存在が最大の武器
柔らかい物体が2つ、僕に纏わり付いている。物凄く気持ちが良い。溜まっていた物が抜けて行く。吸い付くよう何か。吸い込まれていく感覚のアレ…
◇
朝、目覚めると、全裸の黒歌さんと白音さんが添い寝をしていた。あの夢って、そういうこと?
「おはようにゃん」
「おはようございます」
二人の笑顔…蕩けていきそうだ。洗顔をして服を着て、リビングへと向かうと、ミトさんとヒナタさんが食事を作ってくれていた。
「おはよう、大樹」
セーラさんがいた。
「もう、あの力は使っちゃダメだよ」
あの力?
「覚えていないの?まったく…父様に頼んで、リミッターを付けて貰うまでダメだからね」
あぁ、闇属性の神聖オーラか…あれ、危険なんだ。
「いい?アレはヤマトさんでも危険になるの。それだけ、危険なオーラなのよ」
そんなに危険なんだ…
「父様の能力を隔世遺伝で手に入れるなんて、ずっこいわよ!」
セーラさんが涙目で睨んでいる。つまりは…なんかスゴい力のようだ。
「セーラ、もういいかな?」
鳴神さんが割って入った。
「はい…」
「大樹、まず黒歌から駒を抜いてやれ」
駒?あぁ、逃亡原因になった駒だっけ。黒歌さんから悪魔の駒を『強奪』した。
「悪魔の駒…抜けたんだ…もう、逃げ回らないでいいにゃ?白音といていいにゃ?」
「あぁ、二人共大樹の傍にいて欲しい」
鳴神さんが優しい眼差しで、黒歌さん、白音さんを見ている。
「そうだ。この世界はどこですか?」
「ここは、まだ関わったことの無い世界よ」
って、セーラさん。
「今、父様が後ろ盾になってくれる勢力を探してくれているわ」
祖父が暗躍しているんか。
「偶然とは言え、何かが起きそうな世界に来られて良かったみたいよ」
何かが起きそうな世界?ヤバいじゃないですか?
「そう、ヤバい世界よ。まぁ、私のチームが大樹といるから、安心はしていいかな」
セーラさんのチーム。魔王2名…充分過ぎる戦力だと思う。
「後、父様がオーフィスとリリスを出してくれました」
龍神様が2柱も…お釣りが来る戦力では?
「あっ!大樹」
オーフィスさんが僕を抱き締めて来た。巨乳の谷間に、僕のうなじが埋まっていく。リリスさんが僕の腕に抱きついて来た。僕が幼児の頃、このお二人が僕の面倒を見てくれたそうだ、今も僕を幼児のように扱うのであった。
「大樹 おむつ交換」
「もう、おむつしていませんよ」
「なんで?」
「一人でトイレに行けますから」
「大樹 エラい」
僕の頭を撫でるオーフィスさん。ちなみに、自由奔放のクルムさんは、オーフィスさんの前では行儀が良い。本能で力関係が把握できるらしい。
「後、ヒナタ、ミト、あゆ、真琴が常駐する」
鳴神さんだけよりかは、賑やかなメンツになるようだが、
「魔法使い系がいませんが」
あゆ、真琴はヒーラーである。ヒナタさん、ミトさんは剣士である。
「今、あのコンビを呼びだしている」
あのコンビ…たぶん、フィアナさん、リトルさんだろうな。
「まぁ、大樹が魔法を覚えるっていう手もある」
魔法?使える魔法って、あったかな?
「戦える選択肢は多い方が良いからな」
そうだけど…
『早速案件だ!姫島神社へ行き、姫島母娘の救出、保護が目的だ』
祖父からの念話。
「初仕事だよ。気張っていくよ」
セーラさんの掛け声。皆準備を調えていく。そして、現場へ転移。僕が転移したのは、朱乃さんとその母親の前だった。
「大樹くん…」
朱乃さんの泣き声。振り返らずに、蘇生コンポを二人の発動した。そして、目の前の敵と対峙する。忍者スタイルも者が数名、小刀を手にしている。
「貴様!何者だ!」
「代羽大樹だよ」
「代羽だと…この化け物がぁ~!」
『クリムゾンモード』が発動され、全身が紅の装備で覆われていく。斬り掛かってきた刃がロストしていく。
「刀で斬れないのか…」
恐怖で顔が歪む忍者達。魔法が撃ち込まれてきた。しかし、滅する力の前では意味はない。忍者達の利き腕をロストさせていく。家の外で爆音がしている。魔法様コンビかな?龍神様コンビかな?
