---鬼門大樹---
マリアとシシリーの誕生日が近いらしく、合同の誕生日パーティーを開くらしい。
「大樹、プレゼント、期待をしているよ」
って、マリア。期待されてもなぁ。
「私も、欲しいなぁ。マリアだけってことは、無いよね?」
シシリーも欲しいらしい。だが、パーティーには行けそうも無い。クリスマス前は、我が家では大忙しだからだ。クリスマス…それは、祖父ちゃんの誕生を祝う日だと言う。
「いいか?僕は救世主であることを、否定する。だから、祝わないでいい」
って、祖父ちゃんは断固拒否しているが、周囲は祝う気満々であった。特に、副団長のヤマトさん辺りは…
「兄さん、照れないでください」
「僕は、お前の兄では無い。いいか?僕が僕で無かった時代のことを蒸し返すな」
って、拒否理由。だが、その日、祖父ちゃんの統括地では、祝いのミサが一斉に開催されているそうだ。そんな訳で、マリアとシシリーには、パーティーに行けないと伝えた。
「あ?どこの女と過ごすのよ!」
謂われの無いことを言うマリア。俺は祖父ちゃんとは違う、とも言えず。
「毎年のしきたりで、その期間は、ダメなんだよ。でもプレゼントはどうにかする」
ノープランではあるけど…俺には創造能力は無い。手先は器用な方ではあるが…どうするかな。
◇
何も浮かばない。
「若さの秘訣でもいいよ」
って、マリア。秘訣…人間を辞めることだよ、って言え無いよな。
「物で無くてもいいですよ」
って、シシリー。かと言って、交わる訳にもイカン。あっ!そうか、この世界では体験出来ないことを体験かぁ。
「シシリー、少し早いけど」
シシリーと共に大空へと転移した。
「え?空の上にいる…どうして、落ち無いの?」
「空中散歩の体験をプレゼントします」
シシリーには見えないように、翼を展開して、大空を滑空していく。
「風が気持ち良いですね」
「そういや、祖父ちゃんは月明かりで空中舞踏会したとか言って居たなぁ」
「ロマンチックですね」
って、今は昼間である。下界から見えないように、周囲には結界を張っている。見えたら、まずい事態になりそうだし。
「う~ん、マリアにはどうするかな」
「私は嬉しいけど、マリア向きでは無いですね、これは…」
だよなぁ。
「魔法具とか、良いかもしれませんよ」
魔法具…魔法を付与したアイテムだそうだ。作る?どうやって?
◇
「おい!シシリーと二人で何をしていたんだ?」
部屋に戻ると、マリアに噛みつかれた。ノープランで、空中散歩に行ったからなぁ。
「シシリーに誕生日のプレゼントを渡したんだよ」
「うん?私には?」
「考え中だよ」
シシリーは夢から醒めていないようで、余韻に浸っているようだ。
「シシリーには何を上げたんだ?」
「未知の体験だよ。マリアは物がいいだろ?」
「大樹の妻の座?」
「まだ、高校生にもなっていないし、俺は貴族では無いよ」
ちなみに、マリアはメッシーナ伯爵家、シシリーはクロード子爵家の令嬢である。結婚するなら、そういう家柄の相手が、両親は喜ぶはずだ。
「貴族で無くても良いんだよ」
いや、いくらなんでも、ラスボスの家系に嫁ぐのは、ダメだろう。
「何か、魔法具を考えるよ。時間をください」
「妻の座の確約でもいいのに…わかった。誕生日までに用意してよ」
ノープランで言い切っちゃったよ。どうしよう。
◇
自分の部屋で考える。どうしよう…
「これを、プレゼントしてみな」
って、祖父ちゃんが何かを持って、転移してきた。
「これは?」
「毛穴の汚れを取る魔法具だよ」
美容用品か…
「こういうので十分だと思うぞ。まだ子供なんだからさぁ」
って、その美容器具って、大人用では無いのか?翌日、マリアに、祖父ちゃんの作った魔法具をプレゼントした。
「毛穴の汚れを取る?」
実際に試すマリア…
「うっ!こんなに…」
ごっそり取れたらしい。
「これを使って、美しさを手にいれるよ、大樹。ありがとう」
俺の頬に柔らかな物が触れた。
「まだ、高校生では無いから、頬だけど…来年は唇にしてあげるからね」
って、笑顔のマリア。マジで俺の妻の座狙いなのか?
