※この作品はR-18です。

神器なき男4   作:もっち~!

39 / 48
ゴブリンの巣穴

ゴブリンの巣穴は直ぐに見つかった。3人で穴に入って行く。しばらく進むと、家畜などの動物の骨が無造作に転がっていた。人間の骨は無いようだ。入って出てこなかった冒険者達はどこだろうか?

 

更にしばらく進むと剣撃の音が聞こえ始めた。冒険者が戦っているよう。僕達は現場に急ぎ、ゴブリン退治に加わった。先客だったのは獣人の少女だった。

 

「逃げなさい。ゴブリンロードが居るのよ」

 

僕達に叫び、敵のボス格の存在を教えてくれた。周囲を見回すと、、一際ガタイのデカイゴブリンがいた。あれがそうだな。そのゴブリンロードに拳をたたき込むミリム。もっと奥かな?行方不明な冒険者達の死体が見当たらない。

 

クルムと僕で、奥へと入り込んでいく。そこには、ゴブリンでは無い種族が待ち受けていた。

 

「貴様らは何者だ?人間では無いのか?」

 

見るからにヴァンパイアらしき者が、声を掛けてきた。『魅了』とかをしたけど、僕達には効果無かったのか?あぁ、そうか。冒険者達は魅了され、眷属にされたのか。ゴブリンは人間を呼び寄せるエサで、本当の獲物人間だったって、オチなのかな?

 

「大樹、やっていい?」

 

「洞窟は壊さないで」

 

「うん」

 

クルムがヴァンパイアの眷属達を壊していく。眷属にされてしまうと、人間には戻せないので、破壊するのが一番安全である。

 

「貴様ら、何者だ?」

 

ヴァンパイア相手なら、僕に負けは無い。

 

「そっちこそ、何者だ?アークかロードか?それとも、レッサーかな?」

 

ヴァンパイアは格を大切にする種族である。下の格の者は上の格の者に指図は出来無い。

 

「我はロードなり。跪け!」

 

ヴァンパイアロードのようだ。

 

「僕はKIVAの孫だけど、君より上になるのでは無いかな?」

 

KIVAとはキングオブヴァンパイア、所謂ヴァンパイアの王のことである。

 

「ふふふ、嘘つきには死があるのみだ。KIVAだと?あんな物は伝説に過ぎない」

 

そうか、この世界では伝説クラスと言うオチらしい。マズイなぁ。一瞬生じた隙、ロードは瞬動で僕に抱きつき、僕の首にキバを差し込んだ。吸血するようだ。僕の血がロードの体内に入るなり、ロードの全身は灰化し霧散していった。バーニングブラッド持ちなんだけど…言う前に吸血するからだよ~。

 

僕の中に流れる魔人の血…魔力を帯び、体外に出ると、ニトロのような危険物になる。僕も僕の血液も闇属性であり、その魔力を体内に入れるなんて、魔人以外だと自殺行為になる。

 

主が消滅して、眷属になっていた冒険者達は、リビングデッドから死体へと様変わりしていく。

 

「終わったかな?」

 

ミリムがやってきた。獣人の少女も一緒にいる。

 

「終わったよ」

 

「帰って、温泉なのだよ」

 

「そうだね」

 

村へ転移した。村に戻ると、クルスが鼻をつまんでしまった。臭いらしい。

 

「どうして、こんなに臭いの?」

 

「リビングデッドと戦ったからかな」

 

死臭と血の腐敗臭が、服に染みこんだようだ。

 

「温泉で洗い流してくる」

 

◇

 

そして、温泉…男湯である。僕、ミリム、クルム、クルスの他、何故か全裸のルカとユリーナがいる。ゴランとエリックは、全裸のルカとユリーナに遠慮して入って来ていない。

 

「あの転移魔法は何?」

 

「あれは魔法では無いよ。魔術だよ。転移術って言う」

 

「魔法も魔術も同じでしょ?」

 

この世界の知識はこんな感じのようだ。

 

「魔法は結果が一定だけど、魔術は仕込むタネにより、結果が変わるんだよ。例えば、帰還魔法だけど、あれは帰る場所は一定だけど、転移術は任意の場所が指定できるのさ」

 

「どこで、学んだんだ?」

 

ルカが必要以上に食い下がる。ユリーナは僕の説明に頷いているんだけど。

 

