「ごめんなさい」
クルスと僕が、村長と村民に謝っていた。僕達は虚偽の申請をしていたことがバレたのだった。まさかのゴランとルカの訪問によって。
「なんで、言ってくれなかったんですか?」
ミレットが怒っている。
「ここを追い出されるのは困るから…Sクラスってバレると、雇ってもらえないでしょ?」
「それは…時給計算が大幅に変わってしまいますから」
困った顔の村長。
「だから、今まで通りFクラスとして雇ってください」
クルスが必死に村長に頭を下げていた。
「ですが、偽造した冒険者カードはマズイですぞ」
マズいよな。犯罪だよなぁ。いや、待てよ…労使双方が納得すれば、時給の減額って出来たよな。
「村長、Sランクとして雇ってもらえますか?時給はFランク分でいいですか」
「それは、ギルドが許さないでしょ?」
冒険者ギルドは、ランク制を維持する為、ランク別報酬ルールを規定した。稼ぎが同じであれば、個人情報を晒して、態々上のランクになることは無いからである。下手に高ランクになると、不利な局面が多い。Aクラスだと、国の要請に従わないとダメであったり、Bクラスだと、街や村の緊急クエストに招集されたり。名誉と引き換えに、個人の自由度は少なくなるのだ。
なので、下のランクのままでいる者が多くなった時期があり、上位ランクになれば報酬が美味しくなると、目の前のにんじんを豪華にした結果なのだ。
「問題無いんです。労使双方が納得すれば、問題は少ないんです。その上、不足分は、衣食住などの現物支給にし、温泉入り放題は厚生施設扱いにすれば、冒険者を手厚くもてなしているとみなされます。クルス、その方向で書類を書いてくれるか?」
「なるほど、その手があったんですね。わかりました。今、労使覚え書きを含む契約書を作ります」
クルスはやれば出来る子なので、書類書きの仕事は丸投げしても、大丈夫である。
「で、大樹さん!クルムちゃんとミリムちゃんの正体はなんなの?」
人間と思えない力持ちである少女二人。怪しまれている。正体をばらすか。
「驚かないで、聞いて欲しい。ミリムは竜神ハーフの魔王様で、クルムは真性魔王様だ」
「うん??」
首をかしげて考え込みミレット。
「ミリムちゃんとクルムちゃんは、まおうしゃまなんだ。かっこいいなぁ~」
子供達が、二人に群がる。『まおうしゃま』呼びに照れているし。
「あれ?魔王って、勇者クルスさんが倒したんじゃないの?」
ミレットに訊かれた。
「あれは悪い魔王だよ。この二人は良い魔王。話が通じるし、子供大好きだし」
「お菓子も大好きだよ」
って、クルム。
「クルスはマブダチだ」
ってミリム。
「うん」
ミリムの声に笑顔で頷くクルス。なんか、カオス臭がしていそうだ。
「本当ですよね?」
って、ミレットは僕に再確認してきた。何故、僕なんだ?本人達に訊けば良いのに…
「本当だって。僕はウソを吐けないスキル持ちだし」
「ダウト!Fランク冒険者だって言ったよ」
「言ってはいない。偽造した冒険者カードを見せただけだし」
「じゃ、本物の冒険者カードを見せてください」
ミレットと村長に、本物を見せた。そこにはAランク冒険者と表示されていた。
「あれ?Sじゃないんだ…」
「だって、死んだ事になっているから、ギルドで更新していないから」
偽装死亡により、英雄として帰還していないので、招集されたAランクのままなのだ。因みに、クルス達と冒険した時の冒険者カードも偽造である。本物だと、Fランクとして動けなくなるから…
「ボクと旅した大樹は、偽造?」
哀しそうにな目で僕を見つめているクルス。
「冒険者カードは偽造だけど、僕は偽造では無いよ」
「なら、いいか」
嬉しそうな顔で抱きついて来たクルス。いや、僕の偽造ってなんだ?それの方が知りたい。
「まぁ、この村だけの秘密にしましょう。食事の支度をしますね」
ミレット達は納得してくれた。冒険者カードごときに、右往左往するだけ無駄だ。
◇
3日後…エリックがやってきた。ゴランとルカとユリーナは護衛として付いて来たようだ。
「大樹…大樹なのか…」
年老いたエリックが僕に抱きついて来た。おっさんに抱きつかれる趣味は無いんだけど。
「そうだよ。味方の前から逃亡した大樹だよ」
「生きていたんだな。良かった…あの時、俺達が油断したせいで…」
「あぁ、油断しすぎだろ?戦闘が終わりきる前に、子供の事を考えるなんて…」
「あぁ…すまない…」
エリックもゴランも親バカなんだろうな。エリックの背後に立っているゴランは暖かい目で僕を見ているが、ルカとユリーナは冷たい目で僕を見つめていた。恨んでいるのだろうな。まぁ、自業自得である。
「クルス、帰るのよ!」
突然、ルカがクルスに言い寄り始めた。
「帰るって?ここがボクの住処だよ」
呆気に取られているクルス。
「勇者なのよ。仕事が山積みなの」
そんなクルスに、ユリーナが詰め寄る。
「ボクの仕事は、大樹と一緒に、この村の衛兵なんだよ」
駄々を捏ねるクルス。しょうが無いなぁ。
「ユリーナ、どんな仕事なんだ?」
「はぁ?偽造男には関係ないわ」
ユリーナは怒っている。コイツに訊いてもダメだな。
「ゴラン、どんな仕事だ?」
「王都近くに、怪しいゴブリンの巣があってなぁ。そこの調査および駆除だ」
冒険者ギルドのグランドマスターだけあって、事情通のようだ。
「Sクラスを投入する理由は?」
「Aクラスを投入したんだが、誰も戻って来なかった」
なんか、ヤバそうな案件だな。
「どの辺りだ?」
地図を開いて、ゴランに見せた。
「この辺りだ」
地図を指差すゴラン。場所は分かった。王都まで転移すれば、すぐに着けそうだ。
「クルス、衛兵の仕事を頼む。ちょっと見てくる。夕方には戻る」
「うん、わかった」
僕達の会話を聞いて、ゴラン達が唖然としていた。気にせずに、僕と魔王様達で、王都へ転移した。