---鬼門大樹---
フィンさんが、僕の歓迎会をしてくれると言う。参加者は僕と幹部達だそうだ。あれこれお訊き出すのが目的か?フィンさん、リヴェリアさん、アイズさん、ティオネさん、ティオナさん、レフィーヤさんが参加だと言う。僕のことを良く思っていないガレスさんとベートさんは来ないそうだ。
問題は歓迎会の場所である。この街随一の繁盛店である『豊饒の女主人』だそうだ。祖父の苦手なメンツがいたよな、あそこには。祖父の苦手は僕の苦手でもある事実。隔世遺伝でもしたのか?
店内の片隅のテーブルで宴はスタートした。
「コイツか?期待の新人くんは!」
この店の店主であるミアさんに声を掛けられた。いつ逢っても迫力は満点だな。
「大樹です。よろしくお願いします」
「大樹?ファミリーネームは言えないってことか?!」
「あぁ…鬼門大樹です」
「鬼門…まさか…」
ミアさんの顔から血の気が抜けて行く。ここでも何かやらかしたのか、祖父は…
「あの鬼門か?」
「あぁ、そうだよ。孫だそうだ。本人は治外法権にいるぞ」
って、フィンさん。
「孫?あぁ、あいつは永遠の17歳って言っていたな。オラリオに来ているのか、あの鬼畜野郎は!」
「誰が鬼畜だって?!」
祖父の声だよ…声の主を見る者達の顔が恐怖に染まっていく。
「何しに来たんだ?」
「孫が虐められていないかのチェックだよ」
「マジに孫なのか?」
「おいおい、僕は嘘の吐けないスキル持ちだぞ。忘れたのか、ミア!」
ズン!
一瞬、衝撃波が放たれた。ランクの低い者達の意識が狩られていく。
「ほぉ~。ロキ・ファミリアとミアの配下は全員無事か」
「貴様…営業妨害スル気か?」
ミアさんの怒りのオーラを受け流す祖父。
「なぁ、裏庭の土地を貸してくれないか、ミア」
「断ったら、何をしでかすんだ?」
「何もしないよ。あれ、君、かわいいねぇ」
って、シルさんに言い寄っている祖父。
「お前、ナンパをしてるじゃないか」
「避妊はしないよ」
おい!
「祖父ちゃん!もう止めてよ~!」
僕は祖父を羽交い締めにした。
「まだ、何もしていないぞ、大樹」
「わかった。貸すから、今日の処は帰ってくれないか。お前の孫の歓迎会中なんだよ」
「あぁ、そうだったね。ミア、物わかりがいいと長生きできるぞ」
ドン!
お金が入った袋をカウンターに置いて、店内から転移して消える祖父。
「すみません。祖父が失礼なことをして」
ミアさんに急いで頭を下げた。
「大樹、気にするな!アイツのことは分かっている。こんなに大金を置いて行きやがって…まったく」
笑顔のミアさん。
「アイツはいつだって悪役だよ。だけどなぁ、間違ったことはしない。大樹、覚えておけ」
祖父は悪役を演じているのか…何の為に?
「ラスボスになろうとしているんだよ。この街の為にね」
って、シルさんが嬉しそうに呟いた。
◇
「さぁ、飲み直そうぜ!」
って、いつの間にかベートさんがいた。
「ベート、お前を呼んでいないが…」
「あぁ、鬼畜になぁ、大樹のガードを頼まれたんだよ~」
躾けられた気がする。僕に対する当たりが柔らかくなっているし。
「ねぇ、フィンさん。祖父は、何をやらかしたんですか?」
気になっていることを訊いた。
「うん?何もしていない。ただ、噂が先行しているんだよ。鬼門は鬼畜ってねぇ」
だから、アイズさんも最初の反応は強張っていたのか。
「誰が流した噂かはわからないが、少なくてもこの街では、常識なんだよ。鬼門は鬼畜って…だけど、実際に接してみて、そうは思えない自分がいるのも事実だ」
「フィン、どうにも成らないときにだけ、頼れ。アイツは努力をしないヤツは大嫌いだぞ」
って、ミアさん。
「大樹の話を色々訊いて、そう思うよ」
◇
翌日、豊饒の女主人の裏手に、館が建っていた。祖父の拠点である。見た事のある館だし。一階にはお店と鍛冶場と水回りが有り、2階以上が住居になっている。そして、地下には祖父専用の通称躾ルームと言うプレイルームが完備されているんだろうな。
店内にはフィンさんを始め、目利きの者達で溢れかえっていた。
「おい!シュウ!包丁は無いのか?」
ミアさんまでいるし。
「何用だ?無ければ造るぞ」
「肉切りと菜切りが欲しい」
「じゃ、これとこれだ!ミアだから負けてやる。5000でどうだ?」
「5000万だと…もっと安いので良い。そうだな1000万程度で良いんだが」
「じゃ、研ぎ直しだな。1本100でいいぞ」
ミアさんと祖父が豊饒の女主人へと去って行った。なって凶暴な価格なんだ?1本100万の研ぎ代って…
「それだけの価値はあるんだよ、大樹」
ジムさんだ。
「団長が研げば、ミノタンでも簡単に斬り落とせる肉切りに産まれ代わるからな」
それって、凶暴すぎるキレ味ではないですか?
