※この作品はR-18です。

346プロダクション、性欲処理課   作:日々是性欲

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頭の悪いエロ同人ですみません。本題が短く余計な描写が長いのは仕様です。
プロローグとしてどうぞ。


第一話、厳格な女上司

「んっ……んぁっ……っん……はぁっ……あッ……」

 

 仰向けに寝転がった男の上に跨る女。その体が、薄ぼんやりとした暖色系の明かりを反射し、艶かしく揺れる。

 男が、一定のリズムで上下に揺れている乳房へ手を伸ばすと、女は悩ましげな吐息と共に喜色の混じった嬌声をあげ、ビクンッと体をのけぞらせた。

 

「んっ……そ、それ……も、もっと……してッ……ああッッ…………はっ……」

 

 より強い快楽を求め、貪ろように腰を動かす。互いの肌と肌を打ち付ける度、パンパンと乾いた音が寝室に響いた。次第に、結合部がかき混ぜられ、溢れ出した泡の潰れる水っぽい音が混じりだす。弛緩しきりだらしなく開いた女の口からは、零れたよだれが拭われることなく頬を伝い、顎から胸へと落下した。

 

「いい……ほんとにぃ……んっ……すきぃ……」

 

 天井を見つめ放心していた女が、甘ったるい、陶酔したような声を出しながら男の頬へと手を添え、ゆっくりと上体を倒す。

 激しいピストン運動を終え、荒い息を落ち着かせようと呼吸で上下する男の胸板へ、顔を寄せた女は、全身を男の体にマーキングでもするかのように、念入りに擦り合わせた。

 

「ううっ……うぉッ」

 

 体重によって潰された柔らかな乳房と、ツンと立ち上がって自らの存在を主張する乳首に、再び興奮が高まっていく。

 蕩けてしまいそうな柔らかい感触へ、応えるよう硬さを取り戻していく肉棒を見ると、淫靡な笑顔を浮かべた女は、男の乳首に手を伸ばして、クリクリと柔らかな刺激を与え勃起を促した。

 

 不意打ちのように与えられた快感で唸る男の様子に、女は悪戯っぽい笑みを浮かべると、長い舌を乳首に充てがって、舌先で転がしながら口をすぼめ吸い付く。弱い刺激に焦らされていた男は、突如与えられた強い刺激に為す術もなく、驚きの声と共に肉棒を大きく固くした。

 

「あはぁ……まだ出来るでしょ? ねぇ、もっとしてッ」

 

 強烈な存在感を放つ男の肉棒を、溢れる愛液でじっとりと濡れそぼった自らの秘所に合わせた女は、ズレてしまわないように優しく手で掴み、一気に体内に飲み込んだ。

 

「ま、待ってくれ! 生は駄目だろっ……んんッ!」

 

 女の行動を慌てて制そうとする男の口内へ、女が突然に指を突っ込む。男は目を白黒させ黙り込んだ。

 口腔内を好き放題に蹂躙する女の指は、男の舌の根元を抑え付け、それ以上話すことを禁じていた。

 

「私が責任取るからぁ……ねぇ、無茶苦茶にして……」

 

 耳から脳へ、直接届くような女の甘えた声が、男の思考能力を麻痺させ、止めようとする意思を弱らせる。同時に、グリグリと押し付けるような女の腰振りと、搾り取ろうとするような膣内の蠢きが、僅かに残された男の理性を奪い去った。

 

「うっ、がアアアああッ」

 

 獣のような声を発した男は、上体を起こしたそのままの勢いで逆に、女をベッドに押し付け、腰を振り始めた。

 

「あっ、ああっ! 突いてっ、もっとっ……アタシのこと無茶苦茶にしてぇッ……!」

 

 与えられる快楽に、耐えられないように身体を捩る女の、その溢れ出す蜜壺に、男は自らの固く膨れた肉棒を、力任せに叩きつけていった。

 

 

 

 

 

 

「んぁ……?」

 

 深い睡眠から目覚めると、男はベッドに一人で寝転んでいた。かけられた薄手のタオルケットを確認し、ゆっくりと身体を起こす。

 ベッドから腰を上げ、部屋を見回す。閉まったカーテンを開けると、既に高く昇った太陽の光が、男の目に飛び込んできた。

 

(あぁ、もう出てったのか)

 

 ボサボサの髪を手櫛で掻きながら、寝室を出てリビングに向かうと、机の上には万札が一枚と、女の残したメモ書きが、パンと目玉焼きの載った皿を文鎮代わりに置かれていた。書き置きの内容からすると、男のために作った朝食なのだろう。

 

(昨日のお礼……か)

 

 メモを丸めてゴミ箱に放り投げた男は、はだけたパジャマの胸元を見る。男のものか、女のものか、それは定かではないが、粘性の液体が乾いて残った跡。至る所に残されたそれを見て、朝食は一先ず置いてシャワーを浴びることにした。

 

 

 

(結局何時までヤったんだ……?)

