【冥界合宿のヘルキャット】と【体育館裏のホーリー】はほぼ同時進行です。
「皆さん、これから改めて宜しくお願いしますねっ!」
黒い悪魔の翼を広げたアーシア・アルジェントが、明るい笑顔で微笑んだ。
見た目と言動から分かる通り、この度晴れてグレモリー眷属の『僧侶』として転生した彼女。
所有する神器を用いた純粋な回復役として、今後長らく皆を助けていく事だろう。
転生以前から度々部室にお邪魔していた事もあって、彼女はすぐにグレモリー眷属の輪の中に馴染んでいった。
学園の夏休み期間中に冥界で行われる、若手同士の会合前にフルメンバーが揃った事で、主であるリアスも御満悦。分かり易いその態度に、朱乃も隣でこっそり笑う。
しかしそれとは全く別の理由で、今、紅髪の御主人様は頭を悩ませる破目に陥っていた。
「えくすかりばー」
「エクスカリバー」
リアスの棒読みに、ジョンが返した。何時かの焼き直しのような光景だった。
話題は主に一つ。先の三大勢力会談の最中、少年の前に現れた、禍の団英雄派を名乗る一組の男女に関する報告書の作成。今はそのための事情聴取の真っ最中だ。
既に、眷属化を望む際、大まかな事情説明は終えている。
ジョンにとってのリアスとは、駒王町に来て以降、時間を掛けて信頼関係を構築してきた相手だ。今後主従となるのなら、隠し事は可能な限り減らすべき。そういう理由で、自己と周囲の保身のために身売りしたい、と包み隠さず明かしていた、のだが。
「聞いてないのだけど……」
リアスの呟きに、ジョンがそっと視線を逸らす。罪悪感は、ちゃんとあった。
転生前に説明したのは些か雑で、あくまで自分達に関わる部分、のみ。今日此処で、詳細な部分を詰める予定となっていたのだ、が。
曹操に渡した聖剣の件で、少しばかり話が止まった。
七つに別れた聖剣、エクスカリバー。
リアスの『騎士』木場祐斗の
戦っても勝てないと判断した相手、曹操とジャンヌから安全確実に逃れる為に、時間稼ぎの必要経費として彼等二人に差し出された、かわいそうな『天閃の聖剣』。
――かつてジョンからリアスに対して、悪魔契約の対価として支払われた事もある、アレである。
あれってエクスカリバーだったの……? とリアスが小さく呟いた。
彼女の主観では今更になってようやく知れた、驚愕の新事実であった。
いやいや、別にそれ自体は構わない。差し出された対価の価値を理解出来ない悪魔なんて、笑われたって仕方が無いが、人間側にはその辺りの義務など存在しない。古い御伽噺に良くある、悪魔が騙される系の奴と同じだ。
対価を認めたのは、ろくに調べもせずにその場のノリで契約を交わしたリアス自身。事実を秘されていた事にこっそり落ち込む気持ちはあったが、ここで彼を声高に責め立てるような、プライドの欠けた女ではない。
問題は、それを
三大勢力間の和平が、各勢力トップ陣の強引な運びだったとはいえ成された現状。目下の敵と見做される事となった禍の団に関する情報は多いほど良い。
血統はさて置き、立場自体は当たり前の上級悪魔に過ぎないリアスも当然、報告を上げないわけにはいかなかった。心情的にも立場的にも、この一件は情報を纏めて上役へ、はっきりと言えば魔王である実兄に送らなければならないものだ。
だが。少しばかり、報告書を作成するリアスの手が鈍る。鈍ってしまう。
契約の対価でエクスカリバーの一振りを手にしたというのに気付きもせずに、婚約の件で世話になったからと契約者へと差し戻す。
無所属の友人に、悪魔にとっての天敵である聖剣の扱いを任せたままで、気が付けばテロ組織へとソレが渡って、知った時には後の祭り。
……思い返してみれば、それは中々に大きな失点だった。
一貴族の、一領主の、立派な悪魔の仕事ぶりとは、流石に言えない。言い訳出来ない。
そんな駄目駄目なリアス・グレモリーだからこそ、目の前の新人『戦車』の信頼を勝ち得た面が間違いなくあるのだが、それとこれとは話が別だ。誰だって恥を掻くのは嫌なもの。気が重くなるのは仕方がない。
