---鬼門大樹---
馬車で学校へ…護衛として馬に擬態したデュラハンのマッチーさんと、ケンタウロスの姫さんが、馬車を引いていた。なんか、参加メンバーが増えていないか?学校にも、護衛メンバーが多々潜んでいる。祖父ちゃんがやらかさないようにだと良いのだが。確実に、この星を制圧できる戦力が学校に潜り込んでいた。
「どうしたんだよ、大樹」
マリアに訊かれた。
「いや、ちょっと」
俺も索敵スキルを発動しておく。トラブルに巻き込まれたくないし。
『仕掛けられても、校内ではスルーしろよ』
って、祖父ちゃんの念話が聞こえて来た。何をするんだ?俺の入学式だよ。壇上では賢者の孫が新入生代表として挨拶をしていた。そして、無事に入学式が終わり、教室へ…黒板には座る場所が書かれていた。Sクラスは基本10名らしいのだが、11名分書かれている。俺が特別扱いなのか?点数が足り無いのに、危険だからか?
「おい!お前が鬼門か?」
王子に訊かれた。頷く。
「お前、試験会場を破壊したそうじゃないか」
「だから?」
なんか、ウザい…消し去りたい。だけど、我慢だな。この国の王を肥だめに強制転移は、問題になりそうだし。
「俺は王子だぞ。その口の利き方は、どういう理由だ?」
「俺は威張るヤツが嫌いだ。それに、俺はこの国の国民では無い」
「ならば、覚えておけ。俺はこの国の王子だ」
「覚えられたらな」
王子から腹黒さは感じ無い。俺を試しているのだろうか。
「おい!決められた席に着け!」
あっ!先生が来ていた。一斉に自分の席に着く生徒達。
「さて、では改めて入学おめでとう。俺はこのクラスを担任するアルフレッド・マーカスだ。実技も担当しているので宜しくな。さて、この後はお互いの自己紹介をして明日以降の予定を伝えて、今日は終了だ。では、俺から始めようか。さっき言った様に名前はアルフレッド・マーカス。俺もこの高等魔法学院の卒業生で、教師になって5年になる。教師になる前は宮廷魔法師団に所属していた。5年ほど勤めた後、学院の教員に欠員が出たので教師になった。だから年齢は28歳だな。尊敬する人物は賢者マーリン殿だ。なのでこのクラスの担任になれて大変嬉しく思っている。以上だ」
この世界の人々は魔力を体内に貯められない為、纏うオーラで力量が分からない。この先生は如何ほどの実力なのだろうか?
「では次はお前達だ。じゃあ、入試順位順にいくか。では、シン・ウォルフォードから」
賢者の孫が自己紹介をし始めた。男はスルーだな。
「マーリン様とメリダ様の個人レッスン……」
「なんて羨ましい……」
そんな声が方々から聞こえて来た。この世界の賢者って、みんなの憧れの的のようだ。うちの賢者様は、女性の敵だからなぁ。偉い違いである。
「次は、アウグスト殿下、お願い致します」
王子が挨拶を始めた。コイツの尊敬する人物は賢者のようだ。そんなにすごい賢者様なのか?全知全能に1つ足り無い、うちの賢者様を尊敬することは少ない。人徳の問題だろうか?祖父ちゃん曰く、人間では無いから人徳なんかミジンコのかけらすらも無いって。ミジンコでは無く微塵だと思ったのは内緒である。
「では次、マリア・フォン・メッシーナ」
あぁ、マリアの番だ。アイツ、3位だったのか。
「はい。初めまして、マリア・フォン・メッシーナです。メッシーナ伯爵家の二女で、女学院は性に合わないし魔法もソコソコ使えるので、魔法学院に来ました! さっき殿下も仰ってた様にみんな気軽に接してくれると嬉しいです。尊敬するのは、大樹のお爺さまです。宜しくお願いします!」
俺の祖父ちゃんを尊敬?やめた方がイイに一票である。この国の賢者様でなかった為か、俺とシシリー以外の者がマリアに視線を浴びせていた。いいじゃんなぁ、誰を尊敬しようと、人それぞれである。
「次は、大樹・鬼門」
俺の番である。えっ?なんでこんな順位が上なんだ?
「おい、どうした!鬼門大樹!」
「あっ!はい。こんなに順位が上だと思わなくて…」
戸惑う俺。
「その件は、後で説明する。まず、自己紹介をしてくれ」
訳ありのようだ。
「鬼門大樹です。よろしくお願いします」
「短けいなぁ!もっと、紹介しろよ!」
席に座ろうとした俺に、苦言を呈す王子。頷く先生。
「この国の国民では無いので、王都に家が買えませんでしたので、毎日王都の外から通います。これでいいですか?王子様!」
「お、お、お前…王都の外から通うのか??」
俺の発言に驚いている王子。
「です!」
何かを考え込む王子。家を斡旋してくれるのか?