 

 平常より若干重い足腰に違和感を覚えながらも、ベタベタする全身をシャワーで洗い流す。また今夜も同じ状態になるが、男には今日、出掛ける用事があった。

 

 濡れて重くなった髪をかき上げ、湿気で曇った鏡を拭うと、目の醒めるような美形が写っていた。

 

(ん〜、いつ見ても……良い顔だな)

 

 男――古泉真司は、しげしげと鏡に写った自分の顔を眺める。涼やかだが大きく開かれた瞳、高く形の良い鼻、優しげな雰囲気を醸し出す口角の上がった、薄い唇。整えた眉が一際、端正な顔の印象を際立たせていた。

 

(加えて身長が高く、脚も長い……理想のモデル、モデルという職業に就くために生まれてきたようだ。辞めた、というか……クビになったけど)

 

 真司は、少し前にモデルとしてスカウトされた時の事を思い出していた。

 女友達に勧められ、乗り気ではなかった大学のミスターコンテストに参加した時、芸能事務所の社長を名乗る偉そうな口調の男から、強引に名刺を手渡され、気づけばその事務所へ所属する方向に話が決まった事。

 それから、あれよあれよという内に男が仕事を持ってきて、そこで真司は大失態を演じてしまった。

 

 有名雑誌のファッションモデル、売れるための登竜門ともいうべき仕事……男が何らかのコネを使って取ってきたその仕事を、生来の怠け癖による寝坊から、打ち合わせ場所で先方を待ちぼうけにしたばかりか、結局別日の撮影をすっぽかし、見事に真司は干されて、事務所から解雇になったのだった。

 

 真司には、外見に見合う中身が無かった。過ぎたものを持っている為に、どうしてもマトモには成れないのだ。

 

(思い返せば、いつもそうだ……)

 

 

 

 

 

 

 真司は幼少の頃から、とにかく顔ではかなりの得をしてきた。幼稚園では人形みたいと、保護者や先生に言われてちやほやされていた。小学校に入学してからは、何故か毎年担任が女性になり、贔屓と言われるほど色々な面で優遇されてきたのだ。

 

 真司がそれに気づいたのは高学年になって、色気づいた女子が、給食の際になぜか自分の班によく来る先生と睨み合って険悪な空気を出していたときだった。

 生まれてからそれまで、家族親戚は勿論、初めて出会った通行人にまで、常に優しくされてきた真司は、誰に言われるでもなく怠け者になった。

 

 それは生まれついてからの性格だったのか、それとも環境が彼にそうさせたのか。とにかく真司は、芯からダメ人間になっていったのだった。

 

 それでも、今までの人生で困ることはなかった。勉強はわからないよりも先ず面倒くさいので自分からやることはなくなったが、献身的なクラスメイトが彼のためにノートを見せてあげたし、教師は事あるごとに彼へ話しかけ課題の提出を迫ったが、何故か受け取りはしなかった。

 

 放任主義だが世間体を気にする両親が、高校受験のために彼を通わせ始めた塾では、勉強する意欲を見せない真司に対して組まれた個別補修という名目で、文系科と理系科担当の女性講師2人に呼び出され、彼を取り合うように、彼女たちの持つ知識を教え込まれた。

 

 二人に学んだことは勉強だけではなく、真司は手ほどきを受けながら大人の階段を登ることになり、自らの下半身で二人を屈服させた。真司は、自らのもう一つの長所を知ることになる。

 

 そこそこ名門の学校に入った真司は、直ぐに勉強を放棄して遊び歩く日々を送ったが、得てして悪い男子はモテた。

 貞操観念の高いお硬い女子でさえ……もしくはだからなのか、彼に迫られれば喜んで股を開き、身も心も虜になっていった。

 

 性欲のままに行動する彼は教師にも手を出し、彼女たちは風紀の乱れを指摘する男性教諭から、彼を守るようになる。望めば何でもできる、全能感は真司にとって堪らない感覚だった。

 

 娘を誑かさないで欲しい、そう言ってきたクラスメイトの母親を、上下の口を塞いで屈服させたとき、真司は人生なんて簡単、そう思い込んでいた。

 問題が起きれば、自ら献身的に彼を守ろうとする存在が居る。もし問題を咎められても、相手が女性であれば、抱いてしまえばどうにでもなる。身持ちの固い女ほど、彼には落としてみせる自信があった。

 

 真司は学校に関わる女性を殆ど全て平らげた。欠席した授業には出席と書き込まれ、提出物は誰かが彼の分を変わりに出す。彼が望めば制度のほうが歪められた。

 

 しかし全てが順調にはいかなかった。広く浅く拡大していく、彼の付き合いは女たちの愛憎を呼ぶ。

 真司でさえ抑えることの出来ない程、発展した争いは、彼が持っていた不倫関係の密告という結末で終わった。

 

 問題を重く見た学校は彼を停学処分にしたが、両親は彼を転校させることにした。彼らにすれば真司は誑かされた男の子であり、その認識が正しいかはともかくとして、それから真司は心を入れ替え、勉強に打ち込むようになった。

 初めて痛い目を見た彼は、さすがに自分を見つめ直すことにしたのだ。……結局、その意気は続かずに、教えるのが上手なクラスメイトと、爛れた関係を持つに至るのだが。

 

 受験までに5教科7科目を完璧にするには時間が足りず、私立を受けたのは彼の怠け癖が変わってないことを表していた。

 

 とにかく何処かの学部に引っ掛かりさえすれば良いと、全学部試験を受けた真司は、文学部にギリギリ補欠合格を果たし、苦痛だった勉強から解放され遊び歩く気ままな生活を続けていた。

 

 家賃用のお金すら遊びに使い果たしたため、すぐに追い出されることになり、知り合いに頼って家を転々としているのだった。

 その最中に、思いがけず芸能事務所に所属した彼は、勢いに任せて大学を中退し、モデルで食っていこうとした矢先に解雇された為、現在は学生でもなく無職。働かず、夜には女を抱く、そんな暮らしだった。

 

 

 

 うまく行っているようでいて、微妙に踏み外してしまったような自分の半生を振り返っていた真司は、出したままだったシャワーのレバーを下げお湯を止めると、自らに気合を入れるように頬を軽く叩く。

 

(面接、何時からだったか……?)

