エクスカリバー編開始。初動はのんびりしています。
※紫藤イリナに関する独自設定、及び今後のキャラ崩壊に御注意下さい。
――今日もまた、紫藤イリナはあの日の光景を夢に見る。
一人の少女の姿が其処にはあった。
息さえ乱して駆けつけた先、閉じた扉の前に立つ。だけど部屋の主が居るのか否か、それをただ確かめるだけの事さえ躊躇っていた。
だって、もしも自分が彼の立場なら、と。そう考えると何を言えば良いのか分からないのだ。
分からない。だからそのまま幾十幾百の秒を数えて少女は悩み。
目の前の扉が静かに開いた。
『あっ。――じょ、ジョン! そのっ、えと、だ、大丈夫っ!?』
挙動不審な栗毛の少女が、異性の友人相手に両手を振るって話し掛けている。
その声色も振る舞いも言動も、客観視すればまるで媚を売るかのようで滑稽だった。調子の乱れた無駄に大きな声で話しているせいで、少女に対する少年も、酷く煩わしそうにしているではないか。
やめなさい、と声を掛けても止められない。だってこれは夢なのだ。
ああ、情けない。恥ずかしい。見っとも無い。どうして、もっと上手く出来なかったのだろう。
でも仕方ない、と二人を見ながら当時の気持ちを思い返す。
だって。……心配だった。
彼女は彼を、元気付けてあげたかったのだ。
あの、強い信仰心を原動力とした直向きな努力家を、大切な友達の事を、助けたかった。
けれど結果は拒絶の言葉。遠のく背中を見送るだけで、以後、彼の姿は何処にも無い。
傷付いた彼に、何一つとしてしてあげられなかった。
友達なのに。
かつての少女は生まれ育った国を離れたばかりで、不安と緊張で一杯だった。
特に幼馴染の少年と離れ離れになった事は彼女の心に強い悲しみを齎して、表面上は明るく振舞いつつも、裏では一人で泣いてばかり。それを察したらしい父親からも心配されて、だからこそ幼かった頃の
正教会管轄の訓練場で、大人達に囲まれて輝く剣を構えた少年。
ジョン。――ジョン・オーリッシュ。教会で出来た初めての友達。同年代の、異性の友人。
無表情で無愛想。なのに物言いだけはどこか可笑しくて、気が付けば仲良くなっていた。
夜に泣く事も徐々に減っていき、だからこそ属する教会が異なる事がもどかしかった。父親の縁でプロテスタント教会に所属する少女は、正教会によって養育されている彼と会う機会が多くない。会えないからこそ、逆に執着していた面もあったのだろう。もっと会いたいなんて我儘を言って、父親を困らせた事を憶えている。
およそ赤子の頃から教会で育って、教えを受け、学び、鍛えられ、成長してきたジョン。
対して少女は、父が信徒とはいえ他国から渡って来た後に信仰に目覚めたという差があった。
境遇自体に優劣を付ける気は無いが、培ってきた環境の違いは明白だ。開始地点が異なるせいで、何時も彼女は彼より幾らか遅れる位置に立っていた。
そんな事実に逆に奮起し、少女の努力はより一層強く深く積み重ねられていく。友達には負けられない、対等な立場で向き合いたい。子供ながらにそう考えて。
真正直な性格が高じて、彼女の評価は上向いていく。それと同時に教会からの教えを受けて、神に対する強い信仰心を育んだ。
先を行く彼の背中を追いかけるように。新しく出来た友達と肩を並べるために。もう二度と大切に想えた相手と離れたくない、という孤独を嫌う気持ちさえもを力に変えて。
今思い返しても、あの頃の彼女は生涯で最も純粋だった。
篤い信仰と日々の研鑽を評価され、特別な祝福を受けて聖剣使いになった日の事は忘れない。
天然の彼と人工の彼女。彼我の格差も理解出来たが、そんな事はどうでも良いのだ。
――ようやく並んだ。
