寝取り寝取らせ、寝取り寝取られ 作:ベーシックハッピー
「最近優美子がおかしいんだ」
何気なく由比ヶ浜が言った言葉に心臓が止まる程驚く。
「おかしい?」
「えっとね、どうも隼人君と付き合い出したみたいなんだけど、あたし達との付き合いを避けてるんだよね」
「それは二人の時間が大事だからではないの?」
「それが隼人君が部活の時もなんだ。しかも、どうも優美子に他の男がいるんじゃないかって姫菜が言うんだ」
今度こそ本気で心臓が止まるかと思った。海老名さん、マジエスパーか。女の勘ってそんなに精度高いのかよ。ちなみに今日も部活前に屋上で葉山のためにと、ちょいエロ写メを撮影しました。ま、エロと言っても俺が三浦を後ろから抱き締めるようにしてキスしたって事なんだが。
……やっぱりあのキス以降俺の理性も脆くなっている。それと……
―――そ、そんな事葉山としたのか?
―――ったり前だし。だ、だからやるよヒキオ。
三浦もあの一件で葉山が喜んだらしく、余計にやる気を出してきているんだよなぁ。葉山とした事を俺とすると、次の段階に進めるみたいになってるせいだ。これもきっと葉山の狙いなんだとは思う。でも、どこか不気味だ。まるで俺と三浦をくっつけようとしている風にも感じる。まさか、雪ノ下から俺を引き離すために?
……考えすぎか。
「ね、ヒッキーはどう思う?」
突然問いかけられる言葉に思考が追いつかない。しまった。あいつらの事を考えていたせいで二人の会話を聞いていなかった。
「あのな、俺に女性関連の事が分かる訳ないだろ」
「それもそうね。しかも比企谷くんと三浦さんは接点もないし」
すまん。今はかなり接点がある。下手すりゃお前ら以上のな。でも口にはしないし出来ない。そんな事をしたら三浦の覚悟や勇気が無駄になる。葉山だけが苦しむならともかく、三浦までそれに巻き込まれるのは気分が悪いし。こんな事を思う時点で俺も相当か。
「でもでも、隼人君以外に優美子が親しくしてる男の子いるのは間違いないし。だって、付き合い出した辺りから戸部っち達は一度も隼人君関係の話をした事も聞かれた事もないって言うもん」
「……単に本人から直接聞いているのではなくて?」
「うん。優美子、隼人君と付き合う前は戸部っち達から情報得ようとしてたから。それが最近まったくなくなったんだって」
そりゃ聞く訳にはいかんわな。今一番三浦の頭を悩ませてるのは、彼氏の歪んだ性癖なのだから。戸部を疑う訳ではないが、あいつはふとした拍子に漏らしてしまいかねん気がする。ま、だから葉山も俺ならって三浦へ告げ……待てよ?
そうやって思い出してみると、あいつは最初から俺を巻き込む腹積もりだった。その狙いは何だ? 本当に自分の性癖を満たすために三浦へ俺の名を出したのだろうか? さっき有り得ないと馬鹿にした考えが静かに首をもたげ始める。あいつが雪ノ下を異性として意識してるのは間違いないとして、なら目下の所、一番の障害となるのは誰だ?
「……確かめてみるか」
別に雪ノ下とどうこうなりたい訳ではないが、仮にそうなら葉山の奴が三浦を利用し捨てようとしてる事になる。それだけは許せない。かつて振られて酷い目にあった者として、絶対見過ごす事は出来ん。
この時、俺は気付くべきだった。三浦から相談された時点で、既に俺は逃げられない道を歩かされていた事を……。
日も暮れ、辺りを夕闇どころか完全な夜の帳が降りた頃、俺は葉山と学校近くのコンビニ前にいた。三浦へ葉山と話したい事があるとメールし、連絡してもらったのだ。
「一体何の用だ?」
「お前、三浦をどうするつもりだ?」
単刀直入に尋ねる。駆け引きなどしたくないしするつもりもない。三浦には悪いが、事と次第によっては葉山の学校生活を終わらせる。
「どうって……いきなり何だ?」
「いいから答えろ。あいつを最後はどうするつもりだ」
「……ああ、そういう事か。比企谷、相変わらず物事を深く読むんだな。俺が優美子を使って、お前を雪ノ下さんから遠ざけようとしてるとでも?」
「……ないとは言い切れないだろ」
「だとしても、どうしてそれでお前が俺へ? 普通は優美子に教えて俺へ詰め寄らせるだろ」
葉山は無表情で俺へ告げる。それは俺の理由を察しているからだ。そう、俺が三浦へ気を遣っている事を。
「あいつはお前を本気で好きなんだ。お前だってそうなんだろ? なら」
「比企谷、今日はありがとう。あの写メ、中々興奮したよ」
突然葉山が俺の言葉を遮って携帯を取り出した。そこに表示されていたのは今日撮った三浦との写メ。そこに映る三浦はどこか艶めいて見える。
