いって分かる?」
「竹刀は剣道で使う、木刀は剣術で使うか?」
「外れだよ。木刀も剣道で使う。いや、答えを訊いて、納得したんだ。納得はしたんだけどねぇ、その事に気づかずに剣道を極めようとした自分が恥ずかしくなったんだよ」
◇
翌日、直葉と共に、大樹の家を訪れた。門を入ると、木刀が打ち合う音が聞こえてきた。直葉は更衣室に消え、俺は道場の風景を眺めていた。
「祐斗!彼を鍛えて!」
「はい、リアス様」
肩を叩かれ、振り向くと紅髪の少女と、男性が立っていた。
「僕はリアス様の騎士で、木場祐斗と申します」
「だから?」
「私の眷属でしょ?剣術を磨きなさい」
「なんで?」
「あぁ~、もぉぉぉぉ~!師匠、あんなことを言うんですよ~」
紅髪の少女が癇癪を起こしたようだ。
「うん?説明責任はお前にあるんだぞ」
「師匠…」
「泣き落としか?それは卑怯だ…わかった、今夜は親子丼だぞ!」
「えっ!なんてことを…」
道場から男性が出て来た。あっ!賢者様だった男性だ。
「お前は物わかりが悪いのか?」
「何の話ですか?」
「リアスの眷属になるって言うから、手を貸したんだよ。それを今更、反故にするのは反則で無いか?」
「それはゲーム上のことでしょ?」
「誰が、ゲーム上のことって言った?僕はそんなことを、言っていないはずだが」
引き込まれるような瞳…全身が震えている。なんだろうか、この感覚は…俺の本能が逃げろと言っている。だけど、脚が動かない。
「お前はもう人間では無いんだぞ」
耳元で囁く様に言う男性。人間では無い?
「ここに聖水がある。これを振りかけるとどうなるかな?」
聖水?人間には無害だが、魔なる者にはダメージが入る筈。スポイトで一滴腕に垂らされた。皮膚に触れた瞬間、激痛が全身を駆け巡り、聖水が落ちた皮膚から煙が上がっていた。
「お前は悪魔に成り下がったんだ。リアスの眷属である証拠だ」
男性の声がねちっこく、俺の脳裏に絡み付く。俺は悪魔になったのか…嘘だろ…
「それは濃硫酸で無いのか?」
俺を驚いた顔で見ている直葉。その液体を、直葉の腕に垂らした。だけど、何も起き無かった。
「お兄ちゃんは悪魔になったんですか?」
「あぁ、そうだよ。それが第4の試練を、超える為の代償だ。あの時、言ったはずだ。これはゲームでは無い。リアルな契約だとな」
言われた。だけど、ゲーム内の演出だと…
「大樹、怪我を治してやれ」
「はい」
大樹が手を翳すと、傷跡が消え、痛みが柔らんでいく。コイツ、現実世界で回復魔法が使えるのか…
「あぁ、リアスは大樹の眷属だ。キリト君、君から見れば、大樹はボスだ。弁えて接したまえ。直葉、木刀を選んでこい」
「はい、師匠」
直葉は何事もなかったように、賢者だった男性の指示に従った。罠だったのか?
「罠?それはどうかな。君が、あの局面で拒否すれば、こんなことに成らなかっただろ?」
「どうすれば、人間に戻れるんだ?」
「悪魔から人間に戻る?無理だ。諦めろ、契約は締結している」
クソっ!嵌められたのか…