「大樹!ガード対象は私達に任せて、敵に集中しないさい」
セーラさんの声。では、もう片腕も…いや、男性のシンボルのロストの方が精神ダメージがデカいのか?
《告 さすが孫ですね。発想が同じです》
祖父だったら、そうするのか。では、僕も…相手の股間狙いで男性も女性もキューピー人形のようなツルペタな股間にしていく。
「何?なんてことをするんだ…」
悲痛な叫びが方々で聞こえる。無力化成功のようだ。
《告 生かしたまま、精神を殺すなんて、さすが鬼ですねぇ~》
って、褒められているのかな?僕、鬼だし…
「敵が逃げていくわ。リリス、追尾して、敵の本拠地を見つけて」
「はい」
リリスが飛び出して行った。
◇
朱乃親子を家に連れ帰った。特に怪我は無い。蘇生コンポのお陰らしい。転移して直ぐにコンポを掛けたことを、セーラさんに褒められた。
「反省点は、クリムゾンモードになったことね。あれ、ガード対処もロストしかねないから、ガード中は利き手だけにしないさい」
あの時、朱乃さんが縋り付いたら、ロストしていたらしい。それは大失態である。
「まぁ、アウロス学園を卒業スル前に、現場に来たのだから、しょうがないけど、現場では初心者だからっているハンデは無いからね」
きついお言葉も頂いた。現場では皆、一人前のコマンダー扱いだそうだ。
朱乃親子はあゆ、真琴コンビが面倒を見るそうだ。二人共ヒーラーであるので、急変しても対応が出来るからだ。
「で、忍者のアジト…父様がしっかいりと教育して、傘下にしたそうよ」
祖父の仕事は早い。もう、傘下にしたのか…
「なんで、襲われたんですか?」
「大樹を仕留め損ねたから…」
僕を…そうだ、あの時、包丁で…
「この世界では、代羽家は粛清対象である。この世界の代羽親子はもう粛清されているけど、そこに大樹が現れて…朱乃の父親は堕天使組織の幹部だからね」
立場がマズくなったのか。
「父様が、姫島親子を死んだと、報告させたそうよ。傘下にした九十九屋にねぇ」
僕のせいで…
「大樹のせいじゃない。粛清対象にした天界のバカ共のせい。あぁ、鬼門姓を名乗りなさい。代羽姓だと危険だからね」
こうして、僕は鬼門大樹になった。
「この世界の鬼門家には、父様が挨拶に行って、経緯を説明して、鬼門姓の使用の許可も出ている。なので、この世界の鬼門の次期当主って立場で振る舞いなさい」
「セーラさんも鬼門姓ですよ」
「大樹の姉って、父様が説明したそうよ。いい?人前で叔母なんて言わないようにね」
セーラさんの冷たい視線…まぁ、見た目姉だよな…
「えぇっと…後、代羽としての立場だけど、四葉家の分家という立場も得たそうよ」
四葉家?
「この世界には現代魔法師もいる。科学と魔法が交差する街もある」
それは、色々な世界が混ざっているってことですか?