 

 クビになった事務所だが、なにやら悪どい笑みを浮かべた社長がただ解雇処分にするのは忍びないからと渡してくれた、346プロへの紹介状を渡しにいった時の事。お城のように絢爛豪華な建物で、グルグル迷子になっていた真司へ声をかけてくれた熊のような男……彼はプロデューサーと名乗り、受け取った紹介状を読みながら無愛想な顔を怪訝そうに歪めた。

 武内P――彼が紹介してくれた緑色の事務員さんが教えてくれた――は彼が知る限り、一番偉い人に紹介状を渡してくれたらしく、数日後に教えた連絡先へメールが来たのだ。

 

 募集の申し込みの期日は過ぎているが、特例として面接を行う。日時は来週の月曜……つまり今日の14:00……慌てて真司は給湯器のリモコンを見た。

 

(12:00……何だ、まだ正午じゃないか……ッ!? いや、マズイっ。この時計はズレたままって言ってたか!)

 

 慌てて濡れた身体を拭いた真司は、急いでリビングへ出て時計を確認する。置かれた時計の長針は1を指し示そうとしていた。

 

(今すぐ家を出て移動に何分掛かる……電車で行ったときは一時間弱。駄目だ、間に合わないぞ……)

 

 つーッ……頬を伝った雫は乾かしていない髪からか、それとも湧き出した冷や汗か。

 

「なにか無いか、どうにか出来るもの……」

 

 呟き、周囲を見回す真司の目に飛び込んできたのは、置かれたままの一万円札だった。

 

(居候している上に金まで貢がせるなんて、するつもりは無かったんだが……背に腹は代えられないだろっ)

 

 忙しく動きながら身支度を整えた真司は、垂れてこないよう髪の水気を吸い取ったタオルを投げ捨て家を後にした。

 

 

 

「すまないが、急いでいるので譲ってもらえるだろうか」

 

 通りに飛び出た真司が勢いよく片手を上げ止められるタクシーを探していると、背後から気の強そうな女性の声がかかった。

 

(くそっ、ふざけてるのか? 見てわかるだろ、コッチだって急いでんだろ……」

 

「筋が通らないのは分かっているが、時間がないんだ。譲ってもらえないだろうか」

 

 苛立ち気味に不満を声に出そうとした真司が振り返って見たのは、厳格そうな女性が頭を下げている姿だった。

 

「なっ……」

 

 うつむいて表情は伺えないが、声から感じる印象そのまま、背の高く姿勢のいい女性の醸し出す、有無を言わせぬ雰囲気に思わず押され、二の句を告げなくなってしまう。

 

「勿論、無料でとは言わない。そうだな、現金の手持ちはこれぐらいしか無いが……」

 

 そう言って女性は肩に掛けたカバンから革の財布を取り出し、福沢諭吉先生の描かれた札を数枚、真司へ押し付けてくる。それと同時に、真司の上げたままだった手を見て眼の前にタクシーが一台停まった。

 思わずお金を受け取った真司に礼を言った女性は、開いたドアからタクシーに乗り込み運転手へ行き先を告げる。

 

「美城プロダクションへ向かって欲しい、なるべく急いでくれ」

「えぇ、346プロですね。わかりましたよ……お連れさんはお乗りにならないので?」

 

 運転手が運転席から振り返って真司を見る。真司は女性が運転手に告げた行き先から、ある推測をしていた。

 

(はぁ、なるほど。この人……今日の面接を受けにいくんだな)

 

 ビシッと着込んだスーツを見るに相当気合が入っているのだろう、遅刻するわけにはいかないから強引に金を渡した理由を察した真司は、女性が運転手に返事をするよりも先に開いたままのドアから座席へ体を滑り込ませた。

 

「僕も同じ場所へお願いします……行き先が同じなので」

「何っ……」

 

 真司の前で初めて驚いた顔を見せる女性を尻目に運転手へ発進を促すと、開いていたドアが閉じられ車がゆっくりと動き出した。

 目を見開き真司を見つめる女性に、意趣返しが成功したと言わんばかりに笑みを浮かべた真司は事情を説明しようと、得意げに話しだそうとする。

 

「実は……」

「いや、分かった。つまり君……も、面接を受けに来たんだろう」

 

 一瞬だけ思案したように目を泳がせた女性は、いつの間にか元の不機嫌そうな表情に戻っていた。それから、真司を見定めるような視線で顔から上半身……足の先まで不躾に見回す。

 舐め回すような粘着質な視線に、思わず身じろぎした真司を見て、表情が固定されたままの女性が口を開いた。

 

「意外と初心なのか」

 

 余裕を感じさせる女性の態度に、真司は自身の決して小さくはないプライドが傷つくのを感じる。

 

(アンタみたいな女は何人も抱いて……っ)

 

 乗せられて言い返そうとした自分を何とか口に出さず宥めた真司は、これ以上相手に何か言われても気にしないよう、口を閉ざし目線をそらした。

 

「図星か」

 

(くそっ、同期になったら真っ先にこいつを落としてヤるっ)

 

 苛立ちながら横目で相手を窺ってみれば、自分への興味を失ったのか澄ました顔で窓の外を眺めていた。

 どんな手を使って女性の鼻を明かして見せようか、そう真司が考えている内に346プロ前の通りに着き、タクシーが停車してドアが開く。

 

「ありがとうございます、えっと……コレで。急いでるからお釣りはいいです……どうぞ」

 

