---鬼門大樹---
みんなの恐怖対象になった翌日、何故かアリスとユーリが俺に懐いていた。今日も5人で朝のウォーミングアップをしている。
「このウォーミングアップをね、家でやっていて気づいたんだよ。大樹君の言っている意味が分かった気がしたの」
って、ユーリ。いつもよりも力まずに、無詠唱で、なにげ無く放った魔法…その威力は絶大にアップしていたそうだ。
「たぶん、魔力をそんなに込めていなかったの。なのに…大惨事、一歩手前だったよ」
苦笑いしているユーリ。コイツの家って、ホテルを経営しているのでは?
「私もそうだった。あれは危ない」
って、笑顔で話すアリス。
「一緒に魔法を研究したいかな」
「そんなたいそれた研究はしていないよ」
「大樹のお爺さまが研究されているでしょ?」
って、マリアが言葉を添えた。
「そうなんだ。是非、お願い」
って、言われても、ユーリは祖父ちゃんのストライクゾーンなんだけど…アリスは安全だけど。
◇
クラス内派閥と言うか、俺擁護派と反擁護派に別れたような雰囲気である。俺を見る教師達の目つきは、恐怖の色で染まっているし。恐怖の対象になった気分の俺。まぁ、俺の正体を知れば、マリア達だって、いつかは…
放課後、マリア達を自宅へ送った後、俺は森に繰り出した。魔物狩りをしてストレス発散をするためである。ゼノヴィアさん達とミトさん達も狩りに出ているそうだ。張り合う気はないけど…頑張ってみるかな?
森の中で索敵スキルを使う。両腕にナイトクロウガントレットを装着して、森の中を索敵していく。いた!結構大物がいた。その場所へ転移した。
現場では、王国の騎士と思われる者達が食われていた。凄惨な現場であるけど、かろうじて生き残りはいるようだ。鎧を粉砕されたが、まだ息のある女性を見つけた。そんな俺を目掛けて襲い掛かるクマの魔物。緊急事態であるので、即死させる。クマの身体を透過させて、直に心臓を握り潰した。その場で崩れる様にして倒れた魔物。俺は唯一の生き残りの女性の元へ、駆け寄った。
---クリスティーナ・ヘイデン---
近衛騎士団として、魔物の調査の為に森に入ったのが、レッドベアの災害級の魔物と遭遇して…死を覚悟したのだが、私は救助された。一人の少年によって。虚ろな意識であったが、彼は素手であの魔物を瞬殺していた。目を疑う光景である。近衛騎士団員10名で戦い、私以外全滅した魔物にである。
「君は何者?」
「まだ、動いちゃだめだよ。傷口が塞がりきっていないからね」
治癒魔法を使っている。災害級の魔物を素手で瞬殺したのに、彼はヒーラーなのか?
「今、救助を呼んだから」
呼んだ?どうやって?狼煙も信号弾も使っていないのに?
「よぉ!大樹どうした?」
青髪の女性と赤髪の女性が現れた。
「この人が襲われていたんだよ。傷口が酷いから、小屋まで運びたいんだ」
「転移は使えないのか?」
「傷口が心配だよ」
転移?まさか、転移魔法も使えるのか、彼は…
「どうした、大樹」
今度は少年がやってきた。
「あぁ、祖父ちゃん。この人の怪我が酷くて…」
爺ちゃん?えっ?あだ名かな?彼よりも若いけど。
「活き締めして連れ帰るかぁ」
はあ?活き締めって…殺すの?安楽死ってこと?ちょっと待って!って、目の前が真っ暗になっていく。
◇
感じた事の無い刺激で目覚めた。爺ちゃんと呼ばれた少年の上で、身体を捩り、踊っている私。なぜか、全裸で…彼と交わっているし…
「よぉ!生き返った気分はどうだ?」
生き返った?じゃ、死んだの?私?
「ゴメンね、祖父ちゃんの趣味は屍姦だから」
最初に見つけてくれた少年が苦笑いしている。屍姦?死体だった私としたのぉぉぉぉぉぉぉ~!
「久しぶりに名器出会えた気分だよ」
「で、なんだ、交わっているんですか?私、活きていますよね?」
「あぁ、体内から修復しているんだよ。内臓がまだ傷んでいるからね。僕のアレって、修復、治癒能力持ちなんだよ」
アレって、アレですよね…股間に刺さっている物を見て仕舞う。
「祖父ちゃんにしかできない、役得的な治療方法なんだよ」
腰が勝手蠢いている。刺激を求めて蠢いているようだ。こんな淫らな女では無かったはず。
「女体は興奮すると乳房が25%ほど大きくなるそうだよ」
無意識に自分の胸を揉んでいた私に、そんなことを告げる少年。この子、なに?