「では次、シシリー・フォン・クロード」
「はい。初めまして皆様。シシリー・フォン・クロードです。クロード子爵家の三女で、マリアに引っ張られて魔法学院を受験しました。こんな素敵な皆様と出会えて、誘ってくれたマリアにはとても感謝しています。私は治癒魔法が得意で、攻撃系の魔法はちょっと苦手です。皆様をサポート出来ればと思ってます。尊敬する人物は、マリアと同様に、大樹君のお爺さまです。宜しくお願いします」
シシリーも祖父ちゃんを尊敬しているようだ。なんかしたのか?まさか、プレイはしないとは思うけど…
その後、残りのクラスメイト達の自己紹介が続いた。女子は、金髪のアリス、黒髪のリン、既に大人のボディを持つユーリがいた。
そして、自己紹介が終わり、
「鬼門についてだが、本来であればCクラス入り確定であったが、皆も知っての通り、実技試験でコイツの実力には光る物があった。なので、特別にSクラスに入れた。Sクラス以外では扱いが難しいと思われるからな。それに、クロードとメッシーナとは仲が良いそうなので、暴走も止められると期待している。では、明日移行の予定だが…」
俺が暴走?それの抑止でマリアとシシリーの間に座っているのか。って、マリアとシシリーが苦笑いしていた。やりかねないってか?
そして、先生がお帰りになると…王子と賢者の孫が寄って来た。
「何か、問題でもあるか?なぁ、王子」
「問題?あるとすれば、お前の私に対する態度くらいだな」
「直す気は無い。お前が慣れろ!」
険しい表情の王子。
「貴様、殿下になんてことを!」
長身の男子が殴り掛かって来た。俺が手を翳すと、ソイツはこの場から消えた。お決まりの肥だめへの強制転移である。心を折るには効果的だと、祖父ちゃんに習っている。
「何?ユリウスをどうしたんだ?!」
王子の知り合いか?
「今、何をしたんだ?」
賢者の孫が俺をロックオンしてきた。
「賢者の孫なら、解明してみろよ。お前の祖父は、尊敬の的のようじゃ無いか」
って、俺はラスボスぽく無いか?隔世遺伝のなせる業か?
「じゃ、失礼するよ」
マリアとシシリーと共に、父兄達の待つ部屋の前に転移した。
---シン・ウォルフォード---
手を翳しただけでユリウスが消えた。アイツは何をしたんだ?
「おい!シン、アイツは何をして、ユリウスはどこへ消えたんだ?」
魔力を貯めている様子は無かった。初めから貯めていたのか?それとも…
「殿下、ユリウスが見つかったそうです」
オーグの護衛であるトールが、どこかから情報を仕入れてきたようだ。
「どこで見つかったのだ」
「それが…」
言いにくそうである。
「おい、どこだ。申してみろ」
「学校内にある肥だめです」
「はぁ?おいおい…」
「そうなると、強制転移だな」
俺はある可能性を口にした。
「強制転移?転移術か?」
「そうなる。現に、マリア達と、この場から消えたのも転移術だと思う」
この世界の誰も使えない魔法である。この俺ですら…
「それは、大樹はシンよりも上位の魔法使いってことか?」
「くやしいけど、そうなるな」
初めて俺よりも上位の魔法使いに出会えた。たぶん、爺ちゃんよりも上位だと思う。
◇
俺の家に戻ってきた。爺ちゃん、婆ちゃんの他、オーグとディスおじさん、後トールが一緒に来ている。ディスおじさんとは、この国の王様であるディセウム・フォン・アールスハイドのことである。小さい頃から知っているので、親戚のおじさん扱いである。
「何?転移術が使えるのか?」
今日見たことを話した俺、それに対して唸る爺ちゃん。
「魔力を貯めているように見えなかった。手を翳すだけで、強制転移されていたし」
「う~ん…」
「シン、その子と敵対したらいかん」
って、婆ちゃん。そんな気がする。初めて勝てる気がしない相手に出会った気分である。
「その判断は正しい」
いきなり、この場にいない、いや、知らない者の声がした。気づかない間に、知らない男子が部屋にいた。
「お前は、誰だい?」
「シュウ・ヨハネ・鬼門、本日は孫がお世話になったので、お礼に参りました」
コイツ、大樹の爺ちゃんか?って、見た目は大樹の方が歳上に見えるんだけど。
「シン君だっけ?そう、正解だよ。僕は永遠の17歳だよ。見た目は大樹より幼く見えるだろ?」
笑っている大樹の爺ちゃん。だけど、放たれているプレッシャーはハンパ無い。膝が笑っている。ディスおじさんは股間が濡れてきているようだ。この人は何者だ?