 カバンから財布を取り出そうとする女性を手で制すと、真司は運転手に一万円札を手渡す。手慣れた様子の真司の行動に、女性が意外そうに目を細めて真司を見ると、先に降りた真司は座ったままの女性へ手を差し出していた。

 

「……すまないな」

 

(けっ、ありがとうって言えよ)

 

 調子に乗って毒づく心中とは別に、紳士然とした手付きで女性を引き上げ支えた真司は、付けてきた安物の腕時計を確認する。伝えられていた時刻の15分前、無駄に広い敷地を前に会場図をきちんと見ておかなかったことを後悔しながら、駆け出そうとすると、離したはずの手を引っ張られ思わずつんのめった。

 

「何するんで――――」

「こちらのほうが近い、見たところ君は知らないようだが」

 

 女性が視線で示す方には、確かに小さな通用門が開いており、以前書類を渡しに来た棟の目の前だった。

 

「今は15分前だ……歩いてでも間に合うだろう」

 

 手首に巻かれた小さな時計を確認しながら話す女性は、固まったままの真司を置いてスタスタと歩を進める。

 

「そこで固まっているのは君の勝手だ……面接での遅刻は社会的信頼に傷をつけると思うがな」

「ちょっ」

 

 慌てて女性の向かう方向へ歩き始めた真司は、メールの情報を確認しながら後ろをついていった。

 

 

 

「私はこっちの部屋だ……君はここだろう」

「え、はい……えっと、そうですね」

 

 目的の建物に入って右往左往している真司を見かねた女性は、軽くため息を付いて一緒に来るよう提案した。

 

(あれ、一緒に面接受けるわけじゃないのか。男女で別れているとか?)

 

 メールの文面と眼の前の部屋の名前を確認して、目的の場所がここであることを確認した真司は、時間が無い中で場所が違うにもかかわらず案内までしてくれた女性に感謝を告げた。

 

「ありがとうございました、その……頑張ってください」

「……礼には及ばないが、そうだな……。君がいい結果を得られるように願っているよ」

 

 再び、一瞬驚いた様子の女性は、少し悩んだ後真司へ激励の言葉を掛け去っていった。女性の意外な言葉に面食らっていた真司も、手元の時計を見て慌ててドアを開ける。

 

(うおっ、4人全員が自信満々って顔つきだ……)

 

 並べられた椅子に腰掛けていた数人の男性が、扉を開け入ってきた真司へと一斉に視線を向けた。皆落ち着かない様子で手を組んだり脚を揺すったりしているが、何処と無く……男としての自信に満ち溢れているように、真司は感じた。

 刺すような視線の中、開いていた席に座り時間になるのを待っていると、5分前になったところで真司が入って来た側の反対のドアが開いた。

 

「一人目の方、着いてきてください」

 

 入ってきたのは以前会った緑色のスーツを着た事務員さんだった。少ししか話したことはないが、顔を見知った人物が居るということで張り詰めた緊張の糸が解けた真司は、肩の力を抜く。同時に、まだ伝えられていた時間の5分前なのに面接が始まった事に戦慄していた。

 

(もしあそこでタクシーを逃していたら……いや、女性の案内が無かったらたどり着いても迷っていたかもしれない)

 

 自らの強運に感謝していた真司が、ほっと長いため息を付いていると隣の男に話しかけられる。

 

「なぁ、兄ちゃん検査の時いなかっただろ?」

 

(何だぁこいつ……ずいぶん馴れ馴れしいけど)

 

「ほら、検査って何だって顔してるじゃねーか! どうやって面接まで来たんだよっ……あっ、顔か? 随分キレーな顔してるもんなっ」

 

 そういいながら舌なめずりをする男に、真司は肛門がキュッと縮むような感覚を覚えながらも、気になった検査のことについて訪ねてみることにした。

 

「あの、検査ってなんですか?」

「やっぱりな、俺は全員に話しかけたはずなのに、兄ちゃんの顔見たことねーと思ったんだよっ! あの検査だよ、なんつったか……確か、精力検査だっけぇ?」

 

(せ、精力検査!? ……き、聞き間違いだよな?)

 

「それを言うなら体力検査じゃないですか……? 健康診断なら僕も――――」

「ああっ! それそれ体力だったわ! 何連続でセックスできますかとかさー!」

 

 ブハハハハーッ! 大口を上げて下品に笑う男の言ったことを理解できず目を白黒させた真司は、目の前の男以外の方を向いてみるが、どちらも平然と……寧ろ得意げな様子だ。

 

(何だこいつら……もしかして、からかってるのか……?)

 

「なー、兄ちゃんもここに来たってことは結構すげえんだろ? 俺、どっちもいけるからよ……へへっ。ちょっと見せてもらってもいいか?」

 

 だらしなく口を開いた男がそう言って、真司の腰の方へ手を伸ばしズボンを掴む。助けを求めるように黙ったままの2人を見るが、彼らは黙認するようだ。

 

「なっ……ちょっとやめてくださいよ! 何してるんですかっ」

 

 慌てて男の手を掴みずり下げるようとする動きを阻止していると、少し前に一人目を呼んだ例の事務員さんが再びドアから入ってきた。

 気勢を削がれたのか、それともある程度の常識は持ち合わせていたのか、真司に迫っていた男は何事もなかったかのように手を離して自分の席へ戻っていた。

 

「二人目の方」

 

 そう呼び出され、眼鏡を掛けた理系風……どことなく数学科が似合うような男が立ち上がる。

 

(この男もそんな検査受けたのか……)

 