「いいか?包丁も剣も同じ刃物だ。油断はするな」
「包丁セットが欲しい」
鍛冶系ファミリアの主神であるヘファイストス様が注文しているし。
「どのセットにしますか?」
奥から包丁セットを数点持って来たフレイさん。
「ノーブランドだと幾らだ?」
「5本セット3ですね」
5本で3億か?おいおい…高すぎるだろうに。
「そうか、買う。代金はギルドから受け取ってくれ」
証文を書いているヘファイストス様。えっ!買うの…どうして?
「大樹、目利きになれ。それだけ価値のある物なんだ。一生物だぞ。いや2世代、3世代で使えるかもしれない。メンテナンスを怠らなければな」
ジムさんが妥当だと言いたいようだ。
「うぅ~」
ゴブニュー様が唸っているし。眺めているのは剣のようだ。魔剣イフリートって書いてある。値段は…10億。マジか…
「高く無いですか、あれって?」
フィンさんに訊いた。
「うん?魔剣が10億か。いや、安いくらいだよ。この街の魔剣は、使用回数制限があってなぁ。回数に達すると折れちゃうんだよ。それでも2億、3億はするんだ。だけど、ノーブランドの魔剣は回数制限が無いんだよ」
なるほど…そう考えると格安なのか。祖父の作る剣は…
「フィンさんの槍はどうなんですか?」
「格安だよ。これもね。手入れさえ、忘れずにすれば、一生物、何代かに渡って使える名品だよ。5年くらいで使い物にならない槍に億は出せないだろ?」
そういうことなのか。目先の価値に囚われるのでは無く、本質を見ろってことか?
「メンテナンスキットをお願いします」
フィンさんはメンテ用具を購入した。基本キットは100万で、砥石が数種と、皮が付属している。皮は磨き用である。布だと危険だからだ。
「この皮で磨くのか。大樹、ホームでメンテの仕方を教えてくれないか」
「わかりました」
◇
ロキ・ファミリアのホームでメンテ方法を教えている。
「なるほどな。使ったら毎日磨けばいいのか。研ぐのは頼めるかな?」
「えぇ、いいですよ。2、3回砥石を滑らすだけで、大抵は問題は無いですから」
「この皮の素材は何だい?」
「羊の皮です」
神界で言うところの羊である。それは、大人の人の皮で有り、何枚も重ねてプレス接着しているのだ。そんなことは、言えないよな。
「ふ~ん、羊皮紙でも代用は出来るのか?」
「出来ます」
但し、本物の羊皮紙ならば…もちろん、それの原料も大人の人の皮である。
神々は無垢な人を仔羊と呼び、要らん知識を得た大人達を羊と言っているのだ。そのことを知らない人間や亜人達。
時として、真実は残酷である。
「大樹、剣の鍛錬をしようよ」
アイズさんが来た。
「はい」
二人で中庭にでて、模擬戦を行う。
「おお~、やっているなぁ~」
ティオナさんがやって来た。手にはあの得物が握られている。ナイフでは不利である。乱入されたら、逃げるか?
「ねぇ、私も混ぜてよ~」
って、乱入してきた。
「え!無理です。ナイフじゃ避けられないよ~」
「えぇぇぇ~、混ぜてよ~」
「じゃ、倒してもいい?」
「あぁ、倒せるものならなっ」
瞬動術で懐に入り込み、みぞおちに、ナイフの柄を叩き込んだ。そのまま、意識が飛んだティオナさんは、地面に横たわった。
「え!じゃ、大樹は手加減していたの?」
って、アイズさん。
「していないですよ」
必死に受け流しているし。
「今の攻撃、目で追えなかったよ」
あぁ、アイズさん相手で、攻撃に打って出ていないし。
「ねぇ、どうやったの?教えて」
え…えぇっと…瞬動術か…
「足の裏で地面を掴んで、投げ捨てる感じです」
頭を横に傾けるアイズさん。かわいい…
「わからないよ」
「う~ん…じゃ、裸足になって地面を掴む練習をしてみてください」
ブーツを脱いで裸足になるアイズさん。
「う~む…」
悩んでいるようだ。僕も裸足になり、手本を見せした。
「あぁ、掴むって、そういう風なんだ。あれ?難しいなぁ」
難しいですよ。誰もが得られるスキルでは無いですし。
「後、空気を掴めるようになると、空中を歩けるんですよ」
って、見本を見せた。
「スゴい…空中散歩ができるんだ…」
まぁ、翼があるから、あまり使わないけどね。
---フィン---
アイズとティオナが裸足で何かをしていた。
「何をしているんだ?」
「地面を掴む練習です」
地面を掴む?一見遊んでいるように見えるが。近づくと真剣な表情であった二人。
「誰に習ったんだ?」
「「大樹!」」
大樹かぁ…血の滲む鍛錬をしてきたんだろうな。
「どんな技なんだ?」
「瞬動術って言う技です」
瞬動?瞬間的に動ける術なのか。ミノタウロス相手に使っていた、アレかな?