教会の信徒。神への奉仕者。世界の裏側で戦うエクソシスト。そして何より、聖剣使い。
努力が実って肩を並べられたと、そう思った。それが嬉しくて自慢する。言われた側の少年は至極冷静に、しかし偽り無く、彼女の成果を祝福してくれた。
小さく、微笑んでくれた事を憶えている。
常の無表情が綻ぶように。おめでとう、と面と向かって言われた瞬間。
無性に恥ずかしくなったその日の事は、少女にとってとても大切な思い出となった。
そんな彼も、今となっては手の届く世界の何処にも居ない。
「……また、あのゆめ」
屍人のような声で呟く。就寝中に乱れた長い栗毛が口内に潜り込んでおり煩わしい。
ああ、また泣いてしまいそうだ。嫌な気持ちが燻っている。
顔を合わせた最後の記憶。居なくなった時の彼の背中が、目蓋に焼き付いて消えないままだ。
どうせ夢に見るのなら、もっと楽しかった頃の夢を見られれば良いのに。
目元の隈を、取れるわけが無いのに両手で擦る。
こんな事では父や周囲の信徒達、友人のゼノヴィアにだってまた心配を掛けてしまうじゃないか。そんな事を考えながら、乾ききった喉の痛みを誤魔化すために唾を飲む。酷く固くて、まるで泥のような味がした。
身を起こした姿勢のまま寝台の上で膝を抱き、あの日彼に対して自分が口にした拙い励ましと、それに返された彼の罵倒を思い出す。
『大丈夫よ、ジョン。主は越えられない試練なんて課されないわっ。だから頑張ればきっと――』
『うるさいッッッ!!!!!!』
きっと――、何だと言うのだろうか。何を言うつもりだったのだろうか、自分は。
馬鹿みたいだ、と呟いた。
きつく閉じた目蓋の裏から、未だ枯れ切らない涙が滲む。
納得出来ない別れの場面が、納得出来ないからこそ頭の中で繰り返す。
せめて最後の会話がもっと明るいものならば、彼女がここまで思い詰める事もなかっただろうに。
全ては間が悪かっただけの事。
彼が追放の一件を聞いた、その直後の会話でなければ。
彼の下へと駆けつけた彼女が、黙って傍に寄り添うだけで我慢出来ていれば。
彼が神への祈りを捧げ、返らぬ答えに、己は捨てられたのだと諦める前の会話であれば。
もう一日だけでも、彼の出奔が遅れてさえいれば、きっと他の道があっただろうに。
あの日、教会の戦士ジョン・オーリッシュは姿を消した。
彼に預けられていた『天閃の聖剣』を所持したままで、以後の消息は不明のままだ。
同時期に紛失した正教会管理下の『祝福の聖剣』の一件も、彼の仕業でないかと囁く噂が耳に入る。そんな筈は無い、と栗毛の少女は反発したが、タイミングからして疑われるのは当然で。当然過ぎる、事だった。
両手を組んで、少女は神への祈りを捧げる。
それは信仰の為のものではなくて、縋り付く為の行いだった。
どうか、私の友人が更なる苦難に見舞われていませんように。
傷付いていませんように。再度誰かに追われるような目に遭っていませんように。ひとりぼっちで泣いていませんように。どうか、どうかどうかどうかどうかどうか――。
わたしのことを、嫌ったままでいませんように。
「ぁ、……ばか。わたしの、ばかっ」
祈りの言葉に願望が混じり、身勝手な願いを天に捧げる自分自身を罵った。
結局の所、傷付けたのは自分の方で。彼は一方的な被害者だ。魔女の追放に巻き込まれただけの、不幸な友人を励ますつもりで傷付けた。
異端者として教会から追い出される、なんて。信徒の身ならば耐え難いほどの苦痛だろうに。彼女なりに気遣った言葉である事に嘘はないが、結果は拒絶、徐々に小さくなっていく彼の背中を追いかけられずに見送った。
そしてそのまま、行方不明。残されたのは自分を責める少女だけ。
