夕方…まだ明るいうちに、ミレットの村に着いた。
村の門をくぐると、
「ようこそ! ムルグ村へ」
ミレットは嬉しそうに言う。偶然か?必然なのか?そこは僕達の仕事場だった。
「僕達、この村の衛兵の仕事を請け負ったんだ」
「えっ?本当に?じゃ、また逢えますね」
ミレットの耳がうっすら赤い。そんなミレットに、村長の家を訊き、クエスト受諾を伝えに向かった。
村長に書類と、僕とクルスの冒険者カードを提示し、身分を明かしたのだが、何故かクルスもFランク冒険者になっていた。
「ほぉ~、Fランク冒険者のカップルですか。末永く、お願いしますね」
と、住処になる衛兵小屋に連れて行かれた。それは村の門の脇にある小屋で、大きめであるが、結構ぼろい。まぁ、雨風が防げれば、野宿よりは快適であろう。小屋内には家具はなく、土間が広い。馬小屋だったのかな?まぁ、いいか。DIYは結構好きであるし。野営の為のテントと思えば、問題無いレベルである。
業務内容は、昼間は門の処で見張りが基本で、村人が山へ入ると時の護衛や、狼や猪の駆除、夜盗の襲来時には撃退と、多岐に渡るようだけど、基本まったりで良いらしい。村長の話が終わり、小屋には僕とクルスの二人だけになった。
「大樹!温泉へ行こうよ」
クルスがタオルを手にして、誘ってきた。いや、その前に…
「ミレットの家に行こう。妹さんが心配だ」
薬草で治るレベルなら良いんだけどね。クルスと二人で、ミレットの家へと向かった。
◇
アポ無しでミレットの家を訪れたが、嫌な顔をせずに、応対してくれた。妹さんは、まだ熱でうなされているし。
「薬草の効果はどう?」
「2,3日もすれば、熱は引くと思います」
2,3日もうなされるのか…僕に出来ることをするか。ミレットの妹さんに『回復コンポ』を発動した。妹さんの身体が、淡い緑色の光に包まれていく。
「あれ?大樹、回復魔法使えるの?」
クルスに訊かれた。クルスのパーティーでは聖女と呼ばれるヒーラーがいたので、シーフとしての役割しか果たしていなかった。なので、僕がバーサクヒーラーであることをクルスは知らないのだ。
「これ、魔法じゃない。スキルだよ」
「えっ!スゴイ…」
妹さんの顔が徐々に穏やかになる様子を見て、ミレットが呟いた。完全に回復し終えると、光は霧散していった。
「これで、明日から普通の生活ができるよ」
「ありがとうございます」
ミレットが僕の背中から抱きついた。
「むっ!」
クルスはなんか不機嫌なような。温泉に早く行きたいのかな?
「じゃ、これで失礼します。温泉に行きたいから」
ミレットの身体を引き剥がし、クルスと共に温泉へと向かった。
◇
温泉…露天風呂だし…気持ちがいいなぁ…って、何故か男湯にクルスがいるのだが。
「女湯は隣だぞ」
「一人より二人だよ、大樹」
よく分からない理由。クルスの全裸を見ても、欲情しないので問題はないけど。
「あぁ~、幸せ…」
クルスの頭が僕の肩に乗っている。穏やかな寝息も聞こえる。この世界でも、僕は誰かの『安心抱き枕』になる予感がする。クルスは確定だな。問題はミレットが僕に好意を持たないようにしないとダメだ。経験上、エルフの女性は恋に落ちると大胆になり、エロフ状態になると最強な状況になりえる恐怖があるから。祖父ちゃんも、エルフ、ハイエルフには細心の注意を払いつつ、地雷を踏み抜いていたしなぁ。
温泉で疲れを取り、小屋へ戻ると、ミレットが夕食を運んでくれていた。
「衛兵さんの食事係なんですよ。毎日、大樹さんに逢える。うふっ」
妹さんの事で好意を持たれたか?いや、あれは不可抗力だよな。困ってい女性がいたら、無償で手を貸すのが、我が家のルールだし。
ミレットの手料理は、おいしかった。山菜や川魚などを使った料理の数々、クルスも絶賛しているし。この村に来て、良かったなぁ。