ほら穴の中は、特に何も無かった。どうする?
《告 ここで鍛錬出来ることをしませんか?》
出来る事…座禅…無の境地になってみた。見えない物を感じる。気配を読む。違う。そうだ、空気と一体になるのはどうだ。などと思考し続け、一向に無の境地に立てない。
僕は何者だろうか?そこに意識を集中していく。そもそも、あの祖父は胡散臭い。ラファエルさんが鬼畜呼びしていたし。う~ん…
ドン!
音がした。入口の扉が破られたようで、空気の流れが変化した。入口から見える木々、あそこへ転移するか。漸く、ほら穴から脱出出来た。しかし、気配がダダ漏れだったのか、また包囲されつつある。千日手になりそうだ。
ラファエルさん、何かいい手ありませんか?
《解 自分で考えないと…試験ですよ》
そうですね。そうだ。この状況を打破出来る物を、強奪すればいいのか。『強奪』を発動した。また、手元に何も無い。だけど、力が漲っていく。何を手に入れたんだ?
《告 暴風龍ヴェルドラを使役しました。龍化が可能になります》
龍化?ソレをしてみるか。『ドラゴンブレーカー』を発動してみた。身体が龍人のようになっていく。
《告 龍化は耐久度、攻撃力がアップし、飛行が可能になります》
なるほど、良し!これで、最強スライムと戦えるのか?『強奪』で最強スライムを引き寄せた。
《告 試験が終了しました》
はぁ?戦っていませんが…
《解 最強スライムの力の源を奪いました》
力の源?まさか、暴風龍さん?
《解 ビンゴです》
こうして、呆気なく試験は合格した。だが、意外な事実が僕を襲った。
「中等部の卒業?何のこと?進級試験よ」
2年生になる試験に過ぎなかった。あれ?卒業って…
「あぁ、中等部の予備練の卒業よ。これからは戦士としての鍛錬が待つわ」
って、学園長。
◇
そして、進級…戦士として戦闘スタイルを決めないとダメらしい。剣士なら剣術メインで、魔法師なら魔法メインの鍛錬が待ち受けるらしい。
「大樹は、魔法戦士だから、剣と魔法がメインよ」
って、学園長。僕の希望?
「あの人が手続きを総て終えているから、何も考えずに鍛錬をしなさいね」
祖父が、僕の人生のレールを操作しているのか…
「戦士以外の選択肢は無いんですか?」
痛いのは嫌いだし。
「無いわよ。大樹は戦士以外になれないし」
なれない?なんで?
「大樹は大樹のことを知らないんでしょ?知れば、わかるわよ。鍛錬の合間に自分探しをしなさいね」
って、学園長。
「この先は、パーティーでの鍛錬になる。パーティーの仲間をまず探しなさい」
仲間?ラファエルさんはノーカウントかな?
「軍師は戦え無いわよ」
なるほど…
「オススメな人材っていませんか?」
人を見る目に自信が無い。見ただけで、種族が分からないし。
「じゃ、こちらでマッチングするわよ。文句は無しよ」
文句は無し?イヤな予感がするのですが…
「基本4人だけど…大樹は魔法戦士にしたいから、魔法使いと剣士、後ヒーラーがいるわね」
学園長がリストに目を通していく。
「あぁ、両親に預けるのも手かな?」
「死んだはずでは?」
「う~ん、大樹の出生は、ちょっと違うのよ。両親が二組いるの」
はぁい?
「ドラゴニールとガイラは故人って言うのは聞いているでしょ?」
頷く僕。
「故人から子供は、作るのは難しいけど、生きている者同士の受精卵に、故人の遺志を継ぐことは出来るのよ。簡単に言うと代理出産って感じかな?」
代理出産?
「あの人が秘密裏にやらかした結果だけどね」
祖父が、何かをやらかして、僕が産まれたのか…
「代理の両親もその事実を、今も知らないのよね」
それは秘密裏過ぎるでしょ?
「あの人はいつだって、斜め上を行く発想なのよ」
って、学園長が嬉しそうに話している。祖父のことが余程、好きなのだろうか?
「生きている両親のジョブは?」
「二人とも戦士よ。剣術も格闘術もこなせて、魔法もヒールも出来るわ」
それは僕が戦士以外の選択肢が無い理由か?
