※この作品はR-18です。

神器なき男4   作:もっち~!

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僕は僕を知らない
両親を知らない


僕は両親が何者かを知らない。故に、僕は僕が何者かを知らない。

 

僕は鳴神一成という人に、面倒を見て貰っている。彼は僕の専属執事であり、僕の養育担当であり、僕の師匠でもある。彼の事も、元々何をしている人か、僕は知らない。産まれてから、ずっと一緒にいるのに、彼のことを知らないのだ。

 

僕の名前は、代羽大樹。名前の由来は、どんな時にも、大きく、どっしりと構えろって、ことらしい。

 

僕には姉と妹がいる。姉の名はあゆ、妹の名は真琴である。この二人のことも知らない。物心が付くと一緒にいた。

 

僕の家には、鳴神さんと僕達3人と、メイドであるフィアさんの4人しかいない。僕は両親に会った記憶が無いのだ。なのに、妹の真琴は両親のことを知っているようだった。勿論、姉のあゆもだ。

 

たまに祖父が遊びに来るのだが、どうみても、高校生くらいにしか見えない。祖父は何者なんだろうか。

 

父はドラゴニール、母はガイラと言うらしい。名前からして、この国の人では無いのは一目瞭然である。そうなると、僕は何者なんだろう?

 

家は住んでいる人数に対して、やたらに広い。5階建てで地下にプールとトレーニング施設まである。4階には露天風呂まであるし。家の設計は祖父のものらしく、露天風呂は祖父の好みだと言う。

 

一体、祖父と両親は、何の仕事をしているのだろうか?どうすれば、こんな大きいな家に住めるのだ。お金持ちなのだろうか?それすらも、知らない。

 

1階には大きな食堂を兼ねたリビングが有り、メイドであるフィアさんと鳴神さんの部屋がある。2階には、僕と姉妹達の部屋があり、ここにも勉強部屋を兼ねたリビングがある。3階と5階は使っていないが、4階は祖父のエリアだと言う。

 

我が家の教育方針は、放牧だと言う。小学生の間は色々やって、今後の方向を見極めろと言われた。但し、自分の身は、自分で守るのが基本という祖父の方針で、武道を習わされてはいるけど。剣道、空手、柔道、気術、魔術などを習う。

 

そして、時は経ち、中学へ通う歳になった。祖父の伝で、違う国にあるアウロス学園へ入学が決まった。その学校の傍に、祖父の家があるそうだ。

 

祖父の家には、祖父の転移術で向かった。そこはアガレス領という場所にあった。どこの国なんだ?耳にしたことの無い場所だ。空は紫色である。ここはどこなんだ?

 

祖父の家は学校を見下ろせる高台にあった。サンデッキに立つと、アウロス学園が目に入る。入学式…両親は来なかった。鳴神さんと祖父だけが来てくれた。両親はどうしているんだ?

 

入学式の日の夜、僕は祖父に訊いてみた。

 

「僕は両親に捨てられたんですか?入学式にも来てくれないって…」

 

「来たくても、来られないんだよ。もう、いないからな」

 

いつも笑顔の祖父の顔が崩れた。いない?どういうことだ?

 

「すまない。俺が護り切れなかったんだ。すまん」

 

鳴神さんが僕に土下座をしてきた。護り切れなかった?どういうこと?

 

「大樹、お前の両親は戦争の犠牲者だ」

 

祖父の口から、信じられない言葉が飛び出した。こんな平和な世界で戦争?有り得ない。その時、僕は初めて知った。祖父が傭兵部隊の団長であることを。両親は、紛争地域に産まれ育ち、紛争に巻き込まれて、命を奪われたことを…

 

「お前は、保存してあった細胞から作りだしたんだ。お前の父も母も、まだ子供を作れる歳ではなかった。だから…」

 

通常の交配では無い方法で、僕は産み出されたようだ。僕が産まれた時、既に両親は亡くなっていたそうだ。

 

姉と妹と、僕は血が繋がっていないことも、教えられた。僕を孤独にしない為に、祖父の部隊から派遣されていたそうだ。

 

「だけどなぁ、二人をお前の姉妹として扱え。あの二人には家族がいないんだ。お前があの二人の家族になってやれ」

 

僕を孤独にしない為だけでなく、姉と妹の心を和らげる役目が、僕にはあったそうだ。

 

「僕は、何者なんですか?」

 

「お前は、代羽大樹。それ以上でも、それ以下でも無い」

 

「僕は人間なんですか?」

 

「人間では無いよ。お前は…なんだろうな」

 

って、祖父。祖父もそうらしいのだが、種族不明らしい。どういうことだよ?