「だから、何かが起きそうって、父様が暗躍中よ」
なるほど…
「ここは駒王町、隣が八王子、立川も目と鼻の先よ。何かが起きても不思議では無いでしょ?今、父様が、各陣営の相関図を調べているから。大樹は1年後に起きるであろう、この事案を考察しておいて」
案件の資料を手渡された。沖縄海戦と名打っている資料である。
「ガード対象を護りつつ、どうすれば効率的に、敵を殲滅出来るか計画を練っておいて」
◇
祖父の仕事は早い。家から祖父の世界のアウロス学園へと、行けるドアが設置された。つまり、異世界通学をしろってことだ。戦闘技術が未熟な白音さんと共に通学することに…
案件への出動実績が認められ、2年次から3年次への進級試験は免除されるらしい。嬉しいやら哀しいやら。学校の授業よりも厳しい鍛錬を日々、家の地下にある鍛錬場でこなす。アウロス学園の教師陣すらビビる相手との組手、ハードすぎる。
「大樹君…」
朱乃さんが鍛錬後の筋肉のクールダウンをしてくれる。簡単に言えば、筋肉のマッサージである。
「朱乃さんは、学校へ通っているんですか?」
「えぇ、鳴神さんのご厚意で通学しています。鬼門朱乃として」
姫島朱乃は死んだことになっていた。朱乃さんの母親の朱璃さんは、ホームヘルパーとして家事全般をこなしてくれている。外へ出ると狙われる可能性があるから。朱乃さんの父親のバラキエルさんは、たまに訪れ、しばしの親子の時間を満喫していくのだった。
だけど…朱乃さん親子のことが、バラキエルさんの上司にバレたらしい。堕天使のエラい人が、家にやって来た。
「姫島朱璃と朱乃を引き渡してもらおうか」
「申し訳無いですが、その方々はここにはおりません」
堕天使のエラい人に、臆すること無く対応する鳴神さん。
「いねえぇ訳無いだろ?バラキエルが、ここを何度も訪れているのは知っている。つまり、そういう訳だろ?」
「何の事やら、やれやれ…」
「おい!人間風情が楯突く気か?」
「ふふふ…堕天使風情に何が出来るんですか?」
「堕天使風情だと?」
「カラスはカラスらしく空を飛んでいれば良いんです」
「カラスだと…貴様…」
たぶん、堕天使程度では、鳴神さんの敵にはならない。
「どうしました?受けて立ちますよ。カラスの大ボスさん」
涼しい顔の鳴神さん。僕達は心配で、成り行きを見守っている。しかし、急に空気の質が変異した。鬼降臨って現象である。
「何か、問題でも起きたか、鳴神」
「いえ、たいした問題では無いですよ」
「うん?貴様は何者だ?」
「アザゼル風情がデカい顔すんなよ」
「貴様…」
堕天使の大ボスが、プレッシャーを掛けているようだが、祖父は涼しい顔である。
「その程度のオーラで、僕を制圧出来ると思っている時点で、終わっているだろ?」
堕天使の集団の顔から血の気が失せていく。
「なぁ、ブレイザー・シャイニング・オア・ダークネス・ブレード総督!」
「うっ…なんで、それを…」
分厚い何かを手にして、堕天使の大ボスに見せている祖父。
「天界のミカエル辺りにプレゼントするかな…」
「おい、やめろ…それをどこで…」
「はぁ?入手先か?言える訳ないだろ?」
「あぁ、グリゴリに1000部ほど寄付するか?」
「なんて、マネを…貴様は鬼か?」
「そうだよ。鬼だよ…僕はシュウ・ヨハネ・鬼門だ。鬼門当主と言えば良いか?カラスの大ボスよ」
「貴様が鬼門の…」
「ここで死んで、地獄ツアーでもしてくるか?あぁ、朱乃と朱璃の件だっけ?二人共鬼門の家に入った。意味はわかるな?」
「鬼門の一門に入れたのか?」
堕天使の大ボスの声が震えている。限界は近いようだ。スゴい…存在だけで制圧って、何?
「まぁ、地獄でレクチャーを受けてこいよ!」
堕天使の一団が目の前から消えた。
「セーラ、鳴神に伝える。この世界の天国、地獄と友好条約を締結できた。よって、天国と冥府は味方だ。何かあれば頼れ。ハーデスとミカエルが窓口だ。じゃ、忙しいから帰る」
祖父の姿も消えた。
「父様は、相変わらず仕事が早いです」
「あの方は慣れているのですよ、セーラ。大樹、戦わないで済むなら戦わないのも手だぞ。お前の祖父の得意技だ。研究しておけ!」
って、鳴神さん。いや、あれはコネが無いと無理でしょう。僕みたいなペイペイでは、相手にされないし。
「大樹は真面目過ぎるんだよ。シュウみたいにハッタリ人生もありだと思うよ」
って、ミトさん。嘘を吐くことが出来ないスキル持ちの祖父。嘘の代わりに、ハッタリで押し通すことがしばしば有るらしい。僕には無理かな…度胸が無いし。