※この作品はR-18です。

管理局贔屓の情報屋   作:トクメイデス

5 / 9
005 夜天の守護騎士達との関係

 情報屋の面倒な点は、記憶力と推理力にある。

 何が使える情報になるかが分からない以上、些細なことからでも情報を引き出し、また記憶をすり合わせて新たな事実を見つけ出すという推理力も必要となってくる。つまり記憶する知識量や思考する回転速度という、脳の機能を最大限に活かせなければ、情報屋なんて務まらない。

 情報屋が探偵をやっていることが多いのも、いや逆に探偵が情報屋のような役割を果たしているのも、この二点を最大限に活かせるからに他ならないと俺は考えている。

「さて、と……」

 とはいえ情報を集めるのはともかく、他は凡人である俺はせっせと足を動かさなければ食いっぱぐれてしまう。

「まさか、あいつらと飲み会する程の仲になるとはな」

 適当なスナックバーを予約した俺だが、今日一緒に飲むのは恋人であるはやてだけじゃない。ちょっとした飲み会で、烈火の将や湖の騎士、鋼の守護獣も参加する予定となっている。

 鉄槌の騎士やユニゾンデバイスの二人(?)組は今回不参加だ。個人的に仲が悪いのもいるが、主に外見的な理由が原因で、外で飲むこと自体が面倒だと考えているからだろう。実際に飲めるかどうかは特に調べていないし、別に知りたいとも思わないので詳細は不明だが。

 ……本当になんで、脳内で物思いに耽る度に、説明口調になるんだろうな、俺は。

「そろそろか……よう、この間振り」

「随分早いな、情報屋」

 店の前で待っていた俺の前に現れたのは、烈火の将だった。ただし、視界に映るのは彼女だけである。

「はやて達は?」

「急な仕事が入った。主はやては遅れて来られるが、シャマルやザフィーラは今回欠席させてもらうとのことだ」

「まあ、いつも通りだな……」

 管理局の業務内容とはやてのワーカホリックぶりを考えれば、こういうことはよくある。だから飲食店で予約を入れる時も、直前でない限り、あまり食事の注文までは入れないようにしていた。キャンセル料もかかるし、何より食材がもったいない。

「どうする? 時間ずらすか先に入って飲んでるか」

「貴様はどうなんだ?」

「後ではやてが何も言わなければどっちでも」

 これは本当である。

 以前妹を見て『浮気やっ!!』と紙製の武器で斬りかかってきた恋人を怒らせさえしなければ、別にどちらでも構わない。というか、こちらに選択肢がない。

 飲みに行けば『二人きりで飲んだっ!?』と怒るだろうし、逆に時間を空ければ『私の家族を放り出すなっ!?』と浮気じゃなくても結末が同じになると予想できてしまう。

 せめて遅れると連絡さえくれれば、こっちは勝手に時間を潰していたというのに。わざわざ伝言に人を寄越すなんて面倒な真似を……あれ?

「そういえば、お前はなんでここに?」

 よくよく考えてみれば、おかしな話である。

 偶に飲む程度の仲とはいえ、俺は愛しの主様を奪った盗賊。おまけに言えば強姦魔だ。それなのにここにいるということは、俺に用事があるということになるが……

「少し話がある。主はやてには許可を取ってある。いいな?」

「『どっちでも』、って言っただろ」

 俺は店内を指差し、二人で店の中へと入っていった。

「いらっしゃいませ~」

 俺の名前を店員に告げ、店内にある個室へと入っていく。軽く飲む程度ならともかく、飲酒の量が多くなりそうであれば、事前に人目のつかない場所を確保することも忘れてはならない。

 何が情報漏洩に繋がることになるか、分からないからだ。

「二人キャンセルです。後から一人来ますので、料理の注文はその時に」

 そう言ってドリンクの注文だけ通してから、俺達は席に着いた。

 話をするのは注文が来てから。そしてこれで、はやてが来るまでは店員から話し掛けてくることはないだろう。

「お待たせいたしました」

 ドリンクを受け取り、俺達はそれぞれグラスに口をつけた。乾杯はしない、全員が揃っていないということもあるが、いちいちそんなことをする間柄ではないからな。

「……で、話ってのは?」

「貴様と主はやてとの関係についてだ」

 また随分、今更な話題が出たものだ。

 この前家に遊びに来たはやてから、『もう皆認めとるで、私らが付き合ってること』とは聞いていたが、正直どこまで信用できるかは分かったもんじゃない。何せ、相手は自分達の主を救う為に犯罪に手を染めた前科があるのだ。

