管理局贔屓の情報屋 作:トクメイデス
JS事件が解決して、2年の月日が流れた。
……と、聞こえはいいが俺は参加した覚えはない。出たのは俺の恋人だ。
まあ、恋人といっても向こうから甘えられているうちに、なあなあでそんな関係になっただけに過ぎない。そもそもの付き合いは俺がフリーランスの情報屋をやっていて、特別捜査官として情報を求めていた彼女が顧客として関わってきたのが始まりだ。
とはいえ、最初は友人付き合いだったがいつの間にやら恋人同士になっているのだから、人生どうなるかわからないものである。
今日も仕事のない俺は、一人愛用のソファで寝転がって端末を弄っていた。デバイスの調整も既に片付け、集めるべき情報もとっくにまとめてある。元から顧客数が少ないからこそできる芸当だが、相手を選びすぎるために、今後もこの調子で収入が増えることはないだろう。唯一の救いは、単価が高いということだけだ。
気に入っている第97管理外世界の酒(ウィスキー)をグラスに注ぎ、口に含んでいると、扉に掛けていたカギが外れる音がした。
カタン、と俺はグラスをチェストの上に置き、待機状態にしているデバイスに手を掛ける。とはいっても、これは保険に過ぎない。気が付けば既に夕刻、となると必ず訪れる人間が一人いる。
「おお、おった。邪魔するで~」
「ああ、今日は忙しくなかったのか……はやて」
入ってきたのは俺の恋人であり、時空管理局の特別捜査官である八神はやてだった。仕事の都合で立て込んでない限りは、必ず定時明けにここに来る。手に持っている食材の入った袋ごと、そのまま台所に入っていった。
俺はデバイスをチェストの上に置き、再びグラスを片手に端末を操作し始める。
「もう夕飯にするから、お酒はやめてぇな」
「……あいよ」
台所から聞こえてくる声に俺はグラスを置き、端末も閉じてからデバイスの横に置いた。
となるとやることがないので、読みかけの小説を引っ張り出して開く。数十ページくらい読み進めていると、はやてが台所から顔を出してきた。
「ちょっと片付けて~」
「はいはい。少し待ってくれ……」
デバイスを待機状態のキーチェーンにしてベルトにぶら下げてから、端末と本を作業机の上に移し、代わりに横の食器棚から新しいグラスを引っ張り出した。
「ちょっと飲むか?」
「ん~私はええわ。代わりにジュース貰うで~」
そう言って引っ込んで料理を運んでくるはずのはやてについて、俺は台所に入って皿をいくつか両手に抱えてチェストの上に移した。
同じくサラダの盛られた器とジュースの入った瓶を持ち、俺に続いて向かいのソファにはやては腰かけた。
「ほな、食べよっか」
「おう……頂きます」
「頂きま~す」
今日の献立は肉団子の甘酢餡かけだった。
副菜のサラダと(はやて曰く)中華風のスープを口に含みながら、肉団子に舌鼓を打つ。
はやても俺が用意したグラスにジュースを注ぎながら、自分の料理を楽しんでいた。
「いや~、今日もええ出来やわ」
「まあ、確かにうまいな」
「……もうちょい褒めてくれてもええんやで?」
ジト目を向けてくるはやてに肩を竦めてから、俺はグラスを手に取り、ボトルの酒を注ぎこんだ。
「それで、三日程顔を出さなかったが、旅行にでも行ってたのか?」
「やったら事前に言うわ。この間くれた情報で、違法取引を潰すのに張り込みしとったんや。おかけで寝不足やで」
欠伸を噛み殺しているところを見て、その話は本当らしい。まあ、簡単に犯罪者が捕まるのなら、誰も苦労しないか。
「だったら帰って寝ろよ。……倒れられる方が迷惑だ」
「だからここへ来たんや。こんな姿、心配してくれるシグナム達に見せられんしな」
「心配させないために男のところに来たって、別の意味で心配されると思うけどな」
来てないよな、と扉に目を向ける。最初のうちは鉄槌の騎士辺りが最後までしつこく見張っていたが、はやての様子を見て完全に手を引いたらしい。それでも偶に顔を出してくるから、下手な態度は取れないので、面倒な話だ。
「もう皆認めとるで、私らが付き合ってること」
「……ならいいけどな」
結婚を申し込んだら、また揉めるだろうな。なんて当分は考える必要もないことを頭の隅に追いやり、俺は残りの食事を掻き込んだ。一通り腹に入れてから、手に持っていた箸を皿の上に置く。
「ごちそうさん」
「おそまつさん」
はやてもゆっくりと食べ終わり、そのまま座っていたソファに横になった。
食事に使った食器も片付けず、管理局の制服のまま寝転がる姿は、彼女が英雄やはたまた元犯罪者等と呼称できず、そのままただの人間だと如実に物語っている。
「食ってすぐに寝たら牛になるぞ、狸」
「狸言わんといて~」
料理は好きらしいが、それ以外の家事を堂々と(俺に)押し付けられるから、ここに来て寛ぐのがはやてにとっての癒しらしい。家族相手に家事をするのも好きらしいが、偶にサボって寝られる場所が欲しいというのが、俺を恋人に選んだ理由だとほざいていた。