あれが今生最後の会話だなんて思いたくはないが、失踪した彼の行方など皆目見当が付かないままだ。少なくとも、戦士である彼女如きの所にまで情報が降りてくる事は一切無い。
親しい仲だと思っていた癖に何処に行ったのか分からないなんて。自分で自分が情けない。
最近は、起きている限り鬱々と思考が沈むだけ。こんな事だから皆に心配を掛けるというのに。
ジョン、と遠くに消えた筈の名前を呼んだ。
少女にとって、彼は特別な存在だった。
それは丁度思春期に差し掛かる時期の大半を、彼という近しい立場の異性と過ごしたせいか。寂しかった心の隙間に、偶々彼が入り込んだだけなのか。
あくまで一般人であるかつての幼馴染とは異なり、ジョンとの間には信徒である事などの共通点も多く有って、あるいは同性の友人であるゼノヴィアよりも親しい仲だと、少なくとも彼女の側は考えていた。……彼の考えは、今となっても知らないままだが。
やめるべきだと分かっているのに、またも思考が彼に関した話題に戻る。
延々と続く自虐と回想。当のジョンが居ない以上、明るい答えなんて出るわけがない。
だから何度でも繰り返す。
やがて窓から朝日が差し込む。
結局夜中に目が覚めてからずっと、彼女は独りぼっちで蹲ったまま泣いていた。
七つある内の僅かに二つ、聖剣エクスカリバー強奪の報が紫藤イリナの耳に入る、僅か数時間前の事だった。
□
夢を見た。
友人、であるとジョンの側だけは思っているが、実際にどうなのかを確認した事のない大事な相手の、夢を。
夢から醒めても、未だ湧き上がる感情の数々を持て余す。
亜空間から『祝福の聖剣』を取り出し、その輝きで視界を埋める。すっかり馴染んだ神聖な気配が、かつて育った教会での事を思い出させた。少しばかりの寂しさが、彼の心を更に重くする。
この『祝福』は聖なるものを強化する、補助的な役割を担う聖剣。七つに分かたれたエクスカリバーの一振りだ。
ジョン・オーリッシュは聖剣使いで、夢に見た彼女もまた同じ。違いがあるとか聞いた気もするが、彼はその辺りを憶えていない。自分と同じだと認識していて、拘るところはそれで充分。彼にとって他は余計なものだった。
割と幼い頃から知っている、幼馴染、という事になるのだろうか。判断出来ずに首を捻った。
明るく素直で頑張り屋な、栗毛の少女。彼女の紹介で青髪の友人とも知り合えた。信徒である以外の生き方を知らなかった幼いジョンが僅かでもそれ以外のものに触れられたのは、友人である彼女の御陰だ。
誰とでもすぐに打ち解ける性格や、気付けば教会育ちの彼と肩を並べていた成長速度は本当に凄いと尊敬していた。
だけど今はもう、紫藤イリナは傍には居ない。
ふ、と溜息を吐いて剣を仕舞う。盗品如きを眺めたところで彼女の近況など分からない。こうしてイリナを想っているのは、大部分が最後の会話への罪悪感だ。信仰を裏切られて追放されたジョンにとっては、教会時代の思い出の全ては酷く遠いものとなっていた。
どうせもう、会う事なんて無いだろう。
そう考えて、それで良いとさえ割り切っていた。割り切ってしまえる理由を得ていた。
「あの。どうか、しましたか?」
心配そうな声を聞く。視線を向ければもはや見慣れた、アーシア・アルジェントが其処に居る。
なんだか無性に人肌が恋しくなって、ついつい彼女の腰に抱きついた。
「あっ」
小さな呟き。けれど抵抗は無い。最近は、あまり嫌がる姿を見ていない気がする。
部屋のソファに腰掛けた彼女の、その腰に抱き付いたまま、己の顔だけを膝に乗せた。
上ではなくて下を向く、変則的な膝枕。
スカート越しの柔らかな太腿が顔の表面を受け止めて、けれど鼻がぶつかるので少し痛い。