◇
年を越して、受験の日を迎えた。シシリーとマリアと3人で試験会場へ向かった。筆記が問題だなぁ。祖父ちゃんには合格ギリギリの点でいいからって、言われたけど…どうなんだ?合格できるのか?
「そういえば、賢者様の孫が受験するらしいよ」
って、マリア。賢者?それって、捜査対象では。この街に賢者がいるのか。
「どんな人かな」
シシリーも興味あるようだ。
「大樹、試験がんばれよ。一緒に通うんだぞ、いいなぁ」
胸ぐらを掴んで、マリアが 咤してきた。もう、なるようにしかならないと思う。二人と別れて、試験会場へと向かった。筆記試験…ギリギリかな?
次に魔法の試験。的へ目掛けて全力で得意魔法を撃てと…試験会場が消えて仕舞う予感。どうするかな。真上から打ち込めば、水平方向へのダメージは少ないかな?的の上に魔方陣を展開して、マテリアルバーストを発動した。衝撃波が巻き起こり、目の前にキノコ雲が発生して…あれ、どうして…焦る俺。
「えっ!君…何者…」
試験官の意識が飛んでいく。俺と一緒の組の受験生は、とうに意識は無い。衝撃波でやられたようだ。まずい…落ちたかな…まさか、地面から衝撃波が戻って来るとは、予想外であった。俺のいた試験会場は崩壊した。
◇
逃げる様に家に帰った俺。誰も俺に声を掛けてくれない。やらかしたのか?はぁ~、終わった。
「まぁ、やるだけやったんだ。凹むなよ」
って、祖父ちゃん。地獄の折檻は受けないで良いらしい。
「あれは、試験の内容が良く無いだろ。全力で撃てって、無茶もいいところだ。僕が受けていたら、この星は消えていたぞ」
まぁ、そうだろうな。いや、祖父ちゃんのことだ。周囲の宇宙を巻き込みながら、この宇宙その物が消えていただろう。
「まぁ、落ちたら、捜索方法を変える。だから、気にするな」
って、祖父ちゃんは部屋を出て行った。
◇
合格発表の日…マリアの家の前に転移した。
「大樹…」
マリアが俺に抱きついて来た。
「なんで、連絡をくれなかった?心配したんだよ。大樹のいた試験会場が崩壊したから」
「ねぇ、怪我はしなかった?」
シシリーが俺の身体をペタペタ触っている。
「会場を壊しちゃったよ…全力で撃ち込んだからね」
遠い目をしているであろう俺。
「まさか、あの地響きは大樹が原因か?」
固まるシシリーとマリア。うん?それって、まさか、あの試験会場以外にも衝撃波が襲い掛かったのか?
「お前、どんだけスゴイ魔法を使ったんだ?」
「そんなにすごくは無いよ。建物に被害が出ないように、的の真上から撃ち込んだんだよ。真横からなら、学校崩壊すると思って…」
「はぁ?」
「えっ!」
固まる二人。そうか、地中に魔素たまりでもあったのか。今、気づいた俺。この世界は居たる場所に魔素が存在していたんだ。地中は危険が一杯かもしれない。そんなことにも気づかず、俺は…あぁ、ダメだ。落ちただろう。
凹んだ俺をマリアとシシリーが挟むようにして、合格発表の場へと連行されていった。
「う~んっと…私は合格。まぁ、当然だよな」
「私も合格だよ…で、大樹君は…あっ!」
シシリーの驚いたような声。マリアは声を発しない。ダメだったんだな。
ドン!