「で、大樹は?」
「ベートと、18階層へのタイムトライヤルだそうです」
「なんで、ベートとなんだ?」
「軽装で走るのに適しているんだろう」
「「なるほど…」」
納得した二人。鬼畜に習っている分、教えることが少ないような。不思議な初心者だな。
---シュウ---
だらしなく口元からヨダレを垂らしている女神様。
「どうしたよ。もう終わりか?」
「もう止めて…」
四つん這いにさせて、後から突く。
「うごっ!」
突く度に顔が歪む女神様。
「どうしたよ?この街の男神全てと、交わったんだろ?」
「ごめんなさい…許して下さい」
「じゃ、今度、アイズをいたぶるのは禁止だ。いいな。後、供物にシルを寄こせ」
「はい…うごっ!」
「そっちも分かったか?」
オッタルが首を縦に動かした。ちょっと教育的指導をしておいた。大樹が巻き込まれるのは心外だからな。
女神に魔具である『奴隷の貞操帯』を装着させた。見た目は変わらないが、僕以外と交わると大変なことになる魔具である。ちなみに大樹は、この手の魔具の効果を受けないので安心である。
さて、帰るかな。
---鬼門大樹---
18階層まで行けなかった。16階層で手こずり、そこから転移して地上に戻ってきた。
「はぁ…はぁ…お前、ハードすぎるぞ」
ベートさんがヘロヘロでる。16階層で迷子になったのが効いた。要らない戦いが起きたし。
「地図とか無いんですよね?」
「無い。覚えるしか無いだろうな。はぁ…はぁ…」
ヘロヘロなベートさんとホームへ戻った。
「あぁ、大樹。ちょっと」
ティオナさんに呼ばれた。裸足である。今日1日を瞬動術の鍛錬で過ごしたのか?
「これで、どうかな?」
スタートダッシュは良いけど、徐々に速度が落ちていく。
「ダメです。目標地点に最高加速で入り込まないと」
「そうなのか…」
アイズさんは黙々と練習をしていた。でも、ダメダメである。
「風の力を纏うと、的にされますよ」
「えっ!」
風の力で加速していたのだった。
「風を探知出来る者には、恰好の的です」
並行世界のアイズさんは、祖父に風を読まれて『エアスタンプ』で瀕死にされていたし。
「逆に無風状態で移動しないと、気配で読まれます」
「そうなんだな…う~ん、むずかしいなぁ。ねぇ、大樹、お風呂行こう!」
えっ?どうして、そうなるの?両腕をアイスさんとティオナさんに掴まれ、女湯へ連行される僕…脱衣所で全裸にされて、身体の隅々までガン見されているし。
「ねぇ、掴む動作をして」
足の筋肉の動きを確かめているようだけど…何故、足の付け根をガン見しているんだ?
「これ、不思議だよね?」
え!ツンツンしないで…徐々に大きくなるアレ。
「スゴいなぁ…大樹は…」
いや、男性なら皆そうだと思います。
「なぁ、何しているんですか?」
レフィーヤさんだ。
「大樹のを観察していたんだよ」
うっ!裏筋を指で擦らないでぇぇぇ~!
「スゴいですね。ムクムク大きくなっていきます」
レフィーヤさんが一緒になって、ガン見しているし。この世界の女性はおかしいぞ!
「何をしているんだ?」
理性あるハイエルフ様だ。今度こそ助けてくれるはずだ。
「う~ん、膨張率が激しいんだな」
マジマジと見つめないで…
◇
うっ!皆さんの見ている前で、大放出してしまった。
「ごめん。玩具にしてしまって…大樹は私だけの物にするから、許してね」
それはアイズさん専用玩具ってことですか?
「う~ん、こんなに大きなモノって入るのかな?」
う~ん…入らない気がする。どう見ても、アイズさんの入口は小さい。いや、まだ適齢期では無いのでは?その内、考えることに疲れたアイズさんは、僕に抱きつき寝てしまった。僕は全裸で彼女はパジャマ…う~ん、何かがおかしい気がする。