「あー……、うん、そう。大丈夫よ、ちゃんとお兄様には報告しておくから」
「ごめん。……なさい」
「うん。いいのよ? ほら、わたしってば貴方の御主人様だし? ……うん、へーき」
この報告を上げても、公私混同を平気で行う彼女の兄は怒らないだろう。しかし禍の団関連の情報として他の者達にも共有されて、――以後、リアス・グレモリーは聖剣エクスカリバーの一つをまんまと取り逃した間抜けな悪魔であるとして、泥を塗られた経歴を半ば永遠に背負い続ける事となる。
同じ部屋、二人の傍らでずっと黙って見守っていた『女王』姫島朱乃がジョンを睨んだ。
主が許す事を明言している以上、臣下の身では、わざわざ口に出して非難は出来ない。だが、二人分の助命嘆願や身分保障、住居から生活費に至るまで、散々世話になった身の上でこんな隠し事をしていたジョンに対して、それなりに思うところが彼女にはあった。
ギラリと睨む。僅かに紫電が虚空に散った。視線が合って、無言が続く。
リアス・グレモリーの友人の一人として、控え目ながら、これが立場を弁えた精一杯の意思表示。新たな同僚に対する『女王』からの叱責だ。
あとでリアスからは愚痴の一つ二つは聞いておかなければ、と内心で主を気遣ってもいた。
睨まれた側の少年も、これに関しては素直に頭を下げて謝る。
だって、実際に悪いのはジョンの方だ。
あの時は自分とアーシアが最優先で、グレモリー眷属の事など利用するだけの相手だった。だから情報は伏せるし、それで得た優位を生かし、支払った筈の対価をまんまと取り返して私物化していた。元々教会からの盗品だというのに、随分と好き勝手に扱ったものだ。
挙句の果てにはテロ組織行き。実に可哀想な聖剣である。長年の相棒に対する仕打ちとは思えない。
教会側へ向けての謝罪文等を考えて、リアスは今から頭が痛い。実際に頭を下げるのも他勢力への言い訳をするのも、それが自分ではなく兄だからこそ、これに関しては申し訳無さが先に立つ。
上級悪魔としての羞恥心と、身内に対する罪悪感。それを思えば、報告以前から既に おなかが痛かった。
「次からはちゃんと報告しなさい。――いいわね?」
僅か数分で随分と疲れた顔をして、リアスが微笑み、少年の鼻頭を軽く弾いた。
――以上、罰則終了。身内に甘いリアス・グレモリーの、これが精一杯の御小言である。
ジョンがぱちりと瞬きをした。それだけで終わりなのか、と。
基本的に、命に関わるような失敗でもない限り、リアスは眷属に厳しくしない。内心ではかなり胃を痛めていたりするプライドの高い彼女だが、必死に見栄を張って我慢した。
だって彼女は御主人様だから。精一杯お姉さんぶって、それでこの話はおしまいである。
これには朱乃も呆れるばかり。が、少しだけ、強く叱れない主の姿に嬉しそうでもあった。彼女もまた、その甘さに助けられていた時期が確かにあったのだから。
「さ、今日から貴方も御仕事よ。頑張ってきなさい、ジョン」
一時暖かな空気がその場に流れ、詳細な報告を終えたジョンは、グレモリー眷属新人悪魔の通過儀礼であるチラシ配りのためにオカ研部室を後にした。
ちなみにこの日、とある堕天使総督がオカルト研究部顧問として赴任してくる事となっていたのだが、ジョンにとっては凄くどうでも良い話だったのでその詳細は割愛する。
□
目の前に、金髪の少女が立っていた。
彼女の着ている真っ白なバスローブが正面から開かれて、晒されるのは素肌と下着。
その瞳の色に合わせた緑。白のレース模様をあしらった上下一揃いの薄布が、少女の性的な部分を覆い隠して飾り立てる。
寝台に腰掛けた少年の眼前。
バスローブを半端に脱いだアーシア・アルジェントが、肩を晒し、頬を高潮させて、男に媚びるために己が肢体を晒しながら近付いて来る。
瞳は期待に濡れていた。隠れた乳房の先端部分も膨らみ始め、下の蜜壷も今の時点で潤っている。
先程風呂場で磨き終えたばかりの白肌が、ベッドライトの薄ぼんやりとした明かりの中で浮かび上がるように輝いていた。
