馬車内には僕とルナとキラがいて、御者台にはミトがいる。窓の外には、見渡す限り荒野が広がっている。荒野の合間には砂漠が点在し、所々に小規模なオアシスがある。痩せた大地のようだ。
「で、聖女って、もう一人いるのか?」
「えぇ、姉のエンジェル・ホワイトです、師匠」
僕の質問にキラが答えた。何故か、僕を師匠と呼んでいる。まぁ、よく呼ばれるので、気にはならない。躾をして、完全に心を折り、身体を調教しただけで、師匠と呼ばれる理由が無いはずなのだが。
「そいつも、ルナを虐めるのか?」
「いえ、優しいですよ」
ルナが笑顔で答えた。僕のパッシブスキルである『癒やし』の効果なのだろうか、ルナもキラも笑顔である。背負っていた重責とかが消えたのかもしれない。まぁ、聖女だし、笑顔でいるのがいいだろう。
「団長!敵襲のようです。10時方向から、何かが接近してきます」
御者台のミトから報告があった。言われた方角を見ると、派手に砂煙が舞い上がっている。何かの集団が走ってきているようだ。
「ミト、止めてくれ」
「了解です」
僕は馬車を降り、索敵してみた。先頭に二人の人間がおり、その背後には、数百頭規模の魔物の群れが続いている。所謂、モンスタートレインのようだ。そのトレインは、馬車目掛けて近寄って来ていた。
「キラ!あの魔物はなんだ?」
「えぇぇっと…なんだ、あの数は…」
迫ってくるトレインの規模に驚き、言葉を失うキラ。
「あれは、サンドウルフです。群れになると凶暴になる魔物ですよ」
ルナが代わりに答えてくれた。狼系の魔物か。この世界でも、あれが使えるか、試す良い機会かな。
「ツヴァイ、広域魔方陣を上空に展開してくれ」
『了解です』
僕の持つ書物に宿る妖精のツヴァイに指示を出した。彼女は広域魔法を得意としている頼れる仲間である。彼女の展開した魔方陣に、僕のオリジナルの魔法術式(魔術)を書き込み、『ウルティマウェポン』と、言霊を発して発動させた。このオリジナル魔術は、対象の防御力を無視して、対象の弱点属性の魔法をフルバーストして撃ち込む、僕にとっての必殺技である。
次の瞬間、砂漠には大量のサンドウルフの死体が出来上がった。どうにか、群れは殲滅できたようで、先頭の人間だけ、馬車に辿り着いた。
「アンタ、何者だ?あの数を一撃って…」
大剣を手にした露出の激しい服装の巨乳女性に訊かれた。
「おい!キラ。聖女にモンスタートレインするって、罪になるか?」
「えぇ、なると思います。聖女暗殺罪とか」
巨乳女性の質問をスルーして、彼女とその仲間に対して、対女性3連コンポを発動させたのだが…一人は男の娘だった…それにしても、男の娘って、アレが無駄にデカイのだろうか…見たくも無いモノを見て仕舞った。『催淫』によって、完全勃起しているアレを。
取り敢えず、馬車のトランクルームに巨乳女性を放り込み、男の娘には『着衣』させて、ヤホーの街の宿へ強制転移させ、、王都への移動を再開した。
「あの二人、どうするの?」
ミトに訊かれた。
「巨乳の方は、今夜のオカズにする。男の娘は、昨晩の宿に捨てた」
「さすが、鬼だな~」
えぇ、ハーフな鬼ですが、なにか?