 おまけにこちらもある意味前科持ち。とりあえず出方を見ないことには何とも言えないからと、烈火の将に話をするよう促した。

「貴様が主はやてに手を出した件を知っているのは、私とシャマルだけだ。他の皆には黙っておけ。認められさえすればこれ以上、とやかく言われることはない」

「……要点は?」

 正直言って、目的が見えない。

 俺がはやてに手を出した件、と言われてピンとくるのは『すでに肉体関係を持っている』ことではなく、『かつてはやてを強姦した』件についてだ。許されないことをしたという自覚はあるので、二度目の逮捕を受けてもまあ仕方がないとは思っている。

 けれども、相手はこちらを捕まえる動きを見せようとしていない。だから何故、そのような話になったのかが分からなかった。

 

 

 

「あの日、主はやてを焚きつけたのはシャマルだ」

 

 

 

 その一言で大体だが、話が見えてきた。

「ナカジマ三等陸佐の紹介とはいえ、貴様が信用できるとは限らないからな。知り合った後も、裏で背後関係を調べていたんだ」

「当然だし、その件は知っている」

 むしろ調べていなければ、ただのアホだ。誰彼構わず信用していたら、いつか寝首を掻かれるのは目に見えている。そんな奴ら相手に商売していれば、こっちも命が危うくなってしまう。

 だから俺のことを調べているかどうかを、こちらでも注意していた。相棒が死んだ後にやらかした件以外法は犯してないから、特に困ることもないしな。

「貴様があの日、主はやてに近づくなと言った件に対して、私はその通りにすべきだと進言した。話すにしても、互いに落ち着いた状況の方がいいだろうと思ってな。だが……」

「……湖の騎士は違った、ってわけか」

「まさか私が出勤した後で、そんなことになっていたとは思わなかったがな……」

 記録や人伝の話だけとはいえ、こいつらがどういう生き方をしてきたのかは多少とはいえ理解しているつもりだ。時に強引な手段に訴えていたことも、含めて。

 大方、その時も強引なやり方の方がいいと踏んだはやてと湖の騎士が勝手に盛り上がった結果、あの惨状に繋がってしまったのだろう。

「その話を、なんで今更?」

 湖の騎士が焚きつけたことは知らなかったが、それを選んだのははやてだ。来るなと言ったにも拘らず、俺の所に訪れて揉めた件はすでに話をつけている。というかワーカホリックさえ治してくれれば、こっちは今すぐにでもプロポーズしたいと思っているくらいなんだがな。

「……主はやてが結婚する気満々でな。この前からずっと、家で惚気られているんだ」

 …………なんか、すみません。

「この前の、ティーダ・ランスターの命日の時も止めたんだがな。『それでも行く』、『私は彼の婚約者』だと聞き届けて貰えず、結果チンピラを手土産に管理局に戻る始末……」

 ほんとにすみません。後恋人同士ですが、まだ婚約はしていません。

「お前はもう少し、融通効かせたりとか臨機応変に対応できるようにしたりとかした方がいいんじゃないのか? たしか管理局に入る羽目になったのも、それしか手がないと思い込んで魔力掻き集めた結果だろう?」

「……そう思うなら、適当な犯罪に手を染めてくれ。迷わずぶった切ってやるから」

 止めてくれ。これでも一応、グレー手前で留まっているんだぞ。

 というか犯罪を勧めるな、管理局員の分際で。

「まあ、とにかく……シャマルは賛成寄りだがヴィータは反対寄り、私を含めた残りは全員保留というのが現状だ」

 ……その残りの半分はユニゾンデバイスのチビ二人だよな? おい。

 あいつらに恋愛事とか分かるの?

「主はやてに結婚を申し込みたいならば、まずは私達に認められることだな」

「元からそのつもりだよ……」

 そもそも駆け落ちできるかどうかも怪しいしな。心情的にも立場的にも守護騎士プログラム的にも。

 そんなこんなで話していると、結構な時間になっていたらしい。店員がはやてを連れて、俺達のいる個室へとやって来た。

「お客様、お連れ様が参られました」

「待たせてしもぉて堪忍な~」

 個室に入るや、はやては少し考えるそぶりを見せてから、烈火の将の隣に腰掛けた。

「……うん。隣より向かい合った方が落ち着いてええなぁ」

「そうかよ」

 何がいいのかは知らないが、俺とは向かい合って食事を摂るのが好きらしい。とはいえ、俺の家でも普段はそうしているので、単にその方が慣れているだけかもしれないが。

 まったく……俺の顔なんて見飽きているだろうに。

「じゃあ揃ったことだし、はやての飲み物と一緒に料理も注文するか」

「主はやて、メニューをどうぞ」

「ありがとうな、シグナム」

 そして俺達はいつも通り、情報交換をしつつ微妙に静かな飲み会を続けるのであった。

 