「ジョンさん……」
熱に浮かされたような声が届く。
一メートル足らずの距離を開けた彼女の立ち位置。それは、少し身を乗り出すだけで手が届きそうなほどに近かった。
上気した肌から汗が滲む。僅かに湿った金髪が明かりに照らされ輝いて、彼女の姿を幻想的なものに見せていた。
「どうぞ、あ、貴方の、アーシア、です……っ」
心底恥ずかしそうに、媚を売る。何かの受け売り、健気な懇願。
一対一。誰に気兼ねする必要の無いこの状況で、好いた男を
彼が立ち上がって手を伸ばし、彼女の肢体を勢い良く抱き締めた。
未だバスローブを羽織ったままの背中を抱え、その動きで、ふわりと長い金色が宙に舞う。
柔らかな布の向こう側、少女の細い肢体が両腕の中で身を捩る。未だ成熟したとは言い難い、けれど既に男を知った女の身体。胸板に当たる下着越しの両乳房が僅かに撓み、軽い体重を少年に預けて力が抜ける。
ああ、と少女が歓喜の吐息を漏らすのが聞こえた。強く強く抱き締められて、自分が求められている事を己の身体で理解した。
バスローブの内側に手が入る。
背から腰、手触りの良い下着に包まれた臀部まで。流れるように手の平が滑って肢体を味わう。
上向いた少女の顔、唇を正面から咥え込まれて朱色同士で擦り合う。
激しく、強く、衣擦れの音が耳に届くくらいに尻を揉む。下着越しの白桃を幾度も摩り、股座に揃えた四指を食い込ませ、果ては太腿に触れて すべすべとした素足を往復する動きで揉みしだく。
押し付けられる、股間が熱い。少女のものも、同じく熱を持っていた。
大きく侵入してくる少年の舌に、上顎を何度も舐められる。他者からの刺激によって新たに分泌された唾液が口内に溜まって、それを待っていたとばかりに吸い上げられた。
優しく丁寧に髪を掬っては、指を離して感触を楽しむ。風呂上りの、比較的強い香りが彼の嗅覚を刺激した。それが自分のための身繕いの結果だと知っているから、なおさら堪らなくなって髪に鼻を埋め匂いを嗅いだ。
それを終えれば、僅かに互いの視線が絡む。どちらも呼吸は荒れていて、気持ちだって高まっている。血流が加速し身体は全身熱くなり、繋がる準備は万全だった。
「あ――」
アーシアの身体を抱き上げて、すぐ傍にある寝台へ向き合う。
そっと仰向けに寝かせると、金色の髪が大きく綺麗に広がった。半端に脱いだ状態のバスローブの白と相俟って、少年個人の贔屓目を抜きにしたとしても、酷く美しくて蠱惑的だ。
向けられる期待の視線に、少女の両手が腰へと伸びる。
自身の履いた下着の両脇に指を通して、焦らすようにゆっくりと、緑色のソレを下へとずらす。
生来の控え目な性格に見合った、淑やかな金毛が秘所を飾っているのが目に見えた。その下には、今まであまり間近で見る事のなかった、彼女の女の象徴部分。そこは既に糸を引き待ちかねている。
少女の手が伸び、秘めた部分を指先で押し開けば、濡れた桜色が露わとなった。
「此処に、下さい。わたしに、ぁ、あなたの、お――」
最後まで聞かず、取り出したモノを其処へと沈めた。
度重なる行為で幾度も耕されてきた女の肉が、男のモノを飲み込んでいく。
より深く内側へと誘い込むように、膣内の肉襞が蠕動する。齎された刺激と僅かな快楽に、アーシアが大きく声を上げて歓喜に鳴いた。
「ぁ、あっ、あ、ああああ――……っ!!」
女陰が男の全てを呑み込み、すぐさま少年が、細腰を掴んで性器を引き抜く。
絡み付く肉が陰茎を扱き、彼女同様彼もまた、小さく呻きながら腰を動かして膣を掘る。
両手は彼女の腰を掴んだままで、前のめりになった彼の上半身が、緑色の下着に包まれた双丘に近付き吐息を漏らした。頬や顎先から垂れ落ちる少量の汗が下着に染み込み、奥の乳房に湿気を齎す。元々滲んでいた少女自身のものと合わせて、溜まった汗がブラの隙間を縫って一筋ばかり流れていった。
胸元にある少年の頭部を、アーシアが抱き締めて腰を振る。その両脚は、相手の腰を逃がさぬようにと、力一杯絡んで捕らえた。
