寝取り寝取らせ、寝取り寝取られ 作:ベーシックハッピー
あーしさんの悩み相談
突然だが、今俺はベストプレイスにいる。事の始まりは、今日の昼間まで遡る。
俺がいつものように昼を過ごそうと教室を出ようとした時、突然三浦が後ろから声を掛けてきた。何でも放課後に話があるそうで、絶対来いと念を押された。場所は俺が昼を食べている場所近く。
……俺のベストプレイスってもう知る人ぞ知る場所にランクダウンしちゃったのん? そんな事を思いながら由比ヶ浜へ部活に遅れる旨のメールをし、やってきましたベストプレイス。
そこに三浦はいた。何故かとても切羽詰まったような表情で。ここで冒頭に戻る。
「すまん、待たせたか?」
「べ、別にいいし。その、話があるし」
いつものあーしさんらしからぬ様子に内心疑問符を浮かべつつ、俺はその話とやらが切り出されるのを待った。あーしさんは何度も何度も深呼吸をし、小さく何事かを呟いていた。どうも自分に何か言い聞かせているようだ。
「あの、な、ヒキオ」
「おう」
「あ、あーしを抱いて欲しいんだけど」
「……はい?」
「い、今ので分かんないとか有り得なくない? だから」
「あー、分かった分かった。今のは理解出来なかったってやつじゃない。理解したくなかったってやつなんだ。で、一体葉山と何があった?」
顔を真っ赤にして今にもとんでもない事を言いそうだった三浦を制止し、俺は単刀直入に尋ねた。すると、どうやら的中したようで三浦は顔を真っ赤にしたまま項垂れる。そのまま五分ぐらいはそうしていただろうか。さすがにそろそろ俺も待つのが辛いと思い出したところで、三浦はポツリポツリと話し出した。その内容は信じられないものだった。そして、知りたくなかった事を知ってしまった瞬間でもあった。
「……そうか。葉山の奴がそんな事を」
「うん、あーしも最初は何言ってるのか分からなかった。でも、それが隼人の望みならって」
深刻な表情で項垂れる三浦。そう、葉山は彼女へとんでもない事をカミングアウトしたのだ。それは……。
「まさかあいつが寝取られ趣味とはな……」
そう、そうなのである。昔、雪ノ下を失った葉山はそこで性の目覚めを経験したらしい。それ以来、自分が好きな相手や物を人に取られると興奮するようになってしまったらしく、この度葉山へ告白した三浦はそれらの事を洗いざらい聞かされたそうだ。でも、それが好きな男の性的趣向であり望みであるならと、受け止めようとした。この辺り、三浦のおかん力が天元突破しているな。で、口も堅く人付き合いも少ない俺へ白羽の矢を立てたのだと。
「葉山も直そうとはしたんだろ?」
「みたいだし。でも、雪ノ下さんのお姉さんが隼人のそういうのをガンガン刺激してきたんだって」
陽乃さん、か。たしかにあの人と接していたら寝取られ趣味は酷くなりそうだ。て、待てよ? まさか俺と一色がいるのを望むのは……考えたくないが可能性はあるな。三浦には言えないけれど。
「な、俺が言うのも何だけどな? これは、さすがに考え直した方がいいぞ」
「……でも、隼人がこれを教えてくれたのはあーしの事を信じてくれたからだし。それに、ヒキオになら話しても構わないって言ったから、きっと隼人はあんたを認めてるんだと思う」
言い終わって三浦が小さく体を震わせた。正直最後の意見には言いたい事があるんだが、今は寒いし移動するべきか。
「三浦、悪いんだが場所変えていいか? ここは立ち話するには寒くてな」
「仕方ないし。じゃ、行くぞヒキオ」
心なしか嬉しそうな顔でそう返し三浦は歩き出した。俺もその背について行くように動き出す。少しだが声が明るくなり出している。さて、この問題をどう片付けるかだな。この後、俺はまず小町へメールを送り口裏合わせを依頼、続いて由比ヶ浜へ小町に呼ばれ部活に行けなくなったとメール。そして俺は三浦からの相談を片付けるべく、近くのファストフード店へ向かった。