 

 

「では主はやて。また明朝、お迎えに上がります」

「うん。シグナムお疲れ~」

 今日は多めに飲んていたからか、はやては若干ふらつきながら、俺の元へと歩み寄ってくる。

 烈火の将に手を振って別れを告げたはやての肩を抱え、そのまま俺の家へと向かった。

 家から少し歩いた所にある店を予約していたので、帰宅するだけで軽い酔い覚ましになる。いざとなればタクシーを呼ぶ腹積もりだったが、はやての様子を見る限り、その必要はなさそうだ。

「世界がふわふわや~……」

「はいはい、ちゃんと歩けって」

 正直おぶった方が早いかもしれないが、別段急ぐ必要もない。時折はやてを誘導しながら、ゆっくりと歩いていく。

「まったく……」

 恋人が酔っている現状を見ていると、ふと烈火の将と話していたことを思い出していた。

「……こいつ、あの時も酔っ払ってたんじゃねえの?」

 今考えると、いくらなんでも思い切りが良すぎたったと思う。おまけに反撃するどころか、デバイスを起動する素振りすら見せなかったのだ。

 正直、精神状態がまともだったとは言いきれない点が多すぎる。

「まあ、湖の騎士が焚きつけてたみたいだし……雰囲気に酔っていたのは間違いないか」

 少なくとも、反撃くらいはして欲しかった。この間こそ軽く殴られはしたが、内心それだけじゃ物足りなさすぎる。

「普通にブッ飛ばしてくれた方が、少しは気楽に返せるんだけどな……」

 とはいえ加害者はこちらだ。被害者であるはやてが何も言わないのであれば、こちらから言えることはない。

 ……いや、本当は分かっていた。本来ならばもう、言わなければならない言葉があることを。

「言い訳だよな……」

「何がやぁ~……?」

「……なんでもないから気にするな」

 妊娠するかワーカホリックが治ってから、と以前はやてには言ったが、別に、彼女に無理して改善して欲しいとかではない。結局は、俺自身に覚悟がないだけの話だ。

 ……過去の負い目から、傍にいて欲しいと言い出せずにいるだけだ。

「ほら、もうすぐ家だぞ」

「ほやほや~」

 いい具合に酔い潰れているはやてと共に家へと入るものの、眠気が勝ったのかソファへと倒れ込んでしまう。

「やれやれ……」

 向かいのソファに腰掛けた俺は、そのままはやてと同じ様に横になり、静かに目を閉じた。

 

 

 

 …………またいつも通りの、一人泣いている少女の夢を見ている。

 明晰夢、というわけではないだろう。夢だという自覚はあるものの、これが夢じゃないというのは俺自身が一番理解している。

 人が夢を見るのは自らの記憶を整理する為だが、俺はこんな記憶に微塵も覚えがない。それこそ実際に見聞きした経験から、流し見した資料の写真一枚に至るまで、だ。

 とはいえ、この夢を何度も見ていると、いいかげん仮説の一つも浮かんでくる。

 この記憶の持ち主と、俺にこんな夢を見せてくる相手に心当たりがあるからだ。

「なんて呼べばいい? ……強く支える者? それとも幸運の追い風か?」

 今回はこちらから声をかけた。だからだろう、とうとう相手からも話しかけられるに至ったのは。

『……分かってて、言っているだろう』

「勝手に名前を呼んでいいのかも分からないのにか?」

 それに、まだ確信があったわけではない。だから試しに問いかけてみたのだが、どうやら当たりだったようだ。

『では名乗ろう……』

 記憶の世界が消える。

 一瞬にして世界が暗闇に包まれるが、別に気にすることはない。

 種が分かれば単純、よくある幻術だ。この程度ならランスターの妹だって、いずれは覚えられる。

 そして暗転と同時に現れた女は、俺にこう名乗ってきた。

『私はかつて、夜天の魔導書の管制人格だった者……リインフォースだ』

「そうか、俺は――」

 互いに名乗り終え、俺達は向かい合った状態で話を続けた。

「それで、俺にはやての記憶を見せていた目的は何なんだ?」

『悪いが……今更、同じ言葉を繰り返す気はない』

 俺は肩を竦める。

 ……まあ、理由なんて分かりきっている。

「『お前に彼女の寂しさを癒せるか?』、だろ?」

 彼女、リインフォースは静かに頷いた。

『偶然とはいえ、『私』という残滓が夜天の魔導書に残っていた。本来ならばすぐに消えてしまう存在だが……湖の騎士の悔恨からか、それとも他の者達の嫉妬からか、意識が底上げされて生まれたのが今の私だ』

