飛ばされたのはどこかの洞窟だった。強制転移攻撃かな?団長が傍にいたからか?
目の前では、一人の少年がクマの魔獣に襲われていた。片腕をもぎ取られ、喰われているし。クマは腕を食い終わると、僕に気づき、僕に襲い掛かって来た。
『ファイヤーミスト』を発動し、地獄の業火の微粒子状態の火種で、クマを覆った。毛皮で覆われた魔獣には効果抜群である。直ぐに火だるまになり、身体も精神も魂までも灰にしていった。
そうだ!少年はどうした?倒れていた場所に少年の姿は無い。彼の背後にあった岩に穴が空いていた。さっきまで無かったけどなぁ。その穴に入って行く。
穴の奥で、激痛に耐えている少年を見つけた。回復術で、もがれた部分の回復をさせていく。修復術と違い、元には戻せないが、切断面を治癒させるだけの効果はある。今後のことを考え、義手の装着がしやすいように、切断面を滑らかにしてあげる。
「あなたは?」
痛みが引き始めて、周囲の状況に気を使えるようになったのか、僕に気づいたようだ。
「僕は鷲尾ヤマトだ。君は?」
「俺は…南雲…ハジメです」
「なんで、こんな場所にいるんだ?」
「背中を預けていた仲間に、魔法を撃ち込まれて、ここに落ちて来たんです」
悔しそうな顔のハジメ君。
「ヤマトさんは、どうして?」
「何者かに、強制転移攻撃を受けたみたいだよ。ここはどこだ?」
「オルクス大迷宮…トータスっていう異世界です」
トータス?どこの異世界だ?来たことは無いなぁ。
「ハジメ君のジョブはなんだ?」
「この世界では天職と言うらしいです。で、俺は錬成士です」
「錬成士か?錬金術師に繋がるレアジョブだな」
「えっ?ありふれた職業で無いんですか?」
「レアだよ。錬成は鍛えると、最強なジョブだぞ。肉体を錬成できるようになれば、回復師にもなれるしな。細胞錬金や分子錬金などができれば、攻撃にも応用できるぞ」
錬金術師よりもレアかもしれない。
「そうなんだ…」
「まぁ、協力してここから出よう」
ここに置いて行くには過酷過ぎるもんなな。
◇
ハジメ君が『神結晶』なる鉱物を掘り当てた。これは、地脈を流れる魔力が結晶化した物で、結晶内部で魔力が飽和状態になると、神水と呼ばれるスーパーハイポーションなる完全回復薬を生み出す魔石である。蘇生、再生の効果は無いが、死なない限り、体力、魔力、精神力などが、ほぼ全快に回復する。
食事は、僕が魔獣を狩り、その肉を焼いて食う感じである。この世界では、喰うことによって、相手の能力を得ることが出来るらしい。その代償なのか、ハジメ君は人間というカテゴリーから外れていく。まるで肉体を錬成しているかの如く、体格や体型が変わっていく。
時間はたっぷり有り、昔話をしていると、僕に設計スキルがあるの知り、僕が図面を描き、彼が洞窟内の鉱物で部品に錬成する工程で、装備品を作り上げていった。
「いつまで、一緒に居られるかわからないが、出来る限り、協力はするよ」
問題は、彼の失った腕だな。片手では不便だろうな。
「なぁ、ハジメ君。君はコブラってマンガを知っているかな?」
「知っています。まさか、あの装備を…」
コブラとは宇宙海賊で、片腕が無く、普段はダミーの腕が付いているが、その下には、サイコガンという兵器を装着している。
「じゃ、精神力の練り方を教えてあげるよ。サイコガンの設計図と義手も用意してあげる」
「何から何まで…ありがとうございます」
「困った人には手を差し出す。僕達のルールだからね」
義手部分はホムンクルスで代用でいいかな。見た目は普通の手だし。外した後は、ロケットパンチの様に、自由意志で行動も有りかな。なんか、楽しくなってきたなぁ。
◇
徐々に下へと降りていく。上に向かう階段が見つからないからだ。迷宮を作ったヤツがいるってことは、最深部には脱出口があるはずだ。
ハジメ君は、コブラに肖り、パイソン77マグナムをモデルにしたレールガンを作り、得物とした。まだ、サイコガンは出来上がらないが、自立動作タイプのロケットパンチになる義手は、装着済みである。
ハジメ君と出会った階層から50階層下のフロアに、怪しげな扉を見つけた。扉を挟むようにして、2体のガーディアンが立っている。近寄れば、攻撃してきそうだ。
「どうする?」
「扉の向こう側を見たいです。お宝があったりしてね」
「そうだな」
どうするかな。ゴーレムでなくて、動く石像みたいな感じだ。まだ、サイコガンは完成していない。
「ハジメ君は、岩陰に隠れてくれ。僕が一人で行くよ」
「大丈夫ですか?」
「多分…」
炎系の『ファイヤーミスト』、精神系の『ダークミスト』は通用しないだろうな。そうなると、破壊系か?いや、ロスト系かな。
僕が近寄ると、2体のガーディアンが起動し、僕を撃退しに来た。焦ること無く、それぞれの足下に『ダークホール』を発動した。これは、闇の世界へ誘う穴に落とすスキルである。逃れるには、闇属性であること、空を飛べる事などがあるが、目の前の敵にはそんな物は無いようだ。音も無く穴に吸い込まれて行くガーディアン達。完全に飲み込むと、穴は消えてた。
「今のは、なんですか?」
「落とし穴の進化版だな」
と、ごまかしておく。