背中に衝撃を受けた。
「おい!一緒に通えるぞ」
顔を上げると、笑顔のマリアとシシリーがいた。マリアはその後も、俺の背中を叩き続けている。
「えっ?受かっているの?」
「合格ですよ、大樹君」
「クラスは同じ、Sだし…あれ?お前、筆記ダメだったんだよな?」
頷く俺。あれ?なんで、Sクラスなの?
「採点ミス?」
「それは無いだろう」
とりあえず、3人で、制服と教科書を貰いに行った。
「あっ、アイツだよ、賢者様の孫…シン=ウォルフォードだ」
マリアが教えてくれた。アイツが賢者の孫か。
「その後ろにいるのは?」
「この国の王子であるアウグスト=フォン=アールスハイド殿下だ」
王子と賢者の孫は仲が良いらしい。じゃれているし。で、賢者の孫が、首席を取ったようだ。
「う~ん、首席は取れなかったかぁ~」
悔しがるマリア。
「うん?君が大樹・鬼門君なのね」
って、制服を手わたしてくれたスタッフに言われた。
「えぇ、そうですけど…」
「教師の間では、破壊王って言われているわよ」
笑いながら言われた。はぁ?なんですか、その二つ名は…
「あぁ、試験会場を壊したからねぇ」
って、マリア。それは事実だけど…王子と賢者の孫の視線を感じる。ライバル視か?それとも、軽蔑の視線か…
「あのですね。俺って、順位はどの辺りでしたか?」
「入学式の後にクラスへ行けば分かりますよ。成績順位順に席が決まっていますから」
本人にこっそり教えるのでは無く、皆にばれるんですか…入学式は欠席しようかな。
◇
そして、入学式…欠席は認め無いと祖父ちゃん。みんなで見に来るらしい。この世界の賢者様を…俺はいつものように、マリアの家の前に転移した。
「大樹君、入学おめでとう」
って、マリアとシシリーの両親から、お言葉を貰った。
「マリアの相手は貴族で無くてもいいのよ」
「シシリーの相手もですよ。本人が気にいらない結婚はさせない方針ですから」
って、狩る様な視線で俺をロックオンしているマリアとシシリーの両親達。
「俺は胡散臭い男ですよ」
って、スルーされているし。なんで、俺を信じているんだよ。祖父ちゃんはラスボスだよ。
「シシリーの誕生プレゼント…とっても嬉しがっていたわよ。何を贈ったの?教えてくれないのよ」
それは言える物では無いし。
「マリアなんか、毎日使っているわよ。もっといい女になるんだって」
マリアの顔がみるみる赤く染まっていく。どうした?
「バラさないでよ、お母様」
こっそり、キレになる作戦だったのか?
「なんなら、二人共でも良いと思っているの。私達、隣家同士だしねぇ」
二人共って、なんで、俺のことを、そんなに買っているんだよ。俺は、将来的に性癖が破綻するかもしれないのに…って、この場にイッセーさんとヴァーリさんが…いた。はぁ~?
「こんなに立派な、ご両親なんだもの。大樹君の将来に期待しちゃうなぁ」
って、俺の知らないうちに、親同士交流しているようだ。
『なんて言ったんですか?』
念話でイッセーさんに訊いた。はぁ~?
『違う大陸の傭兵家族って言ってあるよ。ウソはダメだからね』
って…まぁ、傭兵で間違いは無い。
「二人で前線に出ることが多いので、大樹はおじいさん子なんですよ」
って、ヴァーリさんが答えているし。
『ありがとうな。俺達の子供の入学式に出られるなんて、夢だと思っていたよ』
って、イッセーさん。俺を実子として受け入れてくれているようだ。嬉しいやら、恥ずかしいやら。
「大樹も将来、傭兵になるのか?」
マリアに訊かれた。
「たぶんねぇ。だから、結婚は考えていない」
「私、ヒーラーを目指します」
って、シシリー。それは、傭兵になるってこと?そんな恰好良い職業で無いと思うんだけど…負ければ、ラスボス認定されるし。