二人分の体重を載せた質の良い寝台が音も無く揺れ、不規則な動きに真っ白なシーツも徐々に歪んで、飛び散る体液で一秒ごとに汚れを増やす。
陰茎が、奥を引っ掻く。
引き抜かれる動きに肉襞が蠢き、吸い付いて、入り口の辺りで確かな音を響かせた。
無理矢理掻き出されていく愛液が、薄白く濁りながら膣口より溢れ出す。そのまま割れ目の下、尻の谷間と順に流れて、真下のシーツに染みを広げた。
膣肉が絞る。陰茎で耕す。肉同士が絡み合いながら何度も何度も刺激を与え、互いが互いの限界を誘う。下着の下で乳房が踊り、揺れる金髪が視界の端で、行為の激しさを表すようにシーツと擦れて幾度も波打つ。
そして、吐き出した。
「ぅ、あ、あっ、あぁぅ、……あ、ぁ、ああっんあっ」
断続的に噴き出す精液に合わせるように、少女の身体が痙攣する。
その度に艶めいた声が喉から飛び出し、少年の耳朶を犯すかのように舐め上げた。
大きく見開かれた翠の瞳から涙が零れる。高潮した頬は汗に濡れて輝いて、上り詰める快感から綺麗な背筋が反り返り、控え目な乳房が抱き締められたままの彼の顔へと押し付けられた。
やがて、互いに力尽きて倒れ伏す。
少年の耳に届くのは二人分の呼吸の音と、間近で響く少女の心音。軽く首を動かし乳房に埋もれ、ふかふかの肉布団に居心地の良さを覚えて目蓋を閉じた。
体力も精力も未だ余裕が残っていたが、なんだか酷く満足してしまっていた。
わざわざ今夜のために下着からベッドライト、他にも色々と、彼を誘うための準備をしてくれたアーシアの頑張りも、きっと無関係なものではない。
少女の身体に圧し掛かって、重いだろうに、アーシアは変わらず少年の身体を抱き締めていた。
気持ちが良い。酷く落ち着く。だから。
射精後の倦怠感に身を任せ、ジョンはそのまま意識を落とした。
「私、負けませんから」
ぽつりと呟く少女の声を、当然の如く聞き流しながら。
□
「へえ。これが悪魔の羽なのね」
土色の目立つ、旧校舎脇の運動場。
物珍しさに目を輝かせ、紫藤イリナが少年の翼を撫で回していた。
その手付きが、くすぐったい。人間だった頃には無かった両翼の新感覚は、慣れるまで暫くは時間がかかりそうだ。
二人の周囲には、量だけはある数打ちの聖剣が多数突き立って輝いている。
コカビエルの一件で神器【聖剣創造】の力を得た木場に、頼み込んで用意して貰った練習用だ。
手に入れたばかりの新たな力。ジョンにとっての悪魔の身体、木場にとっての二つ目の神器。その双方を使いこなすための訓練の一環。
憎んでいた筈の聖剣を創り出す神器に対し、木場は随分と複雑そうではあったが、それはかつての同志達からの贈り物だ。新たな後輩悪魔の頼み事にも苦笑一つで快く頷き、大量の聖剣を用意してくれた。
持つべきものは便利な知り合いである。「押入れはもう二度と貸さないからね」と死んだ目をして付け加えるイケメンに対し、ジョンは感謝の気持ちを惜しみなく伝えた。
――余談だが、羞恥のデュランダル砲で壊れた和室ごと、木場の自宅は今現在改装中だ。
出会い以降、ずっと聖剣憎しで迷惑を掛け続けたジョン相手だからこそ許しはしたが、その裏ではゼノヴィアとの口喧嘩が絶えない苦労人の木場くんである。
話を戻すが今現在、長年連れ添った『天閃』も、便利に使い倒していた万能な『祝福』も、もはやジョンの手元に残っていない。
悪魔に転生した結果、聖具を手に取るだけで苦痛を感じ、聖水なんて余裕で毒物。毎日捧げる祈りにしても、脳に鉄杭を刺すような激痛に耐えながらの苦行となった。
下級悪魔ジョン・オーリッシュには、不便が多い。
人間だった頃の方が手札も多く、自由に動き回れていた気がする。
今の彼が以前よりも勝るのは、人をやめた事で得た人間以上の、『戦車』に見合った身体能力、それと悪魔生来の特質である魔力を得た事くらいであろう。それこそが人でなき者の最大の強みであると知ってはいるが、未だ慣れたとは言い難い。
魔力に関しては、未だ扱い方も習っていないので無いも同然。悪魔の駒によって得た『戦車』の特性、攻防力の上昇に関しては今、イリナを相手に確かめたばかりだ。
