※この作品はR-18です。

寝取り寝取らせ、寝取り寝取られ   作:ベーシックハッピー

8 / 11
ここで第二部のキーパーソン登場。


海老名姫菜は後悔していた

「分かった。いや、予想外ではあるがそれならそれでもいい。ああ、ちゃんと可愛がってやるから。期待してろ」

 

 通話を終了し、俺は込み上げてくる笑いを抑えられなかった。たった今、いろはから連絡があり、葉山と別れて家に着いたそうだ。

 そして、あいつとあったある事を教えてくれた。これは本当に予想外だった。だが、考えてみれば当然だったのかもしれない。多少悔しい部分もない訳ではないが、まぁそこは今後の課題としよう。

 

「とにかくこれでいい。葉山の奴も動画を確認したみたいだし、ここからが俺の出番か」

 

 まずは明日の学校だな。だが葉山の奴、一体どうするんだろうな、あの動画。いろはの話じゃおそらく三浦へは教えないはずだし、手元にある意味でとっておくだろう。さてさて、これは楽しくなってきた。

 

 とりあえず明日の葉山との話し合いが一番の問題か。いろはからの情報じゃ俺とセックスした事は伝えてあるそうだし、その辺りを触れてくれるはずだ。ま、葉山の事だからどうしていろはと俺がそうなったかは勘違いしてくれてそうだが。

 

「三浦に出張られると面倒だな。そっちは……いろはに頼むか」

 

 女の事は女に任せるのが無難だろう。それに今のいろはは俺の事をよく分かってる。なら下手な事はしないはずだ。それぐらいには俺はいろはを信頼している。愛しているかは……もうよく分からない。

 そもそも愛するっていうのはどういう事だ。大事に思う? なら愛している。どの女よりも一番? なら違う。俺にとっては未だに三浦がそこにいる。考えるものではないのかもしれないが、だからこそ今の俺には分からない。小町への気持ちは家族だからだし、そこは別格だろう。

 

「それにしても、まさかいろはがここまで優秀とはなぁ」

 

 葉山とのセックスはいろはとしては色々と物足りなかったらしい。理由を一言で言えば、攻めがヘタレだそうだ。つまり優しすぎるのである。

 おそらくその原因はあいつのトラウマが関係しているんだろう。つまり、激しくし過ぎて嫌われないか。強くして嫌がられないか。痛くしたらどうしようとか。とにかくそういう気持ちが無意識に働いているはずだ。

 

 いろはもその辺を察して逆に主導権を握ったらしい。で、問題はここからだ。いろはが攻めに転じた瞬間、葉山の奴は興奮度合を上げたらしい。つまり、あいつは攻めるよりも攻められる方が好きなのだ。これも前述の原因によるものだ。自分が苦しんだり痛いのは我慢出来る。しかも相手の好きにさせてやれる。そう、あいつは知らず精神的にM男になっているのだ。

 

「いろはとのセックスにドハマりするようなら、それはそれで好都合だ。いろはとしても次々と男を変えるのは嫌だろうし、俺としてもよく知らない奴にあいつを抱かせたくない」

 

 この辺り、俺も本格的に寝取り好きではないという事なのだろう。あくまで対象は葉山を好きな奴なのかもしれん。ああ、そうか。この歪みの原因みたいなもんだもんな。成程、最初から仕返ししてたようなもんか。そう一人納得し小さく笑う。

 

―――優美子、俺はもう待たないからな。

 

 

 

 翌日、俺は放課後に部活を休み屋上にいた。理由はある人物から呼び出しを受けたからである。その相手は、いつかこうなる気がしていた女子だった。

 

「ごめんねヒキタニ君。こんな寒いとこに呼び出して」

「別にいい。で、一体何の用だ」

 

 海老名さんはこちらを見つめ笑みを浮かべている。何を考えているか知らんが、俺としては面倒な事この上ない。昼に葉山から頼まれた事で頭が一杯なのだ。そちらをどうしようかをゆっくり考えたいと思っていたのに、まさかこんな事になるなんてな。

 