「師匠に習った」

 

「お前の師匠は誰だ?」

 

「祖父だけど…」

 

「どこにいる?」

 

「強制転移攻撃で、どこかの異世界へと飛ばされたんだよ」

 

のぼせそうだ。温泉から出る為、立ち上がると、僕のアレは、ルカの目の前に垂れ下がっていた。

 

「お前…全裸の美女を前にして、なんだ、その元気は?」

 

ルカは僕のアレを直視して、苦言を呈している。

 

「普段から、見慣れているから…見ただけでは、萎えたままだよ」

 

「そ、そ、そうなのか…」

 

ルカの挙動がおかしくなってきた。のぼせたのか、耳が真っ赤である。

 

「のぼせて、溺れる前に出ろよ」

 

女性陣を残し、僕は男湯を後にした。

 

◇

 

温泉小屋の外で、エリックとゴランが待ち受けていた。

 

「ゴブリンは全部倒してくれたのか?」

 

「隅々までチェックはしていないけど、見かけたヤツは、倒したよ」

 

「で、捕らわれていた冒険者は、無事だったか?」

 

ゴランが詰め寄って来た。冒険者ギルドのグランドマスターなので、一番の心配事かもしれない。

 

「全員、死亡で処理した方がいいぞ」

 

「死んでいたのか?」

 

ゴランとエリックに、ヴァンパイアロードがいて、ゴブリンをエサにして、冒険者を集め、眷属にしていた事実を教えた。

 

「ヴァンパイアロードだと?アイツらは眷属にされてしまったのか?術を解けば、助かるんじゃないのか?」

 

「術を解いて助かるのは『魅了』されたヤツラだけだ。眷属って言うのは、吸血され、血の契約をした者を言う。眷属になると、リビングデッドとなり、不死の戦士になるんだ。彼らを解放するには、心臓を潰すか、頭部を切断するか、主を殺すしかない。但し、解放しても、人間に戻るのでは無く、単なる死体になるだけだよ」

 

この世界の冒険者達の知識は浅いようだ。魔王はどういう者かも知らず、魔王だから倒すって感じだしなぁ。

 

「じゃ…全員、死亡なのか?」

 

「獣人の少女だけだな。生き残っていたのは」

 

「誰だ?ソイツは?」

 

ゴランは知らないようだ。

 

「ギルドが送り込んだ冒険者で無いのか?」

 

「いや、送り込んでいないぞ。次に送り込む予定はSランクだったからな」

 

この世界のSランク冒険者は、ゴラン、エリック、クルス、ルカ、ユリーナだけだ。僕はAランクだし…

 

「なぁ、大樹。Sランクにランクアップしないか?」

 

エリックが提案をしてきた。

 

「何を言っているんだ。僕の希望はFランク冒険者でいることだ」

 

「後なぁ、お前は了承しないと思うが、2回に渡る遠征実績を踏まえて、お前はヨハネスブルグ公爵になったんだよ」

 

「僕は衛兵で十分だ。貴族になんて成りたくない」

 

「う~ん…」

 

エリックの困った顔。だが、公爵になってしまうと、会議の度に王都にいないといけない。貴族の中でも要職に値するのだ。名ばかりの栄誉職にしては、自由度が少ないのだ。

 

「自由を束縛するのなら、この国を出る」

 

この世界は、この国だけでは無い。

 

「それは困る…困ったなぁ…」

 

「うん?大樹、公爵になったの?」

 

温泉から女性陣が出てきて、クルスが僕に抱きついて訊いて来た。

 

「ならない。僕は衛兵で十分だよ」

 

◇

 

その日、エリックとゴランだけ、王都へと帰っていった。ルカとユリーナは、何故か村に残っていた。

 

「なんで、残っているんだ?仕事があるんだろ?」

 

「グランドマスターから特命指示が出たんだ。大樹とクルスを王都へ連れ戻るって特命だ」

 

「そうか…」

 

ルカとユリーナを、『強制転移』で王都のギルドへ転移させた。

 

「うん?ルカ達は?」

 

クルスに訊かれた。

 

「王都に帰ったよ」

 

「そうか…じゃ、しばらくは衛兵で大丈夫だね」

 

「あぁ…」

 

こうして、今夜も平和の中、夜は更けていく。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。