 

「大樹、種族は重要では無い。重要なのは、心と精神と魂だ。種族なぞ、器の銘柄に過ぎない」

 

う~ん…なんか難しいことを…人間と悪魔では大きく違う筈だよな。

 

「見た目で違いが分かったら、一人前だよ。じゃ、あゆの種族を当ててみな」

 

って、姉さんの種族?考えた事無い。人間だと思っていたから。

 

「ここは人間の国では無い。冥界という悪魔と堕天使の住む国だ」

 

はぁい?何で、そんな場所にある学校へ、僕は通うのだろうか?

 

「で、あゆの種族を当てろ!」

 

そんなことを言われても…いつも天使のような姉さん。ランドセルにも天使の翼が付いているし。

 

「天使かな?」

 

「ビンゴだ。スゴいなぁ、大樹は」

 

えっ!天使なの?マジで?僕の目の前で天使の翼を展開した姉さん。

 

「次、真琴の種族を当てろ!」

 

う~ん、天使?違うか。小動物系かな?かわいいし。

 

「猫かな?」

 

「違うよ」

 

違うの?人間ってオチかな…って、目の前で九尾の狐に変身する妹の真琴…うそっ!

 

「大樹さん、猫は私にゃん」

 

って、祖父の妹である白音叔母さんが猫人に変身した。

 

「なぁ。見た目で種族なんか、分からないんだよ。お前の通うアウロス学園は、異種族が通う、戦士養成学校だ。ここで、基礎を学べ」

 

祖父の言う通り、見た目では種族が分からなかった。天使でも悪魔でも、人間と変わらないってことだ。

 

◇

 

自分を知らない僕は、アウロス学園にて、僕の知らないことを、学んでいった。祖父…この世界に於いて、英雄クラスの人物だった。この世界を平和な世界にする為に、戦闘特化生物になったそうだ。

 

両親の亡くなった紛争は、誰も救われない戦争として、歴史で習った。その戦争を終わらせる為に、沢山の仲間を失った祖父。更なる強さを求めたようだ。

 

人間の世界で学んだ武術は、ここでは役立たないようだ。基礎としては役立つが、戦闘では無意味だった。攻撃速度と攻撃ダメージが、人間と比べると遥かに上であった。

 

「まず、目を鍛えろ。動体視力が弱すぎるぞ」

 

と、サイラオーグ先生から指摘された。この学校では、親の七光りは無視され、生徒の力量で判断されるようで、プライドの高い者ほど、挫折感を味わうそうだ。僕は親を知らないのだが、

 

「お前の親は不屈の精神だったぞ!まだ、出来るはずだ」

 

って、檄が飛んでくる。僕の両親も有名だったらしい。僕は知らないのに、教師陣は僕の両親のことを知っているようだった。

 

◇

 

入学して1年を過ぎようとした頃、意を決した僕は、学園長に両親のことを訊いた。

 

「大樹の両親?知ってどうするの?」

 

「どうって…知りたいんです。どんな人物だったか…」

 

「一言で言えば、ガイアは、仲間想いの素晴らしい悪魔だった。ドラゴニールは…あの救われない戦争を引き起こした大罪人よ」

 

母は英雄で、父は大罪人?どうして、僕を作ったんだ?

 

「もう一人の大罪人である鳴神の願いよ。あの人に頼まれのに、二人を護りきれなかったから。二人のもっと生きたい想いを育てて上げたいからよ」

 

鳴神さんの願い…僕を立派な戦士にすることらしい。恩人である祖父に報いる為に…って、鳴神さんも大罪人だったのか…

 

「まぁ、一番の大罪人は、あの人かな。ふふふ」

 

あの人?ここで更に驚愕な事実を教えられた。学園長と祖父って結婚していた事実…副園長も祖父と結婚していたって…一夫多妻な祖父…何をしているんだ?