すうっと深く息を吸う。嗅ぎ慣れてきた少女の香りが少年の鼻腔を埋め尽くし、匂いを嗅がれた事に気付いたアーシアが膝を揺らした。揺らしたのだが、腰をがっしり掴んでいるので離れようにも離れない。結局すぐに抵抗を諦めたのか、下半身から力を抜いたままジョンの頭を手で撫で始めた。
掌の感触が気持ち良い。過去を思い返すが、撫でられるなんて初めてだ。
ずっとずっと、聖剣ばかりを振っていた。教会の戦士としての自分しか無かった。そうでない部分は全て残らず、あの日イリナの下へと置いてきたから。
――なんて考えた所で、それだって結局は強がりだ。理性はともかく、感情だけは今でも燻り、彼の内側に居残っている。
いりな、と彼の未練が思わず呟く。
ジョンの頭を撫でていた手が、彼の頭髪をぶちりと抜いた。
「――イィッタイ!!」
音調が小気味良く上下して、少年の悲鳴が室内に響き渡った。
ガバリと身を起こすと、少女を見遣る。抗議の視線を向けられた側であるアーシアは、今自分が何をしたのか分からない、というような顔で己の手の中の抜け毛を見下ろしていた。不思議そうな顔をするなよッ、と彼は思ったが、怒鳴りつけるだけの気力も湧かず、小さく洟を啜って、結局もう一度彼女の膝へと舞い戻る。
今度は不覚を取らぬようにと上を見上げて、彼の視界ではアーシア・アルジェントの ふっくらしている双子の部分が自己を主張して愛される時を待っていた。待っているのだ、とジョンは勝手に結論を下した。
もにもにと衣服越しのそこを揉む。
「あっ。も、もう~っ!」
触っても嫌がる様子は無い。むしろ喜んでいるように……いや錯覚だな、とジョンは思った。
だけど触っていて気持ちが良いので決してやめない。意図は不明だし彼女自身無意識の行動だったように見えたが、先程髪を引き抜かれた意趣返しも含めて、ソファの上で膝枕の体勢を維持したままに両手を動かす。痛かったんだぞ、と抗議の意思を指先に篭めて。
手の平に感じるのは初夏ゆえに薄手なシャツ一枚とその奥の、下着で包んだ両乳房。緩く刺激する度に少女の身体が身をくねらせて、悶えるような動きが実にエロい。
片手で乳房を正面から揉みしだき、もう片方は指の間接部で持ち上げるように下からつつく。
ふにふにと形を変える感触と温もりに、早くも股間が盛り上がった。
少年が、我慢出来ぬと身を起こす。入れ替わるように位置を変え、柔らかなソファの上に少女の全身を押し倒した。金色の髪が風に舞い、彩るようにふわりと落ちた。
押し倒された側に驚きなんて然程無い。彼の反応を予測していたと言わんばかりに、仰向けとなったアーシアが己のシャツをたくし上げる。
裾の下から綺麗な御腹が現れて、臍から乳房の下辺りまでを視界に映す。
自身で半端に肌を晒した少女の顔が、薄っすらと恥じらい赤くなる。見下ろす側の少年は、恥ずかしいならやらなければ良いのに、などと乙女心の分からぬ事を考えていた。
が、思考とは別に彼の動きは止まらない。
広がったシャツの裾に己の頭を潜らせて、更に両手も差し込んだ。
ひあ、と少女の悲鳴が鳴ったが、構わずブラジャーを手馴れぬ様子で もたもたと、アーシアに手伝って貰いながらようやくの事で引き剥がす。フロントホックって何だ。少年の独白がシャツの内側で虚しく消えた。
篭った熱と匂いに包まれ、彼の興奮が増していく。
目の前にある乳房を両手で寄せて、一緒に頬張るように舌で舐った。
二つの乳首を同時に、などと考えていたがサイズが足りずに届かない。仕方なしに片方ずつを吸っては離す。その度に狭い視界で乳房が弾み、目と口の双方で少女の柔らかさを味わった。