 あまり筋肉質ではなくヒョロっとした男の立ち姿を見て、体力はそこまで重要じゃないのかと、何の為に面接が有るのかを思考していたところで隣の男が呟く。

 

「面接にしては早すぎるんじゃね?」

 

(ん、それは確かに……まだ数分、経っていたのは長くて5分ってところだ。受け答えで失言があったりしたのかもしれないが……もっと表面的な、それこそ時間がかからずに判断できるものは……それこそ顔とか)

 

 急に理知的な色を含んだ男の声色に戸惑いを感じながらも、真司は自分なりに面接の目的について考えをまとめる。

 

「あぁ、一人目のやつはブサイクだったか! 清潔感が足りなかったのかもよーッ!」

 

 ギャハハハっ……。合点がいったようで、また下品な笑い声を部屋に響かせる男。その男がたどり着いた結論は自分と同じものであることに真司は驚いた。

 

(意外と馬鹿って訳でもないのか、こいつ)

 

「なぁなぁ、俺の顔はどうよ……? 自分では結構ハンサム顔だと思ってるんだけどなぁ」

 

 そう言って、顎に生えた無精髭を手で擦りながら真司へ顔を近づける男に、真司がなんて言ってやろうかと思案していると、再びドアが開き事務員さんが入ってくる。

 

「次の方、どうぞ」

 

(はっや……)

 

 呼ばれた男も自信はある様子だったが、真司とその隣の男との会話を聞いていたようで、しきりに前髪を弄り、神経質そうに髪型を気にしていた。

 

「めちゃくちゃ早かったな……根暗が駄目だったのか? だとしたら俺とか、結構いい線いくかも知んねぇ。なぁ?」

「えぇ……まぁそうかも知れないですね」

 

 自分では最高のキメ顔を作ったつもりの、品のない下卑た笑みを男は真司に向ける。真司には正直どうでも良く思えたので、適当に返事をした。

 

「はぁ……」

「おいおい、人が話しかけてやってるのにため息ってどうなんだ?」

 

(いっそコレぐらい楽観的な方が気楽だよな……)

 

 五人居たはずの部屋が二人だけになり、殺風景な部屋の空気はより一層重く感じられたが、真司の心も知ってか知らでか世間話を続ける男は、流れる水のようにスラスラと淀みなく口を動かし続けた。

 

 

 

 前の男が呼ばれていってから5分程がたった頃、未だに真司が話しかけ続ける男に対し適当な相槌を打っていると再度ドアが開く。事務員さんに呼び出された眼の前の男は、名残惜しそうに真司の前で立ち上がる。

 

「呼ばれちまったから行くけどよ、最後に一つ」

「え?」

 

 ポン。感じているウザさを隠そうともせず接していた真司の肩へ、男が手を置いた。溜めを作り、決め台詞を勿体ぶるように告げる。

 

「緊張ほぐれたか?」

 

 白い歯を見せながらそう言い放ち、真司へとウインクを一つ決めると男は去っていった。

 

(は?)

 

 一拍置いて、男の態度は知らず知らずの内に硬くなっていた真司のためだった……かもしれないという事に思い至った真司は、嬉しいような嬉しくないような、やっぱりちょっと嫌な、複雑な気持ちになった。

 

 

 

(自分一人になると……恐ろしいほど静かだ)

 

 見知らぬ部屋で一人ぽつねんとしている状況に、初めて緊張を覚え始めた真司は手持ち無沙汰になり、腕時計を眺める。

 

 滑らかに回る秒針は、一秒が十秒にも、十秒が一秒にも感じられ、真司から時間の感覚を奪っていた。一周、二周……いつもより若干多いような拍動を感じながら呼び出されるのを待つ。

 無音の部屋では掛けられた時計の秒針が動く音でさえ、やけに大きく響いた。

 

 丁度秒針が五周目に入る頃、音と共にドアが開く。最後の方どうぞ、事務員さんに呼び出された。

 

 

 

 フロアをグルっと回るように廊下を歩かされ、ある部屋の前にたどり着いた。会議室……プレートにそう書かれた部屋をノックすると中からどうぞという声がする。ドア越しで聞こえにくいが、妙齢の女性の声だった。

 

(聞き覚えが……)

 

 軽く首を傾げながら、失礼が無いよう慇懃に入室して……扉の先の部屋、その真ん中に置かれた机の向こう側に居る女性を見て思わず絶句する。

 

(た、タクシーのっ!)

 

 驚きに目を見開く真司とは対象的に、一切動じた様子のない女性は表情を変えず、冷静に真司へ席に座るよう促した。

 

「席へどうぞ、古泉さん」

「えっ……ハイ」

 

 驚愕しながらも目の前にある椅子へ腰掛けた真司へ、女性が話を始める。

 

「初めに謝罪をします……いや、謝罪をしよう。君には私も面接を受けると言ったが、それは正確ではない。私が面接官だ。嘘を付くつもりはなかったのだがな……私が面接官であることを事前に君が知っていると他の候補者に対して有利になるかと思ったのでな。すまない」

「い、いえそんな……」

 

 口調を会った時のものへ戻した女性は、真司へ軽く頭を下げた。慌てて真司は女性へ頭を上げてもらうよう伝える。そもそも面接経験の乏しい、練習する機会も得られなかった真司は早速マニュアルに書いていない事態が起き、混乱し始めていた。

 

(な……急いで買って呼んだ本には、面接官が知り合いで謝罪してきた時の対処法なんて載ってなかったのに……! それよりも、面接官ってこんな口調なのか?! イメトレをした意味がっ)

 

「自己紹介がまだだったな。専務の美城だ」

「せ、専務ですか……?」

「ああ、私のことを常務と呼ぶものも居るが。私は専務だ」

 

 一瞬なにか不愉快な存在でも思い出したのか、形の整った眉をひそめる美城専務はそれがどうしたと言わんばかり表情で、真司は自分の乏しい社会の知識を掘り起こし専務という役職が何を表しているのか考えた。

 

(専務……わからないが、常務ならドラマで聞いたことが有る……かなり偉い役職だったはずだ。てことはそれの上って事か!?)