「違うわよ。大樹が戦士しかなれない理由は、種族の問題なの…」
種族…不明って言われたけど…
「種族不明の者を普通、何て呼ぶか知っている?」
なんだろうか?
「あの人もそうだけど、普通化け物って呼ばれるのよ。戦士以外の場合、ラスボス認定が為されるレベルのね」
え…戦士かラスボスかの2択なのか…戦士しか選択肢が無いのは、その為なのか。
「理解したわね。じゃ、代理の両親とあの人にするかな?親子3代でパーティーって良く無い?」
楽しそうに提案してきた学園長…3代でパーティーって…まぁ、自分を知る機会が在りそうではある。
◇
パーティーメンバーの顔見せの日…アウロス学園は大騒ぎになっていた。英雄クラスが3名、来校するってことらしい。それは、僕のパーティーメンバーが英雄クラスってことか…
「よぉ、大樹。元気だったか?」
祖父が現れた。教師陣が後退りしている。
「大樹と異世界旅行出来るとは。嬉しくて、案件を蹴ってきたよ」
おぃおぃ…仕事を投げ出して来たのか?
「団長!どういうことですか?」
1組の男女が現れた。あれが、僕の代理の両親なのか?
「おぉ、イッセー、ヴァーリ、久しぶり…なんで、セーラと魔王リアスがいるんだ?」
「父様、何をやらかしたんですか?」
「師匠、どういうことですか?」
祖父のやらかしたことに詰めるよる皆さん。魔王リアスさんって、魔王なのかな?
◇
別室へ移動…高台にある祖父の家であるけど…
「どこから、話せばいいかな?」
お気楽モードの祖父。本当に、この人は英雄なのか?
「総てです、父様」
セーラさんは、祖父の娘さんだそうだ。血の繋がった僕の叔母に当たるそうだ。
「まず、ヴァーリの出生からだな」
「えっ!私にも、何かやらかしたんですか?」
「あぁ、メイビスとルシファーの間に子供は出来無いよ」
「はぁ~?」
僕と祖父以外が呆れている。
「女神は英雄、英霊、神としか交われない。それは、英雄、英霊、神としか子供は授かれないんだよ。ルシファーは悪魔だ。そのままで産まれ無い」
「まさか…団長…」
「メイビスとルシファーの卵子を『強奪』して、融合させて、そこに僕の種を植えて、メイビスの腹の中にギフトしたんだよ」
僕の代理母であるヴァーリさんの母親は二人いるらしい…
「じゃぁ…」
僕の代理父であるイッセーさんが震えている。
「そういうことだ。魔人と魔人の間に出来た子供とも言える。で、発端は…お前達、避妊に失敗した時があって、ヴァーリの腹に受精卵があったんだよ。だから、『強奪』して、ドラゴニールとガイアの遺志を相続させて、オーフィスに借り腹を頼んだ」
「そんな…なんで黙っていたんですか?」
「お前達、案件中だっただろ?ヴァーリを離脱なんか、させられない」
「僕の為ですか…」
「鳴神の為でもある。今度こそ、ガイラを育てきりたいってね」
「父様、一人で背負わないでください。私は父様の今回の処置に賛成します」
セーラ叔母さんが納得した。
「師匠…悪巧みは一人でしないでください。私も背負いますから」
魔王リアスさんが納得した。
「俺も団長の行為に感謝します。だけど、言ってくださいよ」
「言ったら、お前、動揺するだろ?ヴァーリは精神的に脆いんだ。言える訳ないだろ?」
祖父は、誰よりもみんなのことを、把握しているようだった。本人達よりも…
「そうですね。たぶん、知ったら、崩れていました」
ヴァーリさんがイッセーさんに縋り付いている。
「で、パーティーはこのメンバーでいいな、鳴神よ」
「えぇ、団長にお任せします。俺は大樹を育て上げることが、恩返しの1つですから」
「後、あゆと真琴も帯同させる。案件との擦り合わせがあるから、フルメンバーは難しい時もあるが、大樹が乗り切れる程度の試練にはしてやる」
って、祖父が言い切った。こうして、僕のパーティーメンバーは決定した。
◇
