※この作品はR-18です。

神器なき男4   作:もっち~!

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通りすがりの鬼

僕にとっての平和の日々が終わりを告げた。

 

衛兵として門の前で警戒をしていると、いきなり背後から膝カックンをされ、前のめりになって倒れた。

 

「油断大敵だな、大樹」

 

振り返ると、笑顔の祖父ちゃんがいた。えっ?なんで?

 

「なんでいるんだよ?帰れるの?」

 

「いや、夢の世界から転移してきた。本体ではまだ無理なようだ」

 

夢の世界…それは睡眠学習の世界なんだろう。

 

「夢の世界から、次元管理局を経由して、次元の狭間から、この世界に侵入したんだ。本体が目覚めるまで、ここにいられる」

 

祖父ちゃんの視線は、クルスをロックオンしていない。出来無い年齢と判断したようだ。勿論、エルフのミレットに対しては気配を消しているし。ルカとユリーナがいたら、喰われたかもしれないなぁ。

 

魔王様コンビは、祖父ちゃんを目にして、固まっている。さすがの魔王様でも祖父ちゃんの前では、ザコ同然である。

 

「ミリム、まさかと思うけど、温泉で泳いだり、潜ったりしていないよな?」

 

祖父ちゃんの言葉に、視線が泳ぐ理不尽魔王様。

 

「クルム、男湯に入っていないよな?」

 

質問の矛先を、正直なクルムに変更した祖父ちゃん。

 

「ごめんなさい」

 

土下座をして謝る最強な部類に入る魔王様。次の瞬間、瞬動術で、ミリムの背後に位置取り、こめかみグリグリの刑を執行した祖父ちゃん。

 

「いっ…ったぁぁぁぁ~!」

 

ミリムの目が涙目になっていく。ミリムの絶叫により、クルスやミレット達が、祖父ちゃんの存在を認識したようだ。

 

「大樹、あの人誰?」

 

クルスに訊かれた。

 

「僕の祖父ちゃん…」

 

「大樹さんの方が歳上に見えるけど」

 

ミレットが首を傾け、不思議そうに訊いて来た。

 

「祖父ちゃんは、永遠の17歳だよ。僕もこう見えて、永遠の16歳だし」

 

祖父ちゃんの関係者は、不老である。不死に近いけど、死と隣り合わせで戦闘に向かわないと、油断が生じるってことで、不死属性は外されている。まぁ、蘇生術があるから、必要な人材は不死であるのと同じだけど。

 

◇

 

夕方近く、懲りずに、ルカとユリーナがやってきた。祖父ちゃんの視線はルカにロックオンしている。

 

「えっ?大樹の祖父様?って、ことは大樹の師匠かぁ。お手合わせ、お願い出来ますか?」

 

ルカの願いは、叶えられた。その身を供物にされて…

 

「たまには違う女性もありだな」

 

屍姦三昧している鬼…ルカを瞬殺した鬼。心臓を舐めて、心肺停止にしてしまった。見た目、睨まれただけで殺されたように見えただろう。

 

「大樹の祖父様…怖い…」

 

ユリーナ、ミレットは完全にびびっている。

 

「怖いに決まっているであろう」

 

未だに涙目でこめかみに手を置いているミルム。クルムはココナツサブレで餌付けされている。

 

「師匠!剣の鍛錬をお願いします」

 

びびらない者が1名。勇者クルスが、祖父ちゃんを師匠呼びして、鍛錬をお願いしている。

 

「いいけど…どの位の腕なんだ?」

 

僕に訊いて来た鬼。

 

「クルスは勇者だよ」

 

「勇者?そんなものピンキリだろ?じゃ、コイツを鞘から抜いて、素振りを50本してみ」

 

星剣を取り出し、クルスに手渡した。クルスは鞘から抜こうとするが、剣の重さに耐えきれず、星剣に押し倒された。

 

「えっ!重すぎる…」

 

あたふたするクルス。そんなクルスの上から、星剣を手に取り、素振りを始めた祖父ちゃん。一振り、一振りの度に山は揺れ、雲は蹴散らされ、星が動く…星を砕く威力を持つ剣…人間が扱える剣では無い。迂闊に堕とした程度で、地割れは確定である。

 

「そうか、これは無理か。じゃあ、こっちは?」

 

真なる聖剣を取り出し、クルスに手渡した。7本ある聖剣を1本に錬成し直した聖剣である。タダでさえ重い聖剣が、これ1本で7本分の重量がある。

 

「重い…でも振れる…」

 

そんなクルスに容赦無く、こめかみグリグリの刑が襲い掛かった。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ~!」

 

初めて聞いたクルスの絶叫。クルスにとっても初めての激痛だっただろう。

 

「誰が振れと言った?僕は素振りをしろと言ったんだぞ」

 

クルスのそれは試し振りであった。

 

「ダメだな。剣での鍛錬は無理だ。名ばかりの勇者よ」

 

この世界においての人類最強である勇者に、名ばかりと言う鬼。涙目のクルスが蹲っている。

 

「そろそろ帰るかな。他にも行くところがあるし。そうだ、これをやる」

 

ユリーナに羊皮紙を1枚渡した。

 

「楽しめたお礼だ。そこに魔力を込めると、ここと王都の行き来が楽になる。楽しませてくれた彼女の望みだ」

 

そういうと、ルカの傍に行き、蘇生術を施して、鬼は帰還していった。

 

◇

 

鬼の贈り物…ルカとユリーナもこの村に移住してきた。毎日、通勤出来るアイテムが手に入ったからだ。

 

「なぁ、大樹の祖父様って、何者だ?」

 

ルカ訊かれた。死後の世界を見て来たことに、驚いていたし。まさか、その死後の世界ツアーの間に、器が大変なことになっていたとは、思いも寄らないであろう。真実を告げるのは、先延ばしにしている。

 

「鬼だよ。最凶のバケモノさぁ」

 

僕の言葉に頷くミリムとクルム。完敗したクルスは、鬼から課題を与えられ、毎日仕事の合間にこなしていた。与えられた課題は、空気を斬ること…真空斬りの会得だそうだ。

 

 

 

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