 

「あの、美城さん……は社名と関係が有るのでしょうか?」

「ああ、会長は親族だ」

 

(うげぇ……)

 

 聞き覚えがありすぎる名字に、まさかと思い訪ねてみればまたもや恐ろしい返答をされ、自らのそれまでの行動で失礼がなかったか思い返す。

 

(おかしな事は何もなかったはずだ……よな。建物内で迷って案内をしてもらったことは良い印象を持たないかもしれないけど……)

 

「聞きたいことはそれで終わりか」

「は、はい」

「本筋に戻らせてもらおう。君はこの面接が……いや、これが何の募集なのか知らないようだが」

 

(それだ、紹介状に書かれていたというのはただ選考枠に入れろだけだったらしいし。346プロが961と同じく芸能事務所であるから、またモデルをやらされるのかと思っていたがどうやら違うみたいだな)

 

 全くわからないと顔で示す真司の様子を見た美城専務は、手元に置かれた書類を真司の方へ差し出す。

 

「本来なら申し込む時点で書いてもらう契約書だ。順序が前後して悪いが、君の場合は特例だったのでな」

「契約書……?」

 

 社会経験の乏しい真司は、少なくとも自分の知る限りでは採用が決定してからだと認識していた契約書を目の前に差し出され、困惑しながらも受け取る。下敷き代わりのバインダーに挟まれた書類には、要約すると採用試験の際に得た情報を社外に持ち出さないという事が試験を受ける条件であると書かれていた。

 

(不当利得がどうとか……難しくてよくわからないが、機密に触れる機会があるってことだよな)

 

「確認ができ、同意してもらえるのであれば署名してくれ。署名をしない場合は……勿論君の自由だが……選考から外れ帰ってもらう」

 

(分からない……が、何か346プロの弱みを売らなければならないほど生活には困窮していないし……自分自身には不利益は無いだろう。それに、せっかく来たのに今更何もせず帰れなんてあんまりだろう)

 

 内ポケットに入れておいたボールペンを取り出し、サラサラと何も気にせず氏名の記入欄に署名をする。

 それを見届け受け取った美城専務は、ようやく話が進められるとばかりに軽く息を吐くと口を開いた。

 

「君に一つ質問をしたい。アイドルにとって一番在ってはならない不祥事とは何だ」

「アイドルに、ですか……? それが私の面接にどんな関係が――――っ」

 

 刺すような美城専務の視線に思わず口をつぐんだ真司は、居心地の悪さに目を泳がせながら必死に答えを探す。

 

(不祥事……アイドルはいつだって清純なイメージが求められるモノだ……ちょっとワルなキャラの子であっても、クリーンなイメージが求められる。そうなると非行……飲酒や喫煙。いや、待て非行少年はアイドルで無くても問題になるはずだろう。だとすれば恋愛か?)

 

「えっと、恋愛でしょうか……」

「ふむ……なぜそう思う」

 

 恐る恐る考えを口に出した真司は、否定せず理由を問う美城専務の様子を見てほっと胸をなでおろす。

 

「それは、顧客の求めるアイドル像と相反するからです。誰の物でもない、そんな神秘性が求められていると、そう思います」

「成程。概ね同意見だ……アイドルという仕事を行う上で、イメージを損ねる言動は慎まなければならない」

 

 表情は変わらないが、張り詰めていた空気が少し緩んだように感じた真司は、内心でほくそ笑む。正直全然分からないが、彼が必死に考えた内容は相手のお気に召したらしい。

 

「だが、アイドルの彼女らも精神的には未熟な子供だ。恋に焦がれる思いを制御仕切れるとは思えない」

「それは……」

 

 強い口調でそう言い切る美城専務は、そういった例を少なくない数見てきたのかもしれない。真司にそう感じさせるほど彼女の言葉には苦味が混じっていた。

 

「そこで私は考えた。恋とはいわば女と男の生存本能だ。例外はあるが、根本に存在しているのは人としての性欲で違いない。溜まり過ぎた欲求は暴走を起こしてしまう前に消化すればいい」

 

 一息で語り尽くした美城専務は、困惑の表情を顔に貼り付けたままの真司を一瞥し、尚も話を続ける。

 

「アイドル達の性欲を処理すること。それが、今回の募集で求める人材の仕事だ」

 

 途轍もなく下世話な話しをした筈であるのに、澄ました顔の美城専務は机に置かれた書類へ目線を落とす。

 

「君のことは調べさせてもらった。黒井の話では君は寝坊で先方を怒らせた責任を、自ら負って解雇を受けたということだったが……寝坊をした前日、いや当日と言うべきか……君は961プロの事務員と随分と盛っていたそうじゃないか」

「なっ! それは、その……合意もあったので――――」

「いや、責めてるわけではない。……それに加えてその前日も、違う女性……961プロの事務員を抱いていたと聞いたが、それも事実か?」

 

(何でそれも……!?)