「何だ、急に」
「いや、俺もこんなキスはした事ないんだ。後ろから抱き締めた事はあるんだけどね」
ガツン、と、頭を殴られた気がした。葉山の顔が一瞬笑って見えた。だが、そんな事はなく軽い驚きを浮かべたままだった。
「まさかお前から約束を破ってくれるとは思わなかったよ。ホント、正直嬉しいんだ。これで俺の不安もなくなる」
「……不安?」
聞くな、聞いちゃいけない。そうどこかで思いながらもつい口が動く。その問いかけを葉山が待っていたような気がした。葉山は軽く笑っていた。
「いや、いざって時に情けない事になりそうだったからな。これで優美子を抱いてあげられそうだ」
「っ!」
思わず拳を握る。だが、それも一瞬だった。言い終えた葉山は心底悲しそうな顔をしていたのだ。
「本当に情けないだろ? 他人の女にならなきゃ男として機能し辛いなんて。優美子や比企谷が望んでる事は分かるし、俺だって出来るならそうしたい。でも、怖いんだよ。笑いたいなら笑ってくれ。俺はどうやらその小さなプライドが捨てられないらしい」
「……その、こんな事で言うのが合ってるかは知らんが、やるだけやってみろよ」
「ははっ、そうだな。まずは軽いところから試してみるよ。あんな話をしたせいか、優美子はそういう事に積極的だからね」
最後に軽くのろけられる。普段なら負の感情を抱くのだろうが、今はむしろ喜んでしまう自分がいる。葉山も三浦も本当は俺を関係させずいたいのだろうな。俺だって関係せずいたかったし。
この日、俺は葉山と連絡先を交換した。去り際、葉山からこんな事を言われたのが印象に残った。
―――今の比企谷なら仲良くなれそうだ。
まぁ、俺としてはそうするつもりはまったくないが、同じ男として思う事がない訳ではない。とりあえず今は葉山から聞いた事を三浦へ確かめるのが先だ。
こうして俺は自宅へ帰り、夕食後に自室で三浦へメールする事にした。まずは今日の写メについて。何故嘘を吐いてまで撮影したのか。それを尋ねた。一応文面から怒りを感じないように気を配ったが、さてどうなるやら。
「……さすがあーしさん。メールじゃなく電話っすか」
着信を伝える振動と画面にはあーしさんの文字。これは長くなるかもしれんな。そう思いつつ通話状態にする。
『ヒキオ、ごめん』
「……は?」
いきなり謝られた。どうしてだ? やっぱ文面が怒ってるように見えたのだろうか?
『その、ヒキオには悪いと思ったけど、隼人を喜ばせたくて嘘吐いたし。だから、ごめん』
「……ま、そういう事じゃないかとは思ってた。でもな、だからってキスは」
『ま、前も言ったし。ヒキオとならキスぐらい構わないって』
もしもしあーしさん? そんな事言わないでくれます? 今ので俺の男が軽く反応したんですけど。
『それに、さっき隼人からもメールが来た。今日のは凄く良かったって。それと、今度の休みにデートしたいって言ってきたんだ』
言えない。それも俺が口出しした結果とは。言ったら三浦の中にある俺への何かがまた上がる。だから当たり障りのない事を言おう。
「そうか。それは良かったな。でも、今回みたいなのはもう駄目だからな」
『わ、分かったし。てか、これ普通立場逆じゃね?』
「そうだな。普通は俺が言われる方だ」
三浦の声が普段の調子に戻りつつある。それに安堵し俺も口調を合わせた。
『だよね。あー、ヒキオってやっぱ優しすぎるんだって。普段はそれでもいいけど、いざって時はちゃんと男気見せろ』
「何でそんな心配をお前にされなならん。それと、別に俺は優しくない。自分の事を第一に考えてるだけだ」
そう返しつつ、内心は照れと嬉しさに悶えている。女子にここまで想われるなんて初めての経験過ぎて耐性がない。しかも、相手が三浦だ。そこに裏がないのは明らかである。それがより俺の心をかき乱す。
『はいはい。ヒキオ、あんたにこの事言って良かったってホント思うし』
「……ま、言いたくても言う相手もいないからな」
『ふふっ、そういう事にしとく。じゃ、おやすみ』
「おう、おやすみ」
通話を終えたスマホを眺め、俺はふと気付く。今のやり取りも本来なら三浦は葉山とするべきだろ、と。
だが、どこかで優越感を感じている自分にも気付いていた。葉山では三浦を愛してやる事が出来ないかもしれない。その事がずっと頭の片隅で囁いてくるのだ。そして今日の三浦の嘘もそれに拍車をかける。そう、俺の頭の中で囁かれる悪魔の誘い。
―――この面倒事を片付けて、二人が望む事をさせるために、三浦を抱いてしまえ、と……。