遠征に向けて、鍛錬が始まった。剣術はイッセーさん、格闘術はヴァーリさん、ヒールはあゆさん、真琴さん、魔法はセーラさんに師事をした。魔王リアスさんと祖父は、仕事が忙しいらしく、遠征には参加はするけど、鍛錬は参加しないそうだ。
「剣は殲滅剣のみ?」
イッセーさんに訊かれた。
「これしか無いです」
「う~ん、物理的な剣も必要だな」
イッセーさんの愛剣は、聖剣エクスカリバーだそうだ。
「じゃ、これをやる」
って、祖父が剣を差し入れてくれた。
「それははぐれメタルの剣だ。高速剣技向きだよ。形状は色々な形状になる。使ってみ」
確かに素早く振れる。イメージした形状にもなってくれる。
「威力は少ないが、的確に弱点に撃ち込めば勝てる。後、流体固定剣なので、折れる事は無い上、鞭状にもなる」
試しに鞭をイメージすると、鞭になった。スゴい。しかし、エクスカリバー相手だと分が悪い。弾かれる剣。剣が軽すぎるのだ。
「真面に打ち合うと負けるぞ。もっと、動きをトリッキーにしてみな」
って、イッセーさんの動きがトリッキー過ぎる。鞭モードで、応戦するしか無くなっていく。
「剣が合わないのかな?」
「じゃ、大樹、これを使え」
祖父からナイフを2振り手渡された。
「聖なるナイフだ。一番クセが無くて扱い易いはずだ」
ナイフ術の参考書を読む。う~ん…扱い方が違う。
「ベル!大樹にナイフの二刀流を教えてやってくれ」
「はい、団長」
違うパーティーの人に師事することに。イッセーさんはナイフ術を会得していないそうだ。
◇
戦闘能力の才能が無い気がする。格闘術…簡単に手首を掴まれ、思いっきり投げられるわ、魔法なんか、一度に複数の魔法陣を開かれて、逃げ場を無くすわ、もう散々な目に遭っている。
「才能はあると思う。お前、戦線離脱していないだろ?」
祖父に指摘された。そう言えば、大怪我を負ったことは無い。なんやかんや言いながら、生き延びていた。
「手加減してくれているんでしょ?」
「手加減なんかしたら、受け身が取れないぞ。タイミングが合わないから、攻撃側も怪我するしなぁ」
手加減なしで、鍛錬しているの?そうなると、僕は才能有るのか?
◇
えぇ…っと…目が醒めたら、知らない場所にいた。
『危なくなったら、参戦する。一人でいけるところまでいけ』
って、メモを持っていた。一人で遠征か?
《解 私もいますよ》
ラファエルさんはいるようだ。で、ここはどこ?森の中のようだ。また、スライムの世界かな?森を抜けると町が見えて来た。マップを開くと、ジュラ・テンペスト連邦国の町のようだ。そこへ向かうが、身分証明書の類いが無い。それが無いと入れないらしい。ダメじゃん。
「おい!お前、強そうだな」
町の入口から立ち去ろうとすると、女性に声を掛けられた。振り返ると角が1本あるポニーテールの女性が立っていた。手には大太刀だよ。パワーファイターは苦手である。
「雑魚ですよ」
「おい!勝負しろ!」
って、いきなり襲い掛かって来た。咄嗟に殲滅剣を発現させて、大太刀を真っ二つにした。
「何?この太刀を折るだと…」
怒らさせてしまったようだ。逃げるに限るな。転移して逃げると、また違う場所に出た。なんで?
《解 リタイヤ扱いで、違う世界で鍛錬せよとのことです》
転移での逃げはダメなの?う~ん、で、ここはどこ?町中にいるようだ。大きな塔が見える。人が多いし。金持ちそうな人を見つけて、小銭を『強奪』して、当面の生活費を稼ぐ。で、ここはどこ?
「ねぇねぇ、キミキミ、行く宛てが無いなら、ボクのところへおいでよ」
ボクくらいの歳の女の子にナンパされた。ヤケに胸のデカい少女だな。
「メリットは?」
「住む場所を提供しよう」
「デメリットは?」
「贅沢は敵かな?」
貧乏らしい。まぁ、いいか。この町の事を訊きたいし。少女の後を付いていく。連れ込まれたのは、廃墟と言っても良い教会みたいな場所である。
「キミの名前は何かな?ボクの名前はヘスティアだよ」
それが、女神様との出会いであった。