 

 黒井社長にも知られていないはずだった事を暴露され、衝撃で言葉も出ず頷く真司に美城専務は訳を話す。

 

「調べたと言っただろう。競合他社がわざわざ人を送り込んでくる理由が気になった。お蔭で黒井が何を企んだか分かったが……君自身の人格には問題がなさそうだったからな」

 

 961プロで好き放題したことが、社長にバレていないと思っていた真司の甘い考えは間違っていたようで、黒井社長はその事を踏まえて346プロでも同じように引っ掻き回すのを期待して真司を募集に滑り込ませていた。

 

「君には検査を受けてもらっていないが、話を聞くに……必要はなさそうだ」

 

(うっ……)

 

 鋭い視線を真司の股間へ向ける美城専務の目つきに、半ば襲われるようにして喪失した初体験の時を思い出した真司は、興奮からその肉棒を固くさせる。体中の血液が海綿体へ集まってしまい渋滞を起こしているような、抑えがたい興奮を感じていた。

 

「いい眼をしている……男日照りの私も、些か体温が上昇しているようだ」

 

(何だ、美城専務も意外と乗り気じゃないか……二人きりだし、ここでシてみたら……随分気持ちよさそうだ……)

 

 密室、向かい合っているのは互いを意識した男と女の二人だけ。何も起きないはずもない……最早真司の頭の中にはそういうコトでいっぱいだった。

 

「――――そうだ、君に一つ言い忘れていたな」

 

(え……? 言い忘れ……一体これ以上何が)

 

 美城専務が唐突に話題を転換する。興奮で昂ぶっていた真司の意識は冷水を掛けられたかのように、瞬時に落ち着きを取り戻した。

 

「この部屋にはカメラが設置されている。この面接は別室でモニターされ、君に世話になる可能性が有るアイドル達も、この場には居ないが君の事を審査する立場にあると言う訳だ」

 

 美城専務は振り返り、天井の隅に取り付けられた監視カメラを一瞥する。視線の先には、今まで真司は気づいていなかったが、一度意識してしまえばずっと視界に入り続けるような、少し大型のカメラが天井から下がっていた。

 

(でかっ……監視カメラと言うにはちょっとばかり役不足じゃないか?)

 

 表情まで読み取れそうなカメラは真司の方向……正確には用意されていた椅子へ向いて固定されている。監視として人の姿を捉えるだけでなく、人物の表情まで捉えることのできそうな規格外のサイズだ。

 

「アイドルと接してもらう以上、彼女たちに嫌悪感を抱かせない程度の容姿……清潔感は最低条件だ。君は、そうだな。私からすればネクタイの曲がり、磨かれていない靴、ボロボロの時計が気になるところだが……まぁ、及第点と言えるだろう」

 

(帰らされていないということは、別室の方でも一応合格点は貰えたんだろうか……)

 

「君の容姿に関しても、彼女たちの評価は上々だ……よって、面接は合格とし、君を採用するつもりだが……」

 

(よ、よしッ……今採用と言ったよな! ――――が……?)

 

 一番欲しかった言葉を告げられて、思わず手を握り小さくガッツポーズをした真司は、言葉尻を濁した美城専務の様子に疑問を持つ。

 美城専務は、訝しげに自身を見つめ次の言葉を待つ真司へ、無言で席を立ち上がり近づいていった。

 

 

 

「そうだな、最終試験として今ここで君とまぐわう事にしよう。アイドルに悪い虫がつくのは困る。私自らが毒味をする事にした」

 

(ど、毒味って……!?)

 

 使った言葉とは裏腹に、美城専務は自ら意欲的に、手慣れた手付きで真司の首元へ手を伸ばし、彼のネクタイを緩めてみせる。椅子に座った状態で見下される真司は、蛇に睨まれた蛙のように固まって身動きが取れなくなってしまった。

 

「どうした……やはり、私のような女は君の対象にならないか……?」

 

 圧倒され縮こまる真司を見た美城専務は、不意に真司の首へ絡ませる手を止め、少し悲しみを含んだ声色でそう呟く。

 

(そんなことはッ)

 

「んんっ……!」

 

 椅子から立ち上がり、奪うように口付ける。考えるよりも先に身体が動き、唇を押し付けた真司は顔を斜め左右に傾け、一番気持ち良い位置を探るように何度も美城専務へ唇を重ねる。歯を撫でるように舌先で舐め尽くすと、勢いで押され大きく開いた口内へ自らの舌を侵入させ、口内を蹂躙した。荒々しく漏れる鼻息が真司の嗜虐心をくすぐり、溢れるように行き来する互いの粘液が甘美な媚薬としてより一層の快楽を二人へ提供した。

 

「んむっ……ぷはぁっ」

 

 深い海に潜ったような、呼吸の苦しさから解放されると、激しく貪りあった印が二人の間に橋を架ける。より粘度の高い方へ引っ張られ、途中で途切れた液体は重力に従い、口から顎へ一筋の線を残した。

 

「君は随分……強引だな」

 

 頬を上気させ、潤ませた眼で自分を見つめる女に、痛いほど征服欲を刺激された真司は、きっちりと着込まれた仕立てのいいスーツを乱暴に脱がせ、現れた純白のブラウスの上から、その豊満な胸を揉みしだく。

 

「んっ……!」

 

 熟れた肉体は触れた手が沈み込む、そう錯覚させるほどの優しい感触を真司に与え、更に心地良い感触を彼に求めさせる。興奮からわずかに震える手でボタンを外すと、日に焼けた様子のない、品のいい肌色が彼の前に現れた。

 待ちきれず、レースの付いた黒のブラジャーの上から愛撫すると、抑えられくぐもった喘ぎ声が発せられる。目を閉じ、与えられる快楽を享受する女が、耐えきれずに漏らす艶のある声は、男の本能を強く刺激した。