同じく悪魔に転生したゼノヴィアではなく、人間のまま、能力値の変化していないイリナだからこそ、人だった頃との比較が出来る。今とかつての、ジョンの強さの変化の比較を。
そのための聖剣。そのための木場への頼み事だった。
使い慣れた物よりずっと脆いが、それでも、やはり聖剣こそがジョンにとっての主武装だ。因子が働き、手にも馴染んで、実に軽くて良く斬れる。悪魔の弱点である光力も、聖剣由来のものなら今も変わらず運用出来た。
打ち合い、斬り合い、あくまで身体の調子を確かめるために繰り返した、――結論。
「……なんだか弱くなったよね、ジョン」
言い辛そうに、イリナが言った。
まだ慣れてないだけだから、と言い訳するが、そもそも適正自体が合っていない。
今回の転生、『戦車』はゼノヴィア、『騎士』がジョン、というのが互いにとっての最適解だろう。もう少し才能が乏しければ『騎士』の駒でも足りたのに、と贅沢な文句を思い浮かべて、こっそり捨てた。
力が増し過ぎて、振り回される。肉体的な強化の程が、すぐに自覚できるくらいに目立って強い。
教会の戦士だった頃は基本、聖剣や他の聖具をメインに据えて、身体能力に頼るような事も少なかった。
加護によって強くなっても、それは手持ちの聖具を有効に活用するための手段に過ぎない。
人外の輩を力で押し潰そうなどと考える方がおかしいのだが、今の状態はかつてと逆だ。道具ではなく、力によって戦わなければせっかくの宝の持ち腐れ、悪魔の強みを殺すだけ。如何に時間がかかろうと、使いこなせるように為らなければならない。
とはいえ、努力は得意だ。
単純作業と苦痛への耐性も、教会時代に培っている。
戦って鍛えて戦って、怖くても痛くても頑張り続け、結果として馘首されたが過去の努力は無駄ではない。何度でも何日でも身体を動かし、今の自分に慣れる事自体は、そう遠くない内に叶うだろう。
ゼノヴィアとアーシアがグレモリーの庇護下に入った時点で、彼の目的は達成している。
彼が今でも力を求めるのは、なんだかんだ言いながら何時も小まめに助けてくれたリアスへの恩返しと、あとは単なる職業病だ。
あるとは思いたくもないが、何かあった際に何も出来ないのは嫌だった。
いざという時の備えが欲しい。教会時代に植え付けられた社畜意識が、今でも彼を追い立てている。多分一生治らない。
――強くなる。そうとも、強くなりさえすれば良いのだ。悩むくらいなら努力をしよう。
聖具の代わりに、悪魔の力。方向性が変わっただけで、やるべき事に変わりはない。
彼は何時だって、出来る事しか出来ないのだから。
「『
「やめよ? ね、ジョン。それはやめよう?」
小猫が聞いたら腹パンされそうな事を呟きながら、拳を握っては開いて翳す。
宥めるために詰め寄ったイリナが、しな垂れかかるように抱き付いた。
かつてより見慣れていた、教会製の戦闘服。ぴったりと肌に張り付く黒色が、日の光を反射して照り輝いている。
肩、二の腕、乳房、腰元から尻と、太腿までのラインが太陽光で白く光った。
抱き付く姿勢で少年の肩に乗せられた乳房が、柔らかく撓んで形を変える。
溜息のように、熱い吐息が少年から零れた。
「――んっ、」
空気の変化に気付いたイリナが、乳を擦り付けるように肩に押し当てた。
身体ごと動いて、何度も乳房で刺激する。あるいは乳房を、彼の肩を使って愛撫した。
戦闘服によって大まかに形を維持された丸みが、僅かに歪んですぐ戻る。ボールが跳ねるように、柔らかく。それは、音が鳴りそうなくらいに目に楽しい。
彼が手を伸ばした。彼女の腕を掴んで引き寄せる。
当たり前のように重なった唇同士が、相手のものを舐め合いながら互いの唾液で濡れていく。
尻を掴んで、乳を揉む。黒い戦闘服の、無駄に滑らかで僅かに固い感触を楽しんだ。
そっと覆い被さるように押し倒し、地面の上に少女を寝かせる。
何度も胸を揉みながら、紡錘形に歪むほど強く扱くように引っ張って、服の上から乳首を舐めた。