それだけかは知らないが、少なくとも片づけている時点で、俺はこいつを追い出す気がないらしい。つまり俺自身も、この子狸が好きないしは気に入っているということだろう。
「……俺も寝よ」
付き合い始めた当初から、はやてが寝ると同時に俺も片付けを済ませて、一緒に寝るのが通例になっていた。とは言っても、俺が寝るのはこいつの向かいにあるソファで、ベッドで一緒に寝るのは今でも時折という程度だ。
まあ、それでも一緒に居られるだけで気にしないのだから、俺の本気度合いも、わりかし高いってことだろうが。
「おやすみ……」
食事の前後で飲んでいたアルコールが程よく身体に回り、俺も一緒に眠りに就くことができたのは行幸といえる。部屋の明かりがついたまま、俺達は睡魔に逆らうことなく意識を手放していった。
夢に見るのはいつも、一人泣いている少女の姿だった。
広い家の中、誰もいない寂しさからわんわん泣いては疲れて寝るのを繰り返す、そんな少女を見て、俺は手を伸ばして、頭を撫でようとする。けれどもその手は届かず、いつも肝心なところで空振りする。
仕方ないので、透明人間な気分を味わいながら、その少女が泣きつかれるまでを見続ける。そんな夢を、あの狸と付き合い始めてからずっと見続けていた。
どうやら、誰かが嫌がらせに彼女の過去を夢にして、俺に見せ続けているらしい。
『お前に彼女の寂しさを癒せるか?』
そんな問いかけを、俺は寝る度に投げかけられている。
「……またか」
だから俺はいつも、2,3時間程度で目を覚ましてから、はやての頭の横に座り直している。
読みかけの小説を片手に、彼女が笑って起きられるようになるまで、頭を撫で続けるためだ。それでどこまで救われるかは知らない。
「ふぁ……ああ、ごめん。寝てもうたわ」
けれども、はやてが笑って起きてくる限り、俺も同じことを繰り返していくのだろうと、手を放す度に考えてしまう。
「いつものことだ、気にするな」
「私は気にするねんけどな~」
起き上がることなく、身体をずらして俺の膝に頭を乗せるのも、いつものことだった。
「明日から少し休みが取れてな。シグナム達とゆっくり過ごすつもりやねん」
「そいつは良かったな」
とりあえず手持ちの情報は別の奴に売ろう、と脳内で販売計画に修正を加える。
「だから今日はゆっくり一緒に居ようと思ってんけどな。疲れには勝てへんわ~」
「だったら寝ろよ。俺は気にしないから」
いつもそう言っているのに、同じことを繰り返すのがこいつの悪い癖だ。まあ、周囲がワーカホリックで占められているのだから、当然といえば当然だろうが。
「嫌やわ、せっかく二人っきりになれたってのに……」
「はいはい」
もう少しだけ、頭を念入りに撫でてやる。
それで漸く落ち着いたのか、はやては顔を俺の腹に向けてきた。
「もう三十分だけ寝かせて。その後しっぽりやろうや……」
「はいはい、ったく……」
寝てしまうのもいつものことだ。
どうせ今日もそのまま朝まで寝てしまうのだろう。無防備なこいつの寝顔を肴に飲んでもいいが、グラスは既に片付けてしまっている。だから俺は小説を閉じ、彼女の伸び始めた髪を弄びながら、同じく眠りに就くことにした…………
そして朝まで寝てしまった俺の膝元で、同じく爆睡して不機嫌になっているはやてが、忌々し気に睨み上げてきた。いつものことなので軽く頭を撫でてやると、不貞腐れた顔で手を払ってくる。そのまま起き上がるのも、いつもの光景だ。
「シャワー……」
「はいはい」
いつからなのかは忘れてしまった。こいつがシャワーとだけ言う時は、『一緒に入ろう』という意味に聞こえてしまうのは。
実際、一人の時はただ『シャワー借りるで~』と言うので、多分何かのきっかけでどちらかが一緒に入りだしたのが理由だろう。
皺の入った制服を脱ぎ捨て、ブラウスやタイツも一緒に置いているのを眺めながら、俺も服を脱ぎ始めた。互いに下着になってからシャワー室に入るのも、いつの間にかできた、暗黙の了解だった。
「随分色っぽい下着だな……」
「ええやろ~今日のために買ってきたんやで♪」
ライムグリーンの下着をこれでもかと見せつけてくるはやて。どうやら機嫌は直ったらしい。
「ほな行こか~」
俺達は腕を組んでシャワー室に向かった。別にこのままベッドでも良かったのだが、昨日身体を洗っていない分、体臭を気にしてのことだろう。まあ俺も匂いフェチじゃないし、身体が痒いので別に気にしないが。
「なあ、どうせならそのまま浴びないか?」
「ええ~なに言っとるんよ自分」
このまま脱がせてシャワーを浴びるのももったいないので、少し下着のままでいちゃつきたかったからの要求なのだが、はやては若干悩んだ素振りをしてから、ニヤリと了承してきた。
「……ええよ、替えの下着もあるし」