「挨拶じゃと…何しに来たんじゃ?」
爺ちゃんが訊いた。
「先に行っておきます。無駄な争いは好まないからね。僕と大樹には一切の魔法攻撃は通じないです。物理攻撃も無意味に近い、なので、手を出さない方が賢明です。うちの家訓は、売られたケンカは全量買い取りですからね」
魔法も物理も、それはあらゆる攻撃が無意味と言って居るようなものだ。魔法の付与をしたアイテムを常時身につけているのか?
「それは外れだ。魔法の付与?そんな物、僕達の前では無意味だよ。試して見るかい?」
次の瞬間、俺の前の前は真っ暗になった。
---アウグスト・フォン・アールスハイド(オーグ)---
大樹の祖父が、シンに笑みを浮かべると、シンのヤツが、その場で崩れる様にして倒れた。何をしたんだ?魔法を撃ち込んだ様子は無かったが、何かをしたのは確かである。シンに駆け寄るメリダ様、シンの首に手を当てると、首を横に振った。それは…
「おい、貴様!シンに何をしたんさ?」
メリダ様が大樹の祖父に詰め酔っていく。
「戦うことの無意味さを教えてあげただけだ」
「だからって…シンを殺すことは無いだろう!」
「蘇生してやるよ。今日、一晩付き合え」
そう言うと、大樹の祖父とメリダ様の姿が消え、シンが息をしだした。
「おい、シン!大丈夫か?」
俺はシンの元へ駆け寄り、抱きかかえた。
「俺…どうしたんだ?突然、目の前が真っ暗になって…」
死んだ自覚は無いようだ。即死系の何かをされたようだ。何をだ?
「マーリン殿、アイツは何者ですか?」
父上がマーリン様に訊かれた。
「異次元の魔法使い…」
異次元の魔法使い?
「我々の知識の外にいる魔法使いじゃな」
知識の外にいる?
「笑顔を浮かべたまま、殺戮が出来るのだろう。殺意も悪意も感じなかった」
それは未知の敵になりかねないってことか。
---メリダ・ボーウェン----
なんとも言えない気分で目覚めると、アイツと交わっていた。かわいらしく唄っている私。かわいらしく?って…信じられないことに、私の肉体は高校生の時に戻ったように、みずみずしく、柔らかな女体になっていた。
「あぅ…いい…もっと…」
アイツに身を預け、おねだりをしていた。身体がとろけていく。アイツの指が股間を這うだけで、身体の芯が熱く茹だって行く。
「いい女体だよ。気にいった。毎週プレイするかな」
これが肉便器てことなのか。彼の液体に漬け込まれていく。気持ちが良すぎる。こんなに激しく肉体を愛されたことは無い。女性で良かったと思えてしまう刺激である。
「どうする、その姿のまま生きるか?」
「あなたの前だけ、あなたに愛される時だけ、この姿になりたい」
今のウソ偽り無しの言葉が口から漏れていく。
「わかった。汝の願いを叶えてやる。供物は、お前の身体にしてやる」
明け方近くまで、彼に愛されて、元に姿に戻されたた後、王都の自宅へ帰された。
---シン・ウォルフォード---
婆ちゃんの捜索に行き詰まりを感じ始めた明け方頃、突如、婆ちゃんが帰ってきた。その顔は、見るからに幸せそうであった。
「メリダ!何があったのじゃ」
「あの方の愛に触れられたのさ」
あの方?誰それ?こんなに幸せそうな婆ちゃんは、初めてみた気がする。
「メリダ!何をされたのんじゃ?」
「アンタには関係無いさ」
婆ちゃんのキレたような視線を感じ、爺ちゃんが狼狽え始めた。いや、俺もディスおじさんもだ。
「幸せ気分に浸っていたのに、何ジャマしてんのさぁ!ごらっ!」
キレていた。
「そうは言いますが、何があったのか、教えてもらえませんか?」
ディスおじさんが、言葉を選びながら尋ねた。
「そうさな、心の奥底にある闇を癒やしてくれたんさ」
心の闇を癒やす?それは、どんな魔法だ?見当がつかない。この世界の魔法は、イメージを反映させて行使するのだが、心の闇の在処が分からないと、癒やすことは出来無いはずである。
---鬼門大樹---
賢者の孫の祖母と交わり、彼女の記憶を読み取った祖父ちゃんは、次に魔人の正体の解明に着手したようだ。この世界の賢者に関しては、見切ったそうだ。今日もマリアの家の前に転移して、マリアとシシリーと合流して、学校へ転移した。
教室に向かうとアリスとユーリがいた。
「おはよう、アリス、ユーリ」
「おはよう、大樹」
「大樹君おはよう!」
教室内は広いので、俺とマリアとシシリーは魔力制御の鍛錬を始めた。ソレを物珍しそうに見ているアリスとユーリ。
「何をしているの?」
ユーリに訊かれた。
「大樹のお爺さまに伝授していただいた、魔力制御の鍛錬だよ」
って、マリア。シシリーはアリスに伝授しているし。王子達が登校する頃には、5人で鍛錬をしていた。
「何しているんだ?」
王子に訊かれた。
「朝のウォーミングアップだよ、王子様」
昨日、肥だめ行きになったユリウスは、肉体強化術を発動して、懲りずに襲って来たので、迷わず肥だめへ強制転移してあげた。
「おい!また…」
「はい、王子様」
頭を抱えている王子様。あれ?賢者の孫は?今日は欠席か、一緒にいない。まぁ、いいか。そんなやりとりをしているとアルフレッド先生が来た。
「体調不良のシン以外は、全員いるな、それでは改めて、みんなおはよう」
シンは欠席のようだ。祖父ちゃんが、やらかしたのか?
