オラリオの町に隣接する形で、治外法権エリアと呼ばれる、外国資本のホテルやカジノや、高級湯屋がある隣町がある。その一角に『円卓の騎士』という名のホテルがあり、そこに祖父の仲間達がいた。オラリオと治外法権エリアの間には門があり、通行証が無いと行き来出来ないシステムである。
僕は門番さんに通行証を見せた。
「通っていいぞ」
門を抜けると、祖父の仲間が待っていてくれた。
「18階まで行ったそうだな。よくやった」
ジムさんが、褒めてくれた。二人で『円卓の騎士』へ向かい、祖父のいる部屋へ向かった。
「なんか問題でも起きたか?」
祖父に訊かれた。
「アレコレ訊かれて…」
「誤魔化すのも、潜入技能のうちだぞ」
そうなんだけど…今回の稼ぎをテーブルの上に置いた。
「随分と稼ぎましたね」
ジムさんの作品を売って貰えた。ナイトクロウガントレットである。これで、ナイフが収納出来るな。
「僕からは、これをプレゼントだ」
祖父からライトニングナックルをもらった。光属性なので、ここの迷宮の魔物に効果が高いらしい。早速装備をした。僕の手に馴染むナックル。ガントレットを装備して、ナイフを収納した。
「ガントレットを装備した分、腕の動きが遅くなるから、鍛錬をしろよ。そうだな、正拳突きとかが効果高いかな」
と、祖父からアドバイスをもらった。確かに腕が重い…
---ベート---
大樹を監視しろと、フィンに命令をされた。大樹の後を付けていくと、治外法権エリアに入って行った。アイツ、稼ぎで通行手形を買ったのか?まさか、高級湯屋通いか?う~ん…
しばらく待っていると、大樹が出て来た。アイツの腕にはガントレットが装備されていた。治外法権エリアの武器商人から購入したのか…ヘファイストス製は高いからなぁ。
ホームに戻って、フィンに報告をした。
「治外法権エリアで装備の買い付け?」
「あぁ、念願だったガントレットを、購入できたようだよ」
何かを考え込むフィン。
「どうしたんだ?」
「あのエリアには装備屋は、なかったはずだ」
「お前、行ったことがあるのか?」
斜め上に視線を逸らせたフィン。なるほど…高級湯屋かな?
「今度、俺を一緒に連れて行って欲しいなぁ」
「な、な、何のことだ…」
思いっきり動揺しているフィン。
「ティオネ辺りに言うとどうなるかな?」
「おい!何の話だ!」
「ババァの方がいいか?」
「良い訳ないだろう…」
これで、俺も高級湯屋デビューかな。
---代羽大樹---
ホームで、鍛錬を積む。
「どうだ?」
ベル先輩に訊かれた。
「まだ、無理ですね。ガントレットを装備すると、こんな盲点があったとは」
歩くだけでも体力が消耗しそうだ。結構、ずしりと重い。
「それしたままだと、豊饒の女主人で飯が食えないなぁ」
「あぁ、確かに…」
喰うのにジャマである。だけど、四六時中装備していないと意味がない。困ったなぁ。
「じゃ、俺が弁当を買ってこよう」
それは、先輩は喰ってくるってことだよな。う~ん…しょうが無いか。
「大樹、いるかな?」
アイズさんだ。
「あぁ、いますよ」
アイズさんの方へ向かった。廃墟の教会。ワンルームである。
「あっ!新しい装備だ。買ったんだ」
羨ましそうに見ているアイズさん。
「まだ慣れないから、潜れないです」
先に行って置かないと、連れて行かれる心配がある。
「そうなんだ…うん、わかった。練習に付き合う。デートしよう!」
先輩は苦笑いをして、外へ行ってしまった。練習するのにデート?それは、デートの練習なのか?