「うん、単刀直入に聞くね。優美子に何をしたの?」

「抽象的過ぎる。もっと具体的に言ってくれ」

「あれ? 分かんない? 男女の関係になったのかどうかって事なんだけど」

 

 この女狐め。と、そこで思い出す事がある。修学旅行の依頼だ。あの時もこの女のせいで俺は面倒事に巻き込まれたんだよな。そう思うと怒りがふつふつとわいてくる。どうせだ。この場を借りて軽い復讐といこう。自分は何でも知ってるみたいな顔しやがって。

 

「なってたら俺は今頃三浦を彼女だと言ってるぞ。あいつだってそんな事を隠すような性格じゃないだろ」

「隼人君のために隠れて関係を持ってたとしたら? 例えば、優美子が男性経験を積むため、とか」

「あのな、あいつの一途さは知ってるだろ。葉山のために他の男と密会なんて」

「隼人君も知ってるとしたら? もしくは隼人君がそれを望んでるとしたら?」

「意味分からん。何だそれ。浮気してる女を好きな男なんているか」

 

 この女、どこまで気付いてる。俺は表情を変えないようにしながら海老名さんの動向を探った。この女はどうやら確信までなくても推測で気付いている。俺と三浦の関係が一線を越えているだろう事に。そして、葉山がそれをどこかで黙認ないし希望していた事も。

 

「うん、いないよね……普通は」

「な、さっさと話を終わらせてくれないか。ここは本気で寒いんだよ」

「ごめんごめん。でも、ヒキタニ君も悪いんだよ? 早く事実を言ってくれれば」

「それ、お前が言うのか腐女子め」

 

 その一言で海老名の表情が強張る。俺の言った腐女子の意味合いに気付いたらしい。何もオタク的な意味じゃない。文字通り腐った性格の女という意味合いで言い放ったのだ。それを察する辺りは鋭いが、どうやらこいつは俺程打たれ強くはないらしい。これなら十分勝機はある。

 

「何が早く事実をだ。なら、同じ事をあの時のお前に言ってやる。どうして奉仕部で事実を言わなかった。回りくどい言い方で、俺みたいな捻くれた奴がようやく分かるような事したくせに」

「あれは……」

「言っとくが、あれは今は関係ないとか抜かすなよ。あの時の事が今の事に無関係だとでも思ってんのか」

 

 俺の突き放す言葉に海老名の声は返ってこない。当然だ。あっちは推測でしかないが、俺のは確実にあった過去なのだ。俺の言いがかりだと思っても、それを否定出来るだけの証拠も証言もない海老名にはどうしようもない。ただ、自分がした事が三浦に影響を及ばしたのかと驚いているのだ。ここで攻めを緩めるつもりはない。この女は強かだ。開き直る前に追加攻撃をしかける。

 

「あの事件のせいで俺はせっかく出来た居場所を失うとこだった。ああ、まるで誰かさんと同じだな。そうか。つまり俺は誰かさんの身代わりにされたんだな。いや、やっと気付いたわ。本当に俺ってバカな奴だ」

「その、比企谷君……」

「おい、何だ今の。どうして俺の名前を正しく言う? 葉山もそうだがお前もか。困った時に俺を頼ったり、あるいは利用したりする時とかは媚びるように名前を正しく発音しやがって」

 

 言いながら海老名へ迫る。心なしか怯えているような気がした。その姿に俺の中の嗜虐心がそそられる。もっと追い詰めてやるか。いや、じわじわと痛めつけるべきか。迷うところではあるが、あまり調子に乗って足元をすくわれないようにしないとな。

 

「ひ、比企谷君、ごめんなさい。その、そんなつもりじゃ」

「じゃあどんなつもりだったんだよっ!」

「ひっ!」

 

 大きな音を立てて足元を踏み鳴らす。俺はきっとこんな風に怒るとは思っていなかったんだろう。予想外の事に怯える海老名が可愛く見えた。ああ、いいな。どうも歪んだ辺りから俺はサド傾向にあるみたいだ。