◇
しばらく進むと、寂れた村に着いた。
「この村は?」
痩せた土地に畑があり、ウサ耳族が働いていた。
「うっ!ここは…私の領地で、ラビの村よ」
ルナが声を上げた。ルナの領地?聖女の領地に、こんな痩せた土地を与えているのか。聖女では豊穣の力は無いと思うんだが…
「聖女として、こんな寂れた村でいいのか?」
「教会から領土経営のような世俗的な物はしなくて良いって…」
「領土経営出来無いのに、なんでルナの領地になるんだ?」
「それは…バニーの集落だからよ」
バニー?あぁ、あのウサ耳族の名前かぁ。
「智天使様が愛した種族であるバニーの村だから…でも、聖光国は基本亜人を認め無い。だけど、智天使様の愛した種族であるから、智天使様の教えを信仰する私の下でなら、暮らして良いってことで…」
ルナの表情が苦しそうに歪んでいる。本当は、もっと良い環境にしたいのだろう。畑が見えるし、こんな痩せた大地で、農業で暮らして居るのだろう。これって、拷問では無いのか?怒りがわき上がって来た。
「これはルナ様…えっ!クィーン様も…どういうことですか?」
村で一番立派な家から男が出てきた。
「ルナ、コイツは?」
「教会から派遣された代官よ。私の代わりに領地経営をしてくれているの」
コイツが悪の手下か。コイツだけ、税金で良い暮らしをし、領民は奴隷のようにしているのだろう。バニー達の家は、吹けば飛びそうな貧弱な家だし。
「今後、この領地は、僕とルナとキラで経営していく。出て行ってくれないか?」
「何を言っているんだ?教会の上の者の許しなく、そんな勝手なことは許されない」
真顔で言う男。領主であるルナよりも偉いのだろうか?
「教会よりも聖女の立ち位置は下ってことか?」
「いえ…そうでは無いが…私達では勝手に決められない」
頭が固い男のようだ。いや、聖女達には言え無いカラクリがあるのだろうな。
「キラ、聖女って、教会の信者扱いなのか?」
「そんなことは無いです。おい!お前!どういうことだ?オレ達聖女よりも、お前の方が上の立場なのか?」
「いえ、滅相もございません」
キラの怒声により、青い顔になる男。
「この場から出て行ってくれませんか?あなたの領地経営は酷すぎる」
ルナは怒りで声が震えていた。アクと二人で地面を掘っていたのだが、カチカチに固まっていて、掘ることが難しいことに、農業に適していない土地と認識できたようだ。
「ですから、教会の上の者の許可が…」
「ルナ、教会のトップは誰だ?」
「人間では聖女です。その上は智天使様、熾天使様です」
「おい、お前!誰に相談するんだ?教会の上の者とは誰だ?!」
聖女は教会のトップという名前だけの存在なのだろう。責任と名誉だけにしか関われない、宣伝塔のような存在なのか。教会のトップを自認するヤツは、神も見放す愚かな人間達なのだろう。
「それは…」
最後まで言わずに、馬車に乗り、逃げていく男。教会の上の者に相談するのだろう。力で攻めて来ないかな?返り討ちにしてあげたい。
「ルナ、キラ!ここを拠点にするぞ」
「「はい!」」
「キラの配下の男達は、力仕事オーケーか?」
「勿論です、師匠」
「ルナ、空いている土地を借りるぞ」
「いいですけど、どうするんですか?」
「生活拠点をまず作る。野宿はしたく無いからな」
アクとセーラには野宿なんかさせられない。別荘でも良いのだが、バニーの目が気になるし。
広めの空き地に案内してもらい、出張用拠点を呼び出した。今回のは、駒王町にある自宅と同じ造りのエレベータ完備の建物である。近代的な5階建ての住居。1階部分は共用部分で、リビングや食堂、応接室などがあり、2階には僕の部屋やセーラ達家族の部屋、3階は女性メンバー、4階は男性メンバーの部屋があり、5階は夫婦者の部屋と露天風呂がある。地下1階にはサウナ、トレーニングルーム、プール、洞窟風呂があり、地下2階以下は、鍛錬の場になっている。地下3階より下は地獄の入り口に近いと思う。
「ま、ま、魔法の家ですか…」
ルナもキラも驚いている。まぁ、いきなり、こんな建物が出てきたら驚くかぁ。
「キラ、ルナ、アクは2階を使ってくれ。ミト、ヒナタは3階な。それぞれのドアに名札があるから、間違いはしないと思うけど」
突然の建物の出現により、バニー達が集まってきた。この村を住みやすくしていくか。あと、亜人差別する愚か者達は鉄槌を与えようかな。ふふふ…