※陵辱描写に御注意下さい。
「戦士ジョン・オーリッシュ、君を教会から追放する、という事になった」
「でジマ?」
少年は己の上司の言葉に対し、作中時間的にはギリギリ現役で通じるかもしれない過去の流行語でもって問い返した。それほどまでに驚いたのだ。
ジョン・オーリッシュは教会の戦士である。
聖剣使いとして類稀な才能を有し、且つ回復系の神器を生まれ持つという恵まれた資質。孤児であった彼は教会で育ち、教会で学び、やがて戦場においては やや歪ながらも武才を示した。
これはワイの将来も薔薇色やで!(意訳)とかなんとかそんな風に雑に考えていたのだ、が。
つい先日、教会内部において一つの事件が発生した。
彼と同じ神器【聖母の微笑】を有する聖女、アーシア・アルジェントの異端騒動である。
――彼女の神器は悪魔を癒した。
人や天使を除き神の祝福を受けていない化外の輩は、神器によって治療を行う事が不可能である。それはこの世界における常識であり法則だ。だというのにそれを破った。破る事が、出来てしまった。
異常である。在ってはならない事だった。
かくして聖女の受けた罰は教会からの追放処分。異端と目され、魔女とさえ呼ばれ、信徒としての登録もまた抹消される。敵性種族たる悪魔を助けた事も当然悪いが、最も危険視されたのは神器の示した異常であった。
神器とは、聖書の神が齎す力。神の奇跡の一端である。ソレが誤作動を起こす事など有り得ない。なのに為ったというのならば、それは決して認めてはいけない事だった。
ゆえに魔女と同様に、【聖母の微笑】を有する彼、ジョン・オーリッシュもまた追放される。
つまり巻き添え、道連れ、とばっちりだ。
「無論、我々としても君のこれまでの勤労を評価せぬわけではない。正教会所属の若き聖剣使いであり優秀な戦士である君には今後――」
上司のおっさんがつらつらと今後の彼に対する立場の保証や気遣いの言葉を並べ立てるが、人生のほぼ全てを信仰と戦闘に費やしてきた上で盛大な卓袱台返しを食らったジョン・ホニャララの脳内は驚くくらいに真っ白で、欠片も耳に入っていない。衝撃と混乱で精神的には絶叫脱糞する寸前だった。
教会からの追放処分。つまりは馘首であり、信仰の否定だ。
それは敬虔な信徒たらんとして生きてきた彼からすれば、己の人生の否定であった。
呆然とした表情を隠すだけの余裕も無くして立ち尽くす。そんな姿に、彼の上司もこれ以上は負担をかけるだけだと悟る。今後のために必要な説明の九割方を聞き流されている事にも気付けぬまま、「今日は割り当てられた自室で休むように」と気遣った。
ふらふらと歩いて部屋の中、備え付けられた寝台の端に腰掛ける。
戦って鍛えて戦って、怖くても痛くても頑張り続け、その果てに与えられたものが解雇通知。
ひどい話もあったものだ。ふひひ、と少年の口から怪しげな笑い声が漏れ出した。
――実際には、表立った立場はともかくとして、ちゃんと教会側にも彼という今回の件の被害者に対する充分な補償を行う予定がある。ただし肝心のジョン自身に上司の話を理解するだけの精神的余裕が全く無くて、働かせるだけ働かせた上で「君明日から来なくて良いよ^^」と言われたものと思い込んでいたのだ。
要するに彼は勘違いをしていた。教会から公的に異端追放された魔女と同じ神器を持っているという外聞の悪い共通点を持つがゆえ、順調だった出世街道に明確な影が差した事は、間違いのない事実であったが。
何にせよ、今の彼にとって重要なのはそこではない。
両手を組んで額を押し付ける。祈りを捧げる彼は背筋が曲がるほどに深く俯き、肩も震えて頼りない。とても敬虔な信徒の姿とは言えないだろう。今此処にある己自身に情けなさを感じ、それでも、祈った。
祈って、何時も通りに返る言葉は何も無い。
神の声など聞こえない。
今までは、自分の祈りが、信仰が足りないのだと考えていた。