 ま、当然か。寝取りなんてもんはサドじゃなきゃ出来ないしやらない。とにかく海老名だ。これで最後とばかりに顔を近付ける。怯えるものの、それでも逃げようとはしなかった。この辺りは大したもんだな。

 

「三浦との事を聞きたがってたな。教えてやるよ。俺はあいつと寝た。いや、抱かせてもらったんだ。お前の推測通り葉山の希望でな。でも一度きりだ。おかげでこっちは欲求不満でフラストレーション溜まりまくりだっ!」

「っ……そ、そうなんだ。その、えっと……」

「この事は誰にも言うな。今、あの二人は上手くいってる。詳しくは言えないが、葉山の奴は自分の問題を三浦と解消したんだ。俺もあの二人を引き裂くつもりはない」

 

 これは本当だ。俺は引き裂くつもりはない。ただ、きっかけは俺かもしれんがな。今、あいつらを引き裂こうとしているのはいろはだ。俺じゃない。そんな事を考えながら怯える海老名を見つめた。それに何度も頷く海老名を見て、俺は内心で満足しながら表情は申し訳なさそうにした。

 

「その、悪い。ついかっとなった。怖がらせてすまん」

「あ、ううん。私こそごめん。そう、だよね。色々君に面倒かけておいて今更だよ。本当にごめんなさい」

「いや、結局はそれを引き受けてああ解消したのは俺だ。そうしないでそっちを裏切る事も出来た。全て俺が選んでやった事なんだ。だからそこまで気にすんな」

 

 そう言うだけ言って俺は屋上を去る。その背中へ海老名が一言だけ声を掛けてきた。

 

「比企谷君、これだけは本当だから。あの最終日に言った事、私は本気だから」

 

 それに俺は言葉を返す事もせず、ただ片手を上げてドアを閉めた。そのまましばらく歩き、自転車置き場まで行くといろはがいた。

 

「先輩、どうしたんです? すごく楽しそうな顔してますよ?」

「詳しい事は部屋で話す。とりあえず後ろに乗れ」

「はい、分かりました。それと、三浦先輩について報告が」

 

 無言で頷き、俺は自転車の鍵を外す。それを合図にいろはが後ろへ乗った。動き出す自転車。感じるいろはの鼓動と温もり。それも今の俺にはさして喜びもなく、ただ海老名の事だけが頭の中を渦巻いていた。

 

 あの女、言うに事欠いてあの告白もどきを持ち出してきた。あれを深読みすると、自分は俺になら抱かれてもいいって事か? もしそうならこれはまた面白い。いろはの報告次第だが、事と次第によっては海老名も巻き込んでやろうか。

 

「先輩、何で大きくしてるんですか?」

「お前をどう可愛がろうかと思ってな。激しくして欲しいんだろ?」

「はい。だって、ヘタレ先輩って体位全然変えないんです。ほとんど正常位か後は騎乗位ぐらい」

「バックは?」

「ないです。あれ、深く感じて気持ちいいんですけどね。三浦先輩、嫌いなんでしょうか?」

「……かもしれんな」

 

 何となく俺に思い当る節があった。あの一度限りの夜。そこで俺と三浦は四つの体位を試した。その事を思い出せば、何故葉山がバックをしていないかは見当がつく。だが、もしそうなら本当に三浦は……。

 

「いろは、今日は何時頃に帰宅予定だ?」

「……お泊りでもいいですか?」

「ああ、小町は友人宅で勉強会兼最後の息抜きだそうだ。だから構わないぞ」

「小町ちゃんの帰宅は何時頃です?」

「昼過ぎには帰ってくると言ってた。何だ? さっさと飯食べて少しイチャついたら風呂か?」

「……ダメ、ですか?」

 

 言いながら体を更に密着させ胸を押し当てるいろはに笑みが込み上げる。ったく、可愛いったらないな。いいだろう。今日は深夜まで繋がるとするか。その気持ちを込めて一言だけ返す。

 

―――意識飛ばしてやる。

―――はい、いっぱいご奉仕しますね。

 