やわやわと左右から揉み摩り、ぬるりと跳ねる乳首の形を舌で覚えて優しく吸った。
飼い犬が水を舐めるような音がシャツの内側に閉じ込められた。しかし漏れ聞こえるものもあり、その度に少女が唇を噛んで快感に耐え、熱くなった息を鼻から逃がす。
少女の声が、聞こえそうなのに聞こえない。我慢する顔も彼から見えずに気付かない。
身悶えする度ソファの上で細い背中が幾度も反って、上から圧し掛かる少年の身体に再度ソファへと押し戻される。滲んだ汗が小さく湿り気を落としつつ、シャツの中で乳房を弄ばれるたび何度も何度も肢体が跳ねた。
僅かながらの小休止。少年が息を吐くと身を捩り、片手をシャツから抜き出して、少女のスカートへと指を掛ける。
動きを察してぴくりと震えたアーシアが軽く己の尻を上げ、そこまで捲り上げる許可を、少年に気付かれぬまま確かに出した。
するりと衣擦れの音が鳴る。そのまま、乳房を吸われながらに彼女の生足が晒されていく。
初夏の熱気が素肌を舐めたが、衣服の内側よりは部屋の室温の方が僅かに低く、足先から順に感じる肌寒さから少女の両足が温もりを求めて彼の身体に擦り寄っていく、絡み合う。その感触が心地良い。
頭に被ったシャツの存在が邪魔になり、少女の首元辺りまで引き上げられた。
身を起こす少年が見下ろした先に居るのは、上半身のほぼ全てと太腿の付け根までをも晒した少女。荒い息を零し汗で湿った赤い頬、情欲に震える女の顔だ。
彼の指先が僅かに覗いたショーツに掛かり、縁の部分を引き下ろす。
腰の くびれの少し下、鼠径部のラインが見えた辺りで、上と下から視線を絡めた。
「あ、っん。……ど、どうぞっ」
乳房を隠そうと反射的に動いた両手を、彼女自身が押し留める。僅かに除いた乳首の色と、ふるりと震える乳房の白さ。目を奪われるほどに魅力的だった。
そこで深い呼吸を二度置いて。
空いた両腕を彼に向かって差し出して、迎え入れるために呼び掛けた。
「アーシア……ッ!」
「はひゅ。ぁの、できれば優しく――」
ぴんぽーん。
来客を告げる鈴が鳴る。
性的興奮で昂ぶりきった表情のまま、二人は互いに動きを止めた。
が、ジョンの片手だけが虚空へ伸びて、そこから輝く剣の柄を。――取り出す直前で、アーシアが止めた。無言のままで。
ゆっくりと首を振り、彼女は彼の凶行を押し留める。見上げた先の少年の顔もまた首を振って、彼女の制止を振り切るためにも訴える。やはり無言。
一頻り無駄な遣り取りをした後に、「……居留守じゃ駄目かな」とか考えながら、ジョンが玄関先の対応に乗り出した。聖剣は流石に止めておく。この部屋への来客といえばグレモリー眷属限定で、隠した手札を晒す事は今後のためにも控えるべきだ。
きっと昼間から事に及ぼうとしたのが悪かったのだろう。あるいは、喧嘩別れした友人の夢を見た寂しさを理由に始めた事が悪かったのか。
反省しながら、彼は手の平に残る少女のおっぱいの感触を思い返して肩を落とした。もはや
御互いが深く触れ合う行為が当たり前のものになりつつありながら、それでも最後の一歩が踏み込めない。
――今日は最後までイクつもりだったのに!
下腹に渦巻く欲求不満の不快な衝動を抱えたままで、少年は苛立たしげに小さく唸る。
一方、部屋を出て行く背中を見送り、残されたアーシアが呟いた。
「ぶっころです。これはきっと、凄くぶっころですよジョンさん……」
来客を部屋に通した場合を考慮して、衣服やソファを整えながら。
未だ果たされぬ初体験の恨みを篭めて。真っ赤な顔のままそんな言葉を繰り返していた。
暴力系ヒロイン要素を垣間見せるアーシアさんの話。
そして紫藤イリナさんの長い受難の始まり。