「なるほど、な……」

 おそらくは、守護騎士プログラムを介して生まれた、バグのような存在なのだろう。夢を見始めた時期とも一致する上に、なにより、俺という存在を疑って行動に移してきたのだから。

「俺の声に応えた、ってことは……もう長くないのか?」

『当然だ。元々は消えることを選んだのだから』

「そうか……」

 そろそろ、目を覚ます時間だ。

「消える前に、はやてと会っていけよ」

『……ああ』

 景色が遠ざかるにつれて、意識が浮上するような感覚のまま、覚醒へと促されるままに従った。

 

 

 

 …………一瞬、彼女が笑ったように見えたが、気のせいだと思うことにしながら。

 

 

 

「朝か……」

 目を覚ました俺の視界を覆ったのは、カーテンの隙間から差し込んできた朝日だった。

「……ぅ…………」

 向かいのソファから、少し掠れた声が聞こえてくる。

「…………フォー、ス……………………」

「……朝飯でも作るか」

 後ろ頭を掻きながら、俺は身体を起こして、そのまま台所へと向かった。

 買い置きはあるので、適当な朝食を拵えること位はわけがない。どうせはやてが起きるまで手持ち無沙汰になるのだ。時間潰しにもなるだろう。

「さて、と……」

 トーストとベーコンエッグ、後はインスタントのスープでも揃えておけば見栄えは良くなる。いつもはやてが準備してくれている料理に比べればお粗末だが、口だけで何もしない男でいるよりはましだと、納得してもらうしかない。

「後は焼き上がるまで……好みは?」

「…………半熟」

 いつの間に目を覚ましたのか、俺の背に抱き着いてきたはやての要望を聞きながら、朝食を仕上げていく。

「ずっと、会ってたん? リインフォースに……」

「いや……昨夜の夢で会ったのが、最初で最後だ」

 出来上がったので火を止めるものの、俺はフライパンから卵を皿に移さず、そのままにした。

「ずっと見せられていただけだ。広い家で、一人泣いている少女の夢を……お前の過去を、な」

「…………ぅ」

 静かに泣き出すはやてに、俺は背中を貸したまま、じっとした。彼女の気が済むまで、傍にいてやる。

 それが、俺にできる唯一のことだから。

「数奇な人生を歩んでいるよな……俺も」

 床の上に、そのまま腰を下ろした。はやても、俺に従うまま膝を折っている。

 ただ必死に生きて、大事なものができて、それを失った後にまた、別の大事なものを抱えてしまう。

(分かってるよ、ランスター……)

 もう、手放したりはしない。大事なものを……

「はやて……」

「…………ん?」

 もう……覚悟を決めよう。

「必要なら、模擬戦でも何でもやってやる。だから……」

 

 

 

「……俺を、お前の家族の一人に加えてくれ」

 

 

 

 好きな女を手に入れる為に……足掻く覚悟を。

 その為なら夜天の守護騎士達を敵に回そうが、互いの生活環境の改善でぶつかることになろうが、構うものか。

「…………ぅん」

 正式にプロポーズするのはもう少し先になるだろう。

 けれども……今の俺には、はやてが返してきた小さな返事一つで十分だった。




夜天の守護騎士達との関係:恋人の家族達



誠に申し訳ございません。
本来ならば年末中に投稿したかったのですが、年末年始に引っ越し作業が重なってしまい、一年以内の更新を果たすことができませんでした。おまけにここしばらくはまともなエロ描写もなく、執筆自体も碌にできない状況が続いてしまいました。



一先ずは落ち着きましたので、また一年以内の更新を目指して頑張りたいと思いますので、また思い出した際はご一読いただければ幸いです。



それでは皆様、今後ともよろしくお願いいたします。



2026年8月15日
 八九寺さん、誤字報告ありがとうございます。確認が遅くなり、すみませんでした。
 適用させていただきました。今後とも、よろしくお願いいたします。

【参考までに】主人公の名前で希望があればご協力願います。

  • 今まで通り、名前は伏せたままにする
  • オリジナルで名前を考える
  • トレイン=ハートネット
  • 別のキャラクター名【なのはから参考に】
  • 別のキャラクター名【黒猫から参考に】
  • 別のキャラクター名【その他から参考に】
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。