『おはようございます』
「では、今日の予定を伝えるぞ、昨日言った様に午前中は学院を見て回る。昼食後は最初の魔法実習だ。この後案内するが第一練習場に集まる様に、特に何も持って来なくていい……と言っても皆異空間収納は既に使えるみたいだな。流石はSクラスだ。今日の連絡事項は以上だ。何か質問はあるか?」
特に質問は無く、校内見学をして食事になった。午後からは魔法実習かぁ。どんな実習になるのかな?そして、期待していた魔法実習なのだが…
「よし、皆居るな? それでは、高等魔法学院での最初の授業を始めよう」
『よろしくお願いします!』
「と、言っても、最初の授業は決まっていてな、入学試験の時に見せた魔法をもう一度使って貰うんだ」
はぁい?
皆の視線を感じる。破壊王らしい魔法を放てば良いのか?
「大樹は何をしたのかだけ、説明をしてくれ。危険だからな」
ふぁい?俺、危険人物決定ですか…
「どんまい」
って、シシリーが声を掛けてくれた。どう説明すれば良いんだ?魔法体系が違うんだけど…目の前ではクラスメイト達が、得意な魔法を全力で、披露している。
「はぁ~。次は大樹だ」
説明は苦手である。
「的の真上から魔法を撃ち込みました」
「それはどうしてだ?」
先生に訊かれた。
「水平方向から撃ち込むと、被害が甚大になる可能性が大きいからです」
「なんだって…あれでも被害を抑えたと言うのか…」
言葉少なめの先生。とりあえず、頷いておく。
「お前の本気は危険なんだな」
そこが少し違う。魔方陣を発動する為のトリガーを放っただけである。
「ごく微量ですけど…本気で撃ち込みませんよ。マリアとシシリーが危険になるし…」
場の空気が固まった気がする。実際問題、同じ敷地内に二人がいるのだ。そんな大規模な魔法は撃て無いと思う。
「おい…ごく微量の魔力で、あんな大惨事になったのか?」
え?大惨事?逃げ帰ったので、被害の全容は知らない。
「さすが、破壊王だな…」
あぁ~、先生の声が震えている。
「そもそも、魔力の量と、ダメージの量って比例しないですよ」
たぶん、この辺りが、この世界との違いだと思う。魔方陣発動タイプである俺達は、魔方陣を発動できるトリガーとなる魔力を適量撃ち込むのである。ダメージ量は魔方陣の大きさに比例するのだ。
「何を言っているんだ?そんな訳無いだろ?」
水掛け論になりそうだよ。基本が根本的に違うのだ。同じ土俵で戦える論議では無い。
「じゃ、極小の魔力で、あの魔法障壁を壊してみましょうか」
指先魔力を集めて、指先から、その極小の魔力の粒を打ち出した。魔法障壁手前には、あの粒でも発動出来るダイヤモンドダストの魔方陣を発現してある。あの魔法障壁は、この世界の魔法にだけ有効である。なので、
バリーン!
目の前で障壁が割れ、その衝撃周囲の障壁も粉々になっている。
「え…あんな極小の魔力で破壊だと…」
マリアとシシリーは、僕の魔法体系が違うことを知っているので、驚かないけど、残りのみんなは、俺のに対して恐怖を抱いたようだ。
「今のは障壁破壊用の魔法です。これだと、実技試験の的は破壊出来無いので、的に適した魔法を撃ったまでです」
「お前、高校へ来る意味があるのか?」
先生が妙なことを言う。
「魔法理論の研究の為ですよ」
知らない魔法体系があると、対処が出来無いからだ。なので、違う魔法体系の世界は、探索案件になりやすいそうだ。