 

「大樹、あなたの祖父は、私の願いを叶えてくれ、後押しもしてくれたの」

 

って、嬉しそうに話す学園長。

 

「では、学園長と副園長って、ライバル?」

 

「それは不正解だな。だって、一夫多妻にしたのは、私達の方だよ。そもそも、意中の相手とは、未だに結婚していないしねぇ、あの人は…」

 

はぁ?意中の相手とは結婚しないで…ますます祖父のことが、分からなくなっていく。

 

「英雄、色を好むって感じだよ。大樹にはまだ早いけどね」

 

って、副園長。

 

「意中の相手とは、どうなったんですか?」

 

「大樹、お世話になっているでしょ?。あの人の義妹の白音よ」

 

白音叔母さんが、祖父の意中の相手…

 

「あの人は、白音と二人まったりと生きたかったの。だけど、それは許されない夢だったのよ。だって、あの人は…身分が違いすぎるし、あの人はまったりする時間がないからね」

 

祖父はこの世界を護る為に、白音叔母さんとのまったりする生活を諦めたらしい。

 

「この世界だけって、ことでは無いの。全宇宙の調和を護る為に、紛争に介入するのは、あの人の天命なの」

 

天命…天からの命令。逆らえないらしい。運命とも言うらしい。

 

「大樹は好きな人がいたら、結婚しても大丈夫だから。ただし、高校を卒業したらね」

 

「今でも、祖父の事を愛していますか?」

 

「「勿論」」

 

って、二人とも即答であった。祖父が生きて帰って来るなら、愛人程度は些細な問題らしい。

 

「あの人は、性欲しか欲が無いからねぇ」

 

って、副園長。問題ありそうだよ、性欲しか欲が無いって。

 

「だから、天命が務まるのよ。征服欲も無いし、独占欲も無いからねぇ」

 

って、学園長。そういう見方もあるらしい。破天荒そうな祖父の本当の姿を、僕は未だ知らないけど。

 

◇

 

時は過ぎ、中等部の卒業時期が迫ってきた。卒業試験は、VR世界へ行き、目標とする相手を倒すことだそうだ。くじ引きで相手が決まるらしい。運も実力の内だってことだ。

 

そして、僕の相手は決まった。う~ん…最強スライムとある。スライムかぁ~、どうすればいいんだ?

 

すぐ様、VR世界へと転移させられた。実際にある世界のコピーらしいので、殺しても、問題無いっていうけど、僕が死んだら、生き返って、最初からやり直しになるらしい。痛いのは嫌いなんだけど…

 

って、ここはどこ?森の中に転移させられている。マップも無いし…困ったなぁ…こういう時は、有ると便利な物を『強奪』だな。

 

だけど、何も手元に物が届かない。あれ?何を強奪したんだ?

 

《解 私はラファエルです。よろしくお願いします。新しい、ご主人様》

 

何かの人格を強奪出来たようだ。って、言うか、人格って強奪出来る物なのか?

 

《解 私は人格と言うよりも、人工知能に近いと思います》

 

あぁ、なるほど。よろしく、お願いします。僕は代羽大樹です。

 

《告 あの鬼畜の孫とは思えない、素直で良い子ですね》

 

鬼畜?祖父のことかな?

 

《解 ノーコメントにします。壁に耳あり、障子には目ありです》

 

どこかでモニタしているのか…で、僕はどうすれば良いですか?

 

《解 周囲の気配を探ることとから始めてください》

 

気配を読み取る為に、神経を集中する。

 

《告 『探査』スキルを手に入れました》

 

探査スキル?それを使ってみると、先程よりも明確な気配を感じる。狼とゴブリンの集団に囲まれているようだ。襲って来ないので、様子見かな?最強スライムの手下か?

 

僕よりも探査能力が上の様で、囲んだまま付いてくる。転移術を持っているが、地形が分からないので、迂闊に転移出来ない。

 

《告 『オートマッピング』スキルを手に入れました。周囲5キロまでカバーできます》

 

早速、マッピングをしていく。ほら穴があるようだ。そこへ転移してみる。ほら穴の中に転移出来たのだが、マズい、出入り口が1つである。ほら穴の中では外の探査が出来ないようだし。困ったなぁ。

 

 

 

 

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