迷宮の底にはパラダイスがあった。
そう思える風景が目の前に広がっている。天井部分には大空が展開している。夜には星空、昼間は青空が見えるし。大きな露天風呂があり、湯冷まし用の休憩所もある。プライベートなリゾート地のようだ。
「なんの為に、地底にこんな物を作ったんでしょうか?」
ハジメ君が疑問を口にした。その答えを、僕は持っていない。
「さてね。まぁ、個人的に趣味だろうけど、どの位掛かったのかな」
ここは、オルクス大迷宮の最深部、ハジメ君と出会ったフロアから下へ100階層降りた場所である。そうそう、ガーディアン2体の護っていた扉の先には、お宝が眠っていた。全裸のバンパイア少女が封印されていたのだ。今では、ハジメ君の彼女になっている。名前はユエ、ハジメ君が名付けたのだ。
「君達は仲がいいねぇ」
吊り橋効果もあるだろうけど、両思いな二人。
「ヤマトさんにも彼女が出来るといいですね」
「いや、いるから、もういらないよ。元の世界に戻れれば、問題は無いのだが…」
未だに念話が届かない。やはり、地上に出ないとダメか。リアやヴァリはどうしているだろうか?いやいや、それよりも団長はやらかしていないだろうか?それが一番心配である。
ここを作った者の屋敷が、また立派であった。屋敷内を探索して、どうして作れたのかが、漸くわかった。ここを作ったオスカー・オルクスという人物は、錬成師であり生成魔法の使い手であったようだ。得意な物は眼鏡とメイド服らしく、眼鏡っ子でメイド服を着たホムンクルスが多数保存してあった。
一番の疑問である「なんでこんな迷宮を作ったか」であるが、これも理由が判明した。彼は反逆者と呼ばれる人物であったそうだ。反逆者とは、神に反逆した存在で、彼からすれば解放者であると言う。まぁ、神だと自ら名乗る人物に碌なヤツはいない。それは事実である。
解放者達は、未来に現れるであろう解放者達に、神に対抗できる力を残していた。それらを継承する為の試練の場が、大迷宮と呼ばれる迷宮のようだ。この迷宮では、神代魔法である『錬成』を覚えることが出来た。解放者達の大迷宮はまだまだ有り、総てをコンプリートすれば、神と戦えるらしい。この世界の神と名乗るヤツは、そんな小手先の魔法で勝てる程弱いヤツなのか?
う~ん、兄さんと合流できたら、ここに連れてくると喜びそうであるな。きっとアインズの処の最深部に、ここをコピーするのではないかな。などと妄想しながら、露天風呂三昧をしている。ハジメ君達は、オスカーの工房で、色々なアーティファクトを制作?錬成?しているようだ。
◇
サイコガンが完成し、ハジメ君の作ったAKIRAに出てきそうな近未来フォルムのバイクや、ハマーもどきの軍用車など、様々なアーティファクトを、保存機能のある指輪へ収納していく。そろそろ地上に出て、次の迷宮を目指すそうだ。
「ヤマトさん、これからも宜しくお願いします」
「あぁ、こちらこそ、ハジメ君。いつまで一緒にいられるかわからないけど、ラスボス攻略時には駆けつけるよ」
クソ神であればあるほど、兄さんが戦いを買い取りそうだ。僕の兄さんは神と名乗るヤツが大嫌いだから…
脱出用転移陣を発動して、迷宮の外へ出た。そこは、ライセン大渓谷だった。
「ヤマト、ここは放出系の魔法が効きにくいのよ」
ユエから情報を貰った。魔法が効きにくいエリアってあるのか。どんな仕組みなんだろう。
「お待ちしていましたよ~」
知らない女性の声がした。声のした方を見ると、ウサ耳少女がドラゴン種をトレインして、近づいてきた。
「ユエ、ハジメ君、知り合いか」
「いえ、知りません」
「兎人族に知り合いはいない」
地上の生き物の強さを知るには良い機会か。ダークエクスカリバーを手にして、ドラゴン種に斬りかかっていく。う~ん、ドラゴンにしては、柔らかい皮膚だな。そうか、ウロコが無いのか。膝辺りで足を切り落としていく。バランスを失い、倒れていくドラゴン種達。で、ウサ耳少女は?ハジメ君の黒いコートを掴んで離さないようだ。ユエが耳を引っ張っているが、手を離さない。
「お願いです。私の家族を助けてくださ~い」
目に涙を溜め、必死に懇願するウサ耳少女。
「だ、か、ら…なんで、見も知らないお前の家族を助けにゃイカンのだ?」
「予知スキルで、プチ未来を見たんです。ハジメさんが、家族を助けてくれました」
予知スキル持ちなのか。スタイルは中々だな。
「ハジメ君、助けてあげようよ」
「ヤマトさん、いいんですか?」
「撤収時に貰って行きたいんだよ。兄さんの好みだし」
「えっ!」
僕とハジメ君の会話で、固まるウサ耳少女。
「たっぷりとかわいがってあげるよ。僕の兄さんだけど」
「いやいや、私はハジメさんと一緒に旅しますよ」
「ハジメ君、いいかな?」
「もちろんです。俺はユエがいれば良いですから」
「ちょっと、勝手に話を進めないでくれますか?」
ウサ耳少女が僕とハジメ君の会話に割って入ってくるが、二人でスルーをして、話を進めた。
「じゃ、そういうことだ。お前は、僕がお持ち帰りする」
「何を勝手なことを…」
ウサ耳少女が僕に襲い掛かってきたが、ダークミストで意識を刈り取った。
「なんですか?今の攻撃は…」
一瞬黒い霧に包まれて、倒れたウサ耳少女。その光景を驚いたような顔で見ていたハジメ君。
「精神感応術だよ。一瞬の出来事だけど、被験者には永遠に近い時間、やられてはイヤなことをされ続ける地獄を味わうのさ」
「恐っ!」
ユエが後ずさりしている。
「逃れる術はあるんですか?」
「基本的には無いよ。有るとすれば、闇属性であることくらいかな」
「ヤマト…闇属性なの?」
ユエの問い掛けに頷く僕。
---ウサ耳少女 シア・ハウリア---
身勝手な事を言う男に襲い掛かったのだが、黒い霧で覆われてしまった。その瞬間、あり得ない刺激が全身に襲い掛かって来た。お尻に這う何か。股間を這う何か、体内に侵入してくる何か。乳首を押し込む何か…
口は開いたままで、ヨダレが口元から流れ出している。背中を何かが這っている。確認したくても手足が動かない。目の前は真っ暗であり、何も聞こえない。ただ、何かが這って、蠢いている感覚だけがあった。
回されているのか?このまま、どこかに売られてしまうのか?体液塗れになっていく。身体の色々な部位から液体が流れ出ている。私の体液である。
助けて…
声が出ない。周囲の気配も何も感じ無い。ただ、自分の身体に起きて居る感覚だけがわかる。あれから、どの位の時間が経ったのだろうか?長い時を経ている気がする。絶え間なく、襲われ続けている。彼は何者だ?なんで、ハジメさんは助けてくれないんだ?予知と違う…
いつまでも…永遠にこのままなのだろうか?