今はもう、そんな言い訳さえ浮かばない。
己は主に捨てられたのだ、と溜息を零した。自嘲混じりの溜息だった。
腰掛けていた寝台から立ち上がり、己の荷物に手を付ける。
手早く必要な物だけを纏め上げ、他はそのまま。亜空間に仕舞ってあるエクスカリバーの存在を確かめると、自室の扉を開け放った。
「あっ。――じょ、ジョン! そのっ、えと、だ、大丈夫っ!?」
部屋の外には己を訪ねてきた旧知の知り合いが立っていたが、適当な言葉で誤魔化した。
それでも折れずに掛けられる声。常日頃とは全く異なる、心を弱らせた少女の声音だ。恐らくは追放の件を耳にしたのだろう、心配そうな彼女の声掛けに後ろ髪を引かれる思いで、しかし足を止める事は無い。中身の無い相槌と気遣いの欠けた返答のみで会話を終わらせ、彼は彼女に背を向ける。
うるさい、と言い捨てて話を打ち切ってしまったのは、間違いなく失敗だった。
だけど今の彼には他者のために思い悩むだけの余裕が無い。
荒れ狂った感情の全てを腹の底に押し込めて、平然とした態度で教会内を歩き出す。そのまま、目的とする保管庫の入り口で見張り番に「任務だ」と偽り内部へ侵入、己の有する物と同等の、分かたれたエクスカリバーの一振りを手に取った。
窃盗である。
身の内にある聖剣使いの因子が七つ子の一つを誑かし、手にした聖剣は個人用の亜空間へと仕舞い込む。これでジョンの所有する聖剣は貸し与えられていた物と合わせて計二本。喜びの声も無く踵を返すと、見張り番の人間に労いの言葉を掛けて立ち去った。
聖剣使いはエリートだ。
教会の有するエクソシスト達の中でも特別希少で、重要な戦力。聖なる武器として最も有名だろう聖剣を、個人所有する事が許されている点からもそれは明白だった。
だから、声を掛けられた見張り番は名実伴うエリート様からの心優しい気遣いの言葉を素直に受け止め喜んだ。聖剣を保管する重要な箇所の警備を任されているだけあって、流石に表情にまで出す事は無いが。
聖剣使いには、立場と名声に付随する信徒達からの強い信頼があった。ゆえに、今自分の目の前を通り過ぎた少年が聖剣泥棒の現行犯だなどと考えもしない。
そうなるだろうと予測して、事実そうなったのだから、ジョン・オーリッシュには聖剣使いとしてだけでなく怪盗としての才能があったのかもしれない。彼は何食わぬ顔で保管されていた聖剣を持ち出し、己の物として逃げ出した。
建物の外に出て青空を見上げる。
彼の悲惨な境遇――と実は思い込んで若干勘違いしているだけなのだが、ともあれ一個人の幸不幸など知った事かと言わんばかりに晴れ晴れとした空を見上げて、元教会の戦士である少年が中指立てつつ呟いた。
「ファッキューゴッド」
数時間前までなら考えもしなかっただろう、天に唾する、信徒にあるまじき仕草と発言。今、彼の胸中には教会に対する悲しみと、神に対する苛立ちばかりが渦巻いている。――よくも裏切ってくれやがったな、と。
それが彼個人の先走った思考と勘違いから生じたものであろうとも、切っ掛け如何に関わらず、一人の人間が道を誤った事には変わりない。
こうして彼は教会から姿を消した。
魔女アーシア・アルジェントの教会からの追放と、ほぼ同時刻の事だった。
□
元教会の戦士ジョン・オーリッシュは敬虔な信徒、だった。――過去形である。
孤児である彼は教会で学び、教会で育った。
周囲に言われるがままに働き尽くす、無私である事こそが尊い在り方。そう考えてはいたのだが、追放という憂き目に遭って、彼は己の本質を理解した。してしまった。
結局のところ、報われなければ嫌なのだ。報酬無くして奉仕は出来ぬ。彼は当たり前の欲を持つ人間だった。
神への献身だけでは生きていけない。満たされない。
教会で植え付けられた綺麗な価値観は彼の本心を否定している。けれど自分がそういうものだと知ってしまった。