ついでに言えば、こいつの着替えはいくつか家の中にあった。残業明けにそのまま寄れるから、というのもあるが、はやての家と管理局の地上本部の間に位置しているので仮眠所代わりに使っているという理由もある。
その証拠に、俺が泊りがけで出掛けてから帰ってくると、ベッドの上で静かに寝息を立てていたこいつを見て呆れはてたこともあったくらいだ。
下着のまま、脱衣所を抜けてシャワー室に入った俺達は、浴槽の縁に並んで腰かけた。肩を抱いてやると、はやての方も顔を近づけて唇を落としてくる。
「なあ、私のどこが好き?」
「ん、全部……」
「強いて挙げれば?」
こういう困った質問をしてからかってくるのもいつものことだ。
「強いて挙げれば……小さいと気にしてる割には程よくある胸とか」
「ひゃぅっ!」
肩に回した腕を動かして、はやての乳房をブラごと鷲掴みにする。指一本で乳首を弄びつつ、残りで柔らかい肉の塊を堪能していく。
「乳揉み魔だの言われている割には、実践だとわりかし初心なところとか」
「ちょっ、待って、お願いっ!」
もう片方の手で股座を軽く触ってみる。胸から尻に手を動かしても良かったが、身体を滑らせても怖いので、このまま続行する。
「最後には俺に好き放題されるくせに、無駄に強がるところとかかな?」
「……意地悪やな、も~」
両手を放すと同時に、はやては俺からすぐに離れた。とはいえ、乱された下着を直すことなく、ただ胸と股間を抑えるように隠しているだけだが。しかしそれも、近くにあるシャワーノズルを見た途端に、あっさりと手放してしまう。
「お返しや!」
「っと!」
ノズルから勢いよく出てくる熱湯を浴びて、俺は浴槽の中へと逃げ込んだ。近くにあった洗面器でガードしつつ、溜まったらぶっかけて反撃する。
「ゎぷっ! やったな~」
笑いながらシャワー片手に浴槽を乗り越え、俺にダイブしてきたのには焦った。どうにかはやての身体を抱え込みつつ、浴槽の中に横になって事なきを得たが。
「危ないだろ、こら」
「あたっ!?」
額を軽く指で弾いてから、涙目のはやての唇を貪った。俺の行為を嫌がることなく受け入れるんだから、お互いに本気だと悟ってしまう。
いつのまにか俺の頭に腕を回したはやての身体を、全身で味わいつつ舌を絡ませていたのだが、とうとう限界がきたようだ。
「挿れるぞ」
「ええよ……」
その言葉を交わす間だけ、舌を放したがすぐに絡みつかせた。
しかし互いの腕はそれぞれの下着をずらし、俺の竿をはやての穴の中に挿入している。
パンッ、パンッ、パンッ…………
上半身は動かず、下半身だけを激しく打ち付け合う俺達。邪魔するものはない中、艶っぽく火照ったはやてを貪り尽していく。
何度も何度も肉棒を膣内で動かし、全てを吐き出したい衝動に駆られた。
「んぅ……!!」
言葉はない。
俺はただはやての身体を抱きしめて、逃がさないようにしてから中に己が精をぶちまけた。
「ふぅ……」
一回やって満足したのか、それとも体力が尽きたのか、はやては気を失ったまま、寝息を立て始めていた。俺は彼女を抱えたまま、頭を撫でつつどうするかを考え始めた。
……子供ができても、別に俺は構わないのだが、一つ問題があった。そいつを解決するまでは、孕ませない限りは結婚を申し込むことはないだろう。
「こいつのワーカホリック、何とかならないかな……」
まずは仕事量を減らさせなければ、結婚を申し込むどころじゃない。無理矢理しても、絶対に仕事で家庭環境が冷めるだろうしな。
「おまけにこっちは処理しきれないからな……」
未だに屹立する愚息をどうにか気持ちだけで宥めながら、俺は彼女の頭を撫で続けた。
「うう~……」
「ほらほら、早く着替えないと」
駄々を捏ねるみたいに呻いているはやてを宥めながら、一緒にシャワー室を出る。
こちらも確かに満足していないが、帰りを待っている人達がいるなら、心配させるわけにはいかないだろう。
再び制服を身に纏っているはやてを、俺は下半身だけ服を着て、ソファに腰掛けながら眺めていた。
「まあ、一番は……見てて飽きない位にコロコロ変わる表情だよな」
「なんか言った?」
「……何にも」
着替え終えたはやてに手を振る。
いつもなら送るところだが、端末を操作していると、その必要はないと判断できた。
「もうお迎えが来てるぞ、ほら」
「あ~ほんまや」
端末は外に設置した隠しカメラと連動して、ガレージの前に車が止まっている様子を映し出していた。
「ほな、また来るからな」
「分かってるよ、それくらい」
落とされた唇を受け取る。互いに離れた後、はやては家を出て行った。
途中名残惜し気に振り返ってくるのに合わせて手を振るのは、正直疲れるが、こういうのも悪くはない。
「さて、また寝るか……」
俺は再び、ソファに横になった。
八神はやてとの関係:恋人
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