「さて、話の続きをするが、その前に一つだけ言っておくぞ三浦」
「何?」
「葉山の趣味趣向を理解してるなら、あいつがまだ雪ノ下をどう思ってるかは」
「分かってるし。そう考えると色々納得出来る事もあるけど、それでもこんな事を話したのはあーしが初めてって隼人は言ってた」
それが三浦にとっては一番嬉しかったんだろう。葉山が長年誰にも言えず見せられなかった本当の自分の一面なのだ。……でも、だからってなぁ。
「んじゃ、次な。葉山が本当に望む事をするってなると、三浦はあいつの見てる前か、もしくはそういう事を映像に収めて見せる必要があるんだが……?」
「…………そう、なるよね、やっぱ」
表情が強張る。そりゃそうだ。好きでもない男に抱かれるのも嫌だし、それを好きな男に見せるとか映像に収めるなんてもってのほかだろう。でも、それをよりによって好きな男が望んでるんだもんなぁ。気持ちは複雑だ。
「しかも、おそらく一回じゃないぞ。下手をしたら何回もだ。映像で見られるのだって回数に入れればもっとになる。それで本当に耐えられるか?」
「……ヒキオ、あんたホントに男?」
突然の言葉に俺は思わず面食らった。何でこの場面でそんな事を言い出すんだこいつは?
「いきなりなんだ?」
「ふつー、こういう時ってあーしを好きにしようとか考えない? 男からしたらチャンス以外の何でもないし」
「あのな、俺は石橋を叩いて渡るどころか最初から渡る事を放棄するタイプだ。君子危うきに近寄らずとも言うし、俺は少しでも危険を感じたら迷う事無く避けるか逃げる」
その言葉で三浦も理解したのだろう。どこか呆れるような、でも好ましいような笑みを浮かべていた。結局この日は答えが出るはずもなく、とりあえず俺と三浦はこの日連絡先を交換して解散となった。
そして、その翌日。俺は三浦と自室にいた。運よく小町が友人宅へお泊りすると聞いて、前回の反省を踏まえここへ招いたのだ。……何気に自分から家、それも自室へ異性を招いた第一号が三浦とはな。俺自身も驚きだった。
「試しに何かアクションを起こしてみる?」
「ん。隼人が最終的に望んでるのはきっとこの前ヒキオを言った事だし。でも、もしかしたら軽い事でも満足出来るかもしれないじゃん」
「つまり、他の男と仲良くしてるだけでもって事か?」
「だからさっそく今からやるよ」
「……何をすればいい?」
「ヒキオがあーしと肩寄せ合うのを写メ?」
「……物は試しだ。やってみるか」
三浦がスマホを手にして自撮りの準備をする。俺はその隣へ座り三浦の方へ近寄るのだが、やはり慣れない事のせいか緊張する。それを見た三浦が自然な形で俺の体を引き寄せてきた。
「ヒキオ、もっと寄れ。写らないじゃん」
「お、おい」
まるで抱き寄せられるような感じで俺と三浦のツーショットが撮影される。それを確認し問題ないと見るやすかさず葉山のアドレス宛に送信する三浦。これでいいんだろうか。そう思うもさっき感じた三浦の諸々が俺の中で渦巻いていた。匂いや温もり、そして感触など。……今夜はきっとこれで寝れないな。
「じゃ、次ね」
「は? 次?」
「当たり前だし。どれが隼人に喜ばれるか分からないから思いつくだけやってみるの」
意気込むあーしさんを見て、俺はがっくりと肩を落とす。この後、腕組みに始まり、恋人繋ぎ、前後両パターンのハグなどを撮影した。おかげで俺のライフはゼロ。三浦はやりきった顔で帰って行った。去り際、部活終わりの葉山から反応があったら連絡すると告げて。ちなみに、残念ながら送った中で葉山を興奮させるものはなかったそうだ。
毎日更新します。既に書き終えているものなので。