相反する知識と感情にジョンの心が悲鳴を上げて、捌け口を求めて暴走していた。
だからふと思い立ち、聖剣を盗んで逃げ出した。
だからふと目についた、憎き魔女の首を締め上げた。
「っ、ぁ」
か細く零れた、少女の苦鳴。それに対して歯噛みする。
翠色の視線が揺れて、睨み付けた彼の顔を見上げている。伸ばされた少女の指先がジョンの腕や身体に当たったが意味は無く、力の差は歴然だ。
教会の戦士として何年も修練を積んできたのだから、彼女の抵抗が実る事は無い。このまま力を篭めるだけで首を握り潰す事だって容易くて、けれど、苦しむ人間の顔を見ていると暴力的な衝動から醒めていく。
憎い。腹立たしい。悲しい。苛々する。意味も無く叫び声を上げたくなった。
人を守るために戦ってきた自分が、人を傷付けている矛盾。その不快感に戸惑いながら、それでも胸の内にあるものを吐き出さなければ耐えられない。
見つけたのは偶然で、手を伸ばしたのも衝動的なものだった。
金色の髪、翠の瞳。何の変哲も無いシスター服に小さな旅行鞄だけを抱える、着の身着のままで教会から飛び出したかのような見た目の少女。
ジョンは彼女を知っていた。己と同じ神器を持つ人、自分が追放された原因だ。
目の前に居る少女が、――魔女アーシア・アルジェント。
「っう、けほっ、けほ」
手を離せば少女が咳き込む。
苦しみから解放されて、それを与えた相手を窺っている。
「あなたは」
掠れた声音が耳朶を掠める。問い掛けに篭められたものは戸惑いと、僅かな恐れ。そして。
気遣いだ。
呼吸を乱し、先程まで彼女の首を締め上げていた両手を震わせる少年。
飛び掛り、押し倒し、首を絞めて、見下ろしていた。
なのに苦しそうな顔をしていた。
今もまた、傷付けた事を悔いるかのように震えている。
アーシア・アルジェントは、だから、気遣った。
教会という小さな世界で、ただ傷を癒して微笑む以外の全てを奪われ続けてきた物知らずな少女は、目の前で独り苦しむ暴漢の事を心配していた。
戸惑いながら、怯えながら、加害者の事を気遣っている。
「あああ゛――!!!」
少年が叫んだ。何を考えての激情か、彼自身さえ分からないまま。
少女の両頬を片手で掴み、再度地面に引き倒す。
苦しい。苦しい。くるしい。だから、吐き出さなければならない。
ずっと教会で育てられたのだ。神への祈りと、教会からの命令だけが彼の生活のほぼ全て。紫藤イリナを始めとして僅かながらの友人は居たが、精神の根底は信徒としての立場と教育によって作られている。悲しいかな、彼は人間である以前に信徒であるのだ。
なのにそれを奪われた。アーシア・アルジェントのせいで、追放されて、失くしてしまった。例え内実が彼の知るそれと異なっていても、今この瞬間だけはそれこそが彼にとっての真実だ。
正しくなくとも、間違っていても、罪だと理解していても。未熟な少年であるジョン・オーリッシュは、此処で行き場の無い激情を出し尽くさなければ壊れてしまう。本能の部分がそう言っていた。
獣のように息を吐き、下に組み敷いた少女を見遣る。
胸と、腰元。呼吸に合わせて上下する肢体。シスター服の暗い色合いの奥に隠された膨らみ、女の形が布地越しに表れていた。
少年の血走った視線が、上から下までアーシアの身体を舐め上げる。
戦士としての意識が殺人を否定し動きを止めても、感情の吐き出し方なら他にもあるのだ。
魔に属するもの達と戦う戦士の任務、その過程で沢山見てきた。生きているものも、生きていたものも、皆が等しく穢されていた。どうやれば良いのかは知っている。教わりたくもないのに教わってきたのだ、ありとあらゆる邪悪から。
「むぅ――っ!?」
少女の顔を押さえた手の反対、空いた左手でアーシアの胸をまさぐった。
乳房の丸みと、手の動き。それに合わせて暗い布地が波間のように乱れて歪む。軽く握り込むように力を篭めれば、手の平に伝わるのは下着の固さと更に奥にある柔らかさ。