「まぁ、2,3日経てば、退院できるよ」
まさか、三日三晩、やり続けるのか…
◇
傷は癒えた。大樹の転移術で、近衛騎士団の詰め所へ送ってもらった。
「えっ!ヘイデン、生きていたのか!」
騎士団長が私を抱き占めて喜んでいる。私は、私の身に起きたことを話した。操を捧げた相手のことは、スルーして…
「助けてくれた者達がいるのか」
「はい。彼らの実力はスゴイです。災害級でも瞬殺ですよ」
リハビリがてらに狩りに連れて行ってもらったのだが、見た事の無い剣技で、種別関係無く、見つけ次第屠っていた。飛ぶ斬撃、居合い斬りなどなど、この国では使い手がいないような剣技を惜しみなく使っていた。
「普段使いしないと、イザって時に出せないからな」
彼がそう教えくれた。4刀流の使い手だという彼。その弟子の女剣士達と彼の孫。トンでも無い魔物ハンター集団であった。
「ヘイデンが、言うんだから、間違いは無いだろう。イザって時に、援軍になってくれるといいんだが」
「交流を深めていきます。ですので、彼らの窓口に私を指定してください」
彼と孫の大樹の治癒魔法は有用であり、貴重である。なによりも、彼のペットになりたいし…
---鬼門大樹---
班分けで授業…俺はマリア、アリス、ユーリと同じ班で、シシリーは賢者の孫、王子の班になっていた。賢者の孫はシシリーに積極的に話しかけ、王子が二人をからかっている。
「大樹、最近放課後どうしているんだ?シシリーをシンに取られちゃぞ!」
って、マリア。
「最近、狩りに出ているんだよ。家の周囲に魔物が増えちゃってさぁ」
「魔物を狩っているの?」
ユーリ達が驚いている。
「そうだよ。なんで驚くの?」
「そうか、大樹は傭兵だもんな」
訳知り顔のマリア。身を乗り出して聞き入るユーリとアリス。
「普段から戦っていないと、いざって時に、護りたい者が護れないからね」
「魔法で狩りをしているのか?」
「ケースバイケースだよ。基本は近接攻撃かな。仲間を巻き込む魔法は使えないからね」
「お爺さまの弟子達と?」
「そうだよ。基本皆ソロだけど、同じ獲物を狙う時もあるから」
うん?索敵に何かがヒットした。なんだ、この悪意の塊は…
「マリア、アリスとユーリを護れ」
「どうしたんだ?」
俺は、悪意の塊の元へ転移した。
◇
そこには、背中にシシリーを隠す賢者の孫がいた。目の前には、真っ赤な目をした悪意の塊がいた。俺は、ナイトクロウガントレットを装備して、飛び出した。
「大樹君!危ないって!」
シシリーの声が後方から聞こえた。賢者の孫が魔法を撃ち込んでいるが、目の前の悪意の塊に効果が無いようだ。俺は瞬動術で、相手の懐に入り込み、いつものようにナイフ二刀流で、相手の喉仏をきり裂き、胸をきり裂き、相手の内部へ地獄の業火を放った。
「なんだと…」
体内から灰になっていく敵。二振りのナイフをガントレットに収納し、最後の悪あがきに備える。
「何、あんなに簡単に倒せるのか…」
王子の声が震えている。コイツ、なんだったんだ?
《解 この世界の魔人です》
久しぶりにラファエルさんが解答してくれた。これが魔人?
《解 魔に染まった人間のことです。大樹の知る魔人とは違い、種族的には転生悪魔程度の強さです》
魔王クラスでは無いのか。う~ん…
「大樹君…ありがとう」
よくわからないけど、シシリーが背中から抱きついて来た。目の前の魔人の解析に気を取られ、シシリーのことを忘れていたような。そうだ、賢者の孫に護って貰っていたのでは?
『コイツ、貰って行くよ』
ヤマトさんからの念話。目の前の死に絶える寸前の魔人が、闇に沈んでいく。闇の世界で検死解剖するのかな。
「シシリー、もう安全だよ」
振り返ると、目から大粒の涙をこぼしているシシリーがいた。
「大樹君…」
俺に抱きつき、号泣しているシシリー。なんで?状況が見えない俺。
「おい!王子、説明を頼む。なんで、シシリーは号泣しているんだ?」
「お前…魔人相手に何をしているんだ?」
「え?何って、危険ブツだから排除しただけだよ」
「シンですら手こずった相手を、なんで簡単に屠れるんだ?」
「場数の違いだろ?」
「場数?」
鬼の祖父の元で、どんだけ場数を稼いだと思っているんだ?睡眠学習でだいぶ場数を稼いだぞ!