◇
ロキ・ファミリアのホームの中庭で、アイズさん、ティオナさんとスパーリングである。迷宮の魔物より、強い気がする二人…まだ潜れないレベルの僕は、かわす、逃げることしか出来ない。
「受け流しなさいよ!」
って、アイズさん。
「そうだよ」
って、ティオナさん。
はっきり言って、ティオナさんの打撃は受け流せない気がする。どうして剣で打撃が放てるのだ?だから、刃が欠けるのでは無いのか?など、矛盾を感じなから、アイズさんは受け流し、ティオナさんはよけるを繰り返していく。
「おい、それって、ナイトクロウ製か?」
フィンさんに訊かれたので、頷いた。
「ナイトクロウって、あの?」
アイズにも訊かれたが、
「どの?」
「クレイジースミスの…」
「わからない」
「どこで売っているんだ?」
「お店で…」
「どこにあるんだ?」
「治外法権エリアにあるホテル『円卓の騎士』にあります」
「治外法権エリア?大樹は手形があるの?」
「通行証です」
手形は商業施設発行の物で、発行したお店にしか入店は出来ないけど、通行証はフリーパスであった。あぁ、やらかしてしまったかな?
「通行証?どうして持っているんだ?」
フィンさんに訊かれた。
「祖父がくれました。良い戦士になるには、良い装備品が必要だって」
説明出来ない理由を、すべて祖父に丸投げにしている僕。
「大樹の祖父って、何者だ?お金持ちなのか?」
「どうでしょうね」
実際は、この世界で流通する貨幣の5倍程度は、楽にあるらしい。金持ちの部類だと思う。
「大樹、行って見たい」
って、アイズさん。治外法権エリアにか?確か、手形は同行者1名だけど、通行証は同行者4名だったかな?うろ覚えである。
アイズさんに押し切られる恰好で、ティオナさんとリヴェリアさんお4人で、治外法権エリアに向かった。
---リヴェリア---
初めて、治外法権エリアに来た。オラリオとは違い、喧騒は聞こえない。
「はぐれないでくださいね。女性の行方不明って、結構多いですから」
って、大樹が警告をしてきた。その情報は正しい。なので、近寄りもしなかった場所である。
大樹が良く訪れるホテル『円卓の騎士』は、このエリアの一番奥にあった。
「ここですよ」
エントランスを入ると、広い空間だった。フロントがあり、奥には階段がある。
階段の脇に、フィンの行きたかったお店があった。値段が高い…なんだ、この値段は…一番安くても億だと…
「あの稼ぎでは買えないだろ?」
「ここの店長さんは祖父の知り合いだから…割引価格です」
クレイジースミスの知り合いなのか…大樹の祖父は…
「大樹、調子はどうだ?」
ジム・ナイトクロウ氏が、大樹に話し掛けてきた。
「思っていたより重いです」
「ガントレットだからな。もっと、成長したら、軽いヤツにしてやるよ」
「お願いします」
知り合いっていうのは嘘では無いようだ。
「このお嬢様方は?大樹のガールフレンドか?」
「ロキ・ファミリアの幹部の皆さんですよ。ガールフレンドってことでは無いです」
「大樹の姉のアイズです」
って、姉になりきっている者が1名。大樹ですら驚いている。
「そうですか、剣姫さんは、大樹のお姉さんですか」
ナイトクロウ氏は、アイズの正体を知っているようだ。
「ティオナさんとリヴェリアさんですよね。お噂は聞いておりますよ」
まぁ、目立つファミリアですからねぇ。
「大樹の祖父は、どんな方ですか?」
訊いてみた。
「後にいますよ」
え?振り向くと、知らない男がいた。
「僕が殺し屋なら、君は死んでいたよ」
気配をまるで感じなかった。彼の言葉と気配から、恐怖感が生じている。マズい、膝が笑っている。
「手合わせをお願いします」
アイズが、大樹の祖父に申し入れをしている。
「いいよ。じゃ、地下へ行こう。格闘場があるんだよ」
みんなで移動するが、何かに身体を弄られている感覚がある。近くには誰もいないのに…濡れていく。誇り高きハイエルフの私が…悶悶としていく。どうしてだ?
「君、顔色が悪そうだな。部屋で休んでいくといいよ」
メイド達の肩を借り、どこかの部屋へ連れて行かれる。抵抗する気力も、拒否する気力もない…マズい…
---アイズ---
ティオナと二人で全力で戦っているのに…大樹の祖父に近づけない。
ズドーン!
また、床に叩き付けられた。
ズドーン!