女の胸とはこういうものだったのか、と思考の片隅で納得する。その上で、今度は味わうように肉を揉んだ。
片手で掴まれ不細工に歪んだ少女の顔が、羞恥に染まって赤くなる。
その、タコかアヒルのように突き出た口先に、少年は自分の唇を触れさせた。
「ン、ぅんんッ」
拒絶の声が、言葉にならぬまま漏れ響く。
衣服越しの乳房よりも余程柔らかな部分に触れて、ジョンは己の内で昂ぶるものを感じ取った。
上唇を軽く食み、下唇の内側に舌を伸ばして舐め上げる。少女の唾液で濡れた口の中、どこかすべすべとした肉の味は、憎い相手のそれであっても心地良い。思わず夢中になって舐めてしまった。
「んっ、ふ、んんっ、ふあっ」
押し返す力はとても弱くて、度重なる男の求めに少女の思考が徐々に濁って白み始めた。
両頬を掴み上げていた右手を離し、支えるように顎へと添える。
真っ当な形に戻ったアーシアの唇にキスをして、己の唇と伸ばした舌で彼女の口中を丁寧に味わう。左手は変わらず胸を弄るが、それも乱暴なものではなく愛撫に近しい力加減へと自然に動きを変えていた。
股間が苦しい。初めての交合に身体が昂ぶり、未だ着替えてもいない戦闘服のその部分が盛り上がって痛いほど。戦闘の邪魔にならぬよう身体に張り付く設計だから、幾ら張り詰めても必要以上に勃ち切らないのだ。押さえ付けられ痛くて苦しい。
「ぁ、ふぅ――」
伏し目がちになり、熱に浮かされたような互いの視線が交わった。
無理矢理唇を奪われていた少女の両手は少年の身体に縋り付き、抵抗のためだったその動きは傍から見れば愛し合うための抱擁にも見える。
怒りか羞恥か酸欠か、赤らんだ彼女の顔も乱れた金の髪に彩られて艶かしい。
地面に押し倒されたアーシアの上に覆い被さり、少年が熱心に口を啜った。
単調に揉み込まれた少女の胸は状況への興奮で僅かに膨らみ、全身の血流は活発化している。漏れ聞こえる互いの声からも、何時しか嫌悪の色が消えていた。
顎に添えられていた少年の手が首筋に下りて、優しく撫でながら肌と体温を確かめる。
上から押し付けられた少年の股間が、少女のそこへと重なった。
びくり、と少女自身の意識せぬまま本能で、スカートの奥に秘められた腰が震えて動くと互いの性器を触れさせる。触れて、少年が腰を揺すれば少女の側も控え目に動いた。未だ彼等の意識は口吸いのみに集中しており、ただ興奮に突き動かされて擬似的な性交を行うのみ。
やがてがくがくと腰を震わせながら、少年の下半身が戦闘服の内側で己の熱を吐き出した。
それと共に重ねられていた唇が離れ、二人の視線が再度絡んだ。溺れるように、濁った色で。
そのまま、何を言うでも無く、荒れた呼吸の音だけが互いの耳には聞こえていた。
アーシアの負い目に付け込み肉便器扱いしながら原作を横から眺める話、だった(過去形)。
教会の動きが想像し辛いので多少なりと捏造したら、主人公の描写が増え過ぎた上に色々拗らせてしまいました。
以下、設定。
オリ主
ジョン・オーリッシュ。和訳するとオリ主太郎、もしくはオリ太郎。当ss唯一の竿役。
言われるままに御行儀の良い信徒をやっていたら破門されたので盗んだ聖剣で走り出す系オリ主。
聖剣使い兼回復神器持ち。聖剣泥棒第一号。エクスカリバー二刀流。卑の意思。
教会側の予定としては、以後オリ主には裏仕事を任せて精一杯使い倒すつもりだった。四大天使直属の御使いになれれば公的な扱いも良くなっていた、筈。教会所属のままで御使いになれなければ心身共に襤褸雑巾からの禍の団加入ルート。
自己の信仰を否定されたと考えて精神の均衡を失い、暴走。偶然出くわした魔女を殺そうとしたら無意識がストップをかけたので代わりにレイプしようとしたがキスとペッティングだけで射精して終わる童貞。
ヒロインは教会三人組。