 今日は長い夜になりそうだ。そう感じて俺は股間を膨らませる。いろはの吐息も熱っぽくなっていた。本当にこいつは最高だ。俺のパートナーとしてこれ以上ない逸材だろう。見れば自宅が近付いてきた。とりあえずいろはと寝て結果を待つとしよう。果報は寝て待てと言うしな。

 

 

 

「私が結果的に彼を歪ませちゃったのかな……?」

 

 誰もいなくなった屋上で、私はそう呟いた。さっきまでの彼、比企谷君は本当に怖かった。彼の中にあった男を見せつけられたみたいに。

 

 そのせいで頭が上手く働かなくなった。優美子が隼人君と付き合いだしてもう二か月以上になるけど、何となくその関係はゆっくり良くない方向へ進んでる気がしてた。

 その原因を考えた時、真っ先に浮かんだのが比企谷君だった。優美子が隼人君と付き合う直前まで、よく目で追うようになっていたのが比企谷君だったから。

 

「きっと彼は優美子が好きになっちゃったんだろうな」

 

 だからあそこまで怒ったのだ。好きな女の幸せを願い、自分は我慢して耐えようとしていたのに、そこを私が何も知らず踏み込んだから。そう考えれば彼の怒りはもっともだ。いくら優美子の親しい友人でも、軽々しく踏み込んでいい事じゃない。そんな事、腐ってる私が一番分かってるはずだったのに。

 

「一度優美子とエッチしたから、今の彼はストレスが溜まってるんだ。そうだよね。学校で必ず見せつけられるんだもん」

 

 例え公表してなくても今の二人は確実に特別な関係だと感じる。教えられてない大岡君達でさえ感じ取っているぐらいだ。それでも今までの優美子の立ち位置を考え、みんなその延長線上と捉えているから大きな混乱がないだけで。

 私は今のグループが壊れないならそれでいいと、静観するつもりだった。でも、優美子からある相談をされた事で事情が変わったのだ。

 

―――海老名、男ってどうしたら自信つけてくれるか知らん? もし知ってんなら教えて欲しいし。

 

 その詳しい話を聞いて驚いた。元々隼人君がED手前みたいだった事もそうだけど、優美子とエッチするようになってから段々気持ちのすれ違いみたいな事が起き出したらしい。優美子は原因が自分にあるって言ってたけど、聞いた感じだとそんな単純な感じがしなかった。だから比企谷君へ問いかけてみたんだけど……。

 

「あの感じだと、本当に優美子とはそれっきりっぽいなぁ」

 

 あの時の彼には心からの怒りがあった。優美子が好きだから傍にいて欲しい。でもそれを相手が望んでない。なら、好きな相手の幸せを願って別の男との仲を後押しせざるを得なかった。そんな悔しさや憤りが感じられたのだ。あれが演技とは思えない。彼はそもそもそういう事が嫌いなタイプだし。

 

「結局私が腐ってるせいで回りが腐っちゃうのかな。あはは、かもしれないなぁ。ホント、救いようないよね、私って」

 

 こんな事ならあの時あの集まりを捨てれば良かった。隼人君じゃなくて比企谷君を最初から頼れば良かった。思い返せばキリがないけど、本当に私は選択肢を間違っていたんだと思う。だからこそ、せめてもの償いをしようと思ってあんな事を彼へ言った。じゃないと、彼はその内優美子へ迫って行きそうだから。

 

―――優美子の気持ちは隼人君にあるって分かる。でも、隼人君とのエッチであまりイケないのはどうして? その答えは絶対比企谷君にあるはず……。

 

 一度きりの、秘密の関係。そんな危ない一夜が優美子と彼の中に大きく影響してるのは疑いようがない。だからこそ、二度目を起こさせてはダメなんだ。それはきっと彼と優美子が一番望まない展開になるから。

 

 罪滅ぼしにもならないかもしれないけど、私が最後の歯止めになれるなら。優美子が私に久しぶりの平穏をくれた。なら、その分ぐらいはお返ししておきたい。そう思って私はスマホを取り出した。結衣へ連絡して比企谷君の連絡先を聞き出そうと、そう考えて……。

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