「お前、どんだけ場数を踏んでいるんだ?」
「数えられない位だよ」
アルフガンとオラリオとか色々派兵されたしなぁ。
「大樹!お前、シシリーを泣かしたのか?!」
更に事情を知らないマリア達がやってきて、えん罪を振りかけていく。
◇
「すまない!ごめん!もう許してよ~!」
シシリー本人から号泣理由を訊いた女性陣。俺へのえん罪は晴れた。
「大樹君、もう一人で魔人相手に戦わないでね」
俺も異世界産の魔人なんだけど…
「あの位の強さの相手なら、問題は無いよ。祖父ちゃんの鍛錬に比べたら、楽勝レベルだよ」
クルムさんとか、ミリムさんとか、オーフィスさんとかとのタイマン勝負に比べれば、蚊に刺された程度である。あのお三方レベルだと、俺の透過能力は効かない場合があるのだ。
「お前、普段どんな相手と戦っているんだ?」
王子が興味を持ったようだ。すると、一瞬消えて、血の気が失せた顔で現れた。
「なんだ、あれは…」
祖父ちゃんが鍛錬にご招待したのかな?消失タイムが0.5秒程だったから、12時間は確定だな。
「どんな相手?」
「赤いグローブを嵌めて少女…」
ミリムさんだ。たこ殴りにされたかな?
「あぁ、龍神様だな。魔法は効かないと思う」
「あぁ…」
あの後、面倒になりそうだったので、転移で逃げた俺。おかげで、手柄は賢者の孫に付いた。その手柄により、王様から表彰されるらしい。
「大樹が倒したのに、シンが倒したことになっているぞ。いいのか?」
って、王子。魔人を倒して以来、王子が俺をかまいだした。なんか、鬱陶しいんだけど。
「かまわない。面倒ごとは、嫌いだよ」
シシリーがペタペタと俺の身体を触って、怪我が無いかを確認している。俺もヒーラーなんですけど…って、いうか、再生能力持ちだしなぁ。1日経てば、たいていの怪我は修復されている。
「クロードはシンと大樹だと、どっちが好きなんだ?」
王子が妙な質問をした。
「大樹君です」
笑顔で俺に抱きつき、返事を返したシシリー。
「そうか…賢者の孫よりもか?」
「はい、大樹君は私にスゴい誕生日プレゼントをくれました」
嬉しそうに話すシシリー。あれは、魔法じゃないんだけどね。
「スゴイ?どんな物だ?」
王子が興味を持ったようだ。いや、マリアを除く女性陣もかな。
「おい、メッシーナ。お前もプレゼントを貰ったのか?」
マリアの態度に、何かを感じ取ったのか、王子がマリアに質問をした。
「はい?あぁ、いただきました。毎日使っています」
「毎日?日用品か…う~ん、気になるなぁ。大樹、何をあげたんだ?」
「言える訳無いだろ?秘密の共有もプレゼントの内だぞ」
はっとした王子。この話題は、ここでブレイクだな。
◇
翌日、
「一昨日の騒ぎで学院中が浮わついてる。ウォルフォードは特に気を付けろよ? 出来れば他の生徒と一緒にいてなるべく一人になるな。囲まれるぞ?」
と先生から注意がなされた。何が起きているんだ?シシリーに訊いてみた。
「魔人をシン君が倒したことになって、新たな英雄が生まれたって…」
「英雄の孫だし、慣れているんだろ」
ちなみにエロ賢者の孫だと女難の相が大変である。祖父ちゃんのしわ寄せが、俺の方に向かってくることがあるし。
「だよな」
って、マリア。
「なぁ、大樹。お前、災害級の魔物を倒したことあるか?」
「分からない。魔物が名札つけている訳では無いので、何級の魔物かわからない」
「そうか。王宮騎士団員が助けられたらしいんだが、誰に助けられたか言わないらしんだよ」
「そういうのは賢者の孫でしょ。俺は関係無いよ。王都にいないし」
「だよなぁ。王都に住んでいないもんなぁ」
結果、災害級の魔物退治の功績も、賢者の孫に付いたらしい。たぶん、クリスさんの案件だと思うけど、目立たないように行動するのも、案件のうちである。
で、様々な功績を積んだ賢者の孫に、学校からのプレゼントがなされた。賢者の孫をトップにしたた研究会の新設だそうだ。会員はSクラス全員だと言う。はぁ?
「俺は入会拒否します」
「はぁ?これは学校として決めたことだ。従え、大樹」
魔法体系が違うのだ。共同研究はあり得ない。
「無理強いするらな、学校を辞めます」
◇
あんなことを行った為に、除籍処分になった。
「ケツの穴の小さい校長だな。そんなことで除籍処分かよ」
祖父ちゃんに怒られると思ったのが、怒られなかった。
「方向性は見えた。学校で習うこともないだろう。って、シシリー達はいいのか?」
そこが問題であるのだが、彼女達は、あの研究会への入会を拒否していない。つまりは、アイツの祖父である賢者から、魔法を習いたいのだろう。
「いいも悪いも、俺に選択権は無い。そうだろう、祖父ちゃん。離脱時に悲しみを得るより、楽だよ」
「お持ち帰りでもいいんだぞ」
祖父ちゃんは誰をお持ち帰りすんだ?現状ではクリスさんが一番手か?