 

「あっ……っ!」

 

 美城専務の惜しむような声を聞きながら、真司は乳房から一旦手を離すとパンツを締め付けるベルトへ手を伸ばす。前からベルトの留め具を器用に外すと、自分の重量を支える事ができなくなったベルトは重力に従い、パンツと共にストンと足元へ落ちた。

 黒の布地に紫のレースがあしらわれた意匠が、何だか淫猥な雰囲気を醸し出すパンティーは、股の付け根の部分が溢れる湿気で濡れており、蒸れて湯気が立つようだった。

 

「ああッ……はうっ……!」

 

 期待と熱のこもった声を上げ、腕を掴む美城専務に応えるように、真司はパンティーへ手を滑り込ませた。

 

(これは……本当にご無沙汰だったらしいな)

 

 自らの手をくすぐる柔らかく豊かな毛の感触から、美城専務の性生活を勝手に想像した真司は、より一層張り切りながら、すでに充血して肉厚になった女陰へ手を添わせる。溢れ出す愛液でしとどに濡れそぼった女性器の中で、はち切れんばかりに自らの存在を強烈に示す淫靡な陰核を指の腹で優しく刺激した。

 

「あっ、そ、それは……刺激が……うっ、強すぎる、はっ……!」

 

 左右に細かく指を動かすと、もう耐えきれないと目を閉じて、だらしなく開いた口からよだれを垂らしながら首を振る。下の口からも、溢れ出した蜜が真司の手を濡らした。小さな動きで刺激を与え続けていると、アソコの入り口がヒクヒクと断続的な収縮運動を起こし始めた。テンポよく訪れる不随意運動の、リズムに合わせるように勃起した陰核を摘んでみると、断続的な喘ぎ声に切迫した呼吸が混ざり始め、微かに残っていた余裕が完全に失われる。

 

「あっ、あっ、ああっ、はぁっ……あっ、もう、無理だ、いっ、イクっ、イクぅ、はっ、はっ、うううッーーっ!」

 

 呼吸が詰まり、全身を震わせた。膣口が一際大きく収縮している……絶頂を迎えたようだ。

 

「はーっ、はっ、はっ……うっ、ふぅ……すぅーっ、ふぅ……」

 

 荒い息が整うのを待つ。完全に力が抜けてしまったようで、真司へ体重を預けている美城専務の表情は艷やかだった。

 

「ふぅ、すぅ、ふぅ……想像以上だ、ふっ、すぅーっ、君は……。ふぅ……」

「それは……何というか、ありがとうございます?」

 

 自分にもたれ掛かったまま、息も絶え絶えの美城専務へ何と返していいかわからず、取り敢えず感謝を告げる真司。肩へ顔を付けたままで表情は伺えないが、語気からは満足しているように思われた。

 

(これで良かったのか……?)

 

「ふぅーっ、すぅ……次は、君のコレを試させて貰おう」

「うっ……!?」

 

 よがり狂う美女の痴態を目の前で見続け、ガチガチに凝り固まったまま痛いほどに反り返っている肉棒に、美城専務の細い指が添えられる。カチャカチャとベルトが外されるのを待っている間に、暴発してしまいそうなほど滾っている大きなブツは、真司に向かってまだ満足できないと声高に主張していた。

 

 

 

 

 

 

「はっ、いいぞ、うっ、あんっ……! こんなの、はっ、こんなに気持ちいいのはっ! くっ、うっ、は、初めてだッ……!」

 

 グッ、グッ、グッ。突き上げるように激しく腰を動かし続ける真司は、一突きするたびに蠢動し、硬い肉棒を複数箇所で締め上げる膣内がもたらす快楽を堪能していた。

 

「はぁっ、うっ、ああっ、あっ、あっ、くっ……私が、こんなっ、はっ、あっ、屈辱的な姿勢をっ……! んんぅッ! はっ、いいっ、もっとっ……」

 

 机に手をつかせ、向こうを向かせた美城専務を、真司は後背から犯す……バックの体位で、パンパングチュグチュとリズムにのって腰を振り続ける。こんなのは初めてだ、そう言って快楽に溺れる美城専務を見て、真司は自分の支配欲が満たされるのを感じた。

 社会的な地位の有る、気丈な女性を自分の虜にしている。自分まで偉くなったような錯覚と、他の男への優越感が真司を一層滾らせる。

 

(もっと、何も考えられなくしてやるっ)

 

 眼の前に揺れる、白く形の良い尻を手で軽く叩くと、パンッという小気味いい音が二人だけの部屋に響いた。屈辱的な行為に、決して小さくはない自尊心を傷つけられた女は、初めのうちこそ嫌がる声を出すが、押し寄せる快楽との鬩ぎ合いにプライドが負けたのか、自らねだる様に変わっていった。

 

「はっ、はっ、あっ、ああんっ、あっ、あっ、イ……くっ、イクっ、イクぅ、あ、あ、あああああッ」

「ううッ…くっ……!」

 

 真司が挿入してから数えて三回目になる美城専務の絶頂で、奥と入り口から同時に肉棒を締め付けられた真司は、高まる射精感のまま精を放出した。

 心地よい脱力感を覚えながら、息を吐く。

 

「ふぅ……」

「ふむ……試すつもりで居たが、このままでは君の虜にされてしまいそうだ。……有能すぎるのも困りものだな……」

 

 背筋を伸ばして姿勢良く立った美城専務は、腰に手を当てそう呟いた。





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