何故だか酷く、興奮する。
見慣れた戦闘服。飽きるほど身近にあった黒い色。性的なものなんて、ずっと、見い出した事が無かったというのに。今はこうして欲情している。
何の変哲も無い戦闘装備が、男を誘うための衣装に見えた。
イリナの股間を弄り回す。排泄のための、戦闘服の一部を開いた。指先が触れる度に性器への刺激で少女が震え、合わせて漏れ聞こえる喘ぎ声が ますます少年の興奮を掻き立てる。
自身も脱いで、固く張り詰めたモノを外気に晒した。
むき出しの土の上で。周囲に聖剣を侍らせて。見知った格好の、異性の友人を前にして。
翼を広げた一匹の悪魔が、勃起した男性器を突きつけている。
背徳的な感動がある。
昂ぶっていくばかりの劣情に逆らえず、開かれた恥部へと己の肉棒を触れさせた。
イリナが笑う。
「いいよ。ほらっ、私だって――」
イリナだって、欲しがっている。
濡れた膣口から透明な雫が垂れ落ちて、待ち侘びるかのように下の唇が震えている。
目一杯膨らんだ小さな陰核が立ち上がり、彼女の興奮を表していた。
使い慣れた少年の陰茎が、少女の一番狭苦しい場所へと押し入った。
「ふっ、ぅ、ぃ――!」
細い吐息を吐き出しながら、イリナが歓喜の声を上げる。
挿れたばかりなのに蕩けるように微笑んで、地面に寝転がったままで腰を振る。
鍛えた肢体、女の場所に、少年が股間を遠慮無しに打ちつけた。
衣服が擦れて汁が飛び散り、足元の土を掻き混ぜながらも汚れに構わず絡み合う。
宙に浮いた蟹股の両脚が、幾度か動いて彼の腰元を締め付ける形で落ち着いた。
全身の大半を黒い戦闘服に包まれたまま、顔や手足以外で唯一無防備に晒された少女の秘所が、同じく秘めるべきモノを受け入れて、しつこいくらいに愛撫する。何度も何度も、食い付くように。舐めしゃぶるような水音が、繰り返し耳元まで届いて溶けた。
少年の両手が豊かな乳房を弄ぶ。強く、強く、悪魔の力無しでも揉み潰しそうなくらい、乱暴に。その、痛みと快楽が脳に伝わり少女の性器が応えるように蠢いた。彼の手の平にだって柔い肉を揉む感触と、戦闘服の滑らかな手触りが返ってきている。
腰の動きだけで股間の抽挿を行いながら、両手は胸を揉み、唇で相手の口内を味わい尽くす。
土に汚れた少女の栗毛が動きに伴い振り回されて、長い髪の乱れる様子が更に女を感じさせ、少年の情欲を煽りに煽った。
強い興奮に、すぐさま射精感が込み上げる。腰を強く、最も深くまで押し込んだ。
奥歯を噛んで射精する。我慢なんて必要無い。心のままに、イリナの中へと精を放った。
熱と快楽で陰茎の先端が痺れるようで、触覚も一時的に馬鹿になる。
「じょ、じょんっ、でてるっ、出てるよぅ……ッ」
射精を受けた少女が喘ぎ、うわ言のように同じ言葉を繰り返す。
幸せそうな顔で腰を振り、最後の最後まで搾り取ろうと、腰と一緒に膣の動きで陰茎を舐めた。
少年もまた、合わせるように腰を揺する。断続的に、抽挿の度に射精するように何度でも。
やがてはそれも静まっていく。ゆっくりと、吐き出し終えた腰が止まった。
仕事を終えて萎え始めた陰茎が、少女の内側で尚もしゃぶられて小さく震える。
イリナの身体に覆い被さった姿勢のままで、下になった顔を見下ろす。そうして、極自然に顔を寄せると、唇を合わせてキスをした。舌を差し込み、互いのものを何度も舐め合う。
そっと離せば、二人の熱い吐息が漏れる。視線が絡まり、少女が小さく微笑んだ。
黒い翼がゆっくり下りて、事後の姿を覆い隠すように彼等を包む。
「ね、……わたし、もっと頑張るからね」
未だ人間のままの少女が、悪魔となった少年に向けて囁いた。
小さく頷き、栗毛の髪を撫でながら、ジョンもまた更なる努力を己に誓う。
イリナが何を頑張るつもりか、微妙に勘違いをしたままで。
書いていて必要以上に弱体化が描写されてしまった気がするオリ主の話。
強弱設定はあくまで話の流れのためのフレーバーです、と第六話以来二度目の言い訳。
次回から冥界編です。