ティオナも床に叩き付けられている。
「まだ、やるんですか?もう無理じゃないのか?」
「まだまだ…『エアリアル』」
風を纏い、速度を上げるが…
ズドーン!
全身が痛い…骨まで行ったかもしれない。ティオナも私も、立ち上がることが出来なくなった。強すぎる…まるで…目の前が真っ暗になっていく
---代羽大樹---
ティオナさんとアイズさんが目の前で死体になっていた。ティオナさんは肋骨が折れて、体外に付き出ている。アイズさんは、頭部が潰れたトマト状態だよ。
「いいか、こういう場合は、まず修復をするんだぞ」
破壊され損傷している身体を修復していく祖父。
「まぁ、お前には蘇生コンポがあるか、それを使ってみな」
言われた通りに、蘇生コンポを発動すると、修復され、招魂され、回復され、入魂されて、心臓が再起動していく。
魔法では無いので魔力消費は無いけど、内部エナジーがだいぶ減っていく。
「いいか?使わないと、最大値は伸びないからな」
そうですね
---リヴェリア---
あぁぁぁぁぁ…全裸にされ、何者かに股間が征服されていく。ダメ…誇りが…自ら四つん這いになり、腰を振っている。目の前に差し出された物を口いっぱいに頬張っている。
気持ちがいい…プライドは壊れて崩れていく。こんなにも、イヤらしい気持ちになれるのか…今までの人生は損した気持ちである。
うぅ…四つん這いなる体力さえ、無くなっていく。ベッドの上で、腹這いで果てて居る。そんな私の頭部を鷲掴みにして、引き上げられていく。逆エビ反りにされ、腰がこわれそうである。だけど、悲鳴をあげる気力が既に失せている。好きにすればいい…
もう、私は誇り高いハイエルフでは無く、性欲に負けたハイエロフであるから…このまま、高級湯屋に売られるのだろうか?それも人生であるな。
◇
翌朝、目が覚めると、客室で寝ていた。隣のベッドには、アイズとティオナが横たわっている。
「何がレベル6だ。その程度で…もっと、鍛錬をしろ!」
大樹の祖父がそう言い残し、部屋から出て行った。ベッドから抜け出し、服を着ていく。敗北感で身体が重い。アイズ達に近寄る。二人共、気力を使い果たしたのか、死んだ様に眠っている。
二人は誰にやられたんだ?私は誰にやられたんだ?答えは見付からない。悔しさは無い。自分が弱いから、こうなっただけ。今までの生き方の結果なんだと思う。
---フィン---
リヴェリア達が戻って来なかった。高級ホテルで一泊か?心配になり、治外法権エリアに向かった。そして、大樹と彼女達のいるホテルへ…だが、高級湯屋の手形では入店お断りだそうだ。湯屋に行くか…
湯屋で満喫し、鋭気を養って、店を出ると、
「フィン、その店は何だ?」
リヴェリア達に見付かってしまった。
「大樹、ここは何のお店?」
アイズが大樹に訊いている。
「男性専門の高級湯屋だよ」
素直に答えている大樹。
「なるほど…ティオネには伝えておくよ」
って、ティオナ。
「フィンは、ここで抜いていたのか…」
肩身が狭そうだ。
途中で、大樹と別れて、リヴェリア達とホームへ戻った。
「フィン…なんで、昼間から石けんの匂いがするんだ?」
ベートに詰め寄られた。
「まさか、アイズ達を探しに行くって、湯屋に行ったんだじゃ無いのか?」
「あぁ、そうだ。コイツは高級湯屋から出て来たぞ」
リヴェリアがあっさりと暴露している。なんで…
「フィン…大樹の強さの秘密が分かったよ。大樹の祖父がめっちゃ強いんだよ」
って、ティオナ。3人から情報を訊くと、リヴェリアですら気配を察知出来なかった上、ティオナとアイズの二人の本気の攻撃が効かなかったらしい。
「悔しい…次に戦うまで強くならないと」
「アイズ、まだやるのか?死にかけたんだぞ」
「私も大樹のように強くなりたい」
アイズの決意は固そうだ。リヴァリアはショックだったのか、自室に籠もってしまった。そんなに強いのか…大樹の祖父って…